主演の小野絢子&福岡雄大も太鼓判!
大和シティー・バレエ 宝満直也振付
版『美女と野獣』で心温まるハートフ
ルな作品で幸せな年末を

神奈川県大和市を拠点に、個性的なプログラムで公演を行う大和シティー・バレエが、2020年12月27日(日)、世界初演となる全幕バレエ『美女と野獣』を上演する。振付は宝満直也(NBAバレエ団)。新国立劇場バレエ団在籍時代から数々の振付作品を発表し、NBA移籍後は『海賊』、同『白鳥の湖』など全幕バレエの振付にも携わるなど、独特な感性とセンスで多方面から高い評判を得ている振付家だ。今作は宝満初の全幕バレエの単独振付作品でもある。主演のベルと野獣には新国立劇場バレエ団プリンシパルの小野絢子と福岡雄大。このほか奥田花純、五月女遥、福田圭吾、中家正博、木下嘉人(以上新国立劇場バレエ団)、池田武志(スターダンサーズバレエ団)、八幡顕光(ロスアンゼルスバレエ団)など個性豊かな実力者らが名を連ねるなど、出演者も豪華だ。「年末を締めくくるにふさわしい、ハートフルな作品」と主演二人も太鼓判を押す今作について、宝満、小野、福岡に話を聞いた。(文章中敬称略)

■長年温めていた作品がいよいよ実現。刺激しあいよりハイクオリティな作品を目指す
――まず『美女と野獣』をバレエ作品にしようと思ったきっかけは。
宝満 僕自身の頭の中には「いつかこういうことができれば」というふわふわとしたものがあり、それがいろいろな人や経験を経て形を成していくんです。『美女と野獣』もそうしたもののひとつでした。また絢子さんと雄大さんのお二人を主演に全幕バレエをつくりたいというのは、いつか実現させたい僕の夢のひとつでした。さらにバーミンガム・ロイヤル・バレエではビントレー振付の『美女と野獣』がありますが、日本ではまだ聞いたことがない。そうしたなか、今回佐々木三夏先生に「上演してみてはどうか」という、とてもありがたいお話をいただきました。ほんとに感謝しています。
宝満直也
――福岡さん、小野さんは宝満さんから主演のお話をオファーされたときの心境は。
福岡 宝満君からは以前から『美女と野獣』をやりたいという話を聞いていたので、全幕上演が決まったと聞いた時は「おめでとう」という気持ちでした。ただ宝満君の作品はとてもハートフルでお客様の心に強く響くのですが、踊る方はとてもハードなんです(笑)。以前僕と絢子さんでガラ公演に出るときに、宝満君にパ・ド・ドゥの振付をお願いしたんですが、それも結構ハードで、リハーサルが進むほどに要求も高まってきて、この人本当にドSだなと(笑)。
小野 ほぼ同意見で、ドSのところも否定できないです(笑)。でもそれは常に新しい表現を求めているからであって、彼と一緒にクリエイションをすることはとても楽しいんです。実は以前踊った宝満君振付『三匹のこぶた』(*新国立劇場バレエ団「DANCE to the Future 2016 Autumn」にて初演)も相当にハードでした。でもクオリティも高く、すごくやりがいがあるんですよね。
宝満 お二人とのクリエイションは僕自身が学ぶこと本当にたくさんあり、すごく刺激を受けるんです。先のガラ公演のパ・ド・ドゥを振り付けたときもそうだったんですが、ちょっと投げかけたものが何倍にもなってすぐに返ってくる。こんなニュアンスで動いてほしいな思ってお願いをすると、僕がやりたかったこと以上に美しかったり、ベルや野獣的な工夫をしてくださったり。「そんなにできるのか」と思うと、さらにこういう風にしてくださいと、ついまたお願いしてしまう。するとまた素晴らしいものを返してくれる……という感じで、どんどんハードになってしまう(笑)。本当に底知れないお二人です。
僕にとってはほかのダンサーたちもそうなんですが、リハーサルの時間はとても幸せなんです。「しんどい」とか「ハードだ」とか言われ、そんなことをさせて申し訳ないという気持ちは半分ありますが、でも自分の想像を超えるものをどんどん出してきてくれて、振付家冥利に尽きる思いです。
小野絢子 福岡雄大

