薄気味悪さ満点モキュメンタリー、草
彅剛主演作、ディストピアものまで
2020年ベスト10を発表 #野水映画“俺
たちスーパーウォッチメン”

TVアニメ『デート・ア・ライブ DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス 怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。2020年の最後を飾る今回は、野水が今年鑑賞した作品の中からベスト10作品をピックアップ。一年を振り返りつつ、それぞれの作品の所感を語っている。
2020年、今年は予想もしない一年となった。映画に関しては、どうしても劇場へ足を運ぶ回数が減ってしまい、見逃してしまった作品も多いのが悔やまれる。そんな中でも、劇場公開・配信などで観た新作の中から今年のベスト10を考えてみた。
野水伊織の2020年ベスト10映画
1.『恐怖ノ黒電波』 
2.『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
3.『ポゼッサー』
4.『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』
5.『ミッドナイトスワン』
6.『星の子』
7.『透明人間』
8. 『声優夫婦の甘くない生活』
9. 『超擬態人間』
10.『コリアタウン殺人事件』
10位は『コリアタウン殺人事件』。Amazon primeにて配信されているファウンドフッテージ(撮影者ではない第三者が映像を発見する、といった設定のモキュメンタリー=ドキュメンタリー風フィクション)だ。無職の男性が、ロサンゼルスのコリアタウンで実際に起きた事件を独自に調査する、という構成のなのだが、男性の様子が段々とおかしくなってゆくのが恐ろしい。また、Amazon primeの作品情報でも「監督:わからない 出演:わからない」と記載されているのも薄気味悪い。
しかも、公開される一年ほど前に、海外の匿名掲示板に「行方不明になった友人から送られてきた」との投稿とともに、本作の映像に登場する写真などが貼られていたことも。「この映画で起きたことは事実なのでは?」と思わせるような出来事が、作品の外でも起きているのである。いつか都市伝説のような存在になるのではないかと思うと、観終わってもなお興味深い作品だ。
(c):2018(c)POP CO., LTD
9位の『超擬態人間』は、インディーズで製作されたホラー。「虐待の連鎖」というシリアスなテーマにしながらも、邦画では見たこともないようなえげつない機械が登場したり、物語が予想もできないオチへと展開してゆくエンタメ大作だった。鑑賞した後、「国産ホラーのさらなる可能性を垣間見たぞ……!」と、ひとり興奮しながら帰路についたのだった。
『声優夫婦の甘くない生活』
8位は『声優夫婦の甘くない生活』。ソ連から移住してきた声優夫婦の移民生活を描いた本作は、シビアな話の中にも笑いがあり、決してシリアスには振り切らず、面白くてあたたかいところがよかった。同じ声優という視点で観ると、あるあるも沢山見つかり、うなずけるシーンも多い。実際に声優として活躍するマリア・ベルキン氏が演じる妻・ラヤの声色が変わるシーンは必見。
『透明人間』 (c)2020 Universal Studios. All Rights Reserved.
7位の『透明人間』は本コラム( https://spice.eplus.jp/articles/272379 )でも取り上げたので、気になる方はぜひチェックを。
『星の子』 (c)2020「星の子」製作委員会
9位に続き、6位の『星の子』、5位の『ミッドナイトスワン』と、今年は刺さる邦画が多かった。『星の子』は、生まれた時から親の信仰の影響を受けて育った、いわゆる「宗教2世」の少女の悩みを描いた作品。主役の芦田愛菜さんをはじめ、役者陣の真摯なお芝居が胸に刺さる。宗教という枠組みはあるものの、親離れ・自立の話としても感じ入るものがあった。
『ミッドナイトスワン』 (c)2020Midnight Swan Film Partners
『ミッドナイトスワン』は、草彅剛さんがトランスジェンダーの女性を演じることで話題になり、かつ監督のSNS上での発言に賛否あった作品でもある。私も監督のインタビューを読んだりと、色々と精査してから鑑賞に臨んだ。
本作はトランスジェンダーの凪沙と、ネグレクトに遭っていた一果の邂逅の物語だ。他者に拒絶されて生きてきた者たちが互いに寄り添い、認め合い、強くなってゆく姿を想うと、今も鼻の奥がツンと痛む。私は一果の方にとてつもない共感してしまい、上映時間の大半、泣き止めずにいた。
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』Knives Out(c)2019 Lions Gate Films Inc. and MRC II Distribution Company LP. Artwork & Supplementary Materials (c)2020 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
4位『ナイブズ・アウト』は、遺産をめぐる古典的ミステリーの様相を呈しながら、華々しいキャストと現代的な要素を取り入れた魅力的なエンタメ作品だった。飄々とした探偵役のダニエル・クレイグはぜひまた観たい。

3位は、東京国際映画祭で観た『ポゼッサー』。犯罪にまつわるSFで、人体損壊もあり割とホラーめいた作風からは、デヴィッド・クローネンバーグの系譜を感じる。しかし、その中にも美しさと品を見て取れたのは、息子であるブランドン・クローネンバーグ監督の手腕かもしれない。
『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』  (c)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
2位の『ブックスマート』については、こちらのコラム( https://spice.eplus.jp/articles/274550 )で書かせていただいたので、そちらを参照してほしい。
「面白かった」「響いた」と感じる作品たち抑えて1位に選んだのは、『恐怖ノ黒電波』だ。独裁化が進むトルコで製作されたディストピア作品で、無機質な空気感と“深夜放送”が流れる世界観や、つげ義春先生の漫画『ねじ式』のような奇怪な世界に足を踏み入れてゆく不気味さがたまらない。台詞も多くなく、説明もないまま物語が進む抽象的な作品ではあるのだが、どうにも心に残って離れない。早く盤が出ないと発狂しそうなほど再見したくてたまらない、私のお気に入り映画の一本となった。

2021年には、延期されていた公開が決まっている作品もある。どんな一年になるかはわからないが、来年もまた素敵な映画作品を摂取して、心の栄養を欠かさない年にしたいと思う。

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