リーガルリリー 1年ぶりの有観客ラ
イブ『「1997の日」〜私は私の世界の
実験台〜』で感じた生のリアル

リーガルリリーpresents「1997の日」〜私は私の世界の実験台〜

2020.12.10 Zepp Tokyo
今と未来を遮断されたような日常がニューノーマルだなんて言いたくない。そんな日々の中でも、いや、そんな日々の中だから新しい感情も生まれてくる。ネガティブもポジティブも全部飲み込んで吐き出してやるーーステージの上の3人はここで再度、誕生したかのように躍動していた。観客を入れたライブを夏以降、いくつか見てきたが、この日ほど「ロックバンド最高!」というプリミティブな気持ちになれた日はなかった。
昨年の恵比寿リキッドルーム以来、丸1年ぶりの観客を入れたライブ(配信はなし)は、たかはしほのか(Vo/Gt)の誕生日でもある12月10日。最新作『bedtime story』収録曲である「1997」はたかはしとゆきやま(Dr)の生まれ年で、この曲の歌詞であり、リーガルリリーの表現の本質を示唆する<私は私の世界の実験台>というスタンスをテーマにしたものだ。この2時間弱のライブを経て実感したことは、以前はまだネガティビティをバネにしていたような部分が浄化され、どんな感情でも前進するエネルギーに転換する3人の心臓のタフさーーエンジンそのものがアップグレードされたバイクのようなタフさだった。
リーガルリリー・たかはしほのか
広いステージに向かって右からゆきやま、海(Ba)、たかはしが横一列に並ぶ陣形がすでに意思表明に思える。たかはしが準備OKの手をPAに向けて上げるとアルバムの曲順通り、ポツポツと単音のギターで始まる「ベッドタウン」。友情とか結束とかいう言葉は似合わないが、3人の繋がりを感じるこの曲で轟音を発し、アッパーな「GOLD TRAIN」でたかはしも海も跳ね、大きな動きを見せ、ファンも自ずと立ち上がると何か“私は今、生きている”という実感に心拍が上がり、涙腺が決壊する。最初から3人は無敵だ。冒頭から全力のパフォーマンスも危うさは感じない。ペース配分なんてどこ吹く風。ファンクテイストも感じる小気味いいギターカッティングで冒険物語を描く「キツネの嫁入り」では<結婚しようよ>をちょっと大きめに歌ったことに笑顔になってしまった。1曲1曲の物語が勢いに流されずに届くことにも感銘を受けた。
リーガルリリー・海
短く自己紹介の挨拶をして、轟音と淡々としたコーラスで歌われる<ばかばっかのせんじょうにギターを1つ持って>という対比に鳥肌が立った「ジョニー」。もう4年も前の1stミニアルバム『the Post』からのナンバーだが、今のたかはしからは世界と戦う姿勢より、この世に存在してバンドで音を鳴らすことでできる可能性を楽しむ姿勢が強く感じられる。そのニュアンスが20代になってからの楽曲である「ハナヒカリ」にも感じられた。曲間のつなぎもフィードバックノイズで、ひと連なりの感情や情景を立ち上げ、時にはディレイの残響自体が圧倒された私たちの気持ちの余韻と混ざる。大きめのライブハウスで体験してきたこの感覚。たった一音で意識が変わるこの体感。あらゆる名演を吸い込んできたZepp Tokyoに新たな音の記憶が刻まれたんじゃないだろうか。

リーガルリリー・ゆきやま

三拍子の「猫のギター」や軽快な「まわるよ」でムードを変えつつ、破滅型の映画のヒロインを思わせる「僕のリリー」でドキッとしたり。たかはしのボーカルが過去最高に聴き取れることも気持ちを揺さぶられる一因だろう。ブルージーにすら感じるスローなイントロ部分から切り込むようなストロークで「リッケンバッカー」が始まると、やはりこの曲が多くのリスナーの琴線に触れたきっかけの曲であることがフロアの反応でわかる。サビで拳を上げる人もいれば、じっくり展開に身を任せる人もいる。今年は音楽に救われた人も多いと想像するけれど、この曲で歌われている音楽は人を生かしも殺しもするという意味合いはあまり変わらない気がする。これはリーガルリリー初期からの本気度の表明だから。
リーガルリリー
ゆきやまの怒涛のドラミングに圧倒され、まるでボクサーのように舞うように跳ねているたかはしと海に目が釘付けになった「ぶらんこ」の曲終わりで、すでに16曲も演奏されたことに気付いて、その時間の早さに驚いた。3人の生音だけで構成するアレンジの針の穴に糸を通すような「これしかない」確信が、時空を歪ませている。一瞬たりとも目が離せないのだ。
17曲を演奏し終え、今日この日の「1997」をテーマにした内容について触れ、メンバーがたかはしの誕生日を祝い、ファンも拍手を送る。そこでたかはしが言った言葉がいかにも彼女らしかった。「誕生日はお母さんとお父さんがお母さんとお父さんになった日だから、そっちの方が嬉しいです」と。そして「今日はとても幸せな日です」とも。事前のインタビューでも誕生日は親や周りにいる人への感謝を伝えたいと話していた彼女。この世に自分が現れた奇跡。その思いを色濃くして、「1997」は海の重いベースラインから始まり、淡々とこの世に出現し、ここ東京に降り立った幕開けを思わせるAメロが音源以上にリアルに届く。そしてここまでの3人が起こしてきた化学反応ともいえるライブを経て、<私は私の世界の実験台>という歌詞が胸躍るワードとして飛び込んでくる。そして深夜から夜明けが見えてくるような哀愁と勇敢さを兼ね備えたサビが立体化する。さらにたかはしの語りを支えるリズムの骨太さ。ふとニルヴァーナ時代のデイブ・グロールはこんな感じだったんじゃないかと妄想したりするぐらい、シュアでしなやかなドラミング。

リーガルリリー

終盤の熱量はさらに増して、「スターノイズ」のエンディングのセッションの強力なアンサンブル。そして本編ラストは『the Post』のシークレットトラックでもある大きなグルーブの上でたかはしがポエトリーで表現していく「蛍狩り」をチョイスしたのも、いかにもリーガルリリーらしい。咆哮するギターを高く掲げるたかはしをはじめ、3人の剥き出しの野生が輝いている。ラスト、フロアを強烈に照らすライトがその心象と見事にシンクロした。
残響をそのままにしてステージを去った3人の潔い姿、それがこの夜のライブの充実を物語っていた。
アンコールでは新曲もたくさん書いていること、今日まで生きてきて良かったということを伝え、生音のアンサンブルの心地よさを本編のテンションから途切れることなく聴かせ、トータル2時間弱のステージは終演。それでもしばらく拍手が鳴り止まなかったのはダブルアンコールを求めるというより感謝の表現が拍手以外にないからだったんだと思う。ライブハウスで透明な轟音に身を任せる喜びの回路が一気に目覚めさせられたのだから。確かに生きてるーーこの感覚を次はどんな新曲で、どんなステージで実感させてくれるのだろう。早くも2021年のリーガルリリーに会いたくなっている。

文=石角友香 撮影=MASANORI FUJIKAWA
リーガルリリー

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