INTERVIEW / ROU 意識するのは「届け
る」こと。新鋭SSW・ROUが語る、コロ
ナ禍を経て芽生えた変化

2017年より本格的に音楽活動をスタートさせた新鋭SSW・ROUが新作EP『ALLTANA』を12月26日(土)にリリースする。
同作へ向けて連続リリースされた「Beginnings」、「Pain & Praise」の2曲はトラップ以降のリズムやフロウ、そして独創的な音色が印象的な、先鋭的なR&Bナンバー。オンタイムの海外トレンドとのリンクも感じさせる作品だ。
俳優としてのキャリアも持ちながら、自身で作詞作曲からトラックメイクといった楽曲の大部分を手がけるなど、ミュージシャンとしてのスキルの高さ、造詣の深さを感じさせるROU。今回はそんな彼の直近の歩みを紐解きつつ、今作『ALLTANA』が生まれるに至った背景に迫ることに。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Assistant:Ai Kumagai
Photo by 遥南碧(https://harunaoi.wixsite.com/harunaoi)
自分を見つめ直した自粛期間
――今回の連続配信シングル、そして今月にリリースを控える新作EP『ALLTANA』の前に、まずは前作『EP』についてお聞きしたいです。前作と今作では、ガラッと雰囲気やテイストが変わりましたよね。
ROU:前作はバンド・サウンドで、全部生で録っているのと、意識的に様々なジャンルや要素を取り入れていたので、確かに今回連続でリリースしているシングル群とはかなりテイストが違いますね。
――前作をバンド・サウンドで制作するに至った経緯というのは?
ROU:2017年くらいから本格的に音楽活動を始めて、ライブハウスなどにも出演するようになったのですが、その中でどんどんミュージシャン仲間ができてきたんです。ライブもその仲間たちにサポートをしてもらうようになっってバンドという形態でライブするようになりました。そしたら、すごく評判もよくて。同世代のメンバーで作品を作りたいって思うようになりました。
基本的には自分が基盤になるテンポ、トラックとメロディを作って、そこから編曲をお願いしたかったミュージシャンとやりとりをして、サウンド周りは彼と話し合いながら曲作りをしました。それを元にバンド・メンバーで肉付けしていくという方法で、完全に生音で録音した作品になりました。
――『EP』は曲によって様々なジャンルを感じさせる、振り幅の広い印象を受けました。
ROU:グランジみたいな要素だったりいわゆるシティ・ポップ的なサウンドやR&Bだったり、芯は通しつつも様々なスタイルに挑戦したつもりです。Maroon5の楽曲のコード感をパロディ的になぞってみたり、曲名も「Sunday Morning」になぞらえて「This morning」にしたり。かなり音楽的な遊び心を入れています。ヒップホップじゃないですけど、サンプリングやオマージュみたいな感じで、元ネタや影響源を想像しながら聴いてもらえるとより楽しめる作品なんじゃないかなと思います。
――『EP』リリース以降、今年はコロナ禍で様々な環境が激変しました。ROUさんの活動においてはどのような影響が出ましたか?
ROU:『EP』を聴いて新たに声を掛けてもらったイベントなども中止になったりして、結構悔しい思いはしました。そういったライブ面も大きいのですが、そもそも音楽の届け方が変わってしまったことに付随して、自分の音楽に対する考え、価値観も大きく変わったと思います。ただ綺麗にリリックを綴るのではなく、もっとストレートに伝わる言葉を選ぶようになったり、時には耳に痛いような言葉も入れる。ネガティブでもポジティブでもちゃんと心に刺さるような作品にしたいと考えるようになりました。それはもちろんサウンド面やメロディなどにも反映されていると思います。
あと、今までやってきた仲間、ミュージシャンたちもより団結するようになったと感じています。「今は辛い時期だけど、みんなで頑張っていこう」というような空気感が流れているのかなと。それはアートワークや映像を手がけてくれている仲間たちにも言えることで。そういったこともあり、改めて自分の作品を通して、「明日頑張ろう」というようなエネルギーを与えられるような作品にしたい。そういう意識が強くなったと思います。
――なるほど。では、ライブ活動が思うようにできなくなって以降、どのようなことに時間を充てるようになりましたか?