■物語は『美女と野獣』の原典、ヴィルヌーヴ夫人版をベースに
――『美女と野獣』はディズニー映画やミュージカルなどで有名ですが、宝満版のストーリーはどういったと点がポイントとなりますか。
宝満 物語はディズニー映画『美女と野獣』の原作と言われているボーモン夫人版の、さらにその元となったガブリエル=シュザンヌ・ド・ヴィルヌーヴ夫人による、いわば原典の小説をベースとしています。今回全幕バレエをつくるにあたりディズニーの映画も見て、劇団四季のミュージカルも見ました。ただ100%に近い人が『美女と野獣』と聞いてディズニーのものを思い浮かべるでしょうから、あまりそこから離れすぎても、逆にお客様がついて来られなくなってしまう。かといってディズニーの真似をしたいわけではないので、そのバランスも取りつつ、自分のやりたいことと照らし合わせながらつくってきました。ファンタジーではありますが、ベルと野獣の、二人の間に生まれる人間らしい感情とそのつながりは大切にしていきたいと思っています。
――ベルと野獣、それぞれのキャラクターをお二人はどのようにとらえていますか。
小野 ベルは芯が強く、勇気のある女性と捉えています。タイトルが『美女と野獣』ですから美しさもあるのでしょうが、でも彼女の美しさの核となっているのは心の強さかなと思っています。キャラクターは公演日当日に舞台に上がるまで作り続けます。
福岡 僕は野獣と王子の二役を踊りますが、野獣の時はすごく刺々しい心を持っている。宝満君がきちんとキャラクターの性格付けをしていて、またその性格も振付に入っているので、こちらとしてもとても分かりやすいです。野獣と王子の違いを演じ分けながら、宝満君が思い描いているキャラクターに近づけ、それぞれの役と自分をすり寄せていきたいと思っています。
――宝満さんがベルと野獣を通して表現したいものは何なのでしょう。
宝満 いくつかありますが、絢子さんがおっしゃった「美しさとは心の強さ」ですね。ベルの新しいものを受け入れる勇気が野獣の心をとかし周囲の状況を変えていくこと、形にとらわれない愛によって二人がお互いに全く知らない世界を学んでいく物語でもあると考えています。
福岡雄大、小野絢子

■野獣と3人の求婚者。それぞれの心の変化も見どころに
――そのほかの見どころを教えてください。
宝満 ストーリーのキーポイントの一つは中家さん、(木下)嘉人さん、(池田)武志君らが演じる3人の求婚者です。彼らは村では育ちのいい裕福な家の息子なんですが高慢で、裕福さを振りかざしてベルを振り向かせようとする。ベルは彼らに興味がなく、むしろ野獣と過ごす時に感じるピュアな、わくわくする心持ちの方にどんどん惹かれていく。そんなベルに対して、求婚者たちはイライラを募らせていく一方、野獣の方はだんだん人間味を取り戻していくんです。こうした出演者の心持ちが変化していくところは、見どころの一つになるかなと思っています。
また今回は舞台美術を建築家の長谷川匠さんにお願いしています。彼は「JAPON dance project 2018✕新国立劇場バレエ団 Summer/Night/Dream」で舞台美術を手がけた方で、とても素敵な舞台空間を作ってもらっています。僕の『美女と野獣』は国や年代などはあまり意識しておらず、角度を変えてみることでいろんなものに見えてくるような空間になったらいいなと思っています。衣装は佐々木三夏先生にデザインしていただきました。無国籍風な感じの衣装で、舞台美術も含めて、大和市の劇場規模を生かした空間になるよう、みんなで試行錯誤しながらやっています。
『美女と野獣』衣裳デザイン
――音楽はショスタコーヴィチを使うということですが。
宝満 ショスタコーヴィチの音楽に初めて出会ったのは『三匹のこぶた』で、そこで彼の音楽にほれ込んでしまいました。楽しそうでキャッチーな曲があったり、人の心理を突くようなものもあったりと、明るく美しいだけじゃない何かが彼の曲の中にはあるんです。今回の曲のセレクトは、特定の交響曲をベースにというのではなく、一つひとつのシーンに何が合うだろうと考えながら選びました。お客様が聞いていて心地よいのが一番なので、あまりマニアックにはならず、耳障りのいいものを選んではいます。
『美女と野獣』衣裳デザイン

