『フジロック』は大晦日の配信イベン
トで何を生み、残したのか?

「フジロックさえあれば 平気さ」
これはT字路sの伊東妙子(Gt,Vo)が2020年12月31日の大晦日に配信された『KEEP ON FUJI ROCKIN’ II〜On The Road To Naeba 2021〜』の中で高らかに歌いあげたフレーズである。
新型コロナウイルスの出現によって人々の暮らしにおける様々な“当たり前”が突如ひっくり返り、それまでの“普通”はそうではなくなった変化の年となった2020年。それを締めくくる大晦日にフジロックが実施したのがオンライン配信イベント『KEEP ON FUJI ROCKIN’ II〜On The Road To Naeba 2021〜』である。これまでフジロックには夏のイメージしかなく、真冬にフジロックを感じることはなかった。そんな夏フェスの王者であるフジロックが大晦日にイベントを打ち立てたのはなぜだろうか。
折坂悠太
1997年から23年連続開催されてきたフジロック。だが、新型コロナウイルスの猛威を受けて2020年の開催を断念し、翌2021年8月へ延期することを発表した。同時期には国内の音楽フェスやイベントのみならず、世界中の文化的活動が開催中止を余儀なくされたわけだが、日本を代表する夏フェスのパイオニアのその決断と通告には、フジロック参加をライフワークとして捉えている多くの人々をはじめとする音楽ファンが衝撃を受けることとなった。その悲報によって心に空いた大きな穴をふさぐことができずにいたフジロックファンに向けてアナウンスされたのが、もともと開催予定だった8月21日から23日の3日間に過去の出演アーティストによる貴重なライブ映像、撮り下ろしライブ映像が織り交ぜられた特別ライブ番組『FUJI ROCK FESTIVAL’ 20 LIVE ON YOUTUBE』の配信だった。
実際の配信時には20万人以上の視聴者が画面を見つめ、オンラインであってもアーティストの奏でる音楽を通じて強力なメッセージを発信できることを具現化し、観た者すべてに“やっぱりフジロックってすげえ”と思わせ、ただでは終わらせない音楽フェスの王者たる風格を見せつけた。同時に、音楽の持つ力のでかさと、フェスとは、音楽とは、表現者であるアーティストとそれを心に留めるオーディエンスの双方とその二つをつなぐスタッフの3者がいて初めて成り立つことを改めて知らしめた、歴史に残るオンライン配信となった。これがKeep On Fuji Rockin’ キャンペーンの第一弾イベントであり、それに続く第二弾イベントが今回の『KEEP ON FUJI ROCKIN’ II〜On The Road To Naeba 2021〜』であり、2021年夏に開催するフジロックに向けたキックオフ・イベントと位置づけされたものであった。
本来ならば有観客イベントとオンライン配信での開催予定であったけれど、コロナ第三波が押し寄せたことで有観客イベントは中止となり、オンライン配信イベントとして開催されることになった『KEEP ON FUJI ROCKIN’ II〜On The Road To Naeba 2021〜』は、The Birthday、cero、CORNELIUSGEZAN、カネコアヤノ、折坂悠太(重奏)、PUNPEETempalay、THE ALEXXら9組のアーティストによるライブ生配信の他、2020年11月にフジロック会場の苗場スキー場で撮影された4組のライブ映像、The Musicなどの海外アーティストからのコメント、過去のフジロックで撮影された場内外の様子がうかがえる動画で構成され、2020年12月31日15時からスタートし、年をまたいで翌1月1日午前3時半過ぎまでの10時間越えの年越しイベントが繰り広げられた。フジロックのオフィシャルSNSでは速報的にライブレポートが上げられていたので、本稿ではこれから同イベントのアーカイブ配信を楽しむ人、または見るのを検討している人に向けて見所ポイントをお伝えしよう。
PUNPEE
■見所ポイント・其の1/スマッシュ日高代表の挨拶
「今年はフジロック、朝霧ジャムで会えなかったけど、この配信で挨拶できて良かったと思います」と話した後、新型コロナウイルス感染で亡くなられた人へのお悔やみとその遺族や関係者へのお見舞いの言葉、そして現在も最前線にいる医療従事者の方々への感謝の言葉を述べ、「我々は来年のフジロック目指して頑張っていきます」と明言し、「ロックンロール、スタートだぜ。やろう!」とイベント開幕を宣言したスマッシュ日高代表の挨拶は必見だ。フジロックの生みの親の言葉にはオーディエンスに向けられた真の優しさがあるので信じることができる。この挨拶部分はイベント開始直前の14時55分頃から生配信された。これから見る人はもちろんのこと、見逃した人はアーカイブ配信でチェックしてみてほしい。
cero
■見所ポイント・其の2/「田舎へいこう」&苗場の映像
続いては日高代表の挨拶後に流れる「田舎へ行こう!」とその映像だ。キング・オブ・フジロックとして未来永劫に君臨する忌野清志郎さんの歌声と共に映し出されるフジロック会場で撮影されたオーディエンスの姿や会場内の風景などの様々な映像が一足飛びにフジロックへと貴方を誘ってくれること間違いなし。
CORNELIUS
■見所ポイント・其の3/アーティストによるライブ映像
フジロックというと海外アーティストが多数出演しているイメージが色濃くあるが、前述のとおり今回のイベント出演者はすべて国内アーティストだ。だが心配には及ばない。The Birthdayといったフジロック常連であるお馴染みのバンドもいれば、日高代表が立ち上げたレーベルからデビューをしたTHE ALEXXまでがラインナップされており、それぞれの音楽でフジロックと貴方を確かにつないでくれる。これまで気にはなりつつもタイムテーブル被りなどの理由から触れる機会がなかった人や、洋楽嗜好の人にとってはフジロック愛を持つ日本のアーティストをじっくり見られるいい機会と言えるだろう。ガーデンシアターで行われた9組のライブ映像はもちろんのこと、11月に苗場で撮影された「NAEBA SESSIONS」ではBIMがフジロックの森にある木道亭をクラブに変え、STUTSがところ天国前の浅貝川でプレイし、T字路sがドラゴンドラに乗って空中浮遊しながら秋の色に染まった苗場の景色をバックに、ここでしか見られないユニークなライブを楽しませてくれる。
Tempalay
冬のフジロックの新たなカタチ『KEEP ON FUJI ROCKIN’ II〜On The Road To Naeba 2021〜』を夜通し見終えた今、フジロックの新たな試みとして実施されたこのイベントは様々なことが劇的に変化した中でフジロックのない夏を経験し、個人のライフスタイルやフジロックへの思いにも変化が生じた年の瀬を寂しくさせないためにフジロックが用意した音楽ファンの居場所なのだろうと感じさせるものだった。それからもうひとつ、フジロックファンの間ではフジロックを“正月”と称する人が多くいる。なぜならフジロックは年に一度の祭りであり、そこでしか出逢えない音や人、景色や食べ物などが溢れているからだ。
GEZAN

愛しきすべてを包み込むフジロックという唯一無二の音楽空間に思いを馳せる正月というのもまた新鮮であるし、お酒を片手にのんびり過ごす正月時間にはオンラインで楽しめる音楽イベントはうってつけだろう。もしかしたら今回限りのレアなイベントとなるかもしれないこのイベントのアーカイブ配信は、1月5日(火)23:59まで楽しむことができる。
文=早乙女‘dorami’ ゆうこ
THE ALEXX

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