21世紀
ニューオーリンズ・ファンクの傑作、
ドクター・ジョンの
『クリオール・ムーン』

さまざまな顔を持つドクターの音楽

この後、レコード会社を移籍し、強力なライヴ盤『ハリウッド・ビー・ザイ・ネーム』(’75)をリリースする。70年代の締め括りはトミー・リピューマ(ジョージ・ベンソンやマイケル・フランクスのプロデュースでお馴染み)のホライズンレコードで2枚のフュージョン系アルバム(といっても、ドクターらしいサウンド)をリリース、80年代に入るとソロピアノ作品の『ドクター・ジョン・プレイズ・マック・レベナック』(’81)(母親に捧げた名曲「ドロシー」が収められている。CD化の際にはボートラで別テイクもあり)や、ハーヴィ・メイソンやマーカス・ミラーらといったフュージョン系ミュージシャンをバックにして、ジャズに近寄った『イン・ア・センチメンタル・ムード』(’89)などをリリースしている。このアルバムでドクター・ジョン離れしたリスナーを僕は何人も知っている。

90年代には壮大なルーツ回帰作『ゴーイン・バック・トゥ・ニューオーリンズ』(’92)を自身初のニューオーリンズ録音でリリースしている。90年代は軽めのファンクやジャズ寄りのアルバムを出し、1999年リリースの『デューク・エレガント』は、ブルーノートに移籍して初のアルバムとなる。デューク・エリントンのナンバーを取り上げているので、カクテルジャズ系の安易な企画モノかと思いきや、ドクターの大胆なアレンジで素晴らしいファンクアルバムになっていた。ここで素晴らしい演奏を聴かせていたのが、今後ドクターと長い付き合いになるザ・ロウワー・ナイン・エレブン(The Lower 9-11)。スタントン・ムーア擁するギャラクティックやパパ・グロウズ・ファンクなどにも通じる、ニューオーリンズの新しいファンクグループである。

本作『クリオール・ムーン』について

本作でも『デューク・エレガント』と同じくザ・ロウワー・ナイン・エレブンをバックに従えているのだが、この作品は全曲ドクターの書いた曲(ドク・ポマスとの共作はあり)が収められており、前作を凌ぐファンク作品に仕上がっている。89年の甘い『イン・ア・センチメンタル・ムード』でドクターを見限った人にこそ、この作品をぜひ聴いてもらいたい。

ヘヴィで重いリズムセクションを中心に、ドクターのキーボード(特にB3が素晴らしい)が縦横無尽に駆け巡り、ホーンセクションとコーラスが間を埋めるという展開は鳥肌ものである。ドクターの歌も軽やかで、いつもより上手く聴こえるのは少し不思議。

収録曲は全部で14曲(日本盤はボートラ1曲あり)。ホーンアレンジはドクターとJB’sのフレッド・ウェズリーが担当している。サックスにはデヴィッド・ファットヘッド・ニューマン、スライドギターにはサニー・ランドレス、フィドルにはケイジャン界の大スター、マイケル・ドゥーセら、大物アーティストたちが脇を固めている。また、ライナー内の写真はヘンリー・ディルツが撮っているという贅沢さ。

ミーターズがバックを務めたドクター・ジョンの70年代を代表する『イン・ザ・ライト・プレイス』『デシティブリー・ボナルー』の2枚と、そのほぼ30年後にリリースされた『デューク・エレガント』『クリオール・ムーン』の2枚は好対照となっており、ドクターの創作意欲が全く衰えを見せていないことに驚くが、彼は亡くなる直前まで精力的に活動しており、その枯れることのない才能がまさに人間国宝なのである。

TEXT:河崎直人

アルバム『Creole Moon』2001年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. ユー・スウォア/You Swore
    • 2. イン・ザ・ネイム・オブ・ユー/In the Name of You
    • 3. フード・フォー・ゾット/Food for Thot
    • 4. ホールディン・パターン/Holdin' Pattern
    • 5. ブラハ・ベンベ/Bruha Bembe
    • 6. イミテーション・オブ・ラヴ/Imitation of Love
    • 7. ナウ・ザット・ユー・ガット・ミー/Now That You Got Me
    • 8. クリオール・ムーン/Creole Moon
    • 9. ジョージアンナ/Georgianna
    • 10. モンキー&バブーン/Monkey & Baboon
    • 11.テイク・ホワット・アイ・キャン・ゲット/Take What I Can Get
    • 12. クィーン・オブ・コールド/Queen of Cold
    • 13. ライトニン/Litenin'
    • 14. ワン・2A.M.・トゥー・メニー/One 2 A.M. Too Many
『Creole Moon』(’01)/Dr. John

OKMusic編集部

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