Mr.ふぉるて、最新作『sweet life』
を通して語るバンドの過去・現在・未

東京都出身、平均年齢20歳4ピースロックバンドのMr.ふぉるてが、2021年3月24日に2ndミニアルバム『sweet life』をリリースした。“素敵な人生”という意味で『sweet life』と名付けられた今作には、様々な心境の変化によって表現の幅がグッと広がった、最新の彼らの楽曲たちが収録されている。本インタビューでは、そんな最新作『sweet life』が完成に至るまで、そしてバンドの過去、現在、「もっと大きなものを歌いたい」と話すバンドの未来像まで、阿坂と稲生の二人にたっぷりと語ってもらった。
──4人は最初どういうところから集まったんですか?
阿坂亮平:高校生のときに、いろんな学校の軽音楽部が集まるコピバンイベントがあって。そこでボーカルの司くんが歌っているところを観て、この人とバンドを組みたいなと思って声をかけたところが始まりですね。他のメンバーは、いろんな高校の文化祭を観に行って、よさそうだなと思った人に声をかけていきました。
──軽音部のコピバンイベントってよくあるんですか?
阿坂:僕らは結構やってたよね?
稲生 司:サッカー部が別の学校と試合する感じで、ライブを披露する場が少ないから、合同ライブみたいなのをやりましょうっていうのがあって。それを何回かやってました。
──そのイベントってどこでやるんです?
阿坂:学校の視聴覚室です。
稲生:基本的には軽音部の生徒がライブしているところを観ていて、たまに顧問の先生が終わった後に評価するっていう(笑)。
──評価されるの!?
稲生:言ってくれる先生もいれば、言わない先生もいて。基本的にはその場を楽しみましょうっていう感じではありましたね。
阿坂:司くんの学校の顧問の先生がすごかった(笑)。
稲生:音楽に結構詳しい人で、「ここはダメだよ」って……
阿坂:厳しかったよね。俺、全然違う学校だったけど、俺も評価されたもん(笑)。
稲生:ははははは(笑)。あった、あった。
──ちなみに、コピバンイベントに出たときは、お2人それぞれどんな曲をやっていたんですか?
阿坂:そのときに組んでいたバンドのボーカルとベースがデスボ出す!っていう感じだったので、自然とマキシマム ザ ホルモンとかSiMとか、そういう感じになってました。
稲生:いまと全然違う(笑)。ギターもテロテロ(速弾き)してたもんね?
阿坂:してたね(笑)。
稲生:自分はSEKAI NO OWARIですね。それこそSEKAI NO OWARIのコピバンをしてたら声をかけられたんですよ。
阿坂:僕も好きだったんで。
稲生:それで仲良くなって、じゃあ組もっか?っていう感じでしたね。
Mr.ふぉるて・稲生 司
──最初に「こういう音楽をやろうよ」みたいな話し合いもされたんですか?
阿坂:ジャンルみたいなものは特に意識していなかったですね。当時はまだ技量がなかったので、ボーカル、ギター、ベース、ドラムのアンサンブルできるものというところからギター・ロックになったんですけど、ジャンルに囚われずにやっていきたいっていうのは、いまも変わってないです。
──楽曲は稲生さんがメインに作っていますが、いつもどういう形で進めていくんですか?
稲生:弾き語りのデモをグループLINEに投げて、「こういう曲を作ってみたから、それぞれイメージ湧かせて」って伝えて、スタジオでバーン!って合わせる感じでしたね。それで、「なんかここちょっと違くない?」ってそれぞれが意見を言って。
阿坂:うん。いろいろ言い合って作っていく感じです。
──稲生さんは、Mr.ふぉるてを組む前から曲を作っていたりとか?
