ピアニスト野田あすか、1年ぶりのラ
イブリサイタルへ「笑顔、そして"知
らない自分"に出会うコンサートに」

22歳で自らが広汎性発達障害であることを知らされたピアニストの野田あすか。

かたちを認識することが苦手で、人の顔も判別しづらい。聴こえ方や見え方が人と違うために、生きること自体に困難を感じ続けてきたという。
そんな逆境を乗り越え、みずみずしい感性と強い意志を持って自らの創作・作曲活動に励み続ける野田。来る2020年11月14日(土)には、コロナ禍の自粛期間を経て、東京・浜離宮朝日ホールで、1年ぶりにライブリサイタルが実現する。
生誕250周年を記念してのベートーヴェン 悲愴ソナタ全曲と、待望の新曲披露を兼ねた多くの自作品のライブ演奏に期待も高まる。
――舞台で演奏するのは、実に1年ぶりということですね。今、11月14日の浜離宮朝日ホールでのライブ公演を前にしてどんな心境ですか。
私はお客さんの拍手が大好きなんですが、(コロナ禍の自粛期間中には)それが聴けなくなって、今までよりも、もっと拍手が聴きたいな……、寂しいな……と、ずっと思っていました。久しぶりにお客さんの拍手が聴けるのが何よりも楽しみです。
――今回のリサイタルでは、まず前半にベートーヴェンのソナタ「悲愴」を演奏されますが、漫画『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子)の主人公がいつも家で弾いていた曲ということもあり、ファンはとても楽しみにしていると思います。
生きていたらベートーヴェンは今年で250歳なのに、どこの国もお誕生日を祝ってあげられなくて……。ベートーヴェンの肖像画を見ると、いつも以上に険しい顔をしているように見えるんです。まるで、「どうして僕の250歳の誕生日を祝ってくれないんだ~」と言っているように感じます。だから、一生懸命にベートーヴェンの心に届くように弾きたいです。
野田あすか
――ベートーヴェンという作曲家は好きですか?
実は、あまり好きじゃないです。なぜなら、顔が怖いし、曲も大きな音から急に小さい音になったりする箇所が多いので、ちょっと精神的に不安定だったのかな、とも思うからです。
――逆に、肖像画の印象や曲なども含めて、「この作曲家大好き!」 という人はいますか?
シューマンです。
――確かに、肖像画を見ると優しい顔をしていますね。シューマンの曲は、どんな曲が好きですか?
トロイメライ」です。とても、優しいですね~。
――あすかさんは、ご自身でたくさん曲も書いていますが、シューマンの他にも、最も影響を受けた作曲はいますか?
ロシア人の作曲家が好きです。チャイコフスキーとかプロコフィエフとか…。
きっと、ロシアは冬とても寒いと思うんですが、みんな一生懸命、「寒くないぞ」 と思って負けないように頑張っているから、曲がとても深い感じがするんです。私も、そのように深い曲が書けるといいなと思います。
――今回のリサイタルでも、後半はあすかさんの自作の曲がたくさん演奏されます。新曲「天に続く道」は、今回の演奏会で初めて演奏されるということですが、どのような曲なのでしょうか。北海道の知床を訪れた時の印象と伺ったのですが。
はい。そこに、「天に続く道」 という観光名所があって、その道がまっすぐな上り坂なんです。私が訪れた日は天気が悪くて、お空が真っ白で、雪も降っていたので道も、あたりも真っ白でした。だから、空と上り坂の頂点が一直線につながっているように見えました。
野田あすか
私は飛行機に乗るのが揺れるからとても怖いのですが、雲の上に行くといつも晴れていて、少し気持ちが楽になります。なので、あの天に続く道の一番上も絶対に晴れているんじゃないかな、と思ったんです。そうしたら、少しワクワクしてきて、とても楽しい気分になりました。その時の気持ちを表した曲です。
――明るい希望に満ちた曲なんですね。今年は、あすかさんの地元、宮崎県で開催される 「国民文化祭」 と 「全国障害者芸術・文化祭」 のPRアンバサダーとして、PRソング「ココロノイロ」の作詞と作曲を依頼されたそうですね。この作品の詞や音楽を通して、あすかさんは、どのようなことを伝えたかったのですか?
私は子供の頃に、「みんなには色がついているけれど、自分は透明人間だ」 と思っている時がありました。無視されるから「誰にも見えてない」 と思っている時があって…。だから、「みんな、一人ひとりに、ちゃんと色がついているんだよ」 ということを伝えたかったんです。
あと、私たち、演奏者は舞台の上でライトを浴びているけれど、お客さん側は、演奏家が目立つように客席を真っ暗にしてくれていますよね。だから、もしも、お客さん一人ひとりに色がついていたとしたら、きっと、ステージからも、素敵な景色が見られるな、と思ったんです。そういう風に、様々な色を持った人たちがたくさん集まって、みんなで一つのステージを完成させる、というイメージを作りたくて、ココロノイロ という作品にしました。
野田あすか
――あすかさん自身、ご自分の “心の色” を例えると何色ですか?
私の心の色は、小さな時から黄色と思っていたのですが、この曲を練習しているうちに、様々な色に変わるんだな、ということを教えてもらった気がします。
――どんな時に最も色が変わりましたか?
とても嬉しいと思った時です。黄色がキラキラに変わって、金色に思えました。
――ココロノイロ の詞の一説にあるくだり(下記)が特に印象的に思えました。あすかさんの心の言葉が強く感じられたる一説だと思うのですが、特に最後の一説の 〈そんな自分にサヨナラしたい〉 と思う気持ちは、どのような思いが込められているのでしょうか。

