(左から)熙子役の木村文乃、明智光秀役の長谷川博己

(左から)熙子役の木村文乃、明智光秀役の長谷川博己

【大河ドラマコラム】「麒麟がくる」
第三十九回「本願寺を叩け」激動する
戦国の世に翻弄(ほんろう)される明
智家最後のだんらん

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「麒麟がくる」。1月3日放送の第三十九回「本願寺を叩け」は、長年、明智光秀(長谷川博己)を支えてきた糟糠の妻・熙子(木村文乃)の死で幕を閉じた。病に倒れた熙子と光秀、2人だけの静かな最後のやり取りは、政略結婚も多かった戦国の世において、そうしたものとは無縁で、仲むつまじく生きた夫婦らしい姿として、心に残った。
 その直前には、熙子の病気回復を願い、旅芸人の一座を招いて一族が一堂に会するにぎやかな一幕も見られたが、最終的にはこれが家族全員がそろう最後の場面となった。
 だが、光秀の家族のその後の運命を考えると、この場面の温かな雰囲気は、逆に切なさを際立たせる。本能寺の変に絡む一連の戦で命を落とす光秀や左馬助(間宮祥太朗)ら、男たちはもちろん、健やかに育った娘たちも、その後は困難な人生を歩んでいるからだ。
 光秀の子どもたちに関しては、不明な部分も多いが、今回、劇中に登場しているのは、娘の岸とたま、それに嫡男・十五郎の3人。その中で最も有名なのがたま、すなわち後の細川ガラシャだ。
 第三十九回では、初めて会った織田信長(染谷将太)から縁談を持ちかけられていたが、やがて光秀の盟友・細川藤孝の嫡男・忠興と結婚。ところが、光秀が本能寺の変を起こしたことで、その人生が一変したことは広く知られている通り。
 劇中でも間もなく、細川家に嫁ぐはずだが、成長したたまを演じる芦田愛菜の朗らかな笑顔が印象的なだけに、後の人生を考えると胸が痛む。
 一方、既に嫁いだたまの姉・岸(天野菜月)は、第三十九回で病に倒れた父・光秀の見舞いに駆け付けた際、「荒木の父から、お許しをもらって参りました」と語っているが、これは信長に仕える武将・荒木村重を指すと思われる。
 村重の嫡男・村次と結婚した岸(名前はドラマの創作か?)は、村重が信長に謀反を起こした際に離縁され、明智秀満(=左馬助)と再婚したとも伝わる。第三十九回の踊りを巡る左馬助とのやり取りが、その伏線になるのかもしれないが、いずれにしても、一筋縄ではいかない人生が待ち受けている。
 なお、まだ幼い光秀の嫡男・十五郎は、後の明智光慶とも言われているが、その生涯は明らかではない。ちなみに、「おんな城主 直虎」(17)には、光秀の遺児・自然がクライマックスの鍵を握る存在として登場したが、今回の十五郎もそんな意外な活躍を見せるのだろうか。
 荒々しい戦国武将たちが画面を埋め尽くす物語において、妻や娘など女性が多く、華やかで柔らかな印象の明智家は、視聴者にとってもほっと一息つける場面だった。
 第三十八回で、信長からもらったマントを身につけた光秀を囲むほほ笑ましいやり取りも記憶に新しいところ。そのだんらんの様子も、もう見られないのかと思うと、緊迫感が増し、大詰めが近づいていることを実感させられる。
 また、戦国時代と現代を比べるのは安易かもしれないが、その後に待ち受ける運命を知らずに生きる岸やたまの姿は、コロナ禍という予想外の困難に直面した私たちにも通じる部分があるようにも思える。
 「岸やたまの子は、戦を知らずに育つでしょうか」。これは、劇中で熙子が最後に残した言葉だが、そんな彼女たちに思いをはせてみると、物語がより深く味わえるのではないだろうか。(井上健一)

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