fox capture plan「ジャズのピアノト
リオのスタイルにこだわらなくてもい
い」 新たな一面を見せるフルアルバ
ム『DISCOVERY』インタビュー

fox capture planが8枚目のフルアルバム『DISCOVERY』を2020年11月4日にリリースした。

『DISCOVERY』には、管楽器をフィーチャーした「Into the Spiral」「不可思議のカルテ」や、ファーストアルバムリード曲でもある「衝動の粒子」に代表されるポリリズム・ロックの発展形とも言える「PRDR」、お馴染みの洋楽ロックのカバーとしてリンキン・パークの「Numb」など全11曲を収録。「ジャズのピアノトリオのスタイルにこだわらなくてもいい」(岸本)と語る今作が完成に至るまで、そして近況や11月19日に東京国際フォーラムCにて行うライブに向けて話を訊いた。
──アルバム『DISCOVERY』のお話に行く前に、まずは近況からお聞きできればと思います。コロナウイルスの影響を受けて、3月以降はライブが中止、延期という状況になってしまっていて。そのなかでも、『コンフィデンスマンJP プリンセス編』や『事故物件 恐い間取り』といった映画の劇伴曲や、ボーカリストを迎えたコラボ曲など楽曲は発表し続けていましたが、その辺りは去年に作業されていたんですか?
カワイ:『コンフィデンスマン〜』は去年の年末にやっていて、『事故物件〜』は今年の4月とかだっけ?
井上:うん。もう完全にステイホーム期間中の作業でしたね。
カワイ:で、Yoshくんとの曲「Curtain Call feat.Yosh(Survive Said The Prophet)」は2月ぐらいに作業してました。えみそん(おかもとえみ)との曲「やけにSUNSHINE」「甲州街道はもう夏なのさ」は3月とか。
井上:もうギリギリのタイミングでしたね。
──リモートで制作されることも多かったと思いますが、いつもと変わったところも多かったですか?
カワイ:僕らはそんなに変わってない気がしますね。バンドの曲も、自宅で打ち込んだデモをスタジオに持って行って、その場でレコーディングするので。スタジオで録るときは気をつけながらやってましたけど。
──そういう意味では、大きな変化があった部分というとライブがなかったこと?
岸本:そうですね。今回の『DISCOVERY』も、自粛期間に入る前にほとんど録り終えていたんですよ。コロナ期間に入ってから、ストリングスとかホーンとか、ダビング系のものを録った感じだったので。もしスケジュールが後ろにズレていたら、アルバムの形もちょっと変わっていたかもしれないけど、そこまで障害もなく制作できた感じはします。その後に制作したドラマ『一億円のさようなら』の音楽もコロナの影響で時間が沢山あってレコーディングの1ヶ月前にデモも全部揃っていましたね。
井上:いつもはレコーディング直前までやってるんですよ。
カワイ:でも、早くできるのがバレちゃうと、次から制作期間を短くされるんじゃないか?っていう(笑)。
──そこはヒヤヒヤしますね(笑)。井上さんとしては、ライブがない生活を過ごしてみていかがでしたか?
井上:僕はずっと身体を動かしてました。やっぱりライブがないと気分が落ち付かなくなりますね。ドラムは叩いてはいたんですけど、やっぱり人前でやるという機会がないと。
カワイ:しばらくライブをしてないと、ライブってどんな感じだったっけ……?ってなるんですよ。この前、福井のフェスで半年ぶりぐらいに人前でやったんですけど、こんな感じだっけ……みたいな(苦笑)。なんか変な感じがありました。
fox capture plan・岸本 亮
──岸本さんは、ライブのない生活を過ごしていてどんな感覚になりました?
