SING LIKE TALKING 30年以上にわた
り日本の音楽シーンをリードし変遷を
見続けてきたバンドがコロナ禍に何を
思うのか、佐藤竹善が語る

新しい春の訪れと共に、SING LIKE TALKINGが動き出す。まず3月10日、ニューシングル「春雷 feat. 露崎春女」のリリース。そして3月13日から19日にかけて、名古屋、大阪、東京を巡る有観客ライブツアー。東京・中野サンプラザ公演は、ライブ配信されることも発表された。新曲について、昨年開催した配信ライブについて、そして新しいツアーについて。30年以上にわたって日本の音楽シーンをリードし、その変遷を見続けてきたバンドが、コロナの時代の中、今何を思うのか。佐藤竹善に語ってもらった。
――今回のシングル「春雷」には、3種類のパッケージがあるんですね。昨年やった2回の配信ライブがまるごと入っている「初回限定盤A・B」もあって、ファンには嬉しい内容になっています。
去年の配信ライブが、僕的には非常に画期的で面白かったんです。いろんな方の配信ライブを見ていると、無観客の客席に向かって演奏するものが多かったんですけど、もっと面白いやり方はないかな?と思って。思いついたのが、360度にバンドが並んで、全員が内側を向いて、アイコンタクトしながらセッションしていく。その状況を、カメラが360度の角度から抜いて、スタッフが映り込んでもいいから、その全体を視聴者の方が覗いているという感覚で配信しようという、それがすごく面白かった。この映像は二度と撮れないだろうということで、映像化しようと思ったんです。なので、CDにBlu-rayとDVDが付いているというよりは、Blu-ray、DVDとCDがセットになっているものと、CDだけのものがある、そういう感じです。
――8月29日の中野サンプラザでの配信ライブは、確かにシチュエーションとして、斬新でしたね。からっぽの客席を向こうにして、ステージ上でバンドが円になって演奏しているという。
あれはね、ヒントがあって、アメリカにスナーキー・パピーというバンドがいるんですけど、彼らが『ファミリー・ディナー』という番組を毎週やっていて――今やってるかどうかわからないですけど――シアターを借りて、客席にはお客さんを入れないで、ステージ上にバンドと、20人ぐらいお客さんを入れて、みんなで顔を見ながら演奏する、そういうテレビ番組を毎週やっていて。それに出たことでレイラ・ハサウェイが大復活したりとか、その映像がすごく面白くて、“これをやってみようかな”と思ったんですよね。最近そういうの、多いんですよ。普通のオフィスみたいなところで演奏するとか、ダリル・ホールが、自宅に若手を招いてセッションする体の番組とか。日本も昔、深夜にやってた『ライブG』とか、いろいろあったんですけど、最近ないですよね。でもアメリカでは脈々と、形を変えて続いてます。『サタデー・ナイト・ライブ』みたいなものですよね。
――そもそもの大前提として、竹善さんは、無観客配信ライブをやること自体に、どんな印象を持っていましたか。
やったことがないので、どんなもんだろうな?と思いつつ、やるなら僕らなりにいじってやりたいと思っていましたね。予想していたのは、歌番組の生放送を丸々預けられた感覚かな?と思っていて。やってみたら、まさにその感覚でしたね。自分はもう何十年とラジオをやっていることもあって、ラジオの生放送に映像が付く、みたいな。そういう進め方をしていったので、けっこう気楽にできました。撮り方も、360度の撮り方なので、どういう映り方をしてるのかな?とか全然気にしないで、曲が終わったら、拍手が来なくても普通にメンバーで会話したりとか、“ゆるい感じがいいよね”という感じで届ければいいんじゃないかな?と思ってやりましたね。だから、ほとんど編集してないです。撮りっぱなしです。
――みなさん笑顔で、すごくいい感じです。
お客さんがいないので、ミュージシャン同士が顔を見合わせているぶん、ある意味ジャズのセッションに近いんですよ。基本的にお客さんのことは何も考えず、自分たちがやりたいようにやっているのを見てもらうのが、ジャズライブの一形態ですから。それと同じ感覚で、それぞれに駆け引きしながらセッションする色がすごく強いライブだったと思います。そういうパートも作りましたしね。
――8月29日、中野サンプラザからの配信ライブが「DAY1」、9月5日、羽田スタジオからの配信ライブが「DAY2」ということで、こちらはスタジオ収録になってます。やはりホールとは、気持ちが変わりますか。
あまり変わらないですけど、面白いことに、演奏は変わるんですね。やっぱり音が違うので、ホールとスタジオでは。いろんなことが全部影響するんだなと思いましたね。
――曲も、DAY1とDAY2では半分くらい変わっているので、みなさんぜひ見比べて、楽しんでいただきたいと思います。
Blu-ray、DVDに入っている映像は、音をもう1回整理して、いい音になってますので。印象が変わると思うし、こういう音を出したかったんだということがよくわかるサウンドになっていると思います。