稲生:いや、曲を作り出したのは高校2年生のときです。コピバンをやっていたときに、自分の気持ちも歌ってみたいなっていう気持ちがどんどん大きくなってきて。当時組んでいたバンドは「コピバンでいいや」っていう感じだったんで、部活を辞めて、ふぉるてに集中するようになりました。
──結成当初は、歌詞としてはラブソングを中心に、喪失感や歯がゆい想いを綴ったものが多かったですよね。そこから曲を書いていくにつれて、いろいろな心境の変化が生まれてきたんじゃないかなというのは、今作の『sweet life』を聴いて思ったことでもあったんですが、実際のところいかがですか?
稲生:自分が聴いていた音楽もラブソングばかりで、最初はそっちに寄っていたんですけど、だんだん自分の考えが出てきたというか。そもそも、自分は結構考え込んじゃうタイプなんですよ。昔、自分が病んでしまったときに、死についていろいろ考えていたんですけど。
──それはいつ頃なのでしょうか……?
稲生:小学校6年生ぐらいの頃から周りとコミュニケーションがうまく取れなくて、中学生のときにイジメにあって不登校になっちゃったんですけど。家にしかいなかったから人と接触することもなかったし、当時は携帯も持っていなかったんで、ひとりで考え込んでしまったり、葛藤したりしていて。そのときには気付かなかったこととか、思っていたけど言葉に表せなかった気持ちを、今回の『sweet life』では書けたかなと思います。
──阿坂さんも稲生さんが作る曲に変化を感じたりしました?
阿坂:確かにメッセージ性はかなり変わってきてるなって思いました。パンチラインっていうんですかね。言葉のパンチ力みたいなものは、前のアルバムと比べるとかなり強くなっているなって。
Mr.ふぉるて・阿坂亮平
──まさにですね。今作に収録されている曲って、いつ頃作ったものなのでしょう。
稲生:自分が作り貯めていたものに、いまの気持ちを織り交ぜながら書き直したりもしたんですけど、「トライアングル」「なぁ、マイフレンド」「幸せでいてくれよ」は最近作った曲ですね。コロナ禍になってから、いろいろ思ったことを織り交ぜたりしながら書いたんですけど、メッセージはあまりコロナに添いすぎないように、ずっと聴けるような感じにしようと思ってました。
──「途方に暮れても生きていく」は昔に作った曲?
稲生:そうです。歌詞とメロディの一部だけがあったんですけど、今なら書けるなと思って。
──出だしが衝撃的でした。<死に方を考えていたんだ深夜>という。
稲生:ちょっと闇が深いですね(笑)。
──でも、過去にはそういう時期があったと。<あげたいな僕も誰かに 生きる力になりそうな そんなものを>というのも、昔から思っていたことでもあるんですか?
稲生:そうですね。音楽を始めた理由が、自分が病んでしまったときに音楽に救われたことがあったからで。だから、心が疲れてしまったときに、そっと背中を押してあげられる音楽をやりたいなって思ってます。
──ギターソロも気持ちよかったですよ。
阿坂:アレンジを考えていたときに、なんかちょっと冷たさがあるような感じがしていて。だけど、マイナー調にはせずに、陽気な中にこのメッセージがあったほうが強く伝わるなと思ったので、ギターソロもそういうところを考えて作りました。なんか、サイコパス的な感じっていうか(笑)。
稲生:サイコパス的というか(笑)、似た感じでいうと……ザ・ビートルズの「Help!」って曲調は明るいけど、歌詞は<助けてくれ>って言ってるじゃないですか。自分もこの曲にはそういう感じのイメージが少し頭にあって。それをギターのストロークぐらいでしか表現できないんですけど、そこをNumaさんに汲み取ってアレンジしてもらいました。
──お話にもあったように、今作は編曲にNumaさんを迎えていますが、アレンジに関してはいろいろと細かく話し合われたんですか?