ROU:デモも含めて、自分の過去の作品を聴き直したりしました。やっぱり、今聴くと当時とは全く違った印象を受けるんですよね。世界が激変してしまったことで、音楽の在り方にも大きな変化が起こった。その中で、The Rolling Stonesが4月に発表した「Living in a Ghost Town」だったり、時代とリンクするような作品、もしくは社会的なメッセージを込めた作品が必要なんだと感じました。そういった部分を自分の中で見つめ直す期間になったのかなと思っています。何が本当に大切なのか、そして何が要らないのか。色々なことを頭の中で整理できたのかなと。
――今回、「Beginnings」以降に連続リリースされる楽曲は、『EP』でのバンド・サウンドから一転、トラックものというか打ち込みの要素が強まったように感じます。こういった変化は、自身を見つめ直す中で生まれたものでしょうか。
ROU:『EP』を出す前、2018年に、山下達郎さんのカバーなども収録した『Today』というマキシ・シングルをリリースしているのですが、その作品は今回の作品と同様にDTMで作った作品だったんです。当時、その作品に対して音楽プロデューサーの名村武さんから「これを生で再現したらおもしろいんじゃないか」と言ってもらえて。それでバンドでライブしたり、作品を制作してみたりした。そこから一周回って、今回は再びDTMに戻ってきたという感じですね。ソロ・シンガーでフレキシブルな活動を展開する人たちからの影響もあるかもしれません。
――サウンド面について、ざっくり噛み砕いて言ってしまうと、トラップやフューチャーベース以降のハイブリッド感覚を擁したR&B、ラップ・ミュージックの影響が色濃く感じられました。そういったものはご自身の中で血肉化しているものでしょうか。
ROU:そうですね。昔からChris BrownKendrick LamarTyler, The CreatorといったR&B、ヒップホップもよく聴いていて。そこからChance The RapperやPost Maloneなどが出てきて、「あ、ラッパーでも歌っていいんだ」って思いました。そういう意味では、昔から聴き馴染みがあったサウンドだと言えると思います。
コロナ禍においても前を向くことを表現した「Beginnings」
――折角なので、ROUさんの音楽的なルーツやリスナーとしての変遷についても伺いたいです。幼少期から音楽が身近な存在であったそうですが、最初に興味をもったきっかけやタイミングは?
ROU:小さい頃は流行りの音楽を聴いていました。ただ、両親の影響で「オリビアを聴きながら」(杏里/1978年)などの古い歌謡曲もよく聴いていました。
海外の音楽に触れたのは高校生の時。Boyz II Menの「End Of The Road」(1991年)に衝撃を受けて。そのソウルフルなグルーヴ感、フェイクもすごくカッコよくて。そこからAlicia KeysやBeyoncéといったR&Bなどを聴くようになりました。
――先程話した通り、前作『EP』にはロック的要素も強く表出していました。そういう要素はバンド仲間と合流していく中で取り入れていったのでしょうか。
ROU:いえ、今話したR&Bなどと並行して昔から聴いていました。中学一年生の時、友達に勧められてELLE GARDENの『RIOT ON THE GRILL』(2005年)は強く印象に残っています。その後はNirvanaや初期のロック・テイストだった頃のMaroon5なども好きになって。バンドもやりたかったのですが、地元は田舎ということもあって、メンバーを見つけることができず。数少ない音楽をやっていた友達とは音楽の話をよくしていましたね。
――DTMや作詞作曲に関しては大部分が独学とのことですが、どのようにスタートさせたか教えてもらえますか。
ROU:完全に何も知らないところから始めました。そもそも、当時は東京に出てきたばかりで、音楽仲間もいなかったのでひとりでできることを探していくうちにDTMに辿り着いたんです。最初はネットで調べたり、本を漁ったりしつつ、ソフトを実際に触りながら少しづつ操作を覚えていって。参考にする曲を聴いて、それっぽいトラックを作ってみるところから始めました。最初は特にベース、低音の処理に苦戦したことを覚えています。次第に仲間ができてきて、コードについて教えてもらったり。手探りで理論とかも勉強して、知らないことは聞きに行くスタイルで徐々に身につけていきました。
