受け継がれてきた“本物”を纏って─
─和楽器ライヴ+装束絵巻+ダンス『
和楽奏伝×装束夢幻』ビジュアル撮影
レポート&キャストインタビュー

神代の始まりから奈良平安時代までの芸能と衣服に焦点をあて、1日限りのスペシャルなエンターテインメント舞台を繰り広げる『和楽奏伝✕装束夢幻』。そのビジュアル撮影で西島数博、吉井盛悟、紫吹淳、愛加あゆの主要キャスト4名が身に纏ったのは、高い技術で現代にまで継承される、古来から受け継がれてきた装束の数々だ。本番のステージでも用いられる“本物”を身につけた彼らの姿を追いつつ、まさに身を以て感じている作品への思いを聞いた。
この日の撮影は演出・音楽監督を務める吉井盛悟からスタート。「楽神」をイメージした奈良時代の装束は麻でできており、意外に軽くて動きやすいという。腰を覆っている布部分の赤に白の模様を出しているのは当時の代表的な染めの手法。上半身の細かな織模様に対し衣と袴の素朴で明るい風合いのバランスも美しく、肩から下げた太鼓とも調和している。烏帽子と沓の黒がキリリと全体の印象を締めていた。
続いてカメラの前に立ったのは演出・芸術監督を務める西島数博。イメージは「鳳凰」。煌びやかで張りのある上衣と、薄墨色とシルバーの細かな織模様の袴の組み合わせが艶やかな伝説の鳥を思わせ、さらに上に纏った白く透けた上着でよりファンタジックな印象に。袖なし・裸足は躍動の象徴。複雑に美しく輝くカラーコンタクトとネイルも新鮮。羽根をあしらった大胆なヘアスタイルも神秘的だ。
吉井と西島のツーショット。ふたりが並ぶとさらに世界観が増し、自然と周囲も沸く。何枚かのテストを経て方向性が見えたところで、吉井が太鼓を「パンッ」。心地よく乾いたその響きに合わせ、西島が指先まで神経を行き届かせ鳥のポーズを決める。鳴り続ける太鼓のリズムと静かな舞踏のセッション。贅沢な空気の中、次々にシャッターが切られていった。
十二単姿で登場したのは「紫式部」の愛加あゆ。ピンク系✕グリーン系の色合わせは華やぎと高貴さが目を引き、まるで春の精のように可憐だ。専門のスタッフが流麗な髪の広がりや長く引いた裾先を整え、絵巻物で見るあのお姫様の姿を再現していく。足元は赤い長袴ですっぽりと覆われているが、愛加はじきにスッスッと美しく移動する足さばきのコツを掴み、「本番でも動けそうです」と衣装の心地を確かめていた。
紫吹淳は「光源氏」。上衣は紺地に銀の霊芝雲柄、袴は濃い紫にやはり銀で八藤の柄が。シンプルだが規則的に配された大柄の持つ強さが着る者の凛々しさを引き立てるハンサムな装い、和装ならではの究極の地味派手といったところか。烏帽子と髪の生え際のバランスなどより自然に凛々しく見える細かな調整にも心を配る紫吹。準備が整い立ち位置が決まると、サッと目力のスイッチが入る。その説得力のある凛々しい姿に、撮影を見守っていた吉井と西島も「さすが!」と目を輝かせていた。
■西島数博
僕は今までバレエ作品の配役ではノーブルな表現を要する役柄が多く、実は悪役や敵役、キャラクター性の強いものがずっと憧れだったんです。なので、こういう姿になれてまた一つ夢が叶いました。鳳凰というような役柄も初めての経験です。今回のテーマである装束の華やかさは日本美学の最高潮だと僕は思っているので、その美学に対し、自分なりのファンタジックなスタイルをカタチにできたらと思います。やはり表現者としては身に着けるモノも自分の身体の一部。装束のお衣装を着させてもらったならその装束と身体が一体化する、装束が自分の身体のように感じるぐらいの存在感になるべきなんです。今回は特にそこを重要視させていただきたい。本物の装束を身に着ける、纏うことによって自ずと感情が変わっていく、人間の本質がそこで見え隠れするような、そんな空気感のある舞台を──これはもう表現力との戦いですね。今日を経験した上で、もともとクラシックバレエの世界で衣装だけが浮かないようにずっとトレーニングしてきたことを考えると…実は西洋の古典も日本の古典も遠くて近い関係だな、とも感じたり。日本の古典を追求している吉井さんとのコラボレーション、そういう初顔合わせのクリエイティブな時間も楽しみです。
