かりゆし58前川×ホームレスせいろく
社会貢献とエンタメを融合させるプロ
ジェクト「ヨナオシジャングル」から
見えたものとは?【対談企画】

社会貢献とエンタメを融合させるプロジェクト・ヨナオシジャングル。その第一弾、ホームレスのせいろくさん✕かりゆし58前川真悟企画で、ついに作曲・歌を手がける前川と、詞を書いたせいろくさんとが対面。二人はオンラインでのやりとりで楽曲制作を進めていったが、ようやく実際にお互いを“感じながら”、「かわがないてるよ」という作品について語り合ってもらった。
――せいろくさん(本名さいとう・せいいちろう)と呼ばせて頂いても大丈夫ですか?
せいろく:はい、大丈夫です。
――せいろくさんはおいくつなんですか?
せいろく:今日50歳になりました。
(全員):おめでとうございます!(この後、対談場所になったお店からのご厚意で、バースデーケーキがプレゼントされ、せいろくさんは持って帰りました)。
前川:節目の年ですね。
――最初にヨナオシジャングルのスタッフの方から、今回のプロジェクトについて聞いたときはどう思いましたか?
せいろく:やります。やらせていただきますと、二つ返事でお受けしました。
――森ガキさんから、せいろくさんは昔プロのミュージシャンとしてデビューを目指していたとお聞きしました。
せいろく:はい。最初はコピーバンドからでしたが、オリジナル曲を書くようになって。
――誰のコピーバンドをやっていたんですか?
せいろく:一番最初はラウドネスでした。『THUNDER IN THE EAST』(85年)というアルバムまでが好きで、聴いていました。アースシェイカーや聖飢魔IIもコピーしました。でもラウドネスの高崎晃さんのギターテクニックが凄すぎて、打ちのめされました。
――デビューのお誘いもあったとか。
せいろく:はい、インディーズに誘っていただいたのに「いや僕は15歳からキングレコードで出すって決めてるんで行きません。自費でもキングレコードから出しま」って言って、お断りして、バカでした。
――中山美穂の大ファンで、彼女が所属しているキングレコードでなければダメだったんですよね。
せいろく:そうです。
前川:そういうの大事です。。
――最終的な夢はやっぱり初志貫徹で、いつかキングレコードからも出してみたいですか?
せいろく:夢だったので、その思いはまだちょっと残ってますよね。今は前川さんに集中しています。
前川真悟(かりゆし58)、せいろく
――今回、まずせいろくさんが歌詞を書いて前川さんが曲を付けた「かわがないてるよ」という曲を聴かせていただきましたが、あの詞は即興で書いたとお聞きしました。
せいろく:あれはスタッフの森さんに隣にいて頂いて、数十分で書きました
森:一番だけその場で書いてもらって、後日続きを書いていただきました。
――ミュージシャンを目指していた時から歌詞は書いていたのですか?
せいろく:14歳から歌詞を書いていました。書き溜めていた大学ノートがかなりの量になって、コインロッカーに入れていたら、どんどん料金が上がって引き取れなくなって、行方不明です。とても後悔していて、いつかその時代に合わせて、部分部分をチョイスして、歌詞を作りたいと思って楽しみにしていたのですが…。
――「かわがないてるよ」は風景が凄く見えてくるし、とても切ない感じです。
せいろく:川沿い、土手は、土曜日と日曜日はサイクリングしている人やバーベキューをやっている人が多くて、明るいイメージですが、平日は曇ってたりすると、やっぱりちょっと寂しい感じがします。
ご自分の言葉で思いを迷いなく話される方です。最初に感じた印象からブレていません。
前川真悟(かりゆし58)、せいろく
――前川さんは今回の取り組みを聞いた時は、どんな捉え方をしましたか?
前川:すごく楽しみだなということでした。だから僕も二つ返事でOKして、何が楽しみだったかというと、歌詞のリアリティだと思うんです。せいいちろう(本名)さんが見ている、生きている世界のリアリティ。企画のお話をいただいて数日後に歌詞が届いて、その時僕はリアリティのあるものに僕が踏み込んでいいんだろうかと思いつつ読ませていただいたら、ものすごくファンタジーというか、語弊を恐れずにいうと、少年が自由に書いた絵のような、それでいてとても緻密なものでした。
――作っていない“そのまま”を書いたものが持つパワーやエネルギーは、計り知れないですよね。
前川:そこなんですよね。それがしかもよりリアルの中で生きている人が、まるで少年が書いた絵の様な詩を生み出すという、まるで心のろ過機というか、そこに「ものすげー」と思って。だから僕は同じ表現者として、目の前にある表現作品に何かできるものはないか、クリエイターせいいちろうさんと僕ができる“何か”を一生懸命を溶かしていく、その喜びから覚悟に向かっています。
――前川さんは今日、せいろくさん本人と初対面ですが、初めて会話したのはオンライン上だったと思いますが、その時の印象と今日会ってみての印象は違いますか?
