DiANが結ぶアジアン・ミュージックカ
ルチャー。日中のアートをミックスす
る新星に迫る

新しいカルチャーの火種が生まれようとしている。バンド名は「DiAN」、パックマンの40周年楽曲への参加や、ロンドンエレクトリシティとのコラボで話題を集めるクリエイターズ・ユニットだ。メンバーはアート・ディレクションとボーカルを務める北京出身の静電場朔(セイデンバ・サク)、サウンド・プロデューサーのA-bee(アービー)、コンポーザーのimmi(イミー)の3人である。バンドのアイコンを担う静電場朔は、これまでアメリカ、 ヨーロッパ、中東、アフリカを渡り歩いてきた経歴の持ち主で、現在都内を中心に活動する彼女のリリックには、中国語、日本語、英語が混在している。オリエンタルな感性を残しつつ、古今東西の音楽から影響を受けるその創作には、文化の交流点になるような可能性が感じられるだろう。80年代のエッセンスを取り入れた新曲、「Lucky Rain」と「Moonbow Disco」のリリースを機に、DiANに初のインタビューを試みた。3人のルーツをまとめたプレイリストと、ここ数年中国で聴かれている楽曲をリストアップしたふたつのプレイリストから、彼女らのバックグラウンドと、DiANの活動ビジョンに迫っている。