西島数博
■吉井盛悟
もともと私自身は郷土芸能、民俗芸能、日本の民間の中にある自然な音楽に興味があり、勉強して参りました。そういうものは日々進化していく側面もありますが、変えてはならない大切なこととかもあって…。それは音楽だけじゃなくて装束においても同じだと考えています。持続可能なものが求められる今の社会、日本という島で「持続」を続けてきた「伝統」という独特な価値観を感じてみる。その価値観と共に「今何をすべきか」と問うことが、自分の音楽活動に生かされるべきだと思っています。そんな視点でぜひ新たに作品創りをしたいと思い、今回の舞台を企画させていただきました。日本の芸能は「踏みしめる」こと。ぐっと地に足がついていくような足腰文化なのですが、それに対して西洋の芸能はジャンプするようなイメージがあります。今回西島さんに鳳凰を演じていただくことで、日本音楽が持っている「地に足がついた感じ」と、バレエが持っているそれを包み込むような大きな飛翔する世界観が融合していけたら面白いのではないか、と思っています。互いの良いところを持ち寄って生まれるベクトル感、なかなかいい感じになりそうな予感がしています。
吉井盛悟
■愛加あゆ
宝塚に在籍していた時から和物の作品に出させていただく機会は多かったのですが、舞台用として作られた衣装と、この本物のお着物はまた全然違うんです。私は以前お正月のシリーズに出させていただいたのですが、その時に着せていただいた装束もすごく繊細な作りで、近くで見ると柄ひとつひとつに込められた歴史や創り手の思いなども伝わってきますし…様々な重みを感じさせてもらいました。今回はあのステージと同じ要素を持ちながら、吉井さんと西島さんの世界が広がる新たな舞台。紫吹さんともご一緒できて、様々なジャンルのプロフェッショナルな方々との共演、そのみなさまの力が融合されていったいどんな形になるのか…お稽古も本番も、本当に楽しみにしています。先日吉井さんと一緒に歌わせていただく新しい曲の音源をいただいたのですが、すごい素敵な曲なんです! ステージで表現する時を、今から心待ちにしております。
愛加あゆ
■紫吹淳
今回とても素敵な企画にお声掛けいただき…改めて作品の意図を伺い、装束の歴史を伺い、そのスケールの大きさと未来へつなぐという責任も感じつつ、やはり嬉しい気持ちでいっぱいです。私自身お着物が大好きでその歴史や美しさ、日本文化の素晴らしさを忘れてはいけない、ちゃんと伝えていかなくてはと常々思ってきました。それを表現者として、お仕事としてやらせていただけるのはすごく光栄なこと。お着物を着ると背筋がピッとし、仕草の全部に丹田を感じますよね。すごい力が入る。その重みって、「自分を持っている」ことのようにも思うんです。そんなことに気づかされるのもお着物の魅力。また、私は衣装から力をもらう憑依タイプ(笑)。本番の支度が整うことで、稽古を超えた最後のスイッチが入るんです。そういう意味でも本物の装束を着ける今回は、さらに特別なスイッチが入るんじゃないでしょうか。男装もありますので、ファンのみなさんにも「よいモノが見れた」って、思ってもらえたら嬉しいです。
紫吹淳

取材・文=横澤由香

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