届け 虹の向こうへ (ココロノイロ歌おう)
進め 風に向かって
泣きそうな空から 光が差し込むように
明日(あした)へ 踏み出そう
“本当のことを言うとね とても怖いんだ”
“いつも誤魔化してた” (Yes  or No・・・)
“本当のこと言うとね 頑張れなんて聞きたくない”
“本当のこと言うとね そんな自分にサヨナラしたい”
明日(あした)へ 踏み出そう
――「ココロノイロ」より

作詞・作曲を依頼された時に 「共生」 というテーマで作ってくださいという提案があったのですが、私は小さな時から、みんなと一緒に何かするのも嫌だし、共生の意味もわからない……、だから、一生懸命に自分の中で想像して書いてみたんです。
そして、そこに、〈本当はそういうことをするのは怖い〉 〈頑張れなんて言われたくないし〉 という私自身の本音を書きました。
でも、この曲は、絢香さんやYuiさん、家入レオさんなどをプロデュースされた西尾芳彦さんや多くのすばらしい共演者のみなさんに助けて頂いて、とても前向きな思いで作ったので、私の心の中では、本当は 〈みんなと同じに、共生ということをわかってみたいんだ〉 という気持ちでいっぱいだということも伝えたかったんです。だから、「そんな(今までの)自分にサヨナラしたい」 と書きました。
――ポピュラーソングは、今回初めて作曲されたと伺いましたが、ポピュラーの作曲は、クラシックとは違う難しさがあるのでしょうか。
ポップスは、ドラムとギターなど、後ろで演奏する人のことを考えての曲作りだったりとか、あと、テンポをあまり揺らさない中で、音量だけで表現したりとか、そのような点がクラシックのピアノ曲と違うんです。今までクラシックで私が作ってきた作品は、自分自身で思うように、自由に、気ままにつくってきたので、そのような点が少し難しく感じられました。
野田あすか
――最近では、SNSやオンラインを活用して、ファンのみなさんと積極的につながっていらっしゃいますね。9月にはご自身初のオンラインコンサートを実施、現在配信中のデジタルシングル「野田あすか with Friends 『Happy Together ~いつか見たあの場所へ~』」では、SNS上でミュージックビデオをみんなで作ろうと投稿を呼びかけています。あすかさんにとって、ファンのみなさんとはどんな存在ですか? ファンのみなさんへ、メッセージをお願いします。
私にとって、(ファンのみなさんは)次に頑張る元気をくれる大切な存在です。
今回の東京のリサイタルでは、ベートーヴェンのソナタ全楽章を演奏することもありますし、自分の新曲も演奏するし、聴きどころ盛りだくさんの舞台になると思うので、行くか行かないか迷っている方がいたら、絶対に来てください!
――あすかさんの中では、どんな色のコンサートになったらいいなと考えていますか?
みんなが来た時よりも笑顔になってくれるコンサートと、自分の知らない自分に気づいてくれるコンサートになったら嬉しいです。
取材・文: 朝岡久美子

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