【ライブレポート】加藤登紀子が活動
55周年を締めくくる<ほろ酔いコンサ
ート>を開催

2020年12月26日、東京・有楽町のヒューリックホール東京で、加藤登紀子が歌手生活55周年を締めくくる<ほろ酔いコンサート2020>を開催した。<ほろ酔いコンサート>は、1971年に日劇ミュージックホールで始まり、今回で48回目。会場では酒が振舞われ、加藤がほろ酔いで歌う姿もお馴染みのこのコンサートは、多くのファンから愛され続けている。

2020年は、11月29日の大阪・梅田芸術劇場を皮切りに、神奈川、北海道、山形、京都とまわり、12月26日・27日の東京公演の後、12月29日の愛知公演が最終日。加藤の77歳の誕生日となる27日はコンサートの生配信も行われる。新型コロナウイルスの影響で、音楽イベントの自粛が続く中、
ことは記憶に新しい。このコンサートも、徹底した新型コロナ感染対策が取られたうえでの開催となった。東京公演は26日・27日の昼夜で合計4公演。そのうち、ここでは26日の夜の部をレポートする。

入場の際は、手指のアルコール消毒と検温を済ませ、名前と電話番号を記入したチケットの半券を自分でちぎって箱に入れるというシステム。会場では、毎年恒例の振る舞い酒はなく、変わりに特製ワンカップ大関(特製カード&スペシャル動画付き)が配られた。大きな声での会話は控えるようにとのアナウンスを守り、皆小声だが声のトーンや表情などから開演を待つワクワク感が伝わってくる。会場はキャパシティの半分の席数に限定され、前後左右が1席ずつ空くように指定されているため、余裕をもって座ることができる。BGMがアコースティックギターによる、ビートルズの「Michelle」「Ticket to Ride」「Here Comes The Sun」というのも心地良い。

オープニングは「Never give up tomorrow」。「新しい時代なんてもう来はしないと誰かが言っている」という歌い出しや、「明日はきっと もっとずっといい」「今日よりきっと もっとずっとましさ」という歌詞が印象的で、今を生きる人へのメッセージのようにも感じられる。1996年のアルバム『晴れ上がる空のように』の収録曲。2曲目の「Running On」は、ほろ酔いコンサートのオープニング用に1981年に作られた曲。軽やかな間奏に合わせてステージ上を歩きながら、「やっと東京ですよ! いい雰囲気!」と笑顔の加藤。歌い終えてから「いいですね! もう、いつもだったらアンコールっていうような雰囲気でスタートしました」というほど、熱い空気の中で始まった。
バンドメンバーは5人で、鬼武みゆき(ピアノ)、告井延隆(ギター)、渡辺剛(ヴァイオリン)、鶴来正基(キーボード)、早川哲也(ベース)という編成。皆、加藤のコンサートを長くサポートしており、高い技術に加え、息の合った演奏が圧巻である。来場者へのお土産の特製カードには、スペシャル動画が見られるQRコードが印刷されており、その動画内で歌われている「酒は大関」をアカペラで歌う場面では、和やかな笑いが起こり、アットホームなムードの中、乾杯の挨拶となった。

「次は2001年1月1日のお正月に作った曲です。ちょうどその前の年に9.11のテロがありました」と振り返り、「地球のすみずみまで人間が力を及ぼすようになったら、もうここを守れるのはもう人間しかいない」という思いを込めて作ったという「Now is the time」、続けて、1992年のアニメ映画『紅の豚』のラストテーマソングに使用された「時には昔の話を」を披露。ビートルズの「IMAGINE」のカバーは、1番は加藤による英詞の歌唱に、2番はギターの告井による英詞の歌唱に加藤が日本語詞の語りをのせるという構成。歌詞の意味がより伝わって来る感動的なパフォーマンスである。
ソロによる弾き語りコーナーは、加藤が練習していた約30曲の中から、日ごとに変えて自由に選ぶ、という<ほろ酔いコンサート>の原点に返ったようなスタイルだという。アコースティックギターの弾き語りで、「いく時代かがありまして」「知床旅情」「あなたの行く朝」を、当時のエピソードを交えて歌唱。「知床旅情」を作った森繁久彌と加藤は、共に満州からの引き揚げを体験しており、佐世保に着いた日が数日しか違わないという話には、特に不思議な縁を感じる。