岸本:まあ、これがずっと続くと嫌だなとは思ったんですけど、期間がある程度決まっているのであれば、こういうのも悪くはないのかなっていう感じはありました。楽曲制作のスキルをあげるとか、機材を揃えるとか、今までやろうと思っていてもできなかったことに挑戦できる機会にもなったので。
──この期間をポジティブに捉えようと。
岸本:でも、やっぱり振り返ると結構不安ではありましたね。これがずっと続くんじゃないのかという雰囲気もあったにはあったけど、この期間が延びるにしても、解除されるにしても、どうなってもできるように考えながら過ごしてました。今はだいぶ緩和されてよかったなと思います。
カワイ:僕はわりとそこまで気になってなかったというか。ライブができなかったのは残念だったけど、ちょっとゆっくり立ち止まる時間として考えてましたね。ゲームしたり、映画を観たり、いつもよりのんびりはしてました。
──実際にお話を聞いた感じだと、いろいろ作業もされていたわけですし。
カワイ:そうですね、仕事自体は止まっていなかったので。外に出ないぶん制作に集中できたので、じっくり作れたなと思います。
──では、ニューアルバム『DISCOVERY』のお話に。オリジナルアルバムとしては約2年振りで、foxにしてみたら少し期間が空いたというか。
岸本:そうですね。
──だいたい1年とか、1年以内というスパンでリリースされてきましたからね。
井上:ただ、そのあいだに他にもめちゃめちゃ出していたので、止まっている感覚は全然なくて。
──そうですね。冒頭の作品以外も発表されていましたし、ツアーもありましたし。
岸本:一昨年の時点では、この時期はオリンピックで日本が盛り上がって活気づいているんじゃないかなと思っていたので、アルバムをそこに合わせようっていうプランもあって(苦笑)。それもあって去年は出さずにいたのと、あとは、構想を練る期間が欲しかったところもあるかもしれないですね。
──なるほど。
岸本:前作の『CAPTURISM』はセルフタイトルっぽいものになっていたし、これまでの7枚のアルバムで、ピアノトリオスタイルをある程度確立できたかなと思うところもあって。だから、手探りじゃないですけど、次のアルバムでは今までにない要素というか、聴いた人に驚いてもらえるようなものにしたいなというのはありましたね。この期間に出したシングルもアルバムには入っているんですけど、いろいろと舵取りの方向を塾考していた2年だったかもしれないです。
──シングルとして発表した「NEW ERA」や「夜間航路」は、次のアルバムの全体像をどうするか考えながら作っていたときに生まれたと。
岸本:シングルはアルバムには入れる気ではなんとなくいたんですけど、そこは結構出たとこ勝負というか、おもしろい曲ができたから出してみようっていう感じではあったんですよ。その辺りは時代の流れというか、サブスクでシングルを出したりとかも今までやっていなかったから、ちょっとやってみようかっていう。そこはアルバムのヒントになったと思います。
カワイ:あの2曲で、エレキベースとかエレピの音色を開放したんですよ。じゃあアルバムにはそういう要素をどんどん取り入れてみようって、制約の壁を取っ払ったというか。
岸本:「NEW ERA」とか「夜間航路」を配信で出したときの感触もよかったんですよ。そうやっていろいろ試しながらアルバムの構想が練れるというのは便利な時代になったし(笑)、ジャズのピアノトリオのスタイルにこだわらなくてもいいやというところは、今作はおおいにありますね。
fox capture plan・カワイヒデヒロ
──あと、ボーカリストを迎えたコラボ曲を作ったことが今作に与えた影響って、結構大きかったりします? foxは元々メロディアスでキャッチーなフレーズが多かったですけど、そこがより際立っている曲が多い印象を受けて。
岸本:「不可思議のカルテ」は、カワイくんが“青ブタ”(アニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』)のED曲として作った歌モノをアレンジしているんですけど、そこは今まで挑戦していなかったことでもあるし、今回のタイトルトラックっぽい「Discovery the New World」は、かなり歌モノを意識して作りましたね。僕はJABBERLOOPとか他でも曲を作ってますけど、foxの場合はピアノじゃないと再現できないようなメロディーみたいなものをコンセプトにして作ってはいたんですよ。ただ、今回は歌や他の楽器で表現できるようなメロディを作っていたところはありましたね。そういう変化は自分の中であったかもしれないです。
──カワイさんとしても、歌モノを作ったことによって、いつも以上にメロディアスであることを考えられたりしました?
カワイ:歌の人とやり取りする中で、呼吸の間を意識していたところはあったんですよ。楽器の場合って、それこそピアノだったら息吸わなくていいから無限にメロディを続けられるけど、やっぱり人間の声とか金管楽器って、息を吸う間が必要じゃないですか。その間をちょっと入れてみたというか。そこを意識してメロディを作っていたところは強いかもしれないです。
──井上さんとしては、2人が作ってきた曲に対してどう臨みました?