■互いの信頼関係に支えられたクリエイション
――宝満さんはNBAバレエ団に移籍され、『海賊』や『白鳥の湖』など全幕バレエの創作に携わりました。今回そうした経験を経てためになったことは。
宝満 新国立劇場バレエ団やNBAなどでの経験全てが僕の力になっていると感じています。とくにダンサーが全幕バレエの制作側に回れたNBAでの全幕制作は、なかなかできない経験でした。スタッフのミーティングから参加して、予算と照らし合わせながらできることとできないことの取捨選択をし、より良いものを導き出していくという作業があり、全幕だとそうした規模が非常に大きくなる。それを2回も経験できたというのは、とても勉強になりました。森山開次さんの『NINJA』(2019年)の出演も、彼は自分であれこれ作る方なので、これもいい勉強になりました。
――今回の大和シティー・バレエでは、さまざまなカンパニーからゲストとして仲間が集い、舞台をつくります。
福岡 宝満君とは仲間を超えた何かを感じています。彼が新国から離れ違う道を歩いた時期もあるけれど、仲間やビジネスパートナーを超えた関係っていうのかな、それくらいの信頼関係がありますよね。
宝満 お互いに高め合いながらどんどん先に進んでいく関係が楽しく、面白いです。今回は絢子さん、雄大さんをはじめ多くのダンサーさんたちに来ていただきます。毎回顔を合わせられるわけではないので、僕はみんなをまとめ、脱線しないようにレールをしっかり敷くことが大事な役割だと思っています。また僕は、自分がダンサーであるからというのもありますが、今回踊ってくれるみなさんに、舞台でそれぞれの役を100%生き、力を発揮してほしい。その環境を整えるのが僕の役割で、その結果舞台で何が起こるのかがとても楽しみです。
宝満直也「牡丹灯篭」 大和シティーバレエ Summer Concert 2020 Ⓒ塚田洋一

■普段踊らない役も。大和シティー・バレエに出演する醍醐味
――小野さん、福岡さん、宝満さんはここ3年ほど大和シティー・バレエの公演に出演されています。このカンパニーの公演に出演する醍醐味は。
福岡 僕はコンテンポラリー作品で出ることが多いのですが、作品の出し方がユニークだと思います。あと三夏先生がとてもきっちりされているので、そこでレッスンをする生徒さんの姿を見るたびに、バレエの厳しさや、日々のレッスンが大切だなということを改めて実感します。
福岡雄大「死神」 大和シティーバレエ Summer Concert 2020 Ⓒ塚田洋一
小野 私はやはりほかではできない経験や、挑戦のチャンスをいただけるというのが大きいです。白兎や雪女などの役を踊ってきましたが、実はまだ大和シティー・バレエの公演では私、ティアラを載せたことがないんです(笑)。今回は(ベル役で)はじめて念願の普通の人間役が踊れます。
小野絢子「雪女」 大和シティーバレエ Summer Concert 2020 Ⓒ塚田洋一
――最後にお客様にメッセージを。
福岡 芸術はいつの時代もなくなってはならない、大切なものだということを分かっていただければと思います。そのためにも自分たちはできる限りのことをやらなければならないし、宝満君が作るものだから心に響くものであるのはわかっているんですが、僕らもその助けになるように頑張りたいと思います。
小野 宝満さんが行く先をしっかり示してくれているし、彼がいいたいこと、伝えたいことを実現できれば、この舞台は成功すると最初から確信しています。そのためにフィジカル面、フィーリングの面などで自分を高めていくことが大変ですが、でもこの作品を踊るにあたって迷いはありません。
宝満 いろいろ悲しいことがあった今年、お客様にハッピーになって帰ってもらおうと、それを念頭において作らなければと思っています。ぜひ温かく、幸せな思いで一年を締めくくっていただければと思います。
――ありがとうございました。
福岡雄大、小野絢子
取材・文=西原朋未

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