リュックと添い寝ごはん アルバム『
neo neo』インタビュー 今日より1ミ
リでも明るい明日を信じて――“普遍
”へと踏み出した3人に訊く

歌には様々な役割がある。聴き手の気持ちを代弁してくれること、一緒に悲しんでくれること、気持ちを鼓舞して共に日々を戦ってくれること、ハッピーにしてくれること。リュックと添い寝ごはんが、自分たちの歌で大切にしているのは「生活に寄り添うこと」だ。12月9日にリリースされる、彼らのメジャーデビューアルバム『neo neo』も、まさにそういう作品になった。ギターロックを主軸にしたインディーズ時代から、世代を超えたポップミュージックへ。大きく広がりを見せた今作は、「ネオ昭和」や「海」といったキーワードを軸にしながら、コロナ禍による制作スタイルの変化や初のプリプロ合宿といった初体験を経て、バンドの新たな魅力を開花させた1枚だ。今日より1ミリでも明るい明日を信じて――“普遍”へと踏み出した3人に話を訊いた。
――高校時代から活動してきたバンドですけど、卒業して19歳になって。でも、“10代最後の年である”みたいな気持ちでアルバムは作ってないですよね?
松本:作ってないですよね。もともと年齢によって作品について何か思われたくないっていうのは、メンバーでも言ってたんですよ。「10代なのに、すごい」とか。
堂免:「10代だから、こうなんだ」とか。
松本:どっちも嫌だったんです。
――わかります。そのせいか、今回すごく広い世代に届きそうな作品だなと思いました。
松本:うれしいですね。
――リュクソの存在として、「いま若い世代に人気」とか言われがちじゃないですか。でも、“そうじゃないんだ”っていう気持ちはあったんですか?
宮澤:いや、私たちと同じ世代の人たちに聴いてもらえるのはうれしいんですよ。
堂免:だから、“そうじゃない”というよりも、“それだけじゃない”って感じですかね。ふつうに、たくさんの人たちに聴いてもらえるのは“やったー!”って感じだから。
松本:そうだね。若い世代の人たちに聴いてもらえるのもうれしい、もっと、さらに先に届いたらいいなっていう気持ちでは作ってましたね。
――今作のテーマは「ネオ昭和」から始まったそうですが、これは松本くんのアイディアですか?
堂免:ある日、突然ユウくんが言い出だしたんだよね。
松本:歌謡曲にハマった時期があったんですよ。僕、ハマったら本当にそれしか見ないようなタイプなんです。
宮澤:そうだね(笑)。
松本:で、“あ、昭和の曲っていいな”と思ったのがきっかけですね。はっぴいえんどから派生して、それぞれのメンバーがやってるソロワークスを聴くようになって。松本隆さんが歌詞を手がけた、松田聖子さんの曲とか。あとは、ユーミンさん(松任谷由実)もですね。そこらへんを聴いてたときに、自分もこういう曲を作りたいなと思ったんです。でも、僕らが昭和っぽい曲を作ってもっていうのもあったから、それを自分に落とし込んだときにどんなものが出てくるかな?っていうので、僕は平成生まれだし、いまは令和に生きてるので“ネオ”。自分のフィルターを通して出てくるものが、“ネオ昭和”になるはずだから、そういうものを作りたいって、メンバーに伝えましたね。途中からテーマは「ネオ昭和」から変わっちゃったんですけど(笑)。
松本ユウ
――メンバーはそう言われて、どう思いましたか?
宮澤:じゃあ、やってみようっていう感じですね。いままでもそんな感じだったので。
堂免:(インディーズ時代に)『青春日記』を作ったときも、まず「いろいろな音楽のジャンルに挑戦してみたいね」っていう話をしてたんですけど、そのなかにも、僕らのフィルターを通して自分たちの曲にしようっていうのは言ってたので。それが明確になった感じがありましたね。
――当然、リュクソは昭和歌謡がリアルタイムではない世代ですけど。昭和歌謡のどういうところに魅力を感じるんですか?
