牧阿佐美バレヱ団『プリンシパル・ガ
ラ 2021』~古典から上演機会の少な
い作品まで、バレヱ団の歴史を象徴す
る名作を一挙上演

2021年3月13日(土)・14日(日)に牧阿佐美バレヱ団「プリンシパル・ガラ2021」が上演される。演目は華やかな古典作品『パキータ』、絢爛豪華な『ライモンダ』第3幕のほか、4人の男性による『フォー・ボーイズ・ヴァリエーション』、そして16年振りの上演となる作品『ル・コンバ』というラインナップ。とくに『ル・コンバ』は、もとは振付家ウィリアム・ダラーが、ローラン・プティが主宰したバレエ・ド・パリのために振り付けた作品を1950年にニューヨーク・シティ・バレエ団のために改定したもので、バレヱ団ではダラーから直接指導を受け、1977に初演した。今ではこの作品を継承する世界でも数少ないバレヱ団となっており、カンパニーの宝物の一つともいえる貴重な作品といえるものだ。なお13日の公演は全国にライブ配信を予定。今回はその日、『パキータ』の主演を務める阿部裕恵と水井駿介、『ライモンダ』を踊る青山季可と清瀧千晴に、それぞれの作品の見どころを聞いた。(文章中敬称略)
【動画】牧阿佐美バレヱ団「プリンシパル・ガラ」PV

■「ずっと踊りたかった憧れの作品」阿部&水井の開幕『パキータ』は古典の真髄が詰まった華やかな作品
阿部裕恵 水井駿介

『パキータ』で上演されるのはジプシーの娘パキータとフランス軍将校リュシアンの、物語のクライマックスになる結婚式の場面だ。バレヱ団で上演するのは2015年NHK「バレエの饗宴」以来の6年振りとなる。
――『パキータ』という作品に対する思いやリハーサルの手応えを聞かせてください。
阿部  『パキータ』は新国立劇場バレエ団研修所時代にソリスト役で、また小さい頃に発表会でもヴァリエーションを踊ったことはありますが、今回グランパ・クラシックにしっかり取り組むのは初めてでとても楽しみにしています。ただ型や顔の位置などに気を配らなければならない点がとても多く、そうした細かい振付に注意しながら本番までにリハーサルを重ねていければと思います。
水井 僕もバレヱ団で踊ることは初めてです。クラシック・バレエの醍醐味を存分に表現できる部分も多く見どころもたくさんあります。今回の「プリンシパル・ガラ」の開幕作品ということで、また僕が踊るのは将校の役なので、気品のある雰囲気を出しながら格調高く、華やかに盛り上げていくことも心掛けています。
阿部 実は『パキータ』は一度踊ってみたい憧れの作品だったんです。中学生くらいの頃にヴァリエーションを踊る機会があり、そのときに海外の、いろいろな『パキータ』の映像を見ました。とくにパリ・オペラ座のアニエス・ルテステュさんの踊りが印象深く、理想のイメージ像になっています。
ただ、実際にリハーサルをやってみて難しいと思うのは男性と組んで踊る、アダージョのところです。冒頭部分やコーダなどテクニックがたくさん入っているところは次から次へと型を見せることになりそれだけで華やかなのですが、アダージョは振りから次の振りへの間の部分が長いので、その間を音楽ともども美しく見せなければならないんです。海外のダンサーさん達は身体が大きく、立っているだけで華やかなので間の表現も存在感で埋められるところがありますが、私は小柄で、しかも今回はコールドバレエの方々の中で、その間を表現しなければならない。自分を小さく見せずに存在感を出すにはどうすればいいか、そこをどうしようか今いろいろ考えています。
水井 僕が印象に残っている『パキータ』は、以前新国立劇場で見た、イーゴリ・コルプさんのものです。その時のパートナーはディアナ・ヴィシニョーワさんだったんですが、とにかくコルプさんの雰囲気や存在感はすごく好きで、これが理想像の一つになっています。エポールマンの取り方や身体の角度をすごく気持ちよくすっと取って、またとてもきれいに見える。憧れます。
裕恵ちゃんと組むのは2019年の『くるみ割り人形』以来だけど、その間に季可さんや郁さんなど先輩と組んで、勉強になりました。そして今回、また裕恵ちゃんと久しぶりに踊ります。最初の「くるみ」のときは手探りだったけど、今回はお互いに吸収したものを2人で、良い方向に向かって出していければと思います。
『眠れる森の美女』水井駿介  (撮影:鹿摩隆司)

