H.R.ギーガーと空山基、かつてない組
み合わせの2人展を堪能! 『H.R.GI
GER×SORAYAMA』レポート

2020年12月26日(土)から2021年1月11日(月)まで、渋谷パルコ・4Fのパルコミュージアムトーキョーにて、『H.R.GIGER✕SORAYAMA』が開催された。SFホラー映画の金字塔『エイリアン』のデザイナーとして名高いH.R.GIGER(ハンス・リューディ・ギーガー、以下「H.R.ギーガー」)と、人体と機械の美しさが融合した「セクシーロボット」シリーズを手掛ける空山基。以下、2人の奇才の強烈な個性を体感できる展示の見どころを紹介しよう。
展示風景。右の立体は空山基、後ろの絵画はH.R.ギーガーの手によるもの。
H.R.ギーガー✕空山基、初の2人展
空前の組み合わせの作品が一堂に会する機会
『エイリアン』で恐ろしいモンスターや宇宙船などのデザインを手掛け、驚異の想像力を示したH.R.ギーガー(1940-2014)は、スイスのシュルレアリスムの幻想画家・彫刻家・舞台美術のデザイナーである。人間の肉体と機械の造形を組み合わせたバイオメカニカルと呼ばれるスタイルの作品が多く、日本では1987年に渋谷西武シードホールにて展示を開催するなど、日本人のファンも多い。50年にわたるキャリアの中で家具や小道具、版画なども制作しており、活動が実に多岐に渡っている。
手前中央:H・R・Giger《Biomechanoid》1969 (c)Estate of HR Giger
空山基(1947年、愛媛県今治市出身)は、日本のイラストレーター。人間の肉体と機械のボディの美しさを追求し続けたイラストレーションは、クリスチャン・ディオールやディズニーなどともコラボレーションするなど、国内外において活躍を見せている。また、彼のキャリアを語る上で欠かせないのは、1999年に発表されたソニーのペットロボットAIBO(「ERS-110」から「ERS-210」まで)のコンセプトデザインだろう。クールな機械美が際立つボディで本物のペットのような仕草をするAIBOは多くの人を魅了し、MoMA(ニューヨーク近代美術館)とスミソニアン美術館のパーマネントコレクションに加えられている。
Hajime Sorayama《Untitled》2015 (c)Hajime Sorayama
H.R.ギーガーや空山基の名を知らなくても、『エイリアン』の異星人やAIBOを目にしたことがある人は多いだろう。H.R.ギーガーの世界は悪夢や幻想に満ちており、悪い方向へ向かった未来を描いているようにも思える。空山基の作品は明るい未来への予感やきらめく光、鮮やかな色彩に溢れ、両者の作品が並んでいるとコントラストが鮮やかだ。一方で作品の雰囲気は対照的ではあるものの、絵画の技法や、有機物と無機物が融合したモチーフなど、共通点も多い。この2人が今までに比較されて語られることはほとんどなかったため、今回は非常に貴重な展示であるといえよう。
展示風景
エアブラシをはじめとする超絶技巧
アーティストの技術をじっくり鑑賞
H.R.ギーガーと空山基の共通点の中で特筆すべきは、エアブラシを使っている点だ。本展は2人の卓越した技術や技巧をじっくり見ることができる。
空山基の作品は女性の体の柔らかさと無機物の曲線、人肌と金属のすべすべした質感と色味の微妙なグラデーションが見事にマッチしており、鑑賞する側の視覚のみならず、触覚を刺激するように思う。絵画作品の中のモチーフの女性の肌を見ていると、弾けるようなハリや輝くような艶が感じられる。
左より:Hajime Sorayama《Untitled》, Hajime Sorayama《Untitled》Late 90's いずれも(c)Hajime Sorayama
背景の奥行きがこの上なく深いH.R.ギーガーの作品は、闇の世界に引き込まれるような妖しい吸引力に満ちている。なおギーガー自身は、生前、エアブラシを使ったことが絵画から見て取れなければ、エアブラシのテクニックをマスターしたといえる、という趣旨の発言をしている。写真と見まごうようなリアルな作品を見れば、彼がエアブラシマスターだったことは間違いないといえよう。
左より:Hajime Sorayama《Untitled》2015 (c)Hajime Sorayama, H・R・Giger《The Tourist VII》1982-94 (c)Estate of HR Giger
貴重な原画と、原画をもとにした立体を同時に展開
さまざまな年代の作品をチェックできる
1960年代後半から近年までの作品を広範囲に含み、同じモチーフを異なるメディアや手法で創作した作品を見られるのも本展の魅力のひとつ。例えば空山基の「セクシーロボット」の原画は1982年に描かれたものだが、同じモチーフの立体が作られたのは2015年。30年以上もの月日を経て生まれたロボットは、原画と同じ輝きと完璧なプロポーションで、見る者を魅了する。
Hajime Sorayama《Untitled》1982 (c)Hajime Sorayama
展示風景。中央の立体はHajime Sorayama《Sexy Robot life Size standing model_A》2015 (c)Hajime Sorayama
空山作品では、ソニーのペットロボットAIBOの貴重な原画とAIBO本体があるのも見逃せない。AIBOは斬新でスタイリッシュなデザインで、今なお未来への夢や希望を感じさせる。原画と本体AIBOはH.R.ギーガーの《Necronom》に近い場所にあり、いずれも類似した姿勢を取っているが、作品が醸し出す雰囲気が全く違っていて面白い。
Hajime Sorayama《Untitled》1999 (c)Hajime Sorayama
上より:H・R・Giger《Poltergeist II,The Vomit》1985 (c)Estate of HR Giger,Hajime Sorayama《AIBO》1999 (c)Hajime Sorayama
H・R・Giger《Necronom》2005
H.R.ギーガーの作品に関しては、絵画のほか、彼が監修したミニチュア模型を見ることができるのも嬉しい。これらはギーガーの世界観をより深く、より忠実に伝えてくれるだろう。
ギーガーのミニチュア模型。手前左:H・R・Giger《Miniatur-Harkonnen-Environment》1981/2004, 手前右:H・R・Giger《Kleine urne》2007 いずれも (c)Estate of HR Giger
また会場奥にあるギーガー監修の椅子《Harkonnen-Capo-Stuhl》も本展の見どころだ。細部に至るまでギーガーの世界を体現している《Harkonnen-Capo-Stuhl》は、座るという用途からは遠いようにも思えるが、よく見ると座面の素材が他の部分と色が異なり、実際に使う場面を想定していたように思える。見た目は現実離れしているが、使ってみると使い心地が良さそうである辺り、もともとギーガーがインダストリアルデザインを学んでいたことと関係があるのかもしれない。
左より:Hajime Sorayama《Untitled》2016 (c)Hajime Sorayama, H・R・Giger《Harkonnen-Capo-Stuhl》2002 (c)Estate of HR Giger
《Harkonnen-Capo-Stuhl》の座面。
H.R.ギーガーと空山基は強烈な個性を放つ無二のアーティストだ。作品世界は暗く陰鬱だが、闇の中に神々しさを感じさせるギーガーと、肉体の有機的な美しさと金属のメタリックな美しさを追求する空山。ギーガーの怪物も空山のロボットも、曲線が艶めかしく、細部に至るまで緻密で、強靭な美を持っている。かつてない組み合わせの2人展で、今回を逃したら見ることはできないかもしれない『H.R.GIGER✕SORAYAMA』は、渋谷パルコでの開催終了後、心斎橋パルコにて1月23日(土)より開催予定。どうかお見逃しなく。
文・写真=中野昭子

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