[Alexandros]川上洋平、ニューシング
ル『Beast』×映画『ドクター・デス
の遺産-BLACK FILE-』徹底解明イン
タビュー・後編

ヘビーなロックを軸に、[Alexandros]ならではの様々なジャンルがおもしろいように展開される会心の1曲「Beast」。綾野剛と北川景子が出演する映画『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』の主題歌であり、SPICEでの映画連載「ポップコーン、バター多めで PART2」でもお馴染みのボーカル&ギター川上洋平の映画愛が爆発した曲でもある。

久々のシングル『Beast』のリリースと映画『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』の公開を記念した「ポップコーン、バター多めで PART2」番外編・前後編インタビュー。後編は、映画主題歌にかける思いや新たな挑戦曲「Vague」、そしてデビュー10周年について、さらに川上洋平が語ります。
――[Alexandros]と映画のコラボレーションというと、『明烏 あけがらす』の主題歌の「ワタリドリ」から始まって、「今まで君が泣いた分取り戻そう」や「Mosquito Bite」だったり長い歴史がありますが、映画好きの川上さんからすると映画のタイアップというのはどういう位置づけなのでしょうか?
もちろん全部のお仕事は全力でやるんですけど、やっぱり映画は自分がすごく好きですからね。普通に映画館に行って映画を観ると、そこで自分が主題歌をやらせてもらった映画の予告編が流れてきたりするじゃないですか。それこそこの前『浅田家!』を観に行ったら、『ドクター・デス~』の予告が流れて。正直僕はテレビはあまり観ないので、CMは自分の曲が流れてる実感がないんですけど、映画はほんと自分の生活の一部だから嬉しいですよね。
――川上さんにとって、印象深い映画主題歌というと?
映画本編に感動してる状況で、エンディングで流れた曲がそのままの気持ちを引っ張ってくれると「めっちゃ良い曲!」って思いますよね(笑)。例えば、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』のBUMP OF CHICKENの「花の名」とか、『百円の恋』のクリープハイプの「百八円の恋」とかすごく良かった。あと、『不能犯』で流れたGLIM SPANKYの「愚か者たち」も良い曲だなって思って。やっぱり主題歌の立ち位置って、最後にいろんな気持ちを浄化してくれるっていうか。エンドロールが流れて、キャストやスタッフの名前が出てきて、「あ、これは作られたものだったんだな」って現実に戻って寂しくなったりする。でも、大事な感覚を落とさないでちゃんと残してくれるのが主題歌だと思うんですよね。それによって、「今日も頑張ろう」とか、「大事なことを学んだな」ってちゃんと肯定してくれるし、映画館を出る時に鼓舞してくれるようなツールだと思う。たまにホラー映画とかでエンディングで何も流れないと、僕気まずいんですよね(笑)。だから自分も、映画の曲のオファーをいただいて「エンドロールで流れます」って言われた時は、やっぱりそこを想像して作るんですよね。自分自身、週に1、2回体感していることだし。
俺、正直「Beast」のことは劇伴っていう意識も結構強く持ちながら作ったんですよね。こういうスピード感とスリルのある映画って、例えば『007』シリーズとか、『ミッション:インポッシブル』シリーズの劇伴みたいに、印象的なフレーズが必要だなって思ったので、「Beast」はリフが立ってるんですよね。エンドロールだけじゃなくて、劇判でガンガン使ってほしいなって思って。そもそもいつかそういうことやってみたいなって思ってますしね。
――映画を観る時も当然劇伴のことも意識されてますけど、好きな映画関連の作曲家というと?
日本だと、その『三丁目』シリーズとかをやられてる佐藤直紀さんの楽曲とか、CMで流れただけでも泣いちゃうくらい、旋律が好きなんですよね。海外だと、ハンス・ジマーとかヨハン・ヨハンソンとか、『TENET』で初めてノーランと組んだルドウィグ・ゴランソンの劇伴も良かったし。僕、一番最初に観た映画が『バットマン』なんですけど、その劇伴がダニー・エルフマンで。ティム・バートンの作品の劇伴を多くやってる方ですけど、その中でも一番好きなのは『バットマン』の音楽で。やっぱり記憶に音楽も鮮明に残りますよね。だから、劇伴やってみたいんですよね。もうできてる作品じゃなくて、ゼロから一緒に作ってみたいなって思います。俺は間違いなくそういうことができると思うから。
■「Vague」は究極なまでに音楽先行の歌詞を作ってみたいなって
――『Beast』のシングルの2曲目に入っている「Vague」は、直訳すると「曖昧」という意味で。喪失感の中で、幻影に揺れるような曖昧な心境が歌われていて、それは「Beast」の「正義か悪か」みたいな明確な答えが出せない、言わば曖昧な状態とリンクしてるんでしょうか?
