中村佑介インタビュー 『中村佑介展
BEST of YUSUKE NAKAMURA』開催でこ
れまでのキャリアを振り返る

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのCDジャケットや、小説『謎解きはディナーのあとで』の書籍カバーを手掛けたことでも知られるイラストレーター・中村佑介の展覧会『中村佑介展 BEST of YUSUKE NAKAMURA』が、東京・水道橋にあるGallery AaMo(ギャラリー アーモ)にて開催されている。この展覧会は、2017年に活動15周年を迎えたことを記念して大阪・池袋・名古屋・福岡を巡回した『中村佑介展』に、描きおろしも含む最新作を追加。学生時代の作品から最新作までが揃い、これまでの仕事を一堂に振り返ることのできる過去最大規模のものとなっている。

CDジャケットから本の表紙、お菓子のパッケージから音楽の教科書まで、幅広い分野で活躍している中村は、どのような姿勢で創作に向き合っているのか。イラストレーターという仕事に対するこだわりや姿勢について語ってもらった。
『中村佑介展 BEST of YUSUKE NAKAMURA』展示風景
中村佑介の仕事を選ぶ基準とは
――この展覧会で中村さんのお仕事を見て改めて実感しましたが、本当に多岐に渡る分野でお仕事されていますね。どのような基準でお仕事を選ばれているのですか。
僕の過去の仕事を指して、「同じような感じでお願いします」と依頼してくるものは全部断っています。それって面白くないですから。イラストのギャラってみなさんが想像するほど高くないので、仕事を選ぶポイントはギャラだけじゃないんです。担当者さんがどれだけ熱意を持っているかとか、どれくらいプロジェクトにコミットできるかを重要視します。もちろん、スケジュールの問題でお断りしないといけない時もありますが、すごく面白そうだと思ったらスケジュールを詰めてでもやりますね。
――一度やったようなことを再度やりたいとは思わないということですか。
いいえ、そういう意味ではなくて(笑)。そう言ってくる仕事は特別な意味を持っていないということです。何かの真似をして消費活動させようとしているわけですからね。同じ制作量で同じギャラで同じ規模なら、より意義を感じる方を選ぶという話です。また、担当の方と直接やり取りできて作っていけるプロジェクトは絶対面白いですし、担当者の裁量に任せている会社は絶対に良い会社なんですよね。そうじゃない会社との仕事は経験上、大抵当たらないです。純度が低くなり商品や作品の熱が冷めて伝わるのだと考えています。やはり、仕事するなら商品がヒットしてくれたほうが僕としても嬉しいですしね。
『中村佑介展 BEST of YUSUKE NAKAMURA』展示風景
――中村さんは、たとえばロッテさんのような大企業ともお仕事されていますけど、そういう面白さは企業の大小に関係ないわけですね。
そうですね。ロッテさんとのチョコパイの仕事は面白かったです。代理店やアートディレクターすら挟んでおらず、担当の方がプロジェクトの責任を持ってるんです。「上司に確認します」がなく、その場で判断してもらえるというか。こんな大きな規模の仕事なのに、すごいな……とこちらが気を遣うほどでした(笑)。ビックリマンや小梅ちゃんもそうですが、元々アートワークやパッケージを重要視している会社なんだなぁと再認識しました。ふたつとも子供の頃から大きな影響を受けたものでしたので、僕にとっても夢でした。
――イラストレーターとして商品パッケージに携わるにあたり、一番大事にしていることはなんでしょうか。
嘘はつかずに売上を上げることを考える、ということです。消費者に対して、過剰に「これ、良いものですよ」と謳ったり、辛いものを甘いと言ったりするようなことはしないようにしています。よく映画の宣伝などで、本当はホラー映画なのにロマンス映画っぽいポスター作ったりすることがあるじゃないですか。それも一つの手段かもしれませんが、僕は名前を出して仕事している立場ですから、そういうことだけはしないようにと決めています。
『中村佑介展 BEST of YUSUKE NAKAMURA』展示風景
クリエイティビティについて考えたことはない
――中村さんは、イラストレーターという肩書にこだわりを持っていらっしゃいます。それは、やはりアーティストとは違うのだという意識の表れでしょうか。