始めた当時は1日に2曲作ってやろうと意気込んで、本当に没頭していましたね。1コーラスでもいいからとにかくメロディとトラックを形にするっていう感じで。ひとりで何が正解で何が不正解かもわからないまま作っていました。その後、自分の作品をエンジニアさんにミックスしてもらうようになった時、DTM歴を聞かれて。「10年くらいですかね」って答えたら「ここまでのレベルに到達するのは、確かにそれくらいかかるよね」って言ってもらえて。それはすごく嬉しかったです。
――自宅の制作環境もかなり整えていそうですね。
ROU:はい。ただ、ソフトで完結することが多いので、ハード機材はそこまで多くないのですが。ボーカルも自分の家で録ることがあるのですが、ミュージシャン仲間からマイクとかボーカルの処理について聞かれたり。色々と情報交換しつつ、環境を充実させています。スタジオにいかなくても完成一歩手前まで持っていけるので、そこはコロナ禍においてもあまり不自由はなかったですね。今作はボーカルとミックスの下処理まである程度家で行い、そこからパラ・データをエンジニアさんに送って、ミックスをしてもらいました。
――EP『ALLTANA』についてお聞きしたいです。まずは連続リリースの第1弾となった「Beginnings」について、この曲はどのようにして生まれてきたのでしょうか。
ROU:コロナ禍になって、ビッグ・アーティストの方たちが音楽好きを元気づけるための企画、施策などを行いましたよね。特に星野源さんの「うちで踊ろう」はとても多くの人を巻き込んで話題になった。これだけ大きなアーティストさんたちが、みんなを元気づけようとしているので、自分も何かを人に届けたいと思うようになりました。
「Beginnings」というタイトルの通り、この曲は仲間や周りのみんなとこれからスタートしようぜっていう作品になっています。こっち側、そっち側とか関係なく、いいスタイルを貫いて、いいものを残す。いい風を吹かせていこうよっていう。サウンドは2016年か2017年くらいから親交のあるピアニストのSho Asanoくんに編曲で入ってもらって、メロウなR&Bなんだけどしみったれていない。ちょっと爽やかに、前を向こうとする姿勢が表現できたかなと思っています。
――制作はSho Asanoさんとリモートで?
ROU:はい。パラ・データを投げ合って詰めていきました。とはいえ、自分が最初の段階でリズム隊から全部、8割くらいガチガチに作っちゃったので、それを「上手いこと料理してくれる?」ってお渡しして。返ってきたら、がっつり変わってました(笑)。冒頭のリフやサンプルは上手く残してくれていたので、そこから再度意見を伝えて、ブラッシュアップしていきました。
――この曲ができたことで、EPや次の方向性などが見えてきたのでしょうか。
ROU:元々やりたかった方向性ではあるのですが、それがようやくちゃんとした形で実現できたっていうことが大きかったですね。それプラス、一歩前に進むことができたというか。
――EPには他に、「Pain & Praise」、「NIGHT FISH」の2曲が収録されます。こちらも同時期に制作された楽曲になるのでしょうか。
ROU:「Pain & Praise」は同時期に作った曲です。「NIGHT FISH」は、実は前作『EP』の店舗限定特典としてCDに収録した楽曲なんです。なので、制作時期も結構昔で。その時は「Night Fishing」だったんですけど、少し曲名を変え、ミックスもやり直しました。
――なるほど。「Pain & Praise」は“Pain”と付いていますが、こちらも前向きな、ポジティブなリリックが印象的です。一方、「NIGHT FISH」は少し自身のフラストレーションが表出しているようなリリックとなっていますね。
ROU:はい。「Pain & Praise」は大変なこともあるけど、前向いていかないとダメだよねっていう、やっぱりコロナ禍以降の考えが反映されていると思います。「NIGHT FISH」は多様化し続ける社会に対して、少し自身の強気な姿勢を貫くような内容になっていますね。
自分の内面、感情を素直に吐き出せるのが音楽のいいところだし、そこを表現するのが僕らの仕事なんじゃないかなって思うんです。この「NIGHT FISH」のおかげで「Beginnings」に繋がるというか。そういう意味では、EP『ALLTANA』のきっかけにもなっていると思います。ライブでも1番最後に歌うことが多くて。個人的にも思い入れの強い楽曲です。
芯を持って、一歩ずつ着実に
――EP『ALLTANA』をリリースして以降の動きについては、どのようなことを予定していますか?