感動させるとか、感動してほしいとか、そういう感覚は持たないですね。自分たちが作りたいように作ることが、一番の誠意のような気がします。
――そして新曲の「春雷 feat. 露崎春女」。これはいつ頃に作っていた曲ですか。
去年の10月ぐらいまでに作ったんですが、これが偶然の産物で出来上がっていった、面白い曲なんですね。もともと3月にはコロナが明けている設定で、普通にツアーをやる予定だったんですよ。キャパシティ100%の設定で、せっかくだから人がみんな集まる楽しさを伝えようと、クワイヤー(合唱隊)を入れて、ステージで盛り上がる楽曲を書こうという話になった。でも、ただクワイヤーを入れて、もろにゴスペルちっくな楽曲だと、90年代でもないし、つまんないなと思って、ロックなサウンドにクワイヤ―を入れる、そういう企画でやってみようと。U2が昔やりましたけど、異種格闘技的な感じにしたいと思って、曲を書き始めたんですけど、途中でいろんなアイディアが出てきて――元々オルタナ系のロックが大好きなので、90年代以降の、ヒップホップを通ったオルタナだとかパンクだとか、そういうサウンドで久しぶりにやってみようかなと。20年ぐらい前に、そういうものに凝ってやっていた時期があるんですけど、最近またそういうグループも出てきているので、俺らがやったらどうなるかな?という感じでやってみた。そしてアレンジして進めていくうちに、“クワイヤー、いらないな”という話になって、クワイヤーをなしにした。だから、本末転倒の連続で出来上がった曲です(笑)。
――二転三転、本人たちも想像していなかった。
でも結果的に、面白いものができましたね。何十年もやってると、“こうやればこうなる”というものがなんとなくわかってくるのが、嫌なんですね。“こういうものを求められているだろうな”というものを、真正面からやることが嫌いで。SING LIKE TALKINGは、アマノジャクばかり揃ってますから(笑)。今回もそういう意識があって、偶然が繋がっていったんじゃないですかね。非常に面白いサウンドになったと思います。
――そして露崎さん、フィーチャングボーカルとしてすごい存在感です。
プリンスが一時、ゴスペルの女性シンガーをフィーチャーした楽曲をいくつか作ってるんですよ。デュエットというよりは、二人のボーカルコラージュという感じの。そういえば日本にもバービーボーイズがいたな、とかね。そういう面白いことを試してみようかなということも重なってますね。
――露崎さんがSING LIKE TALKINGのコーラスに参加してから、もうずいぶん長いですよね。
元々は、彼女がデビューする前、96年の僕らの武道館でのコンサートで、コーラスをやってもらっているので。その後は彼女もアーティスト活動が忙しかったので、落ち着いてきた頃に、またコーラスを1回お願いしたんですよ。コーラスというより、サブ・ボーカル的な感じで。そしたら、彼女の歌は素晴らしいので、1回やっちゃうともう手放せないんですよね。それで毎回頼んでいるうちに、こういうことになってしまったという(笑)。快く引き受けてくれるので、助かってます。
――今回の配信ライブの映像でも、たとえば「La La La」とか、メインボーカルと同じくらいの迫力を感じます。
それができるのは彼女だけだし、彼女、パーカッションも素晴らしいんですよ。しかも、美人だし。“今回どういう衣装にしますか?”と言われて、“春女ちゃんだけすごく目立つ衣装にして”って、毎回言うんですよ。彼女は“私はサポートだから…”って言うんだけど、いやいや、“ドブに咲く一輪の花のような感じでステージにいてくれ”と(笑)。ほかは、むさい男ばかりなんだからって。
西村智彦 (Guitar)
――「春雷」の歌詞は、まさに今、春の季節感ですよね。桜も出てきますし。
今回、質感以外は(藤田)千章に“どういう内容の詞にしてほしいか”ということは言わなかったんですけど、コロナ禍の春というところで、この歌詞になったんだと思います。「春雷」というのは、雷の中でも最も激しくて怖いものですけど、春が来るお知らせでもあるので。コロナ禍から、コロナが明けることへの思いが、たぶん千章にはあったと思うんですけどね。
――それは、たぶんそうじゃないかな?と思って聴きました。伝わります。
ただ、こういう歌詞が今出てくるところが、ひねくれものだとは思いますけどね。“桜”とか“春”とか、やたらいっぱい出てくる時代があったじゃないですか。そういう時に出さないで、そういうものがなくなった時に“桜”を出してくるという。
――一貫してますね(笑)。ひねくれものの、逆張り精神。
57にもなって、大人げないなと思いながら(笑)。
藤田千章 (Keyboard & Synthesizer)
――そしてもう1曲、カップリング「No Reason」は、対照的にとてもメロウでロマンチックな曲調です。
これは“カップリングを書いてくれ”と言って、千章に丸投げした曲ですね。「春雷」と対照的なトーンにしたかったみたいですよ。だから優しい感じだし、メロディはシンプルに聴こえるんですけど、実は歌うのはすごく難しい。本当に大変な曲なんですよ。通して歌わないでメロディを作るから、西村もそうなんですけど。“あなた、これ歌ってみなさいよ”と(笑)。
