『N's 60 -YOSHITOMO NARA 60th BIRTHDAY PARTY-』

『N's 60 -YOSHITOMO NARA 60th BIRTHDAY PARTY-』

THE STAR CLUB、亜無亜危異らが
出演した奈良美智の
還暦ライヴをレポート!

サプライズゲストに、
奈良も大興奮の後半戦

少年ナイフ

少年ナイフ

 Redd KrossをSEに登場した少年ナイフが1曲目に選んでいたのは「バナナチップス」。変わらない愛しさで独自のロックを届ける少年ナイフ。「Twist Barbie」で魅せる初々しいコーラスワークもガールズバンドとしての武器を感じる。レトロな質感こそも少年ナイフの武器。奈良がジャケットを手がけた作品の中から「Sushi Bar Song」を披露したのだが、この曲前にオーディエンスに“体操”なる振り付けを伝授し、サビで揃いの体操でライヴを盛り上げるなど、他のバンドにはないポップなノリでオーディエンスを牽引していった。変わることのない独自のライヴパフォーマンスは、実にほっこりとした空気感だった。
曽我部恵一

曽我部恵一

 少年ナイフからバトンを受け取ったのは曽我部恵一。「キラキラ!」「おとなになんかならないで」「満員電車は走る」を、ナント、ほぼマイクレスの状態で歌って届けた。自らの子供のために書き下ろしたという「おとなになんかならないで」などは曽我部の人生そのもの。感情を剥き出しで叫ぶ曽我部の歌はヒリヒリする。直に心臓を掴まれる感覚とでも言おうか。バンドという形態ではなく届けられることから、より深く入り込んだ曽我部の人生をそこに見ることになるのだろう。やはり、そんな飾らない生き方も、奈良美智という生き方に重なった。
亜無亜危異

亜無亜危異

 21時26分。亜無亜危異の登場に会場は沸いた。フロアから起こった“アナーキーコール”を受け、メンバーはそれぞれの持ち場に着いた。揃いのナッパ服に赤い腕章。荒くれ者、危険な香りが漂う、無政府主義者たる絶対の存在感は誇らしい。危険なロックバンドが存在しなくなった昨今のロックシーンの中で、当時から変わらぬ存在感を貫き通している亜無亜危異は、日本のロックシーンの宝だ。

 「東京イズバーニング」が始まると、オーディエンスは大きく体を揺らした。「心の銃」「パンクロックの奴隷」「叫んでやるぜ」と、間髪入れずにぶちかましていく彼らもまた、【大人気ない大人】である。その全てがアナキズム。個々の存在を重んじ、一丸となることを好ましく思わない無政府主義者の叫びによってフロアが一つになるという、なんとも皮肉な光景を目の当たりにさせられた訳だが、無政府主義者の集合体だと考えると合点がいく。それぞれの想いを奈良の絵の中に感じ、そこにロックを感じ、奈良の愛するものに共感し、生き方を尊敬するここに集まった者たちは、間違いなく“自分”という個を重んじた、“好き”という感性に正直に向き合った自由な集合体なのだ。
“紹介します! 奈良美智!”「叫んでやるぜ」終わりでボーカルの仲野茂が奈良をステージに呼び込むと、ナッパ服に赤い腕章を付けた、亜無亜危異と同じ出で立ちの奈良がステージに登場した。

 全員、奈良と同じ歳だという亜無亜危異。そんな同じ歳で結成された、この日だけのオリジナルメンバーの亜無亜危異で、「ノット・サティスファイド」が投下された。ナント、ここでは、曲が始まって数秒後に奈良が客席にダイヴ! おいおい。ヤンチャ過ぎるだろ! と思わず声に出して言ってしまったほど予想外の出来事であったが、そんな手放し状態の大人気ない奈良を、オーディエンスは全力で受け止め、その体を高く掲げたのだった。それにしても無邪気過ぎる。が、本能で生きるそんな奈良だからこそ、アーティスト達は奈良を心底愛するのだろう。

 “ハッピーバースデー! 奈良美智!”ラストに叫んだ仲野の祝福の言葉に、オーディエンスは大きな歓声を重ね、大ラスは全員から贈られた拍手で幕を閉じたのだった。
お祝いシーン

お祝いシーン

 亜無亜危異をトリにライヴが締めくくられると、下手のサブステージに呼び込まれた奈良の元に、60本のローソクが灯された大きなケーキがステージに運び込まれた。増子のリードでオーディエンスが『ハッピーバースデー』を歌うと、奈良は子供の様にはしゃぎながらケーキを覗き込んだ後、その炎を一気に吹き消した。

