『MUSTARD』に残る
ミクスチャーサウンド
シーンに登場するのが早すぎた
M-AGEの革新

早過ぎた音楽スタイル

さて、そんなふうに意欲的なサウンドと大衆的メロディーを併せ持ったM-AGEは、客観的に見ても、周囲からの大きな期待を背に華々しいデビューを飾った。それなりに人気も出ていたように記憶している。しかし、残念ながら、その人気はあくまでもそれなりであり、大ブレイクには至らなかった。今となってみると、やはり彼らの音楽性はやや早すぎたというのが正しい見方のような気がする。M-AGEの出現以降、バンドとデジタル、ヒップホップ要素の融合は日本の音楽シーンにおいてどんどん進んでいった。例えば、当時M-AGEと同じレーベルに所属していたTHE MAD CAPSULE MARKETSは、それまでもデジタルをパンクロックに取り込んでいたが、4thアルバム『MIX-ISM』からはラップなどより雑多な音楽ジャンルを取り込んでいった。その『MIX-ISM』が発売されたのは、M-AGEが解散したのと同じ1994年である。前述の通り、Dragon Ashのメジャーデビューが1997年で、シングル「Grateful Days」とアルバム『Viva La Revolution』がヒットしたのは1999年だ。その後、所謂ミクスチャーロックと呼ばれるバンド、アーティストが登場し、もはやそのスタイルは特筆すべきものではなくなっていることは言うまでもない。

また、いわゆるビジュアル系バンドが隆盛を迎えたのがM-AGEがメジャーデビューしたのと同時期であったことも、M-AGEが大ブレイクに至らなかったことと、まったく無縁ではないような気もする。それは今回『MUSTARD』を聴き直して個人的により強く感じたことだ。LUNA SEAのメジャーデビューが1992年。1994年には黒夢、GLAY、L'Arc〜en〜Cielもメジャーへと活動の場を映した。これらのバンドにはそれぞれに特徴があるのでひと括りにするのは乱暴だが、エッジの効いたギターサウンドに親しみやすいメロディーを乗せていたという共通点はあると思うし、それが大衆に支持され、彼らはビッグバンドへと成長していったのだろう。前述したようにM-AGEの歌メロも大衆的だし、ギターサウンドはラウドなものやエッジーなものばかりである。ヒットポテンシャルはなくはなかったと思う。ただ、バンドシーンの潮流が、ひとつはビジュアル系に、もうひとつはミクスチャー系へと分かれていく中、早すぎたサウンドも相俟って、リスナーがカテゴライズしづらく、彼らの音楽が届きづらくなっていたのではなかっただろうか(当時のシーンの大きな流れのひとつに俗に言うビーイング系があったが、これにはもとから入れるわけもなかった)。音楽シーンも沸騰していた頃ではあったが、今ほどに多様性が認められる時代でもなかった。時代のせいにしちゃいけないとはは承知しているけれども、バッドなタイミングが重なって、図らずもエアポケットのようなところにハマってしまった──私見だが、M-AGEにはそんなところがあったように思えてならない。M-AGE解散後、メンバーのほとんどがさまざまなバンド、アーティストのサポートとして活躍してきた。ザっと説明すると、MIYO-KEN(Gu)はL'Arc〜en〜CielのtetsuyaやBUCK-TICKの櫻井敦司のソロ作品に参加した他、清春のライヴでのバンドマスターを務めている。OKAZAKI(Dr)はGUNIW TOOLSのサポートメンバーの他、そのGUNIW TOOLSのASAKIとAGE of PUNKを、そしてBUCK-TICKの今井寿、hide with Spread BeaverのKIYOSHIとのバンド、Lucyを結成。DJ PEAH(Dj)は、SCHAFTのアルバム『Switchblade』やhitomiのサポートなど、DJの他にも多岐に活動している。それぞれに音楽業界で活躍しながら、ついに今年、再結成に至った。その軌跡、経緯こそが、M-AGEが優れたアーティストの集団だった証拠と言えるはずである。

TEXT:帆苅智之

アルバム『MUSTARD』1992年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.SILENT FEARS
    • 2.CALL ME (REMIX)
    • 3.WONDER
    • 4.BLOOMING OUT OF SEASON
    • 5.MIND WAR
    • 6.UNDER THE CUBIC SKY
    • 7.WALK ON THE MOON (REMIX)
    • 8.CRISIS
    • 9.VISITOR
    • 10.ENOUGH OF THIS
『MUSTARD』('92)/M-AGE

OKMusic編集部

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