井上:なんでも開放する雰囲気がレコーディングのときにはあったので、たとえばドラムを重ねたり、部分的に録ってみたり、結構時間をかけていろんなことを試したりはしてましたね。
岸本:今回のレコーディングは時間かかったね。ワンテイク録ってもしっくりこないなと思ったら、違うドラムパターンを入れてもらったりとか。リード曲の「PRDR」も、いろいろ試したんですよ。それこそドラムを重ねてみたりとか。でも、試行錯誤した挙句、なんか違うよねって。
井上:それで結局最初のストレートなやつになったりとか(笑)。普段はレコーディングにあんまり時間をかけないんですよ。レコーディングって、あくまでもそのときの通過点の記録みたいなものだと思っているので。でも、今回はそういう意味ではいつもと全然違ってましたね(笑)。
カワイ:いつもは炒め物だけど、今回は煮込みみたいな。
井上:そうそう(笑)。
カワイ:今回はいろいろとトライアンドエラーが多かったですね。
岸本:そうね。いつもは3人で同時に録ることも多いんですけど、「PRDR」は3人別々で録ったんですよ。
井上:……そうだったっけ?
カワイ:もう覚えてない(笑)。
──(笑)。トライアンドエラーしすぎたゆえに?
井上:そうです(笑)。
カワイ:いつどこで何をレコーディングしたのか定かではないですね(笑)。
fox capture plan・井上 司
──ちなみに「PRDR」ってどういう意味なんですか?
岸本:僕が譜面に「PRDR」って仮タイトルで書いてたんですよ。“ポリリズムダンスロック”っていう意味で。
──ああ! なるほど。曲調にあわせて。
岸本:で、譜面を渡して、ちょっとデータ書き出してくるわって、もう一回ミックスルームに戻ったら「この「プルドゥル」ってなに?」って言われて(笑)。
井上:勝手にもう呼んでたんですよ、「PRDR」を“プルドゥル”って。
岸本:そこからタイトルいろいろ考えたんですけど、もうこれでいこうって。字面もおもしろいし。正式名称は、“ピー・アール・ディー・アール”です。
カワイ:僕らは勝手に“プルドゥル”って呼んでますけど(笑)。
──(笑)。でも確かに“プルドゥル”のインパクトを超えるのは難しいですね。
カワイ:そうなんですよね。なんか妙にキャッチーだし。
岸本:そういうところもアルバムのコンセプト的にあっているというか、今までつけていなかったようなタイトルにしたかったところもあって。「疾走する閃光」とか「衝動の粒子」みたいな流れにしようと思ってたんですけど、まあ、変え時かなと(笑)。
カワイ:変え時(笑)。
──あと、先ほどお話にも出てきた「不可思議のカルテ」ですが、こういうものすごく色気を放つ曲もオリジナルアルバムにはなかったですね。
カワイ:アニメの主人公が高校生なので、原曲はそこまで大人っぽくはしてなかったですけど、大人のエロさみたいなものを入れちゃおうかなと思って。この曲のリズムも何パターンか試したよね?
井上:そうだね。
カワイ:最終的にこういうジャジーヒップホップみたいなリズムが合うねっていうことになって。ストリングスもホーンも両方入れて、すごくリッチなサウンドになってますし、原曲と比べるとだいぶ違うので驚くと思います。
岸本:ただ、これをライブでやるときにどう再現するのか考えないといけないですね。1曲目の「Into the Spiral」と、11曲目「不可思議のカルテ」は、管弦フル稼動みたいな感じになっていて。たまたま冒頭と最後を締めくくる感じにはなったんですけど、作っている人が違うので、管楽器や弦楽器の使い方も対照的で。(岸本作曲の)「Into the Spiral」は楽器の派手さみたいな感じだけど、(カワイ作曲の)「不可思議のカルテ」は楽器本来の柔らかさみたいなものを表現したアレンジになってます。
──そして、恒例のカバーシリーズですが、今回はリンキン・パークの「Numb」です。2003年の曲ですが、これをチョイスした理由というと?