物語性のある音楽を作りたい

ー今回は3人のルーツをまとめたプレイリストを作っていただきましたが、サクさんは日本の音楽をよく聴かれていますね。

immi:
サクちゃんの方が日本の曲をいっぱい知っているなって思います。
静電場朔:
日本人の友達からも“こんな曲も聴いているんだ”とか、“渋いね”と言われますね(笑)。
ー中国の大学では、日本の音楽をシェアするコミュニティがあったんですか。
静電場朔:
ありました。北京にある日本の大使館には音楽センターがあって、日本の音楽の情報やライブ情報はそこでチェックしていました。日本が好きな人は集まるところだったと思います。でも、高校生の時はみんなは香港や台湾の曲を聴いていましたし、ロックバンドも流行っていて、欧米のアーティストも人気でした。日本の歌手を好きな人はクラスで2、3人でしたね。
ー1曲目が戸川京子の「未成年」ですが、これはどこで出会った曲でしょうか。
静電場朔:
大学の時ですね。高校時代に友達がネットで不思議な歌手を見つけたって言っていて、そこで戸川純さんの「玉姫様」を聴きました。次に「レーダーマン」のライブ映像を見て、彼女のプロフィールを調べているうちに、歌手や女優として活動していた妹がいるって知りましたね。純さんはアーティストとして爆発力がありますが、戸川京子さんの曲はアイドルみたいな可愛さやロマンチックさがあって、昭和歌謡のマイナスのメロディも、中国人にとって凄く魅力的だと思います。
ーなるほど。
静電場朔:
そして、彼女の曲は書かれている内容を見ずに聴けばかわいい曲だけど、歌詞は大胆で、例えば女性の妄想とかクレイジーな感じをナチュラルに表現してますよね。曲のアレンジも面白くて、今までに聴いたことのない編集の形だと思いました。2002年に亡くなられていて、資料が少ないのが残念ですね。きっと聴けば大好きになると思うので、もっと沢山の人に知ってもらいたいアーティストです。
ーA-beeさんはRadioheadをセレクトしていますね。
A-bee:
今は打ち込み系のトラックメイクをやっているんですけど、その前はロックバンドをやっていたんですよね。その頃は主にUKロックが好きで、シューゲイザーとかニューウェイブもよく聴いていました。中でも好きなものを選ぶとしたら、Radioheadかなという感じです。
静電場朔:
Radioheadは中国でも凄く人気ですね。
ー「Fake Plastic Trees」はもちろん、この曲が収録されている『Bends』はアルバムを通して非常に美しいメロディがありますよね。
A-bee:
僕もこの頃のRadioheadが凄く好きで、作曲として影響を受けました。メロディの美しさはもちろん、どことなく哀愁があるというか、メランコリックな部分は今でも自分の中に刺さってるところですね。
ー今“哀愁”というワードが出ましたが、この曲に限らず、3人が選んだ楽曲は全体的にメランコリックな感覚がありますね。
A-bee:
…みんなネクラなんじゃないですかね?(笑)。
静電場朔:(笑)。
A-bee:
でも、DiANはそうじゃないところが良いところかなと思います。そういうテイストの曲もありますけど、DiANではサクちゃんのキャラが立つ楽曲を出したいから、ポップな音楽でもいいかなと思います。
ーimmiさんはご自身が選ばれた曲の中で、一番自分の深いところに残っているのはどの曲ですか。
immi:
10代ではR&Bやヒップホップが好きで、そういう音楽ばかり聴いてたんですけど、20代前後の時に自分の本当にやりたい音楽は何か真剣に考えた時期があって。その頃にいろんなジャンルの音楽を聴くようになって、そこで聴いていたのが今回選んだ楽曲なんですよね。
ーなるほど。
immi:
この中だとNelly Furtadoを一番聴いていたかな思います。ヒップホップからの影響もありつつ生楽器も入っていて、いろんな要素がミックスされているところが好きなので、どうやって作っているんだろうって研究しながら聴いていました。
Frou Frouのようなエレクトロポップは、DiANに通ずるものを感じますね。
immi:
Frou Frouはそういうの音楽を好きになったきっかけのアーティストでした。この名義では1枚しかアルバム(『Details』)を出していないんですけど、女性のメンバーのイモージェンヒープ(Imogen Heap)はソロで作品を出していて、凄く好きですね。彼女の愛称がイミーっていうらしくて、私のアーティストネームもそこから取っています。
A-bee:え、そうなんだ?(笑)。
immi:彼女の曲が凄く好き出ったし、デザイン的にもimmiって文字が良いなって思って使わせてもらいました(笑)。
ーエレクトロ・サウンドは、A-beeさんの音楽にも欠かせないものですよね。
A-bee:
ファズ踏んでギターをガッと弾くより、電子音に魅力を感じてこっちにきたくらいなので、シンセの音は好きですね。
ーその中でもrei hanakamiがフェイバリット?
A-bee:
Rei Harakamiはまさに唯一無二というか、電子音楽の中でも最初の4小節を聴くだけでこの人ってわかるくらいの個性がある。
静電場朔:
彼の音楽は独特な感じですよね。電子音で自分だけの独特の楽器を作っている感じというか、いろんな調整をしながらオリジナルな曲を作っているイメージがあります。
ーDiANが目指すのも、そうした音楽?
静電場朔:
そうですね。楽曲の中に独特の世界観があって、物語性のある音楽を作りたいです。それには音の中に想像力を膨らませるだけの空間が必要だと思います。
ーアートワークやPVもサクさんが手掛けていますよね。
静電場朔:
想像力という意味でも、PVは凄く大事だと思います。どうやってこの世界観を表現できるのかを考えながら作るんですけど、私は椎名林檎さんのPVから影響を受けています。今回セレクトした「茎(STEM)~大名遊ビ編~」という曲は、14歳の時に偶然見つけた曲なんですが、『短篇キネマ 百色眼鏡』の映像が流用されたショートムービーが素敵ですね。彼女は音楽と映像を繋ぐ作品を作りますし、音も声も凄く心に刺さりました。
ー明治や大正の頃のような風景で、日本情緒のあるPVです。そうしたオリエンタルなものに惹かれているところはありますか?
静電場朔:
ティン・パン・アレーの曲もそうですよね。「ろっかばいまいべいべい」も凄く癒されるというか、優しい曲だと思います。細野晴臣さんの作品には「北京ダック」という曲もあって、ああいう曲を聴くと凄く懐かしい気持ちになりますし、パラレルワールドのような不思議な感覚があります。
ーというのは?
:
中国の人は「チャイナタウン」みたいな曲はあまり作らないと思いますし、多分中国人じゃないからこそ、こういう楽器のアレンジができるんだと思います。たとえばギターに似た中国の伝統の楽器に、琵琶(びわ)というものがあるんですけど。中国の人が使う時はみんな真面目で、クラシックな楽器として使っているんですよね。だからあまりポップスの要素が入ってこないんです。でも、細野さんの作品では欧米の楽器や、ブルースだったりポップスの音とミックスされていて、こういう可能性があるんだなって思いました。きっと日本の方も海外の音楽を聴いてインスピレーションを得たり、中国の人も海外の曲を聴いてアイデアが浮かんだりすると思うので、外から自分を探す感じですね。
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