宮澤:あったかいところ。
松本:そうだね。語尾が、「です」「ます」だったり、「~なんです」「~なのよ」なのも、温かいなと思うんですよね。これと言って、目立った言葉を使ってないというか、ズルい言葉を使ってなくて、日常に近い感じがする。それでも、サビが耳に残る言葉なんですよね。たとえば、こんな歌はないと思うけど、“パンが焼けたよ”とか。
宮澤:そうだね(笑)。
――そのワンフレーズだけで朝食の風景だったり、パンの焼ける匂いだったりを感じられるような、シンプルだけど奥行きのある言葉なんですよね。
松本:そういうのが良いサビだなと思うんです。僕らの「ノーマル」っていう曲は<『明日また明日』>って歌ってて、耳に残りやすいと思うんです。そういうのは昭和歌謡の影響だと思いますね。
――“ネオ昭和”の片鱗は、先行で配信リリースされた「あたらしい朝」とか「生活」にも出てたと思います。そのあたりの手応えがアルバムにつながってる部分もありますか?
宮澤:そうですね。その2曲はライブでもやってるんですけど、自分たちで演奏してても“楽しいな”っていうのはありますね。自分たちの合ってるというか。
堂免:ちょっとずつだけど、自分たちがやりたい理想に近づいていけてる感じはあったよね。
松本:「あたらしい朝」とか「生活」みたいな曲ができたことで、普段の僕らの日常というか、飾らないバンドの雰囲気がちゃんと音に出せるようになってきたんですよね。
――アルバムの制作はいつ頃からはじまってたんですか?
松本:3月ぐらいからデモを作り出してました。あいだにコロナの自粛期間もありましたけど。
堂免:コロナがあったから、「いまは家でできることをやってみよう」っていう流れにもなって、制作のやり方が変わった部分もあるんです。いままではスタジオセッションの勢いで作ってたけど、今回は、一回家に持ち帰って考えるようになったんですよ。みんな、高校卒業してからDAWソフトを買ったりして。それぞれの家で録音できる環境になったから、それを試してみようみたいな感じでやったら、意外と良いものができたんです。
松本:「渚とサンダルと」は、その影響が出てるよね。最初僕がデモで録って、それをメンバーに送ったら、ベースとサポートの鍵盤を入れてくれて。「これ、めっちゃいいから作ろう」ってなって、レコーディングをしたので。いままでにない作り方でしたね。
――今作はシンプルな曲が多いけど、「渚とサンダルと」は1曲のなかに2~3曲分ぐらいの展開があって。過去のリュクソの曲で言うと、「手と手」みたいなタイプの曲ですよね。
松本:うんうん。これはたしか1番までリモートで作ってたんですよ。で、2番からスタジオで作ってたから、そうなったのかもしれないですね。
堂免:違う作り方が組み合わさってるんですよね。
松本:あと、リモートで作ることによって僕がコーラスを重ねがちに……(笑)。
堂免:それはあります!(笑)
宮澤:すごかったね。
松本:データで送るときに、ちょっと物足りないと思って、10個ぐらい重ねちゃうんですよ。
堂免:「渚とサンダルと」のラストのサビは何人歌ってるんだ?ってなってたよね。
――音源を聴いて、全体にコーラスが増えたなと思ったけど、そういうことだったんですね。
松本:ああいう透明感のあるコーラスが好きなんです。
堂免英敬
――「渚とサンダルと」の歌詞は、女性目線ですね。
松本:そうですね。女性目線のキュートな曲を作ろうと思ったんです。カネコアヤノさんの曲を聴いて影響を受けたりして、ああいうかわいい曲を作りたいなと思ったんです。「渚とサンダルと」は、何も言えない女性っていうのをイメージして作りました。何も言えないまま季節だけ経っていくっていう。
――なるほど。3月から7ヵ月間の制作過程では、煮詰まったりすることはありましたか?
堂免:そうだなあ……今回、何日かプリプロで合宿をやったんですよ。そういうのがあったから、あんまり煮詰まらずに済んだんじゃないかなっていうのはありますね。
松本:3泊4日ぐらいでね。
――どこで合宿をしたんですか?
松本:山中湖です。
――何曲ぐらい合宿でやったんですか?
松本:5曲ぐらいですね。「ほたるのうた」を終わったあとからなので。「海を越えて」と「ホリデイ」「PLAY」「23」、あと「渚とサンダルと」ですね。
――特に合宿をしたからこそ生まれたなと思う曲はありますか?
松本:「海を越えて」ですね。最初はすごくズーンと重い曲だったんですよ。
宮澤:ドラムも全然違ったよね。
――こんなに軽やかで、「ザ・海」っていうような清涼感のある曲なのに?