日本で言われる、大きい意味でのアーティストには含まれると思いますが、いわゆる現代アーティストではないという感覚です。こういった原画展をやると、ややこしい立ち位置に見えますが、基本的に展覧会が活動の中心ではありません。何らかの商品のパッケージを作って、それこそ店頭で毎日、持って帰れる展覧会をしてるのが自分の仕事だと思っています。
――ご自身の中から湧き上がる何かを表現したいという欲求はあまりないのですか。
絵においてはないですね。何かお題を出されてそれにどれだけ上手に応えられるかが楽しいだけですから。学生の時の作品も「どんな絵を描いたら仕事をもらえるようになるだろう」と考えながら描いていました。自分の中から湧き上がる何かを表現しようと思ったら、もっと直接的に喋れば事足ります。ラジオ番組をやっているのはそういうことなので、わざわざ絵という間接的なコミュニケーションツールでそれをやろうとは思わないです。
中村佑介
――基本的にイラストレーターとは受注仕事で、クライアントのイメージや商品の良さをイラストとして伝えるのが仕事だと思いますが、こうして展覧会で中村さんの仕事を一望すると、確固たるセンスや世界観を感じさせます。この受注仕事におけるクリエイティビティとは中村さんにとってどういうものなんでしょうか。
考えたことないですね。そこはあまり重要だと思っていません。僕の仕事を見た人がそれぞれに何か共通点を見出してくれれば、それがクリエイティビティだと思いますし、僕が意識することではないです。僕は、ひたすら商品や作品の良さがどうすれば伝わるかしか考えていませんし、その手段として絵であるだけです。なので、その過程の取捨選択が、おそらく作家性やクリエイティビティと映っているのかなと。あまり作家としての喜びとか創作の喜びには重心を置いていないんですよね。
――今回の描きおろしに関してもそれは同じでしょうか。キービジュアルでは日本列島を犬に見立てていますね。
展覧会のキービジュアルというのは、その人がどんな絵を描くのかを一目でわかるものでないといけないので、世間が思う僕のイメージはこういうものだろうと思って描きました。なので、クライアントが自分になっただけで、同じです。僕が大学生の時は、イラストやデザインは西洋的・近代的なイメージこそが至高と言われる時代でしたが、僕は古くて和風なものでも、格好よく、あるいは可愛く仕上げられるはずだと思っていましたから、これは言うなれば、18年の僕の活動をシンボリックに表現したものですね。
『中村佑介展 BEST of YUSUKE NAKAMURA』展示風景
まだまだ途上、もっと大きな仕事ができるようになりたい
――中村さんは、イラストレーターという職業をもっとメジャーにしていきたいと常々おっしゃっていますが、活動されてきたこの18年で、社会の中でイラストレーターの立場はどのように変わったと実感していますか。
イラストレーターの社会的認知が上がったのか、下がったのかはわかりませんが、ライトノベル以外の一般書籍や、アニメ関連ではないCDジャケット等の仕事でも、コミック文化から影響を受けた若いイラストレーターが手掛けても良いんだ、という価値観をこの18年で少しは世間に浸透させられたかなと思います。
――音楽の教科書など、いわゆる“お堅い”とイメージされるお仕事などもしてきた成果が見えてきているのですね。
そうですね。でも、まだまだ途上です。もっとお堅いところにコミットしていきたいですね。例えば、東京オリンピック関連のお仕事は声がかかりませんでしたから。以前担当させていただいた、さだまさしさんのCDジャケットや音楽の教科書などのように、そのためによりターゲット層の広い場へもっとアプローチできる絵を描けるようにならないといけないですね。​
――今後、こういう仕事をしたいという展望はありますか。
まだコミック文化出身のイラストレーターが携わっていない、より大きい、よりお堅い仕事をクリアできる存在になりたいです。吹田市と宝塚市の仕事は担当したことがありますから、大阪府から仕事が来たら、また一つ階段を上れるかなと思っています。自分の絵が、性別や年齢、文化圏の違う人たちにまだ伝わらないのはなぜか、ひとつずつ考えながら掴んできた18年間でしたが、まだ掴みきれてない部分があるので、これからもその姿勢を変えずに進んでいこうと思っています。
『中村佑介展 BEST of YUSUKE NAKAMURA』展示風景

『中村佑介展 BEST of YUSUKE NAKAMURA』展示風景

文=杉本穂高 撮影=大橋祐希

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