SUGIZO(Photo by Tatsuo Hata)

SUGIZO(Photo by Tatsuo Hata)

【SUGIZO インタビュー】
パンデミックの先にある
新しい世界へ向けた
救済の音を作りたかった

3年振りとなるオリジナルアルバム『愛と調和』。咆哮するような激しいフレーズは皆無で、ギターはクリアトーンやアコースティックが中心。シンセサイザーで宇宙の神秘を音像化し、自らフィールドレックしたという水音からは大自然の情景が立ち昇る。パンデミックで傷ついた人々の心を癒す、救済のヒーリングミュージック誕生の経緯を訊く。

『愛と調和』は疲弊しきった
現代社会へのメッセージ

『愛と調和』はSUGIZOさんの歴代どのオリジナルアルバムとも趣の異なる、慈愛とやさしさに満ちた作品だと感じました。前作『ONENESS M』(2017年11月発表)は男性ゲストヴォーカル陣を迎えたフィーチャリングアルバムだったため別軸と考えるとして、“怒れる電子音楽”を標榜していた前々作『音』(2016年12月発表)と比較すると激変しています。一体どのような想いから制作はスタートしたのでしょうか?

世界がこういう状況なので、そこにもちろん自分も打撃を受けて、このパンデミックの先にある新しい世界へ向けた救済の音を作りたかったんです。人々がどんどん疲弊していき、分断が激しくなり、差別も激しくなっていく…残念ながら、一見するとこのパンデミックで社会や人々は負の方向に向かっていますよね。経済至上主義、この数百年保たれてきた資本主義の限界にきていると僕は感じています。そこで、今作のもっとも大きなテーマとなったのは“縄文社会”だったんです。

古代日本の一体どういったところにインスパイアされたのですか?

現代文明、資本主義社会というのは基本的に利己的な生き方ですよね。強い者、数を持った者が勝ち、力のある者が上に立つ。力のない者は支配下に置かれ、災害や戦争、そして今回ようなパンデミック下においては最初に被害を受ける。ヒエラルキーの世界なので、みんなが強くなろうとし、他者を蹴落とそうとする。自分が、自分の周りが、自分の家族が、自分の国だけが得をしようとする…そういった“利己”の表れが今のコロナ禍における人々の分断であり、世の中の状況だと春ぐらいから強く感じていて。縄文時代はそれとは真逆で、人々が真の意味でみんな平等だったようなのです。縄文時代の後期にはもう天皇制らしき在り方があったらしいんですが、支配者としてではなく、天皇的立場のリーダーを中心としてスマートグリッドのように社会がつながり、あくまでも平等で“利他”的だった。今もっとも僕らが見習うべき精神性は縄文社会なんじゃないかと思ったんです。

縄文社会のあり方に現状打破のヒントを見出されたのですね。

縄文についての文献をいろいろと読み学んでいくと、日本がいかに素晴らしいかということを再発見するんですね。縄文からそのまま八百万の神を祀る信仰や神道につながっていくわけですし、1万5,000年以上にわたり平和が続いたのがいかにすごいことか。現代では考えられないですよね。その社会で重要だった感覚が“愛と調和”です。僕はそれを音楽にしたかった。今回のアルバム『愛と調和』は疲弊しきった現代社会へのメッセージ。ボロボロになった人々の傷ついた心や精神にやさしく浸透していく聖水のような音楽を作りたかったんです。

確かに、あらゆるものに神が宿っているという日本ならではの八百万信仰は、ウィルス感染拡大防止に実は役立っている、大事な意識なのかもしれません。

大事ですよね。重要なのはネガティヴなものを敵とみなさないことで、それは八百万の神の考え方と合致しているんです。日本人は嵐や雷、地震といった一見ネガティヴな事象をも神様のご霊示、ご意思だととらえてきた。ウィルスも敵と思うべきではないんですよ。僕らが目覚めるためのトリガーとしてウィルスは存在していて、そこから何かを学ぶべきなんです。駆逐しようとするのではなくそれを受け入れた時に、共存しながら社会は次のフェーズに移行するという認識が僕にはあります。

対ウィルスも人間同士も、敵だと認定して攻撃するのではなく、共存を目指すことこそが大切だと。

それが利己じゃなく、利他ということですね。人々が目覚めていかないと、同じようなネガティヴな状況が繰り返されるだけだと覚醒したのが4月か5月ぐらいのことで、そこからこの作品のコンセプトを着想しました。コンセプトを作るのと同時に、もしくはそれ以上に縄文や過去の文明のことを学び、自分の中で熟成されていった7~8月ぐらいになって、ドンドンドン!と一気に曲が生まれていったんです。

今作はいわゆる歌モノの3曲(※既発曲を再構築、再ミックス)と、その他インストゥルメンタル7曲という構成になっています。そうなった経緯をうかがえますか?

