cali≠gari 新作『15予告版』に込め
た想い、そのリリース翌日に控える“
渋谷公会堂”公演に向けた心境を語る

cali≠gariが2月10日に『15予告版』2形態をリリースする。2021年に発表予定のアルバム『15』に向けた、先行ニュウ・イーピーという位置づけの本作は、最新型の彼らの魅力が詰まった新曲4曲に加え、新録や朗読といったボーナストラックも充実。リリース翌日の2月11日に東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でワンマンライヴ『カリ≠ガリ ツアー“15”15予告版発売記念GIG「渋谷公会堂のカリ≠ガリ」-腐ったレモンの方程式-』を開催するメンバーに、率直な思いを聞いたSPICE独占インタビューをお届けする。
――『15予告版』をリリースされる今のお気持ちはいかがでしょう?
桜井青(Gt):今のコロナ禍の状況で、思うようにCDを出したりできないのは辛いですよね。たとえば、何百万円と予算を使ってCDを作っても、今はエンタメの序列が最後に来てしまっているので、回収できない状況なんです。フルアルバムはこのタイミングでは厳しいけど、こんなにエンタメが暗い状況でも、何かしら明るい話題は出していきたかった。いずれにせよ『15』は出すんだけれど、どうしようかなって悩んでたら、研次郎くんが「昔出したような予告版でいいじゃん」ってポロッと言って。
――なるほど。
桜井:たまたまなんですけど、去年は『ブルーフィルム』を出して20年、今年は『第6実験室』を出して20年なんですよ。予告版みたいなものを出したのって、確か『第6実験室』が最後だったんで、20年ぶりに出すのも面白いかもしれないと。そんなふうに、研次郎くんから“レモン”っていうパワーワードも出てきて、ポンポンっといろいろ決まっていった。で、石井さんが「今こんな時代だから、全曲シングルっぽい強い曲を出したいよね」って。この後に出るであろう『15』の前哨戦としての『15予告版』みたいな感じですかね。とはいえ、この予告版の曲が『15』の屋台骨になるのかっていったら、まだちょっとわからないですけどね。研次郎くんが原曲を作った「鐘鳴器」なんて“どこへ行くんだ……”って感じのすごい曲でしたし(笑)。あれは突然のSOFT BALLETでしたよね?
石井秀仁(Vo):元々もらった研次郎くんのデモのイントロがああいうシンフォニックな感じだったんですね。その部分を変えると、なんか研次郎くんが作った曲ではなくなるなと思ったんです。そこを残したら、“どこへ向かうんだ?”っていう感じになりました。研次郎くん、たまにそういうのありますよね。あんまりライヴでやらないけど、「とある仮想と」みたいな曲。難しい感じだけど、お客さんは好きそうなやつ。
村井研次郎(Ba):わりとね。多分、プログレっぽく作ると、2人がSOFT BALLETだと思うんですよ。
石井:俺はSOFT BALLETとは思わなかったよ(笑)。
桜井:いや、僕は思ったよ(笑)。
――“レモン”のアイデアを出されたのは村井さんというお話でしたが?
