明日海りおが音声ガイドでエスコート
 肖像画から英国王室の歴史を辿る『
KING&QUEEN展』

東京・上野の森美術館で開催されている『ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展―名画で読み解く 英国王室物語―』では、ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリーが所蔵する約90点の肖像画が展示される。スキャンダラスな愛憎劇を繰り広げたヘンリー8世から、時代を追い、現在のエリザベス2世まで、英国王室の歴史を辿りながら、一人ひとりの人物像に触れる構成だ。
本展覧会の音声ガイドを務めるのは、元宝塚歌劇団花組トップスターの明日海りお。明日海は音声ガイドで、肖像画が描かれた背景や人物の人となりを解説するだけでなく、時には人物の心情を本人の台詞として演じ、ドラマティックに紹介する。会場を訪れた明日海に、収録の感想、心に残った作品、そこから垣間見る、いまの思いを聞いた。
展示風景
■ゆったりエスコート、次第にこの世界観へ
──展覧会の感想をお聞かせください。
テューダー朝に始まり新しい時代まで、どのセクションも印象深かったです。これだけ古く貴重なものを、この距離で見られる機会はなかなかありません。絵の具の光沢や立体感、絵が描かれているカンバスの質感、額もそれぞれ違っていて。「一番気に入った作品は?」と質問されたら、選びきれなくて困ってしまうな……と思いながら、楽しく鑑賞させていただきました。
──明日海さんにとって初めての音声ガイドとなりますが、収録はいかがでしたか?
歴代国王のお名前など、普段は口にしない固有名詞がたくさん出てきます。馴染みのない方に伝わりやすいように、でも英国王室にお詳しい方にも自然に聞いていただけるように、あくまでもストーリーの中での聞きやすさを考えながら、読ませていただきました。
レコーディングのときに「音声ガイドは皆さまのお耳元からとても近いところで流れるもの」とアドバイスいただきました。展覧会のテーマが王室で、場所は美術館。皆さまをエスコートするように落ち着いた話し方から始めて、英国王室の世界観へ引き込んでいけたら……と考えました。
──『KING&QUEEN展』を楽しむには、歴史の知識が必要なのかな……と多少の不安がありました。ですが、明日海さんの音声ガイドのおかげで、英国王室の激動の歴史を辿るアトラクションのように楽しむことができました。
実際に会場で音声ガイドを聞いてみると「もっとこうしたい! もっとああしたい!」と、反省が生まれてくるのは事実ですが(笑)、これからいらっしゃる方々にも、音声ガイドでテーマパークのアトラクションのように楽しんでいただけたら嬉しいです。
──作品の解説だけでなく、何役も演じその台詞でドラマを再現されていましたね。10役までは数えていたのですが……。
2歳半の子どもから、死を間際にした女性、本当に怖い王様まで、様々な人物の言葉を演じることができました。これだけたくさん台詞があるのは、音声ガイドの中でも珍しいことだそうです。キャスティングしてくださった方の愛情を感じ、感謝し、私自身も楽しんでやらせていただきました。
明日海りお
──役作りのために、肖像画を参考にされたことはありますか?
あえて肖像画を探すことはしませんでしたが、思えば実在の人物を演じるとき、インターネットでお名前を検索すると、まず肖像画が出てくるんですよね。エドワード8世とか。その意味では、役作りの過程で自然と肖像画に触れていたと言えるかもしれません。ここには、お名前を検索したときに出てくる、その顔の本物があるんですね(と、周りを見渡す)。
──思い出に残る美術体験はありますか?
パリを旅行した際、たくさんの美術館を巡りました。ルーブル美術館は本当に広く、全てを見ようとしたら1日では無理ですよね。1点1点の素晴らしさもですが、貴重なものがこれほどたくさん残されているということに感動しました。それから、一緒に旅行に来ていた母親と美術館内ではぐれてしまって……。あまりに広く展示も多いので、はぐれた時間にもゆっくり鑑賞できましたし、なんとか連絡をとりあい、合流した思い出があります(笑)。
──パリといえば、ベルサイユ宮殿もありますね。
ベルサイユ宮殿では、天井から大きなロブスターが吊られている展示を見ました! アメリカ人の現代美術家の方とのコラボレーションだったそうですが、その事前情報なく拝見したので、びっくりしました。歴史ある建物で、伝統を大切にするのと同時に、時代と時代を融合させて。思い切ったチャレンジに刺激を受けました。
『ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展―名画で読み解く 英国王室物語―』音声ガイド・明日海りお
■伝統があり、ファミリーがいる
──展示を振り返り、パッと思い出す肖像画はありますか。
迷いますが……、《エリザベス2世》(2007年撮影、アニー・レイボヴィッツ、864cm✕1244cm)です。宮殿の中で撮影された写真で、色合いが何とも言えません。画面のほとんどは黒とゴールドだけなのに、それとも黒とゴールドだけだからなのか、空間の重み、宮殿の厳かな雰囲気が表現されていると思いました。
白髪のエリザベス女王からは、美しさと同時に、一国のトップであるオーラ、大きなエネルギー、国民全員を包み込む愛を感じられます。この1作品の魅力はもちろん、展覧会全体を鑑賞し、歴史の重みを感じてきたからこその印象かもしれません。
左:《エリザベス2世》 右:明日海りお
──本展覧会では、英国王室が「ファミリーの歴史」と「一人ひとりのドラマ」の2つの面から語られています。現在そのトップに立たれているのがエリザベス2世です。宝塚という世界のトップに立たれた経験と、重なる思いがあるのでしょうか。
あまりに世界が違いますので、共感というのはおこがましいのですが、少し通じるところがあるかもしれません。宝塚の世界にも、先輩方が築かれてきた伝統があります。皆が本当にファミリーでありつつ、一人ひとりが自分の人生をかけて、自分の責務を果たしています。自分がおかれている世界にいる方たちや、その世界を愛してくださる方々に対しても愛情を持ち、トップに立つということ。その愛情や感情は私も感じています。
──そのような世界で過ごされた16年を思うと、お一人の活動に寂しさを感じることもあるのでは?
宝塚歌劇団を卒業してからの1年、何をするにも勇気がいり、寂しく思う気持ちもどこかにありました。でも先日、後輩たちの舞台を観に行ったんです。すると、そこには何も変わらず、きらきらとした宝塚がありました。見たら余計に寂しくなるかと思ったのですが、「変わらずそこにある」、そのことにとても安心し、たくさんのパワーをもらい、元気になりました。いまは全てがチャレンジです。何をするにもチャレンジの気持ちで、飛び込んでいます。
──読者の方へ、メッセージをお願いします。
このご時世に、海をわたってきた貴重な肖像画たちです。英国王室の歴史と愛の物語に、現実の世界からひととき離れて、リフレッシュしていただけるのではないでしょうか。心を込めてガイドいたしましたので、芸術の秋、皆さまぜひこの機会にご覧ください。秋に間に合わずとも、1月11日まで開催しています。お待ちしております!
展示風景
『ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展―名画で読み解く 英国王室物語―』は、東京・上野の森美術館にて、2021年1月11日(月・祝)まで開催。明日海りおによる音声ガイドは、収録時間約35分で、料金はおひとり様1台600円(税込・予約不要)。会場の受付で貸出を行っている。
文=塚田史香 撮影=大橋祐希

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