歌モノのうち「A Red Ray feat.miwa」と「光の涯 feat.アイナ・ジ・エンド(BiSH)」は、ガンダムの作品(『機動戦士ガンダム40周年プロジェクト』のテーマ曲プロデューサーを務めたSUGIZO監修による企画アルバム『機動戦士ガンダム 40th Anniversary Album ~BEYOND~』)に収録されたものですが、実はもとをただすと、この2曲と「ENDLESS~闇を超えて~feat.大黒摩季」(アニメ『ジビエート』エンディング曲)を含む、女性ヴォーカルアルバムを作る企画が進行中だったんです。

先述した『ONENESS M』の対となる、女性ヴォーカル・フィーチャリングアルバム『ONENESS F』ですね。

そう。それを作ろうと去年から決めていて、オファーも9割終わっていたし、曲も大方生まれていて。その作品は今まで以上にソウルやジャズに接近したものを計画していたんですね。実はロンドンでもレコーディングのスケジュールを立てていて、日本とイギリスのジャズ、ソウル畑のミュージシャンや仲間たちとセッションすることなど、いろいろと決まっていたんですけど、全てがコロナ禍で流れてしまって。

海外へ行くのは不可能でしたものね…。

でも、日本人のシンガーはできるかなと思ったんですけど、やはり“こういう状況ではスタジオに行けません”となって。人と対峙し、人と人とのケミストリーで生まれる音楽の作り方ができなくなってしまったんです。なので、3~4月ぐらいの時点で一度全てを諦めて。でも、“ものを作りたい!”という欲求に自分が駆られている中で、今回のコンセプトが新たに生まれていったんですね。『ONENESS F』は先ほど申し上げたようにソウルやジャズのフィーリングを重視し、ブラックミュージックに強い影響を受けてきた自分の色を特に強く出したい作品で、その中でこの3曲は言わば、ちょっと異質だったんです。そこで、この3曲は残したまま、全体的にアンビエントや宇宙的な方向に思いっきりシフトしてこういう作品になったという経緯があります。

なるほど。インストゥルメンタル7曲はクリアトーンやアコースティックのギターサウンドとシンセサイザーを駆使しつつ、情緒的なヴァイオリン、自然界を映し込んだような水音、または雅楽を思わせる神楽鈴など、多彩な音像となっていますね。

神楽鈴、そして水音をはじめとする自分で録ってきたフィールドレック素材が今回とても重要で、屋久島を中心として箱根でも録りましたし、以前行ったパレスチナとかヨルダンとかの音が使われていたりもしています。今回は過激なものとかアバンギャルドなものとか、みんなをびっくりさせようとか、人為的に面白いことを作ろうとか、そういう意識を一切排除し、全てが自然に存在している感覚を大切にしました。植物が育つように“音を愛でよう”と思って。全てが自然の流れるまま、自然に枝が成長して葉が生まれるように、その感覚を一番重視しましたね。

だから、全体的にやさしく感じるのですかね?

たぶん。僕自身、刺激を与えるのではなくて、“癒しを共有したい”という気持ちが強いからだと思うんです。いつもだったら“刺激を共有したい”なんですよ。でも、もう何年も前からアンビエントやヒーリングに特化したいと考えていて、図らずも状況がこうなって…今だからこそ人々をやさしく包み込めるような音を生みたいと思ったんです。あと、今回の作品においてもう一つとても重要なこととして、ある写真集に僕がものすごく惚れてしまったんですね。その写真集の空気感から音楽がどんどん生まれてきたというのもあります。秦達夫さんという素晴らしい写真家の屋久島の写真集で、それがあまりにも感動的で“こんな感じのアートワークを作りたい!”と思ったんですが、“こんな感じ”ではなく、イチかバチかご本人に連絡して使わせていただけないかお願いしてみようと。コンタクトを取ってもらったところ前向きなお返事をくださり、それが今回のアートワークにつながりました。だったら、僕自身の写真も屋久島で撮り下ろそうということで急遽屋久島へ行くことになるんです。屋久島の象徴と言えば縄文杉ということで“縄文”というテーマともつながって。とはいえ、縄文杉は縄文文化そのものとはあまり関係がなくて、その時代から生きていたというだけでついた名前のようですね。樹齢千年以上のものを“屋久杉”と言うんですが、その多くは2000年生きている。その時代から未だに存在しているという生命のエネルギーにものすごくインスパイアされましたね。

自然への畏怖の念を抱かざるをえませんよね。行ってみると意外にコンパクトな島ですが、エネルギーに満ちていて。

そう! ものすごいエネルギーに満ちている。「Nova Terra」という曲のイメージはまさに縄文そのものであり、屋久島への畏怖の念から生まれています。
SUGIZO(Photo by Tatsuo Hata)
SUGIZO(Photo by Tatsuo Hata)
SUGIZO
アルバム『愛と調和』【Premium Edition】(2CD)
アルバム『愛と調和』【Regular Edition】(CD)

OKMusic編集部

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