村井:「今は渋公のこと、C.C.レモンホールって言うの?」って聞いたら、「そうじゃない。LINE CUBE SHIBUYAだ」って。「残念だね。(cali≠gariにちなんで)“C.G.レモン”になれば面白いのにね」というダジャレが発端ですね。
桜井:そうやって、思いもよらぬところから研次郎くんが投げてくるんです。cali≠gariのイメージって僕が作ってるように思われてるけど、自分に見えてるものからしか作れないから。そういうふうに、まったく想像もしなかったものがバーンと出てくるのが面白いんですよね。“レモン”って決まっちゃったら、そこからどんどん広がっていく。C.G.レモンの話から、「これはもう金八だよね」みたいな話になってきて、“腐ったミカンの方程式”の「我々は人間を作ってるんです!」っていう名台詞に繋がったり。「腐ったレモン」に関しては、人それぞれ、捉え方がいろいろ変わる歌詞と曲になると思って作りました。
――『15予告版』はcali≠gariというバンドのエッセンスが詰まっていて、入門者にも優しそうです。
桜井:比較的わかりやすい曲が多いと思いますよ。個人的に“わかりやすい=ストレートに古い感じの曲”を作りたいなってずっと思ってたんですよね。これはもう連想ゲームなんですけど、「レモン→レモンティー→めんたいビート→ルースターズ」っていう。「ルースターズといえば、やっぱり『ロージー』だな。よし、スカをやろう!」みたいな(笑)。曲の1カ所に入れたりはするんですけど、全体的にスカって曲をあんまり作った記憶がないんです。
――思い付きが気持ちよく連鎖していったんですね。他の収録曲についてもお聞きします。「ケセ」はダンサブルで、暗い現状を吹き飛ばすような曲です。
石井:再結成以降のcali≠gariのアルバムの1枚に1曲は入っているような感じですよね。「-踏-」とか「娑婆乱打」とか。
桜井:どっちかって言ったら「淫美まるでカオスな」のポジションに近いけどね。去年の配信ライヴで嫌っていうほど辛い目に遭ったんですよ。お客さんもやりたいことをやれなくて、強いられてしまうんだなって。ノるということが顕著に出るのって、やっぱり声ですよね。その次に動いたり踊ったりなんですけど、「腐ったレモン」や「ケセ」に関してはノりやすい曲です。今は声を出せないけど、とりあえず体を動かすことはできる。「淫美まるでカオスな」が始まると、声を出せない有観客のライヴでも急激に場のテンションが変わるんですけど、「ケセ」も是非そういうところまで行けるといいですね。
――先ほどもお話にも出た「鐘鳴器」はミステリアスで美しい曲です。
桜井:映画の主題歌みたいですよね。
――この単語を検索したところ、三大奇書のひとつとして名高い小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』がヒットしました。読み方は“カリリヨン”ですか?
桜井:それをどう読むかによって、引っ掛かるものが違うんですよ。石井さんが“カリリヨン”って最初に言ってたから、“ああ虫太郎ね”ってなったんだけど。“カリヨン”って読む人なんかは、比較的ファンタジー系の人が多いと思います。
――ピアノのような空想上の楽器らしいのですが?
石井:つまりはそういうことなんでしょう、という想像なんですよ。そもそもその小説自体が読み方のわからない造語だらけなんですよ。ストーリーがどうこうじゃなくて、“これは何なんだ?”っていうところで躓いて最後まで行けないような。
桜井:その世界の中では当たり前の単語なんですけど、一般的にはまったく何を言ってるのかわからない。
村井:勉強になりますねえ。
石井:それが曲調にピッタリだなと思って、タイトルは後から付けたんです。
村井:“カリリヨン”ってcali≠gariのメタルバンドみたいですよね。
一同:(笑)
村井:敢えてタイトルの読み方を書いてないのも、cali≠gariっぽくていいですよね。「鐘鳴器(カリリヨン)」とか「鐘鳴器~カリリヨン~」にすると、強烈にダサくなりますね。
石井:カッコ悪いね(笑)。
桜井:恥ずかしいよ(笑)。さすがにそれは反対するでしょう。
――「そして誰もいなくなった」も強く印象に残る新曲です。
桜井:これはあまり多くを語りたくない感じの曲なんです。アガサ・クリスティの小説を元ネタにしていて、なんだかんだ言ってると、人っていなくなってくよね、みたいなね。“不平不満を言うよりも、進んで明かりをつけましょう”っていうのがテーマの歌です。
――終盤の《ふざけんじゃない!》から始まる、青さんの感情が炸裂する部分がいいですよね。
石井:全体的に美しい曲調なのに、よくあのパートを入れようとするよなって思います。
桜井:ははははは!