松本:そう。合宿の途中で、僕だけ抜けて山中湖の湖のところを車で走ったりしたんです。気分転換しながら、歌詞を書くために。
堂免:そのあいだ、僕らは個人練してたんですけど。
松本:で、そのときに見た景色がすごかったんですよ。『SWEET LOVE SHOWER』をやってる会場あるじゃないですか。
――山中湖のほとりのきららですね。
松本:あそこにずっといて。山中湖って標高が高くて、不思議な感じだったんです。なんて言ったらいいのかな……ちょっと描いていい?
宮澤:どうぞ(笑)。
松本:(ホワイトボードに絵を描き始めて)富士山があるんですよ。ここの……富士山の下にある丘がトリックアートみたいになってて。
宮澤・堂免:………?
松本:なんか、この丘が……斜めってたんですよ。
宮澤:描いて! ちゃんと描いて!
松本:うーん……なんか、こう、こう……ちょっと難しい。絵心がないから。
堂免:あははは! 描くのやめちゃった。
宮澤:何の時間だったんだ(笑)。
――富士山の裾野の広がりが幻想的に見えたんですかね……?
松本:うん、「あー、広いなあ」みたいな。あ、写真があった。(写真を見せる)
堂免:めっちゃきれいだ。
宮澤:でも、これ、丘ではない。周りの山だね。
全員:あはははは!
――とにかく(笑)、その景色に感動して「海を越えて」の歌詞ができたと。
松本:そう。「この山を越えたら、どうなんだろう?」っていうところから、<あの山を越えて>とか<雲に手を伸ばして>っていう歌詞が出てきたんです。
――なのに、タイトルは「海を越えて」なんですね。
松本:そうなんですよ。“海を越えて”でも“山を越えて”でも、それを越えた先に何があるんだろう?っていうのを、ずっと知りたいんだと思うんですよね。この曲は、ふたりの主人公、女の人と男の人が離島の……小笠原諸島のイメージなんですけど。
堂免:すごい具体名が出てきた(笑)。
松本:そういう小さな島を抜けたら、どんな景色が待ってるんだろう?っていうのを想像して書いてて。それが、この場所に行ったときの僕の心境に似てたんです。
堂免:だから、重苦しいサウンドよりも、越えていきそうなサウンドになったんですよね。
宮澤あかり
――なるほど。アルバムには、インディーズ時代の2曲「ノーマル」と「グッバイトレイン」も収録されています。なぜ入れようと思ったんでしょう?
堂免:これはすごく話し合ったよね。わりとガラッと曲調が変わったから、作品全体として昔の曲が浮かないか?とか、そういったことは考えましたね。
松本:でも、フルアルバムを作るにあたって、自分たちのいままでの曲も大切にしたくて。
宮澤:いままで聴いてくれた人を置いていかないっていうか。「一緒にGO!」っていう感じにしたかったんですよ(笑)。そうじゃない?
松本:そうだね(笑)。
――アルバムを通して聴くと、たしかにサウンド感は変わったはずなのに、ちゃんとリュクソの作品としての統一感がありますよね。
松本:そうなんです。
――それって要するに、「ネオ昭和」というテーマ掲げる前からリュクソの音楽には、どこか古い日本の音楽に通じる歌心があったからなんでしょうね。
松本:うん、そういうことだと思います。逆に、今回のアルバムは「ノーマル」とか「グッバイトレイン」が入らないと、うまく締まらなかったんです。
――ちなみに、「ノーマル」はリュクソの代表曲ですけど。何年生ぐらいのときに書いたんですか?
松本:高2の6月ですね。
――時期まで覚えてるってことは、当時この曲で歌われているような、才能があるかとか、変わっていけるかとか、そういうことで悩んでたんですか?
松本:オリジナルって何だろう?っていうことを考えてたんです。これはリュクソの曲としては4曲目で。ちょうどオリジナルを作りはじめて、あれ?って迷い出した時期でしたね。
――この曲ができて、「自分たちのオリジナルはこれだ」っていう答えが出たんですか?
