「〝心の歌〟を見つけに来て」 混声
コーラスグループ・フォレスタ、オー
チャードホール公演直前インタビュー

日本の文化を歌い継ぐ混声コーラスグル-プ・FORESTA(フォレスタ)が2020年12月10日(木)、Bunkamuraオーチャードホールで『フォレスタコンサート in オーチャードホール』と題したコンサートを行う。リーダーの大野隆(おおの たかし・バス)、澤田薫(さわだ かおる・テノール)、小笠原優子(おがさわら ゆうこ・ソプラノ)、吉田明未(よしだ はるみ・ソプラノ)の4人に、意気込みを聞いた。
――12月10日にBunkamuraオーチャードホールでコンサートを予定なさっています。公演までもう少しですが、テーマなどを教えていただけますか。
大野隆:はい。毎年年末に行っているものなのですが、今年は11月に新しいアルバム『フォレスタ珠玉の名曲集 vol.1 ~あなたといるとき~』を発売したばかりなので、こちらに収録した曲を中心に歌っていきたいと思っています。オーチャードホールは憧れの舞台でもあるので、とても楽しみです。
――アルバムにはどのような曲が収録されているのでしょうか?
大野:フォレスタは、BS日テレで放送されている音楽番組『BS日本・こころの歌』が放送を開始した2003年に結成してからこれまで、唱歌や歌謡曲など長く愛されている作品を歌い続けてきました。アルバムには「琵琶湖周航の歌」や「踊り明かそう」など、僕らのファンの方になじみ深い18曲を選び新録したり、アレンジを変えたりして収録しています。
大野隆
――歌を歌い継がれていく中で、大切になさっているのはどのようなことですか?
澤田薫:歌詞ですね。フォレスタのメンバーは全員音楽大学を卒業しているのですが、僕も大学ではクラシックの歌い方を学んでいました。クラシックは声の響きを大切にしているのですが、フォレスタに入ってからは歌詞に重きをおくようになりました。例えば唱歌の「鯉のぼり」は『甍(いらか)の波』という歌詞で始まるのですが、最初は「甍って何だろう?」と意味を知りませんでした。でももっと作品の世界を知りたいと、プロデューサーなどに聞いて歌詞をひもといていきました。「甍」というのは、「瓦葺(かわらぶき)の屋根」のことなのですが、意味を知ると鯉のぼりがどのような場所で泳いでいるのかなど、自分の中に風景が浮かぶようになりました。
大野:僕も歌詞ですね。音大では、遠くに声を飛ばしていく「発声法」について学ぶのですが、フォレスタが大切にしていることは、情景が浮かぶ温もりある歌声です。「何を歌っても同じ」ということにならないよう、歌詞を理解してその世界を表現することに重点を置いています。
吉田明未:私は「みんなで1つの音色を作っているのだ」という意識を大切にしています。ソプラノ、バリトン、バスなど、それぞれのパートに分かれていますが、一緒に歌ったときに、個々が活かされながらも、表現したいものを伝えることができるように。歌う前には必ず、意思統一をはかっています。
吉田明未
小笠原優子:オリジナルの良さを大切にしながら、私たちならではのエッセンスを取り入れていくことです。ステージでは、お客様に喜んでいただけるように、歌謡曲を歌う場面もあります。普段は〝庭石〟のように動かずに、歌うことを心がけているのですが、往年のヒット曲を歌うときは「あぁ、懐かしいな」と感じていただきたくて、都はるみさんや小柳ルミ子さんなど歌い方が特徴的な方の曲を歌うときは、物まねを織り交ぜつつ歌っているんです。もちろん〝物まね〟で終わってはいけないので、最後には私たちならではの、ハーモニーを響かせて、お客様が楽しめるような工夫を考えています。
大野:そこが〝フォレスタ流〟ですね。
――コロナ禍で、聴き手の音楽への感じ方が変化していることを感じます。みなさんは歌われている中で、向き合い方が変わられた曲や歌詞はありますか?