 ここでは、多くのアーティストからの電報も読み上げられたのだが、電報の中には、奈良を“奈良っち”と呼び、心の友だと慕う嵐の大野智からのメッセージもあり、さらには、シークレットで駆けつけたのんが花束を贈呈するというシーンもあった。
ジャンル問わず、各方面から奈良が愛されていることを証明した時間は、オーディエンスの気持ちをとてもあたたかく、豊かにした時間となった。

 “実は、もう一組! シークレットゲストが演奏します! 奈良さんも知らないです!”、増子の言葉に、驚きの表情を見せる奈良。
THE STAR CLUB

THE STAR CLUB

 メインステージに登場したのはTHE STAR CLUBだった。完全シークレットでの参加だったTHE STAR CLUBの出演は、一部のスタッフにも知らされていなかったほど厳重だったという。ライヴが全て終了していたと思い込んでいた奈良は、幕が開き、THE STAR CLUBが登場すると、本当に子供が喜ぶ様に、その場で何度もジャンプし、飛び上がって喜んだ。ステージに立ったTHE STAR CLUB は、“レジェンド”という言葉が似合う堂々たる風格だ。

 1977年の結成以来、ボーカルのHIKAGEを中心に活動を続けて来た日本のパンクロックを代表する存在である。「SOLID FIST」「BLACKGUARD ANGEL」を続けて披露したTHE STAR CLUBのライヴを、後方エリアのテーブルの上に立ち上がり、拳を高く振り上げながら聴いていた奈良。オーディエンスは、時折振り返りながら、そんな奈良の無邪気な姿を、愛おしそうな笑顔で見守って居た。

 ライヴ中盤に、ドラムの誠一郎が奈良に向けて『ハッピーバーズデー』を歌い、キッカケを作ると、オーディエンスはその歌声に自らの歌声を重ね、奈良を祝った。“奈良さん、60歳のお誕生日おめでとうございます。これからも、我が道を極めて、新しい作品をどんどん描き続けていって下さい”。HIKAGEの低音ヴォイスでのメッセージは、シンプルながらも、共に生き抜いてきた同志への絆を感じさせるあたたかな一言だった。メッセージを届けた後にも「SLASH WITH A KNIFE」「THE PUNK」を届け、全力で奈良の還暦を祝ったのだった。
増子直純(怒髪天)

増子直純(怒髪天)

 “奈良さんの為の1日でした! 奈良さん、明日体痛いんじゃないですかね?”と、増子がステージの中央に奈良を呼び込むと、奈良は本当に幸せそうな笑顔を浮かべ、最後にこう語った。“もう何も言うことないよね。本当に幸せだよ。本当にありがとう。本当に何も言うことないよ。知らされていなかった人達がたくさん来てて本当にびっくりした! 本当にみんなありがとうね!”。

 驚きと喜びに溢れた奈良の無垢な笑顔は、とても印象的だった。きっとこの日の感動は、奈良の人生に深く刻まれたことだろう。日本の音楽史を飾るロックバンドが奈良美智の為に集結したこの日。それを叶えた『N's 60 -YOSHITOMO NARA 60th BIRTHDAY PARTY-』。奈良美智が繋いだこの特別な時間は、奈良自身はもちろん、この日集まったアーティストとオーディエンス全てを、幸せに導いた唯一無二な時間であったと言える。

 最後に、このイベントを形にしてくれた実行委員のスタッフをステージに呼び込んで花束を渡した奈良の細やかな配慮にも深く胸を打たれた。奈良の人間力に、改めて脱帽。ここから始まるN's 60Year。奈良美智は、この先新たに生み出される作品で、どんなアナキズムを表現していってくれるのだろう。大人気ないロックンローラー奈良美智に乾杯!

取材・文:武市尚子

奈良美智プロフィール

1959年青森県弘前市生まれ。見つめ返すような印象的な絵画、日々自由に描き続けるドローイング作品、彫刻作品や写真作品などを制作する。80年代後半からヨーロッパ、アメリカ、日本、そしてアジアの各地で規模に関わらず様々な場所での展示発表を続ける日本を代表する現代作家の1人。 60年代にFEN(米軍極東放送網)から流れるアメリカのフォークミュージックと出会って以来、音楽は奈良の創作活動を支える存在であり続ける。8歳の頃からレコードジャケットのコレクションを始め、そのヴィジュアルから強く影響を受けた。また、90年代より国内外、メジャー・マイナー、ジャンルを問わずスピリットで繋がるミュージシャンのアルバムジャケットのアートワークを手がけ、その作品数は30点以上に及ぶ。
2021年はロサンジェルスカウンティ美術館とダラスコンテンポラリーで展覧会を開催予定。

KENZI&THE TRIPS
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THE STAR CLUB
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