go!go!vanillas 苦しい経験も力に変
えてきたバンドの強さを見た、初の日
本武道館ライブを振り返る

ROAD TO AMAZING BUDOKAN TOUR 2020 -FINAL-

2020.11.23 日本武道館
1曲目は「オリエント」。始まりを告げるスネアにハッとした人も少なくなかったのではないだろうか。UKへの憧れと日本の真ん中でロックンロールを鳴らす自負を唄ったこの曲が、この日最初に鳴らす曲に選ばれた意義は大きい。軽快に弾むバンドサウンドは、後半に差し掛かると疾走。歌詞の一部を替え、《僕を駆り立てるここは、日本武道館!》と唄った牧 達弥(Vo/Gt)は、直後、天を仰ぎ、余韻を噛み締めた。日本武道館とは、バンドが結成時から追い求めてきたステージ。メンバーの感慨もひとしおのようだ。
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ
2020年11月23日、go!go!vanillasが初めて日本武道館のステージに立った。本来は6月のライブハウスツアー、11月の自身初のホールツアーを経てこの舞台に立つ予定だったが、新型コロナウイルスによる感染症拡大の影響で、ホールツアーや日本武道館公演も、ガイドラインに則った形での開催となった。例えば、ソーシャルディスタンスを考慮し、客席は前後左右に1席ずつ空けた状態だったし、入場口では検温と消毒が行われる。観客・スタッフはマスクを着用。飛沫拡散防止のため、観客の発声を要するシンガロングやコール&レスポンスも控えなければならなかった。
ロックバンドにとっての日本武道館公演とはメモリアルなライブになるケースが多く、その日を自分の目で見届けたいと望むファンも多い。しかし、今までとは勝手の違う状況だ。会場に行きたくても行けず、配信で観る選択をした人もいただろうし、会場に来た人の中にも、どことなく不安を感じていた人もいたことだろう。そんななか、一人ひとりの孤独感を吹き飛ばすように、いきいきとしたサウンドを鳴らす4人は頼もしかった。僕らの音楽が鳴っている間は笑顔に。そんな気概さえ感じる。
牧 達弥 撮影=西槇太一
「武道館へようこそ! 俺たちがgo!go!vanillasだ!」(牧)。「アメイジングレース」イントロをきっかけに、牧、長谷川プリティ敬祐(Ba)、柳沢 進太郎(Gt)がダッシュし、ジェットセイヤ(Dr)の叫びに合わせて観客が拳を突き上げる。この日は客席を360°開放。アリーナの中央にあるステージはロックの“69”と、go!go!vanillasの“gg”を重ね合わせたような形で、円形のステージから弧型の花道が2本、さらに直線の花道が1本伸びている。一応南側が正面にあたるが、メンバーは東・西・北にも移動可能。また、花道の途中にはマイクが立っていて、どこからでも唄える仕様だ(東のマイクがちょっと高かったのか、プリティはそこに来るたび、背伸びして唄っている)。
長谷川プリティ敬祐 撮影=西槇太一
カラフルな照明に彩られた「マジック」では、リズムに合わせて飛び跳ねる観客によって客席が沸騰。4人が順にボーカルをとるライブ定番曲「デッドマンズチェイス」が早くも演奏されたのには意外性があったが、「デッド・マンズ・チェイス! パァン!」と、絶妙なタイミングで入った爆発音の特効に場内がさらに沸いた。締めの音を鳴らし終えたあとも、その辺の床を手当たり次第に叩いているセイヤは、興奮が収まりきらない様子。
――という走り出し4曲の時点で、ステージも客席も一緒になって昂っていたが、「これだけじゃねえぞ! レッツゴー・ドラム!」(牧)の言葉を合図に、なんとドラム台が回転。何だこりゃと笑いたくなるステージングだが、確かに、バニラズらしいかもしれない。駆け回ったり、上階にいる観客を嬉しそうに見上げたり、ときには寝そべったりしながら演奏する4人が、心底楽しそうなのが最高だった。そしてこのステージングだと、例えば、牧が「ギター!」と叫んだ直後、真反対の方角から柳沢がソロを鳴らす、といった場面も頻繁に発生。花道へ駆け出し、思うがまま鳴らしていても――その間、他3人が自分には見えないところで思うがまま鳴らしていても、何の迷いもなく、背中を預けられるということ。4人を結ぶ絆、信頼関係があるからこそ成立する見せ方とも言えた。
go!go!vanillas 撮影=西槇太一