前川:せいいちろうさんは、オンラインで直接お会いする前にビデオでメッセージをいただいていたんですよ。「僕は緊張してしまって、たどたどしくなって自分の思ってる事を素直に言葉にできないかもしれませんが…」と話されているムービーを送ってくださって。でも今日もそうなんですが、色々聞かれた時に、ご自分の言葉で思いを迷いなく話される方です。最初に感じた印象からブレていません。
――せいろくさんは実際に前川さんにお会いしてみて、印象はいかがですか?
せいろく:あの…正直に言っていいですか?ちょっと怖い人かなって思ってました(笑)。
――あんな優しい歌を歌っているのに(笑)。
せいろく:かりゆしの歌は、正直泣きましたね。「アンマー」を練習したんですけど、同じところで何回も目頭が熱くなりました。前川さん目は優しいんですよね。僕も沖縄の人ですかってよく言われるんです。
前川:せいいちろうさんも結構勢いある顔してますよ(笑)。
そうですね、寝てて凍死しちゃうかもしれなかったんでね
前川真悟(かりゆし58)、せいろく
――「かわがないてるよ」はいわゆる歌詞というよりも詩に近いと思いますが、“歌”を想像して書かれたのでしょうか?
せいろく:“歌”を考えて作りました。スタッフの方から「明るい曲と暗めの曲、二曲あった方がいい思います」と言われたので、「にほんのかぜ」という曲の方がちょっと明るくて、「かわがないてるよ」は暗い感じがいいと思いました。自由に伸び伸びと書いて下さいといわれたので、“歌”を考えつつも、語尾を合わせるとか、そういうことは考えないで書きました。川は全部お見通しだけど防犯カメラにはしちゃいけないと。でも川は見ているよということが言いたかったんです。
――前川さんはメロディはすぐに浮かんできたのでしょうか?
前川:今に至るまでは何十周もして、でも一番最初に出きたものに戻りました。だからすぐ出たといえばすぐだったし、でもそれがせいいちろうさんの言葉と僕ができる事のゴールなのかどうかは、何十回も見直したし、考え直したし、迷わずというわけではなかったけど、最初に出たものが結果としてよかったというのは、不思議です。今日もそうなんですけど、せいいちろうさんに会えてめちゃくちゃ嬉しくて、あとは勉強になるというと、ちょっと言葉が軽くなってしまうかもしれませんが、せいいちろうさんのこの姿勢が自分の中にもあったらいいなってさっきからずっと思って感じていて。ひとつは、人に何か話すときに迷いなく話せることです。それからこのプロジェクトは、コロナ騒動が起こる前からお話は始まっていて、コロナ禍で音楽家たちの存在価値が、ちょっと今までとは変わってきていると。音楽の力のメッキが剥がれた部分もあるし、逆に核がはっきりしてきたところもあるし、その中の一番の核であるはずの表現の自由度のようなものが、まさにせいいちろうさんの言葉の中や今日の佇まいの中にあって。俺が「かわがないてるよ」の歌詞と向き合って、ドレミファソラシドを一生懸命乗せようとしていることについても、俺は一体音楽を鳴らそうとしているのか、それともただのドレミパズルをしているのか、色々な迷いがコロナと共にあって。その分、せいいちろうさんの言葉の雑味の無さというか、迷いの無さが俺にとってもものすごい導きになっているんです。世の中、世界、景色の中に自分をおいてスケッチすると、こういう事になっていくんだなってハッとしました。色々なものに毒されている自分がそこにいて、だからものすごくせいいちろうさんのような姿勢で自分も本来あるべきだったのに、今ひとまわり上の先輩に教えてもらっている感じです。人としてのサイズも、表現者としての本質の部分も。だから今日せいいちろうさんに会えて本当によかったです。
――前川さんが付けた曲、歌を聴いていかがでしたか?