ROU:配信ライブをやりたいなと思って、今話しを進めているところです。自分が今まで一緒にやってきたミュージシャン仲間にも参加してもらったり、VJやCGも入れて、配信ならではの演出を盛り込んでいけたらなと。作品に関してもコンスタントに発表していきたい考えています。新曲、もしくは昔の曲をリメイクしてリリースするのもいいなと。あと、MVやアートワークなど、世界観を統一していこうと思っています。これまでは結構バラバラだったのですが、いよいよ自分がやりたいことが明確に見えてきたので。階段を一歩ずつ踏み固めながら、少しずつ確実に上がっていきたいですね。
――確立してきたご自身のスタイル、ジャンルというのは、具体的に言語化するとしたらどのような言葉で表現しますか?
ROU:世の中にはこれから知ってもらう段階だと思っているので、ジャンルなどは聴いた人に決めてもらえたらいいかなと思います。自分は流行りの曲も好きで聴きますし、サウンド的にはあまりジャンルを固定したくないんですよね。ただ、根っこというか芯となる部分はブレないようにしたい。同世代のバンドやラッパーもそうだし、自分たちの音源だけでなく、アートワークや映像まで、細部までこだわりをもってディレクションしているんだろうなっていうことが伝わってくるようなアーティストになれたら最高だなって。同世代のアーティストさんにはそういう方が多い気もしていて。
――スタッフに任せるのではなく、自分で舵を切って着実に進んでいきたいと。
ROU:そうですね。他の人に任せたりするスタイルは、自分には向いてないと思うんです。自分は俳優のキャリアがあるので、以前は音楽をやっていく上でも穿った見方をされたり、型に嵌め込まれることも多くて。少なからず憤りを感じることもあったんです。なので、そういうものを全て取っ払ってしまえるように、自分の好きなことをしっかりとアウトプットしていきたい。もちろん、自分の目指す方向性を理解してくれる方々の力をお借りしていきながら。
――ミュージシャンとして、音楽家としての大きい目標や夢、ゴールを設定するとしたら?
ROU:自分の作品、表現を通して、何気ない日々のプラスになるようなエネルギーを伝えられる、そんなアーティストになることが一番の目標です。もちろん多くの人に聴いてもらえたら嬉しいのですが、それ以上にしっかりと届けることを意識したいです。こういった大変な状況においてもしっかりと自分の作品、メッセージなどを届けられるアーティストっていうのはやはり特別な存在だと思うので、自分のスタイルを崩さずにそれが実現できるのが理想です。あとは仲間たちと一緒に上がっていきたいですね。今は大変な時期だけど、みんなで影響力を持つ立ち位置までにいけるように頑張りたいです。
【リリース情報】

ROU 『Pain & Praise』

Release Date:2020.12.09 (Wed.)
Label:Airweiton
Tracklist:
1. Pain & Praise
Distributed by NexTone Inc.
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ROU 『ALLTANA』

Release Date:2020.12.26 (Sat.)
Label:Airweiton
Tracklist:
1. Beginnings
2. Pain & Praise
3. NIGHT FISH
■ ROU オフィシャル・サイト(http://rou.tokyo/)

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