■コロナ禍から1年。観客の拍手のありがたさをかみしめながら、一つひとつの舞台を大切に
――コロナ禍から1年を経て、バレエの向き合い方やバレエに対する思いなど、より強く感じる思いなどは。
水井 自粛中に自分はこんなにもバレエが踊りたいんだなって思いました。もちろん普段から思っているんですが、踊れなかった期間中はそれを確信する機会になりました。だから今でも舞台がいつなくなるかわからない状況で、一つひとつ、目の前の舞台を昔よりもより一層大切にして行こうという思いが強くなりました。
阿部 昨年の前半から夏まで公演がキャンセルになり、こんなに長い間舞台に立たなかったことはなかったですね。お稽古もできず、家の狭いスペースで自分の身体に向き合っていましたが、逆にそのことで足の曲げ方など自分の身体の使いかたといった、普段のクラスレッスンではなかなか気づけないところに向き合えたのが良かったです。ただ復帰後の8月の「サマー・バレエコンサート2020 」は、やっと舞台に立ててうれしかった半面、体力が落ちていたのでちゃんと踊り切れるか心配でした。でもお客様から拍手をいただいたときに、舞台で踊れる素晴らしさを改めて感じました。
――お客様にメッセージをお願いします。
水井 2020年8月の「サマー・バレエコンサート2020 」は小作品も多かったのですが、今回は3部構成で、トリプルビルのような見応えがあります。ライブ配信もありますので、劇場に来られない方はぜひそちらをご利用いただいて、楽しんでいただければと思います。
阿部 久々に上演する演目の多い公演ですので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。舞台に立てるということに感謝しつつ、リハーサルに挑み、本番にむけて頑張りたいと思います。
『ドン・キホーテ』阿部裕恵 (撮影:山廣康夫)

■3幕部分のすべてを上演。青山&清瀧の華やかな王朝絵巻『ライモンダ』
青山季可(右)、清瀧千晴
――青山さん、清瀧さんは2018年の『ライモンダ』公演で組まれて、今回はガラ公演ではありますが3年振りの上演となります。作品の見どころや意気込みを教えていただけますか。
青山 お衣裳も音楽も豪華な作品で、大人の凛とした女性が描かれています。今回上演するのは最後の結婚式の場面ですが、8組のカップルが登場するなかで格調高い踊りを見せられればと思います。
『ライモンダ』の演出・振付はテリー・ウェストモーランド先生によるのですが、バレヱ団では『白鳥の湖』『眠れる森の美女』と並ぶ、テリー先生の三作品の一つです。テリー先生から学んだ先生や先輩方からの教えを受けてリハーサルを進めているところですが、とにかく型を大事にして格式高くと日々、言われています。ハンガリーのキャラクターダンス特有の手の形やポジション、顔の位置など、1ミリ、2ミリの角度の違いによって印象が変わってくるんです。そういうところにもしっかりこだわっていきたいですね。
清瀧 バレエ団の中では上演を重ね、歴代の先生方、先輩方が大切に踊られてきた演目ですので、大事に踊っていきたいと思います。今回は抜粋で、全幕と違って少し体力的にも余裕があるので、その分祝祭感も出しながら華麗に演じられればいいなと思います。抜粋とはいえ、3幕のチャルダッシュやグランパ・クラシックなど、全てを踊ります。セットも全幕のものを用意しますので、作品全体の空気感も味わっていただけると思います。
『ライモンダ』  (撮影:鹿摩隆司)
――お二人はバレヱ団の公演でも何度も組まれていますが、それぞれに対する印象は。
青山 千晴君は爽やかな魅力があって、高いテクニックと音楽性で物語を紡いでいく踊りが素晴らしいと思います。私は感情で頭がいっぱいになってしまうタイプなのですが、千晴君は冷静でいつも落ち着いているんです。踊りの時もあたたかく、客観的にどう見えているのか、常に考えているところが頼もしいです。
清瀧 客観的な視点は難しいけれど、大事にしたいところです。季可さんは登場人物像やその感情を大事にしていて、そうした点をしっかり掘り下げて作品をつくってくるところが素晴らしいです。それだけでなく、テクニックなどもともと持っている技術も生かして舞台で表現できるし、日本の宝だなと思います。
『ライモンダ』  (撮影:鹿摩隆司)
――前回公演から3年を経て、昨年のコロナ禍から1年過ぎ、世界はもちろんバレエ界を取り巻く環境も大きく変わりました。バレエに対する向き合い方や考え方で変わったところは。
青山 バレヱ団としては2020年3月と6月の2公演が中止になったのですが、8月に急遽公演を追加していただいて以後、比較的コンスタントに舞台に立つ機会をいただいています。舞台に立つ者としては感謝の気持ちがいっぱいです。舞台に立つことは緊張するので辛くもありますが、でも自粛期間中に舞台に立てるありがたみというものをすごく実感しました。
清瀧 予定していたことができず、今回も演目がなかなか定まらないなど、ギリギリの状態が続いていますが、舞台上で踊り、それをお客様に見ていただき空間を共有するという現実を体感できる尊さは、こういう状況になってからは一層強く感じています。だからこそ、なかなか難しいかもしれないけど、一つひとつを大切に踊っていきたいなと思っています。
『ライモンダ』清瀧千晴  (撮影:鹿摩隆司)