岸本:まあ……有名な曲なので(笑)。
カワイ:そういう理由だったんだ?(笑)
岸本:『COVERMIND』の後から2000年代シリーズを続けていたんですけど、UKが多かったんですよ。ミューズとか、コールドプレイとか、アークティック・モンキーズとか。なので、USのバンドでみんなが通っているようなものとなると、この曲かなって。アルバムとしてもキャッチーなものにしたかったので、カバーを選ぶときもそういう曲にしたかったんですよね。
井上:レコーディング中に決めたんですよ。この曲をやろうって。
岸本:この曲をレコーディングしたときのことはすごく覚えていて。これ、1テイク目のやつをそのまま使ってるんですよ。リハーサルもやってなくて。
カワイ:そうだ! 高崎にあるスタジオに泊まり込んで、朝から晩までレコーディングしてたんですよ。
井上:もう3日間みっちり。
──資料によると、2月26〜28日までやられていたそうですね。
岸本:その最終日に録ったんですけど、2月26日に大規模イベントの自粛要請が出て。この先どうなるんやろうっていう不安を抱えつつも、やっぱり自分たちにできることって音楽しかないかなって。まあ、良いことを言ってる風に話すとそういう感じなんですけど(笑)、でも、そういう純粋な気持ちが音に乗った感じはしてますね。この曲は盛ったアレンジにするのもアレやなと思って、シンプルにピアノトリオで仕上げてるし、そういうエモさみたいなものがパッケージングできたかなと思います。
fox capture plan
──ちなみに、今作の『DISCOVERY』というタイトルは、「Discovery the New World」から付けたんですか?
カワイ:いや、アルバムタイトルが先にありました。
岸本:その曲とリンクさせたいとは思っていたんですけど、今回は案を10個ぐらい出したんですよ。そのなかで、今回のコンセプトにも合うし、これがいいんじゃない?って。2年ぐらいかけて、いろいろ試行錯誤しながら新しい発見をしたり、音楽性も開拓できたりしたので、そういう意味を込めてこのタイトルにしました。
──前作の『CAPTURISM』は造語でしたけど、今作は比較的シンプルというか、他にも様々なアーティストがつけているものではありますよね。
岸本:実はこれまでのタイトルって、イエスとか、ピンク・フロイドとか、ナイン・インチ・ネイルズとか、過去にいろいろなバンドが出したものをつけることが多くて。今回の『DISCOVERY』も、ダフト・パンクから来てるんですけど、イメージ的に共通するものがあったというか。あのアルバムが出たのが確か2001年で、聴いたときに新時代の幕開け感がすごくあったんですよね。
──ああ、確かに確かに。その感覚すごくありました。今作はいつも以上に挑戦的な部分も多かったですし、「ジャズのピアノトリオのスタイルにこだわらなくてもいい」というお話のように、新たな扉を開いたところもあって、共通するものがあったと。
岸本:そういう裏コンセプト的なところも、実はありますね。タイトルをつけるのに手を抜いてるみたいに思われそうで言ってなかったんですけど(笑)。
──いえいえ、そんなことないですよ。そして、11月19日には東京国際フォーラムCにてリリースライブを開催されます。7月には配信ライブもされていましたし、先日、福井のフェスに出演されたというお話もありましたが、9ヶ月ぶりのワンマンということもあって、背筋が伸びる感じもあります?
岸本:9ヶ月か……。
井上:なんかそんなに経った気もしないですけどね。
カワイ:最後に人前でやったのが、都内では2月だったんですよ。久しぶりだから、初めてライブをやるぐらいの気持ちになっちゃってるんですよね(苦笑)。
岸本:今はスタッフ陣も含めて打ち合わせをしていて、一度セットリストを決めたんですけど、もう一回組み直そうということになって。久しぶりなだけであって、僕らもちょっと慎重になってますね。今回は、ツアーを廻って、ファイナルでバン!って打ち出すわけではないから、ちょっと一発勝負みたいなところもあるので。
カワイ:確かにそこはあるかもね。ツアーで曲が成長するところがあるけど、剥き出しのままやるというのは、やっぱり初めてに近いことなので。いまの段階で仮に組み上げているセットリストを見る感じだと、今回はこれまでのライブと構成もちょっと違うものになるんじゃないかなっていう気はしてます。
井上:ライブ感もあり、ショー感もあるようなものというか。結構作り込むところもあるので、これまでfoxのお客さんが見たことのないライブになるとは思いますね。
岸本:国際フォーラムCでやることは、1年以上前から計画していて、今回が過去最大キャパなんですよ。そういった大きい会場だからこその見せ方も、今回は考えてます。

取材・文=山口哲生 撮影=大橋祐希

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