阿坂:そうですね。僕は将来的に編曲でいろんな人と関わって行きたいという夢があるので、最前線の輝いているところにいる方と携われて、すごく勉強になりました。ちょっと前からDTMを始めたんですけど、やっぱりプロの方と一緒にやると、吸収できるものが自分でもわからないぐらいにすごく多くて。そこは次作にかなり影響してくると思います。
稲生:Numaさんは、今までの自分たちの楽曲を聴いてくださって、自分たちらしさを残しつつ、新しいものを取り入れてくださった感じがすごくしていて。だから、ここから自分たちが変わりたい方向に進んでいくための後押しというか、その手伝いをしてもらえた感覚がありますね。
Mr.ふぉるて・吉河波音
──確かにそうですね。先ほどザ・ビートルズが話題に出ましたが、最近作ったという「幸せでいてくれよ」は、オアシスっぽいというか、UK感がありますね。
阿坂:そこはだいぶ取り入れてました。UKロックはモダンなものからクラシックなものまで好きなんですけど、これはクラシック寄りのものをだいぶ意識しましたね。ストリングスとかパーカッションも、まず4人で考えて、自分がDTMで起こして、それをNumaさんに渡してキレイにしてもらうという流れで、ここに辿り着きました。
稲生:この曲、もともとは自分の弾き語り用に作っていたんですけど、「これ(バンドで)やったほうがいいよ」っていうところからこの形になったんですよ。
阿坂:サビのインパクトも強いからバンドでやってみたかったし、聴いたときにストリングスとバンドのアレンジが目に浮かぶくらいの曲だったので、アレンジしてみたくて。
稲生:でも、弾き語り用に作ったものだから、最初はどういう形になるのか全然想像できなくて。で、そのときに、それこそUKを聴いていたから、ああいう感じにしたいと思って、メンバーの中で一番アレンジに詳しい亮平くんに相談して、ふたりで話し合いながら形にしていきました。
──阿坂さんとしては、今作の曲を作っていく中でグっときたものを挙げるとするといかがでしょうか。
阿坂:リスナー的な目線だと「幸せでいてくれよ」が好きなんですけど、「トライアングル」は自分がずっとやってみたかったアレンジなんですよ。何曲もデモを出していくなかで、スタッフさんともいろいろ話し合って、何回もボツになったんですけど、The 1975みたいなキラキラした感じもやってみたいなと思って。だいぶ攻めてはいるなと思いながらデモを渡したら、結構いろんなところでお褒めの言葉をいただいて。だから、この曲は自分にとって、編曲家の第一歩として今後思い出になっていくんだろうなって思ってます。
稲生:「トライアングル」のアレンジは、基本的に亮平くんがやっていて、自分はメロディとコードを作っただけなんですよ。
阿坂:僕の暴走アレンジになっちゃったんですけど(笑)。
稲生:でも、いいなって思いました。正直、自分がいままで聴いてきた音楽とはまたちょっと違ったテイストがあったんで。そこから、あんまりキラキラさせすぎてもなとか、自分も意見させてもらいつつ、2人で細かい調整をしながら作っていった感じです。
──キラキラしすぎず、でもキラキラさせたかったと。
稲生:キーワードに〈ロックバンド〉っていうのがあるんで、ギター・ロックから離れすぎないところにいたかったというか。そこは歌詞のメッセージも含めてのところですね。
Mr.ふぉるて・福岡 樹
──実際<スーパーマンはいないけど ロックバンドはここにいる>という強いメッセージがありますからね。
稲生:自分は映画が大好きなんですけど、観終わった後に現実に戻るような感覚っていうのかな。なんか、ディズニーランドから帰ってくるときの感じというか。ファンタジーも交えたいけど、現実としてはこうだよねっていうことを歌いたくて書いたところもありますね。
──歌詞を抜粋していくと、稲生さんが思うロックバンド像は、悲しみや苦しみを優しく包み込んでくれて、行く道を照らすものであると。
稲生:そうです。自分が音楽に助けられてこの道にいるので、自分もそうしていきたいっていう。
──自分が思い描いているロックバンドが鳴らすサウンドも、こういった多幸感があって包み込む感じがあったりするんですか?