■男性4人の『フォー・ボーイズ・ヴァリエーション』、バレヱ団の宝のひとつ『ル・コンバ』は久々のお目見え
――今回のガラ公演は、2部に『フォー・ボーイズ・ヴァリエーション』、『ル・コンバ』という演目が組まれており、清瀧さんは『フォー・ボーイズ・ヴァリエーション』も踊ります。
清瀧 主演を踊ることが続いていたので、アンサンブルで踊るのはとても久しぶりで楽しみにしています。一人より、みんなと一緒に踊ったりするのも好きなので。バレエは女性の踊りっていう印象を持たれがちですけど、こういう男性4人の作品も珍しいと思うし、そこも見どころのひとつじゃないかなと思います。
青山 もう一つの作品『ル・コンバ』は、私もフルバージョンで見るのは今回が初めてなんです。すごく美しい女性が描かれているので、楽しみにしています。今回のプリンシパル・ガラは若いダンサーもたくさん出演するので、その点も楽しんでいただけると思います。
清瀧 馬に乗って戦っている様子を1人で演じる、馬と人を同時に表現しなければいけない踊りなんですよね。足は馬の動きですが、上半身は人間。またそれを女性が演じるのも印象的です。この作品は時代背景が『ライモンダ』とも関連性があります。
『ル・コンバ』  (撮影:山廣康夫)
――『ル・コンバ』は十字軍男性とサラセン人の女性の物語で、十字軍時代を違う視点から見る面白さがあるかもしれませんね。最後にお客様にメッセージをお願いします。
清瀧 今回の「プリンシパル・ガラ」はバレヱ団が本当に大切にしてきた作品や、上演機会が少ない貴重な作品が並んでおり、ダンサーとしてもワクワクしながらリハーサルを行っています。ぜひ楽しみにして来ていただければと思いますし、ライブ配信もされますので、劇場に来られない方や遠方の方にもぜひ、同じ時間を共有していただければと思います。
青山 ヴァリエーション豊かなプログラムで、それぞれに変化があって楽しいと思います。お客様にワクワクしてもらえるような踊りができるよう、頑張っていきたいと思います。
『ライモンダ』青山季可  (撮影:鹿摩隆司)

――ありがとうございました。
取材・文=西原朋未

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