『LOVE PUNCH』から考察する
大塚 愛のナチュラルな表現方法

“好き”をストレートに表現

件の平板さはそのキャッチーなメロディーを際立たせるための手法であるような気がしてならない。手法という言葉を使うとどこか戦略的にやっているように思えるかもしれないが、そうではなく、彼女はキャッチーなメロディーをよりキャッチーに響かせることを、ある種、本能的にやっているように思える。その確証は何もないけれども、もし狙ってこうした作り方をしているのならば、サビでもっとあざとく巧妙に転調させたり、M7「石川大阪友好条約」などではもっと分かりやすいメロディーを入れるだろう(《石川 大阪 woo yeah》の部分がキャッチーではないとは言わないが、リフレインが多くて、いかにも平板だ)。ただ、仮にM3「さくらんぼ」に大サビやCメロを加えたり、それこそM7「石川大阪友好条約」にさらなるメロディーパートを付け足したりしたら、楽曲は台なしになる…とまでは言わないけれども、大塚 愛ナンバーにある独特の親しみやすさは半減するような気がしてならない。M3「さくらんぼ」であれば、《もういっかい!!》のあとに再びサビが繰り返されるからこそ良いのである。親しみやすさを損ねないために複雑さを排除していると言ったらいいだろうか。それはいい意味での軽さやしなやかさと言ってもいいように思うが、“凄まじくキャッチー”でありつつもくどくなりすぎていないのは、彼女自身の中にそうした快楽原則が潜んでいるからであるように思えてならない。

その仮説は歌詞からも補足することができるように思う。『LOVE PUNCH』収録曲の歌詞はどれこれも分かりやすい。というか、難しさがまるでないと言ってもいい。シングル曲だけに話を絞ろう。

《どれほど 愛しいと思ったんだろう/涙が出るくらい 大切に想いつづけてる/どれほど また逢えると思ったんだろう/桃ノ花ビラ 手のひらから こぼれるたび あなたを感じるの》(M2「桃ノ花ビラ」)。

《笑顔咲ク 君とつながってたい/もしあの向こうに見えるものがあるなら/愛し合う2人 幸せの空/隣どおし あなたとあたし さくらんぼ》(M3「さくらんぼ」)。

《ずっと探してた おっきくて安らげる/愛に包まれてる あなたの腕の中/もっと強く抱きしめて もう離さないで/素直じゃないあたしは どうしようもなく 今 甘えんぼ》(M10「甘えんぼ」)。

必ず“愛”の文字が入っているところに若干戦略的な匂いを感じなくもないし、《愛し合う2人》を《さくらんぼ》に例えてはいるものの、その歌詞には捻った印象がない。要約するまでもないだろうが、その内容はこういうことだ。愛してる。過去も愛してた。そして、これからも愛していく。3曲ともおおよそそうだ。愁いがないとは言わないけれども、“好き”という気持ちをストレートに出しているだけに思える。意識的に出してるのではなく、無意識にあふれて出ているという表現が適切だろうか。この気持ちを表現するにはキャッチーなメロディーが必要なのだろうし、彼女にしてみれば、このあふれんばかりの愛情を歌に乗せるとなると、自然と多くの人たちに届くような分かりやすい旋律、誰にも親しみやすいメロディーが出てくるのでは…と想像した。これは完全に私見であり、その考察がお門違いである可能性も極めて高いのであるが、とりわけ大衆の間で広まっていくヒット曲というものは、斯様にあまり捻らず、素直な気持ちを一点突破で攻めた方が案外すんなりと生まれてくるのでは…と思ったのも偽らざるところだ。

TEXT:帆苅智之

アルバム『LOVE PUNCH』2004年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.pretty voice
    • 2.桃ノ花ビラ
    • 3.さくらんぼ
    • 4.GIRLY
    • 5.雨の中のメロディー
    • 6.しゃぼん玉
    • 7.石川大阪友好条約
    • 8.片想いダイヤル
    • 9.ハニー
    • 10.甘えんぼ
    • 11.Always Together
『LOVE PUNCH』('04)/大塚 愛

OKMusic編集部

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