せいろく:すごく良かったですし、本当に嬉しかったです。
前川:部屋でこの歌詞と何回も自分の中で逡巡繰り返すうちに、俺は沖縄の青い海は見てきたけれども、沖縄には川がなくて、川というものに自分の心を投影するような場面に出会ったことがないんです。海はやっぱり自然の大らかさで、川は町の景色ともにあるから、自然の大らかさともうひとつ、暮らしのつつましさみたいなのを秘めていると思いました。多分僕の中にあるイマジネーションでは、せいいちろうさんが見たであろう、スケッチしたであろうあの絵は想像できないんですよね。なので、東京生れの東京育ちのそれこそ神田川の横でずっと育っている、友人の千賀太郎というハーモニカプレイヤーに「俺は言葉を壊さないようにこのメロディにしたけど、音に関しては、俺が想像している風の色とか水の音、流れのテンポじゃないかもしれないから、ハーモニカを差してほしい」ってお願いして。あとは友人のギタリストで、昔は日銭を稼いで音楽を続けてきたきたエリート一家の血統書付きの野良犬みたいなやつがいて(笑)、そいつにギターとベースを入れてくれと。で、そこに(千賀)太郎のハーモニカを入れて、太郎も海外で活躍しながらも日本では大工の仕事しながら、苦労しながら好きな音楽を続けていて、そんな彼らの音と共にマッチすることで、あの曲は完成するんじゃないかと思い、進めました。素晴らしい歌詞に、どこに出しても恥ずかしくない音を乗せ、そこに俺の渾身の、精一杯の歌を入れて完成させます。これを完成させるとき、カラオケも一緒に作ったらいいと思っていて。世界中のどこに出しても恥ずかしくない音にしようと思ったんです。だから僕の声で完結するのではなく、カラオケバージョンもあったら、スティービー・ワンダーの横で吹いていたやつのハーモニカも入っているし、沖縄で魂を持って音楽侍として一生懸命活動しているやつのギターも鳴っているので、絶対に世界中で歌ってもらえると思います。僕の歌はあくまで目印のひとつになればいい。大事なのは詞の世界観と音が織りなす、誰にでも受け入れられて、誰でも歌えるという、みんなのおもちゃ箱みたいにして、みんなが好きなもの入れてくれたらいいなって。
――ご自身が書かれた歌詞に前川さんが曲をつけて歌って、一つの作品ができあがるってなかなか想像できないことですよね。
せいろく:いやあ…ほんとうに嬉しいです。今お話を聞いていて、そんなに大変な思いをして作ってくださって、ものすごく嬉しかったし…そうですね、寝てて凍死しちゃうかもしれなかったんでね、今まで…。だから本当によかった。本当にそう思いました。
――今回のプロジェクトに参加することが、せいろくさんの中で生活をしていく上での希望になってらっしゃる感じですよね。
せいろく:大分なっています。
――他の歌詞も読んでみたいですね。
前川:めちゃめちゃいいですよ。
せいろく:もっと長いのもあります。例えばどんな色とか、季節とか、そういうキーワードをいただいた方が書きやすい部分はあります。
前川:「かわがないてるよ」は、ひらがなだけで書いているのにこのインパクト、しかも「自分」という言葉だけは漢字になっていて、すごく心に刺さります。
せいろく:でもこれから絶対ひらがなでいくかというと、わからないんですけど。
前川:それがいいと思います。その感じが。
せいろく:年があと20歳くらい若ければずっとひらがなでいくんですけど、50にもなって自分はひらがなでいくんだ、という勢いはもうないので、これからも書かせていただけるなら、もしかしたら漢字や英語も入るかもしれません。
前川:それが変化や成長ということですよね。楽しみです。
せいろく:曲も昔書いていたので、また書いてみたいと思っています。
――また第二弾、第三弾って続けたいですね。
せいろく あんまり自信はないんですけども、もしやらせていただけるのであれば、やらせていただきます。
前川真悟(かりゆし58)、せいろく
――この企画が始まって、すぐにコロナ騒ぎになって、せいろくさんも影響がありましたか?
せいろく:そうですね。やっぱり街に人が少なくなったのは、こういう格好、様相なので助かりましたが、普段はアルミ缶を収集して、それを買ってもらって生活しているのですが、近くのアルミ缶の集積所が閉まってしまいまして。だから今は歩いて、開いている西新井の集積所まで持って行っています
――赤羽から西新井ですか⁉結構な距離がありますよね?
せいろく:はい、橋を4つ歩いて渡って、2時間半くらいかけて持って行っています。風向きによっては3時間くらいかかる時もあります。
――前川さんはコロナ禍で一番考えた事はなんですか?
前川:存在意義がわからなくなる不安ですかね。人に求めてもらっているというか、それぐらいしか俺たちは確かめようがないですから。目に見える何かを作っているわけではないし、なんとなく世の中の隙間とは言わないけど、そういうところに僕らの居場所がぽっかりあったような、それを生業にしていたのに、ライヴもできずに人に喜んでもらえないということが、こんなに自分の存在をわからなくするんだって痛感しました。せいいちろうさんが今いる立場というのが一番ニュートラルなところな気がします。世の中がステイホームといっても、なんの因果か、ホームレスをされている方にとっては、ちゃんと今自分がいる場所に自分のその世界があって。その中から何かを生み出そうとしているものの結晶がここにあって。今ミュージシャンさんや表現者は、自分の存在が、価値が分からなくなって心のバランス崩したりする人も多いみたいですが、そこを切り抜ける為の魂の真ん中に据えるべき何かが、ここにある気がするんです。だから俺は本当に救われていて。「かわがないてるよ」は一人でも多くの人に聴いて欲しい。プロのミュージシャンも、とにかくみんな、世界中の人に聴いて欲しい。せいいちろうさんの歌詞のすごいところは、世界中のどの言語に訳してもたぶんちゃんと届くんです。だからあえてこの童謡のようなメロディをつけています。世界中の人に、もっと本質的な、揺るがないニュートラルである自分たちの元々のサイズや、元々の命というもの、未来についてをあんなに優しく書いている歌詞だから、これはもしかしたら世界の人を救う言葉であり、音楽になりうるんじゃないかなと思っています。
せいろく:ちょっと暗い話になるんですけど、やっぱりホームレスというのは歩いてるだけで睨まれたりしますし、歩いちゃ悪いなと思いながら、道の端っこ歩いたり、人のいないところを選んで歩いてるんです。今回、声をかけて頂いた時から、勇気が出ましたし、希望が持てました。たくさんの人に聴いていただきたいです。
取材・文=田中久勝 Photo by 菊池貴裕

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