稲生:どうだろう……めちゃくちゃ難しい質問ですね(笑)。そこはもう人それぞれの解釈ですけど、僕としてはつらいときに包み込んでくれるような感覚があったから、自分のそういう感覚をうまく書けないかなと思っていたんで……だから、自分としては包み込んでくれるようなイメージです。
──阿坂さんは、自分が思うロックバンド像みたいなものってあります?
阿坂:ロックバンドかぁ……。僕としては、邦楽洋楽問わず、ジャンルもめちゃくちゃに聴くので、BLANKEY JET CITYも好きだし、それこそThe 1975も好きだし。ロックバンドと一言でいっても音楽性は無限にあるから、僕はわりと自由に捉えています。でも、救ってくれるヒーローみたいな感じはありますね。
──なるほど。最近って自分たちの音楽を「ロック」というのを恥ずかしかったり、ためらったりすることもあったりしますけど。
2人:ああ。
──その辺はどうです?
阿坂:全然そんなことないですね。ロックというものには誇りを持ってます。
稲生:うん。僕もいまはいろんな音楽を聴くし、自分でもロックってなんだろうって考えたこともあるんですけど……。
2人:難しい(笑)。
──ですよね。自分でも難しい話を振ってるなぁと思います(苦笑)。
阿坂:魂だよね?
稲生:それかな!
阿坂:メンタル的なところですかね。
Mr.ふぉるて
──バンドのこれからについてもお聞きしたいんですが、Twitterのバンドのオフィシャルアカウントのプロフィールに、「7年後でかいフェスの大トリを受け持つバンドです。」と書いてますよね(2021年3月現在)。
阿坂:あれはバンドを組んだときに言っちゃったやつなんですよ(笑)。
稲生:あれって誰が書いたんだっけ?
阿坂:みんなで考えたんじゃなかったっけ?
稲生:いや、俺、言ってないよ。勝手に書いたんじゃない?
阿坂:どうだっけ? はっきり覚えてないけど。俺なのかな。俺しか書かないか?(笑)
──(笑)。まぁ、そういった目標があると。
阿坂:司くんの声を初めて聴いたときに、『BECK』の野外フェスのシーンが見えたんですよ。だから、絶対に野外フェスに出たいっていうのは、組んだときの目標のひとつにありました。結成のときは10年後だったんですけど、いまは7年で。
──ちゃんとカウントダウンしてるんですね(笑)。
阿坂:いまとなってはその言葉がプレッシャーになってますね(笑)。
──「でかいフェスの大トリ」って、周りからの評価も含めて選ばれるので相対的なところがあるけど、自分は何を歌いたいのか、どういうバンドになりたいのかという絶対的なところは、今日お話いただいた通り、しっかりあると。
稲生:そうですね。10代、20代の人って、歌詞を見たときに恋愛に置き換えたり、そういう歌に捉えたりすることが多いと思うんですけど、僕としてはもっと大きなものを歌いたくて。たとえば、今回の「幸せでいてくれよ」って、歌詞だけ見ると失恋して去っていった相手を思って歌っているように見えるけど、自分としては……ちょっとややこしい感じになっちゃうかもしれないけど(笑)、自分が死んだ後のことを歌ってるんですよ。もし天国があるのであれば、自分が亡くなってしまって、大切な人がこっちの世界に残っているときに、あっちの世界から覗く、みたいなのってあるじゃないですか。
──空の上から見ているという。
稲生:そうです。自分としてはそういう気持ちで書いたんですよね。天国から大切な人たちに向けて歌っているっていう。ただ、それはあくまでも自分の中での話であって。その相手が、それこそ失恋相手のことでもいいし、遠くに行ってしまった友達のことでもいいし、そうやっていろんな解釈ができるような曲を書いていきたいなって思います。

取材・文=山口哲生 撮影=後藤壮太郎

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