松本:うーん……でも、自分たちで演奏してるだけでは“変わったな”っていう感じはなかったと思います。周りの反応があって、僕らが変われたんじゃないかって思えたというか。いろいろな人が聴いてくれたことで、自分たちのオリジナルの価値がわかったっていう曲でしたね。
――なるほど。では、アルバムの最後に収録されている「ほたるのうた」について聞かせてください。鍵盤はオルガンですか?
松本:これはサポートで入ってくれてるキーボーディストの方のおかげですね。僕が大好きなSAKEROCKさんっぽいオルガンを入れたいっていうのを伝えて入れてもらったんです。
――この曲は歌詞が素敵でした。自分の周りの半径数メートルの想いが、ぐわーって世界に広がっていくような、音楽ならではの表現になってて。
松本:まさにこの曲は、狭いところから広いところにっていうのがひとつのテーマではありましたね。そこにあるつながりというか。
――以前インタビューしたときの発言からも、松本くんは“つながり”をとても大事にする人だなと思ったんですよ。それは昔からですか?
松本:言われてみると、ずっとですね。いろいろな人と出会って、いろいろな人と話して、そういうのが純粋に楽しいし、知らないことを知ることで自分の人生も豊かになると思うんです。そこは、僕のなかでずっと変わらない人生観かもしれないですね。
――<灯る灯る心のほたる 神様は灯さない>っていうフレーズは、どういう想いで書いたんですか? 暗闇で何かに縋るんじゃなくて、自分で未来を掴もうとする必死さを感じたんですけど。
松本:これは、コロナ期間に作ってた影響が大きいと思います。やる気とかモチベーションを保ちづらい時期があったんです。でも、結局そういうのは自分から生み出していかなきゃいけない。コロナで消えかかってる光を、自分で灯そうっていう気持ちで書いたんです。いま思い返すと、相当落ち込んでたんですよね。“世界が平和になったら”とか、そういうことを考えちゃう時期で。ニュースでは、ニューヨークがロックダウンするとか言ってたので。
堂免:毎日暗かったよね。
松本:ある種、これは戦争というか。そういう暗い時期だったから、自分のなかの“ほたる”を灯し続けたいし、聴いてくれる人の心にも灯っていてほしいなって書いたんです。アルバムのなかでは、いちばんメッセージ性が強い曲になってるなと思います。
――「ほたるのうた」の締めくくりもですし、今回のアルバムは全体を通して、明るい未来を肯定するような曲が多いですよね。やはりそこがリュクソの信念なんだなと改めて感じました。
松本:音楽を作る側が暗くても、どうなんだろう?っていうのは思ってるんですよね。もちろん世の中にはいろいろな音楽があるけれど、自分たちが発信する音楽は、聴く人の日常に寄り添えるものであり、明るいものがいちばんだなっていうのはあるんです。
リュックと添い寝ごはん
――最後に、アルバムを引っ提げた『1st albumリリースツアー『neo neo』』についても聞かせてください。8月の無観客ワンマンを経て、ようやくお客さんを入れたワンマンを開催できると。
宮澤:やっとですね。それでも人数は制限されちゃうので。たくさん応募があったから、チケットが当たらなかった人にも見てもらうために、配信もすることにしたんです。
松本:僕らの晴れ舞台だからね、ぜひ見てもらいたくて。
宮澤:初の東名阪ツアーでもあるからね。
――どんなツアーにしたいと思いますか?
松本:いろいろな人と幸せを共有したいよね。
宮澤:コロナ禍だからあんま言っちゃいけないかもしれないですけど、お客さんとの距離を近くやっていきたいなとは思ってて。
松本:物理的な距離じゃなくて“気持ち”の距離をね。
宮澤:一緒に音楽を楽しみたいですね。
堂免:今回のアルバムにはいろいろな楽器を取り入れたぶん、音源でしかできないものもあるけど、逆にライブでしか表現できないものもあるので。それを楽しんでもらいたいです。
松本:メジャーデビューはしたけど、「僕ら、そんな遠くに行ってないよ」っていうことも伝えたいんです。「いつも近くにいるよ」っていうか。僕らのふざけてる日常を表現したいなと思いますね。
――ステージ上で「ロックヒーローになる!」っていうのとは違うものを目指したい?
松本:いや、ロックヒーローではありたいですよ。
宮澤:そうだね、そこらへんのメリハリはつけていきたいよね(笑)。

取材・文=秦理絵 撮影=菊池貴裕

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