「さよならが次から次へと襲いかかってきますね。今年も色々な人との別れがありました」と加藤。12月24日に惜しくもこの世を去った、作詞家・なかにし礼との思い出話では、涙声になる場面も。なかにしも満州で生まれて戦後の引き上げを体験したという点が加藤と共通している。加藤はシャンソン歌手を目指していた頃に、なかにしの訳詞の曲をよく歌っていたのだとか。「やっぱり歌謡曲を歌わなければダメだということで、礼さんに詞を書いていただきデビューしました」と振り返る。ちなみに、デビュー曲は、1966年に発売された「誰も誰も知らない」。それから月日が経ち、1986年に加藤は石原裕次郎の最後のシングル「わが人生に悔いなし」の作曲を手掛けることになる。同曲の作詞はなかにしだった。「裕ちゃんに書いた詞があるから曲を書いてほしい」と、なかにしから初めて詞が送られてきたという。当時について加藤は、「びっくりしましたが、ものすごくわかりやすい詞で、原稿用紙を見ているだけでもう、メロディが浮かんでくるような感じでした」と明かしている。「いくどもいくども、礼さんと色んな話をしたんですけれど、ある時、どうして私に曲を、と言ってくださったんですか? と尋ねたら、『だってお登紀、僕たちは見て来たからね、人の生き死にを』と言ってもらって、すごく私は嬉しかったし、楽になったんです。戦争が終わった時に礼さんは7歳で私は1歳。『僕たちは見て来たでしょ』と言われて、その時に心の底まで、礼さんという存在が伝わってくる感じがしました」というエピソードも大変貴重だ。同曲の歌詞は、「長かろうと短かろうと わが人生に悔いはない」「右だろうと左だろうと わが人生に悔いはない」「生きてる限りは青春だ」と、わかりやすくも心の深い部分を打つ、なかにしの傑作のひとつと言える。
ソロコーナーの後はバンドメンバーが再登場。4月と5月は「ステイホームしていることが多かった」という加藤が、外出自粛中に作曲した「この手に抱きしめたい」を紹介。同曲は、『最もつらいのは感染してしまった人や医療現場の人たち。両者をどう応援できるかが今の私の最大の課題』という思いから作られた、加藤登紀子 with friendsによる楽曲。元々は、4月13日に加藤がギターの弾き語りで歌う動画をYouTubeにアップしたことから、笑福亭鶴瓶、宮沢和史相川七瀬ゴスペラーズ、ダイヤモンド☆ユカイなど賛同者が増えていき、話題を集めた。

新型コロナにより10月4日に逝去した、デザイナーの高田賢三と加藤の縁についても語られた。1993年に放送されたテレビドラマ「夢は世界のデザイナー ケンゾー・ジュンコの青春物語」(フジテレビ)に、加藤は高田の文化服装学院時代の恩師・小池千枝役で出演し、テーマソングも書き下ろしている。当時、高田はフランスでの活動も考えていた加藤の相談に親身になって答えていたという。同番組のテーマソングとなった「石ころたちの青春」でコンサートの前半を終えた。
後半は、まるで異空間に引きずり込まれるような、不穏でアシッド感溢れるインストゥルメンタルから加藤が登場。81年に作った「形あるものは空」に、一転して、柔らかく優しいバイオリンの音色から、1989年にフランス革命200年目のパリでの公演のために作った「Revolution」と、メッセージ性の強い曲をたたみかける。「形あるものは空」は、ほとんど歌っていなかったという、珍しい選曲。加藤曰く「今年の気分」ということで選んだのだとか。同曲の歌詞は、「力あるものは空、力あるものは不自由、力あるものは孤独、力あるものは恥ずかしい」という考えさせられる内容。加藤は「今こそ言ってやろうと。いい詞だなと(笑)」「力のある人がまっとうであってほしい」「今こそ、力なきもの達の自由が大事なのよ!」と客席に語りかけ、拍手が起こった。こういった名言を聞くことができるのも加藤のコンサートならでは。

続いて、加藤の真骨頂ともいえる、エディット・ピアフの「愛の讃歌」、加藤がピアフと同じく敬愛する美空ひばりの曲で、東京ドームの不死鳥コンサートのため、なかにし礼が書き下ろした「終わりなき旅」を熱唱。2人とも「戦争の真っ最中に生まれて厳しい環境を体験し、最後の最後まで命の一滴を歌うために使った」ことが共通していると加藤。凄みさえも感じさせるパフォーマンスで会場中を歌の世界へと引き込んだ。コンサート終盤の「百万本のバラ」では手拍子も大きくなり、会場の熱気もますます高まる。バイオリンのソロやマンドリン演奏が効いたアレンジも魅力的だ。
最後に、2019年に『ラジオ深夜便』(NHK)の依頼を受けて作った「未来への詩」を歌い終えると、両手を広げて深々とお辞儀をする加藤。ステージを去ると、すぐさまアンコールの拍手が起こり、アンコールとして、「Power to the people」「Begin Again」と、アップテンポの明るい曲で大いに盛り上がり、その後もアンコールを求めるファンに応え、「あなたに捧げる歌を」でしっとりとしたエンディングを迎えた。同曲の間奏で、「言葉にできないけど、今日ここで会えた一人ずつとタッチ(※ハイタッチのポーズで)した、そんな気持ちです。元気で頑張ろうね。元気じゃなくてもいいんだけど。大変でも大丈夫!」と語り、最後は「今夜ここで逢えたうれしさ 忘れずにいたい」という歌詞を心をこめて歌い切った。コロナ禍の中でも音楽活動と新しい挑戦を続け、音楽の自由さと可能性を示してくれる加藤の56年目にも注目したい。

77歳の誕生日となる12月27日のコンサートは、生配信を予定している。

撮影:ヒダキトモコ
取材・文:仲村 瞳

<加藤登紀子ほろ酔いコンサート『ほろ
酔いコンサート2020 Viva!セヴンティー
・セブン』>

配信日時:12月27日(日) 開場 16:00 / 開演 16:30
視聴チケット:2,500円(税込)
販売期間:~2020年12月31日(木)17:59
見逃し配信期間:公演終了後見逃し配信公開から12月31日(木)23:59まで
※見逃し配信公開までは、しばらくお時間をいただく場合がございます。
購入は下記URLにて
※本配信の収益の一部を、フィランソロピー協会を通して、病気や貧困など困難を抱える子供達に寄付させていただきます。

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