――あはは。なるほど。
レコーディングって、現代は部分ごとに録っていくのが多いじゃないですか。だからこういう仕上がりに、一応なってますけど、出来上がったあとに千章に“これ、ライブで通して歌う自信、僕にはまったくございませんので、ライブでやらないでください”と言いました(笑)。
――そんなに難しくは聴こえないですけどね。そこが、マジックだと思いますけど。
30代の頃だったら、挑んだと思うんですよ。そういう曲もありますし、やればやれるんですけど、“挑む”という感覚で歌を歌う、そういうのがもう嫌なんですよ(笑)。楽しくやりたいじゃないですか。“さあ、次はあの曲だ”とか思いながら、前の曲を終わりたくないんですよ。そしたら千章が“いいよ”と言ってくれたので、この曲は音源上でお楽しみください(笑)。
――でも本当に、曲調は対照的ですけど、コロナ禍の思いと、希望や未来を感じさせる言葉使いと、共通したものは感じられると思いました。やはり音楽家として、今この時代には希望を歌うべきだという、そういう思いはありますか。
希望を見てくれればいいですよね。でも、希望を与えるというおこがましさはないんです、デビューの時からずっと。何かが見えるきっかけを、いろんな角度から提示できれば、それでいいんだと思っているので。感動させるとか、感動してほしいとか、そういう感覚は持たないですね。自分たちで好きなように作ることが、一番の誠意かなと思っているので、“こうやればもっと楽しんでもらえるかな”とか、“もっとわかりやすいかな”とか、アマノジャクなせいか、そういうことはすごくおこがましい気がして。自分たちが作りたいように作ることが、一番の誠意のような気がします。
――みなさんぜひ、自由に楽しんでほしいです。そして3曲目の、クニモンド瀧口による「春雷」リミックス、これもかっこいいですね。
ね。ここ何作か、若いアーティストたちにリミックスを頼んでるんですけど、完全に自由にやってもらうんですよ。新しい世代がどういう解釈をして、どういうふうにいじってくれるのか、それがすごく楽しみなので。そしたらみんな、Michael Kaneko、Kan Sano、Ovallとか、今回のクニモンド瀧口とか、どんどん売れてきて、すごいですよね。Kan Sanoくんとか、今から十数年前、まだ彼が福井に住んでいた頃だったかな、地元のアーティストと一緒にやった時に、初めて会ったんですよね。まだすごく若かったんですけど、ずっとSING LIKE TALKINGを聴いてくれてて、僕とセッションするっていうんで、NORD LEADの赤いキーボードを、そのために買ったんだそうですよ。それを未だに使っていて、今やKan Sanoくんの顔ですもんね。面白いですよね。
SING LIKE TALKING
アーカイブがなければないで、そういうものだと思って見ますもんね。ぼくら的には、演奏や歌を間違えた部分を何回も見られるのが嫌だとか、そういうのもありますよね実際(笑)。
――さあそして、シングルが出たあとは、ライブです。3月13日が名古屋、14日が大阪、そして19日が東京・中野サンプラザ。東京公演は、ライブ配信されるんですよね。
そうです。元々は、去年やった2回の配信ライブの曲を並べ替えて、お客さんの前でやるという企画として、このツアーを組んだんですよ。配信の時は配信のための演出でしたけど、その楽曲をお客さんの前でやったらどうなるか?ということで。彼らがパソコンの画面の前で楽しんだものを実際に生で見るという、そういう流れを作りたかったんですけど、まだコロナが収まらなかったので。それでもお客さんがある程度いる前でやることで、雰囲気が変わると思うし、だから配信ライブに付けた『Deliver You』というタイトルを踏まえて、今回のツアーには『Deliver You REAL』というタイトルを付けました。
――中野サンプラザの配信、これって1回限りなんですよね。アーカイブはなしで。
そうです。僕はどっちでもいいと思ったんですけど、アーカイブが残ると思うと、見る側の緊張感とか、集中力が違うんじゃないか?という意見がメンバーからあったので。だからあえて、アーカイブなしにしました。まあ、アマノジャクなんじゃないですか(笑)。
――出ました(笑)。SING LIKE TALKINGを語るキーワード、アマノジャク。
でも確かに、アーカイブあるかなしか、どっちがいいかは別として、なければないでも、そういうものだと思って見ますもんね。あとぼくら的には、演奏や歌を間違えた部分を何回も見られるのが嫌だとか、そういうのもありますよね実際(笑)。
――会場に来られない方は、ぜひ配信でお楽しみくださいと。
僕らの客層は40代以上が多いので、家族の手前とか、職場で責任ある状況にあるとか、そういう理由で配信だけ見るという人も多いんですよ。どんな形であれ楽しんでもらえたら、と思います。
取材・文=宮本英夫
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