新旧を網羅したオールスター楽曲が披露されるなか、中盤では、このライブを記念してリリースされた『鏡 e.p.』の収録曲を演奏した。『鏡 e.p.』には、4人それぞれが作詞作曲&ボーカルを担当した楽曲を1曲ずつ収録。「俺の30年、聴いて下さい!」とプリティが腹の底から叫んだ「バームクーヘン」では、シャウトとともに炎が上がったほか、牧が音源にはないハモリを乗せる場面も。セイヤからJETT姓を賜ったメンバー(“長谷川ジェットプリティ敬祐”の強引さよ)がポジションチェンジして臨んだ「JETT ROCK SCHOOL」は爆裂パンクで、ラストにはセイヤがマイクをくわえながら(!?)「夢を諦めるなー!」と熱いメッセージを送った。一旦「バイバイカラー」を挟み、空気を入れ替えてから演奏されたのは、柳沢による「イノセンス」。ロマンティックな音像が武道館狭しと広がったあとの「パラノーマルワンダーワールド」はなおさら沁みた。一転、牧のサウナ愛が詰まった「TTNoW」は、打ち込みを取り入れたダンスチューン。メンバーの足元を漂うスモークを見て、「武道館をライブハウスに」と言うバンドはよくいるが、まさかサウナにするバンドがいるなんて……と笑った。「みんなの気持ちがぶつかってきます。なので、安心して楽しんでください。俺らも思いっきりぶつけていくから!」(牧)という発言の通り、バンドは思い思いに各曲を表現。それが観客の心の解放にも繋がっていく。
go!go!vanillas 撮影=西槇太一
プリティも言っていたように、“全員が曲を作り、全員がメインボーカルをとる”というトライから連想するのは、武道館で初めてロックコンサートを行ったバンド、ザ・ビートルズ。MCでは牧がビートルズへの想いを語った。曰く、(武道の殿堂でライブを行ったことにも象徴されるように)ビートルズは垣根を越えながら革命を起こしてきたバンドであること、さらにイギリスの若者が日本を熱狂させている姿はまさに平和だと感じたことから、彼らに憧れていったそうだ。だからこそ、自分のバンドに自信が持てるまではここに立ちたくないと思っていた経緯があり、逆に言うと、今ならば立てるという自負がある。「ライブがなかなかできないなかでも、曲を作っていて。こういう時だからこそみんなを勇気づけようと作った新曲があります。みんなにどうか、届きますように」と演奏されたのは、『鏡 e.p.』の表題曲「鏡」。嫌われないための甘い言葉よりも、嫌われてもいいから、真正面からの言葉を。ソングライターとしての誠意の結晶のような曲だ。
ジェットセイヤ 撮影=西槇太一
セイヤが曲間を繋げるなか、柳沢が力強く煽り、手拍子によるコール&レスポンスを行いながら「カウンターアクション」、「No.999」で終盤へ。いつもならば観客と一緒に「1・2・3!」と声を合わせてから演奏する「エマ」では、プリティが全身で「E」「M」「A」と表現。「平成ペイン」の《この暗闇に目が慣れているのは僕らだ》がコロナ禍を生きる私たちの今にも重なっていく。本編ラスト2曲を残してのMC、「今日観に来てくれたみんな、スゲーカッコいいなって思う」と伝えた牧は、「バンドだけじゃなく、みんなも前代未聞の困難に立ち向かっているところだと思います。コロナがなくならない限り、(ライブ会場に来ることに対する)不安、うしろめたさはなくならないと思います。だからこそ、みんなにどうしても“このライブがあったから乗り越えられた”と思ってほしくて、いろいろな気持ちを抱えたまま、ここに立ってます」「ライブ一つで人生が変わる人もいる。俺もそう。そういうライブを観てここに立ってます」と語っていた。
栁沢 進太郎 撮影=ハタサトシ
また、涙ぐみながら、メンバーとの出会いを振り返る場面も。武道館に至るまでのバンドの道のりは決して平坦ではない。メンバーが脱退したこともあったし、2018年にはプリティが事故に遭い、生死の境を彷徨った。しかし苦しい経験も力に変え、強くなってきた経緯があるからこそ、今の彼らは頼もしい。そしてこんなにも、日本武道館が似合うバンドになったのだ。「順風満帆でずっと続いてきたわけじゃないよ。そういう歴史を糧にして今日がある。だから、日本武道館が通過点とか、クソみたいなこと言わないで、ちゃんとここで自分の想いを曝け出して、またここから進むための今日です」と牧。「俺らが代わりにみんなの気持ちを精一杯唄うからさ。今日は心で唄ってよ、日本武道館!」と投げかけると、会場の熱気を引き受けながら、「おはようカルチャー」のコーラスが響いた。
go!go!vanillas 撮影=西槇太一
「俺たちが始まった1曲を!」(牧)と本編を締め括ったのは、バンドの原点にあたる「人間讃歌」で、アンコール1曲目「アクロス ザ ユニバーシティ」も同様に初期から存在する曲。柳沢のギターが出なくなるトラブルには、武道館に棲む魔物の存在を思い出させられたが、トラブルも何のその。ギターが復活するまでの間は他3人が繋ぎ、平然と曲が始まる流れにはバンドの逞しさを感じた。互いに元気で、また会えるように、という願いを込めてラストに演奏されたのは「ギフト」。ギターを弾きながらの唄い出し、最初の発音が力が入っていたのは、余すことなく全てを届けようという意思の表れか。場内は完全に明転。紙吹雪が舞うなか、牧は「日本武道館、愛してるぞー!」と叫んだのだった。
取材・文=蜂須賀ちなみ
撮影=西槇太一 / ハタサトシ

go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ

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