石井:申し訳ないけど、自分が歌を入れようとした時に、先に青さんのあの部分が入ってて、“これ、ぶち壊されてんな!”と思いましたからね(笑)。ああいうのはcali≠gariをやってれば何とも思わなくなってくるんだけど、この曲に関してはビックリしました。
――ボーナストラックも興味深い内容です。限りなく透明に近いレモン盤(CD2枚組)には「「依存」と云う名の病気を治療する病院 (新録)」が入っています。これを選んだ理由は?
桜井:別にたいした理由はないですよ。昔、石井さんがヴォーカルで入った時に『再教育』っていう再録ベストアルバムを作ったんですけど、『再・再教育』っていうわけにもいかないし。そこからもう20年ぐらい経ってるんで、ここらで一発、お色直しというか。「せんちめんたる」とか「グッド・バイ」とか、録り直したい曲はいっぱいありますね。アレンジを極端に変えるんじゃなくて、できるだけ原曲に忠実に、今やってるウチらのバージョンでっていうのが大事なんですよ。
村井:タイトルの“いう”が今回“云う”に変わってるんですね。僕は録るのが3回目かな。再結成してからコーラスをやるようになったんですけど、大サビで息継ぎできないから、ヴォーカルの人って大変なんだなって思うようになりました。
石井:青さんの曲はね。「「依存」と云う名の病気を治療する病院」と「せんちめんたる」にはブレスがないんですよ。このブレスのなさはTOM★CAT以上なんで。
桜井:そういうことを言われて、この曲あたりから少しブレスを意識して作るようになったんです。昔はまったく歌い手のことを考えてませんでした(笑)。
――檸檬盤には、石井さんによる梶井基次郎『檸檬』の朗読がボーナストラックとして収録されています。教科書にも出てくるような短編小説ですが、素晴らしい仕上がりですね。
桜井:鬱憤を爆発させる檸檬爆弾的な意味で、今の時代にすごくピッタリじゃないですか。すごく良いですよね。よく聴いてます(笑)。
石井:朗読を世に出すのは初めてなんですけど、ポエトリーリーディングを聴くのはわりと好きで、意外とそういうCDを持ってたりします。
桜井:たとえば白石加代子さんの『百物語』って、めっちゃすごいんですよ。一概に“読めばいいんでしょ?”みたいな感じじゃないんですよね。
石井:そうなんですよ、本当に! 嫌々やってる感が出ちゃダメだし、初めてやったっていうショボい感じが出てもダメ。それに、俺の元々持ち合わせてるキャラクターみたいなものもあるじゃないですか。ものすごい感情を込めても、“この人どうしちゃったんだろう?”って思われるし。いろんな朗読の動画を観て、どの程度の温度感がいいのか調べました。録りも自分でやってるんで、どんなマイクを使うかとか、エンジニア的な気の使い方もしなきゃいけないから、すげー時間がかかりましたね。
――さて、『15予告版』リリース翌日の渋公ライヴはどんな趣向になるのでしょう?
桜井:フルアルバム『15』の導入部分になるような、パワーあるライヴをやっていきたいです。あとは昨年出したばかりの『ブルーフィルム -Revival-』もそつなく入れ込みながら、緩急満遍ないセットリストをご提供したいですね。前回、渋公でやったのが2002年の4月3日と4日だったので、19年ぶりなんですね。なんか、ちょびっとだけ“帰ってきた感”があるかな。
村井:コロナ禍じゃなかったら、普通に青さん、レモンとか投げるんでしょうね。
石井:お客さんが出た後に投げるのはどう?
桜井:終演直後に『カリ≠ガリの実演放送 無人座III -ナマレモン-』という生配信ライヴをやるんです。今の緊急事態宣言下では、20時までにはお客さんを出してくださいって言われてるんですけど、音出し可能な21時まで、客出しを終えた無観客状態でやります。“あれもダメ、これもダメ、それもダメ”。じゃあ、そこから何をやるかっていうね。全部ネガティブに考えてたら何もできなくなっちゃうから、制限された中で、どう楽しませられるかですよね。
取材・文=志村つくね

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