ああ、確かに言われてみればそうですね。この曲は、音メインの曲を作りたいなと思ったんですよね。音に引っ張られるような言葉をピックアップして並べたいなって。僕は作詞は詞先ではなく、メロ先なので。メロディを作ってから歌詞をあてはめて、意味を成り立たせる流れが多いんですけど、何ならこの曲は意味が成り立たなかったとしても、究極なまでに音楽先行の歌詞を作ってみたいなって思って、特にメロディをメインにするような歌詞作りを心がけました。そこから始まったから、「Vague」「曖昧な」っていうのは最初からテーマとしてあったんです。
この曲はラブソングなのか、昼の歌なのか、夜の歌なのかっていうのも曖昧だったりして。そういう風に感じていただけたら、それが正解だと思うんです。久々のB面だし、実験的に作れたらいいなって。それを徹底的にやっちゃうと意味が全然わからないんだけど、こういう曲の雰囲気でメロディで歌詞だから、「何となくわかるかも」みたいな。
――人力ブレイクビーツ的なテクニカルでグルーヴィーな曲で、新しいスタイルですよね。
確かに。リアド(偉武/サポートDr)が頑張ってくれました。ポストロック的なアプローチの雰囲気もあるし。
――この曲を聴いて、改めて[Alexandros]からは何が出てくるかわからない、引き出しの多さを改めて感じたんですが、最近は特に精力的に、たくさんの曲を作ってますよね。
めっちゃ作ってますね。ありがたいことに、いろんなお話もいただけてるので。でも、本当にたくさん作ってるんで、割とスピード感と瞬発力という感じで、自分の引き出しと改めて向き合ったりはしてないんですけど。
――例えば、1年間曲作りだけの期間があったとしたら、またその作り方は変わってきますかね。
でもそういう期間は嫌ですね(笑)。やっぱり仕事があるのが嬉しいから。例えば俺が画家だとしたら、「こういう感じの絵を描いてください」って言われないと嫌なタイプだと思うんですね(笑)。だから、タイアップは好きなんです。チャンネルが色々と僕の中にあって、職業作家的な側面もあると思っていて。タイアップ作品のオファーが来ると、その部分が刺激されるんですよね。例えば、アンディ・ウォーホルは自分の作品を広告的な位置づけで作ってましたけど、そういうモードの時も全然あるんですよね。
音楽好きの人たちって、アーティストがゼロベースからピュアに自分の気持ちを歌ったものを良いとする傾向があったりして。俺自身、リスナーとしてはそういう風に思ったりもするんだけど。でも何が良い曲を生む刺激になるかわからないし、何が種になるかわからないから、いろんなトライをするっていう意味でも、タイアップは良いと思うんです。もちろん何も考えずにゼロベースから作る曲もあるし、いろんなケースがあって。ひとつ言えるのは、間違いなく全部ピュアに作ってるんですよね。だから、どれも安心して楽しんでほしいなと思う。商品名が入ってるCMの曲だって作品なわけで。♪ロート、ロートロートっていうロート製薬の曲とか、めちゃくちゃ名曲じゃないですか(笑)。あの曲にも命が宿ってて、血が通ってるんだよって。ラジオでDJの方が交通情報をしゃべってる裏で流れてる音楽も、ただのBGMではないわけで。コーネリアスさんが作ったTOKYO FMのジングルもすごく好きだし、どんなものであれ曲は作品なんですよね。ブライアン・イーノのWindowsの起動音とか、Netflixの起動音とか。だから、広告的な意味合いがある曲のことも大切に思ってほしいなって思ってます。
■どんな環境になったとしても、自分の頭があれば音楽は作っていける
――今年[Alexandros]はデビュー10周年で、コロナによって大きく予定を変更せざるを得なくなってしまいましたが、2021年の1月には[Alexandros]と縁の深い国立代々木競技場第一体育館で10周年の締めくくり且つ11周年のスタートとなる2DAYSのライブがあり、いよいよベスト盤『Where's My History?』がリリースされます。