澤田:自分の経験、お客様との触れ合いの中で、曲への思いは歌う度に変化していきますね。僕は岩手県出身なので、東日本大震災の復興支援曲として書き下ろされた「花は咲く」には、強い思いがあります。この曲を聴くと、いまもいろいろな思いがフラッシュバックしてきます。『なつかしい あの街』という歌詞に、もうその風景はないのだと思うとやりきれなくなったり。実は、地元のみんなに元気になって欲しいと、この曲を歌おうとしたことがありました。でも曲が流れたら、涙が出て歌えなくなってしまいました。「歌えなくなってしまう曲がある」。音楽のすごさを感じた曲でもありました。
大野:僕は「荒城の月」です。この曲は、フォレスタが初期から歌い続けているのですが、土井晩翠が歌詞に込めた「無常」の意味が、歳を重ねて分かるようになりました。若いときは「しみじみと低音で歌おう」と、若かったですし良い声が出ていたと思うのですが、18年経って声が枯れやすくなったり、疲れやすくなってきていることを感じていて、歌詞の『栄枯は移る世の姿』という言葉がしみるようになりました。
吉田:私は福岡県出身なのですが、フォレスタに入るまでは東京よりも北に行ったことがなかったんです。博多は雪がたくさん積もることもなかったですし、高い山もない。住んでいた場所は日本海に近かったので、川もなくて広がっていたのは「海」でした。なので、寒くて暗い冬を越えて、春が訪れる喜びを歌ったもの、雪が出てくる歌詞については、想像が追いつきませんでした。
――北海道や東北地方で、初めて雪を目にされたときはどんな気持ちでしたか?
吉田:初めて山に雪が積もっているところを見たのは2年前の盛岡公演(岩手県)のときでした。高い山も見たことがなかったので「あれが富士山かな?」と言ったら、「違うよ」とメンバーに言われて。テレビでしか見たことがなかったので、「こんなに寒いのか」としみじみ思ったことを覚えています。
小笠原:私は結婚して娘が生まれたことをきっかけに、曲とのつきあい方が変化していきましたね。お嫁に行く娘と母のことをつづる「秋桜」も、子どもができる前は、母を思う娘目線で歌っていましたが、いまは、「娘が嫁ぐときに、アルバムをめくるのかな」とか、将来のことを想像する自分がいます。生き生きとした若さはまぶしいものだけれど、いろいろな経験をして感情が豊かになっていく。歳を重ねることも良いことだなと思います。
小笠原優子
――毎年100以上のホールコンサートをこなされてきたみなさんですが、今年は新型コロナウイルスの影響で、延期や中止になるなど大きな影響がありました。12月の公演に向けての思いを聞かせて下さい。
大野:そうですね。僕たちはコンサート活動が8カ月間休みになるなどの影響がありました。一緒に集まって歌うことはできませんでしたが、メンバーそれぞれが自宅で歌っている映像を、フォレストのホームページで発表したり、コンサートとは違う形でみなさんとつながり続けることができました。新しい試みが、メンバーから自然発生的に生まれたことは、心強かったです。12月のオーチャードホールは、久しぶりにコンサートにいらっしゃる方も多いと思います。うちの竹内(直紀)がよく言っているのですが、「心の栄養を養ってもらえるようなコンサートにしたい」ですね。一緒に過ごす時間だけでも、明るい気持ちに。元気になってもらえたら嬉しいです。それぞれの〝心の歌〟を見つけに来ていただきたいです。
小笠原:オーチャードホール公演は、会場はもちろん、オンラインでのコンサートを初めて並行して行います。今年はコンサートがあまりできませんでしたが、1日で1年分楽しんでもらえるように、私たちも頑張ります。
吉田:1年の締めくくり。来年への希望も込めつつ、精一杯全力を出し切りたいです。コンサート会場では(飛沫感染防止のため)、一緒に歌うことは難しいかもしれませんが、アーカイブ配信もあるので、ご自宅などで歌ってもらえたらうれしいです。
大野:コンサート会場には生の迫力。配信はくつろぎの空間でリラックスして聴くことができるので、それぞれ楽しんでもらえたらいいよね。
澤田:感染対策など、まだまだ我慢が続くと思いますが、一緒に過ごす時間は心を解放して思いっきり楽しんで欲しいです。
澤田薫
取材・文=Ayano Nishimura

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