そのライブで、やっとコロナによって宙ぶらりんになっていた(庄村)聡泰(Dr)くんの勇退が実現するんですよね。やっと彼が門出の日を迎える。10年間彼のことを愛してくれたファンの皆さんに対するセレモニー的なものを考えています。観れない人もいると思うけど、そういったものを届けられるようなものにしたいなと。もちろん演奏はできないんですけど、何らかの形で参加してもらいたいなと思っているので、楽しみにしてほしいなと思います。あとは、この10年だけじゃない、これからの[Alexandros]を見てほしいなと。その組み合わせを楽しめるような、デカいことをしたいなと思ってます。バカみたいなことするのもありだなって。正統派のライブも多いバンドなので。
――6月の『ディスフェス』(THIS SUMMER FESTIVAL)はある意味バカみたいな対バンでしたけど(笑)。
そうですね(笑)。他のバンドを呼べないから、うちらを呼んだみたいな(笑)。あれはあの時だからこそだと思うし。リモートで作った『Bedroom Joule』も、予定していたベストアルバムもツアーも一旦休止にせざるを得なくなって、でもそのまま何もしないのは嫌だなと思って。「こういう時にしかできないものをやる方向に切り替えたほうがいいんじゃない?」ってメンバーやスタッフに提案して作ったわけですけど。あれもそもそも、インスタライブで既存曲のアレンジやったら、「これおもしろくない?」ってノリが発展したものであって。全部それぞれの自宅で作ったから、制作費もほとんどかかってなくて、売り上げは寄付して。
今思うと、あの作品によって、どんな環境になったとしても自分の頭があれば音楽は作っていけるって思いましたよね。それとやっぱり、いろんなことができなくなって休みになってしまっても、なんかやりたいっていう気持ちが全面に出ちゃうバンドなんだなって(笑)。
■壁にぶつかった時にどういう立ち振る舞いをするかが大事
――「Beast」だけでなく、新しい動きとしては、東京スカパラダイスオーケストラのゲストボーカル曲「ALMIGHTY~仮面の約束 feat. 川上洋平」やSUBARUのCMソング、あと、来年5月に公開される映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の主題歌の発表も控えています。この状況は、[Alexandros]の何によるところが大きいと思いますか?
でも、全然まだまだだと思いますけど。外からの話はコントロールできないし。自分たちはずっと曲を作り続けていて、その道の途中にそういうありがたいお話があるっていう感覚ではあります。もちろん落ち込むことはあるけど、次の日になったら、生きてるし、おもしろいことやって楽しもうよっていう気持ちが湧き出てくる。そういう気持ちを常に持ってるのが大事なのかもしれないですね。うちら、意外とサボらないんで(笑)。サボるの好きなんだけど、いつの間にか仕事しちゃう。ずっと作り続けてるとどっかで爆発しそうになっちゃうから、1年に1回1ヵ月くらいドーンと休みたいんですけど(笑)。やっぱりインプットする時間を体が定期的に求めてるとは思うし、息抜きは絶対大事。でも、基本的にずっと動いてるのが好きな性格で良かったなと思ってます(笑)。
――やるべきことをしっかりやって自分たちを強化し続けてきた歩みが実りを呼ぶんだなと思うんですが、それについてはどうですか?
負けたくないというか、ねじ伏せられたくない。もちろん、世界中がとても大変な状況ではあるんだけど、自分たちなりに楽しんでしまおうっていう感じですね。このバンドは逆境が多かったわけで。でも、その都度乗り越えてきて。やっぱり壁にぶつかった時にどういう立ち振る舞いをするかが大事だなって思いますよね。強いエネルギーをどこに持っていくかっていうと、そこの部分だよなって。
※インタビュー前編はこちらから
取材・文=小松香里
撮影=YAMA 山添雄彦 ヘア&メイク=坂手マキ(vicca)

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