Broadway Musical『IN THE HEIGHTS
イン・ザ・ハイツ』取材会&観劇レポ
ート~各地で旋風をまき起こしてきた
作品がついに東京へ

Broadway Musical『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』日本版の東京公演が2021年4月17日(土)、TBS赤坂ACTシアターで開幕した(4月28日まで上演)。
「Hamilton」のリン=マニュエル・ミランダが原案・作詞・作曲を手がけた本作。2008年にトニー賞最優秀作品賞を含む4部門、2009年にはグラミー賞最優秀ミュージカルアルバム賞を受賞するなど、大きな注目を集めた。
ラップやサルサ、ヒップホップといったラテンのリズムに乗せて描いたエネルギッシュな本作は、ミュージカル界に新風を巻き起こし、多くのファンに衝撃を与えた作品だと言えるだろう。
世界中で上演され、2021年にはハリウッド映画化も決定した“新王道”ミュージカルが、約7年ぶりに日本に帰ってきた。3月・鎌倉でのプレビュー公演を皮切りに、大阪・名古屋で熱狂の渦を巻き起こし、このほど、ついに東京公演がスタート。初日に先駆けて行われた取材会とゲネプロの様子をお届けしよう。

■会見レポート
ゲネプロ前の取材会には、Micro[Def Tech]、平間壮一、林翔太、東啓介、田村芽実、石田ニコル阪本奨悟が登壇した。
――まずは見所と役柄、東京公演初日を迎えての気持ちをお聞かせください。
Micro[Def Tech]/ウスナビ役:7年前の初演から、今回全く違うものに生まれ変わりました。サウンドも台本も刷新し、「これが本当の『イン・ザ・ハイツ』だ」と感じています。今日を迎えられたのが嬉しいですし、今日は客席で(平間が演じる)本当のウスナビを見られるので(笑)、楽しみにしています。
平間壮一/ウスナビ役:この作品のキャストは、皆さん無理なくそのキャラになれているのが素敵だなと思っていて。僕自身も、この舞台上でワシントンハイツに住んでいる住民になれています。仲間への信頼度も高くて、ただ仲が良いだけのカンパニーじゃなく、一人ひとり尊敬できるのが魅力ですね。
林翔太/ベニー役:僕は今回が初めてのWキャスト。人種差別などがある中で、障害を乗り越えて自分の夢を叶えるために努力している青年を演じます。こういうご時世で、なかなか劇場に来るのも難しいと思いますが、来て下さった方に何かを感じていただけるよう、カンパニーで一丸となって頑張るので、そこを受け取っていただけるといいなと思います。
東啓介/ベニー役:ベニーはワシントンハイツで唯一の黒人です。僕らが演じるとなかなか伝わりづらいとは思いますが、林くんと一緒に、身体能力や歌の力などで届けられたら。また、Wキャストの組み合わせが地方では2パターンしかなかったんですが、東京公演では4パターンに増えるので、また新たな『イン・ザ・ハイツ』が見られるんじゃないかと思っています。千秋楽まで、皆さんと僕らの力で乗り越えたいと思いますので、応援よろしくお願いします。
田村芽実/ニーナ役:聞くだけでノれる音楽や明るい楽曲がたくさんあり、登場人物はみんな個性豊かですが、それだけではなく、一人ひとりが悩みを抱え、逃げることなく真正面から向き合って懸命に生きる様子が描かれています。そのエネルギーを感じていただけたら。Wキャストがいらっしゃって、役者さんが変わるだけで舞台上の空気全体が毎公演変わるので、ライブをしているなという感覚があります。お客様にも、二度、三度と来ていただけるくらい楽しい作品だと思います!
石田ニコル/ヴァネッサ役:この作品に関わるのは私にとって大きく、嬉しいことです。このカンパニーで東京公演を迎えられて、みんなでステージに立てたことをすごく嬉しく思っています。みんなで作るこの情熱を、観に来てくださるお客様一人ひとりの心に最後まで届けられたらと思っています。
阪本奨悟/ソニー役:稽古から約2ヶ月やってきましたが、地方公演を通してチーム感が強まり、みんなと一緒に舞台に立てる喜びを感じています。
だからこそ、このご時世に見に来てくださるお客さんにホーム感というか、あたたかさが届いてほしいなと思っています。僕自身ももっと磨きをかけて、いいものをお見せできるように、千秋楽まで駆け抜けて行きたいと思っています。
――この中ではMicroさんだけが2回目です。全く新しくなったということですが、具体的には。
Micro:内容に加えて、台詞の中にもスペイン語がたくさん足されて、初演よりも本国の『イン・ザ・ハイツ』に近付きました。あとはアンサンブルを含めたみんなの身体能力の高さにびっくりしています。それぞれの作りが際立っているので、僕が頑張らなくても、みんなが作ってくれたものをきちんと受ければウスナビの良いところが出てくるという感じですね。
――ラップがメインの作品でスペイン語も多いということで、苦労も多かったのでは?
平間:苦労しました?(周りに尋ねる)
ラップは大先輩のMicroさんが教えてくださって、「ラップはこうすると聞きやすいよ」とかアドバイスもくれたので、大変よりも楽しさが大きかったですね。
――ラップのやり方やコツがあるんですか?
Micro:あります!言葉がちゃんと立てば、スピードが早くても耳に届くので。
2歳から70歳まで幅広い年代に「生麦生米生卵」がちゃんと届くかということを意識しますね。
林:僕は事務所の先輩がラップしている映像を見ました。
あとはMicroさんから、自分の声を録音したものを早いテンポで聴くと覚えやすいよ、というアドバイスをもらったのでやっていました。発声練習とか、家で一人でラップ風にやったりも(笑)。
日本でいうと、ラップってヒップホップ文化やちょっと怖いイメージがありますけど、台詞や言葉の延長線でしかなくて。さっきの「生麦生米生卵」も、「これはラップ」といえばラップになりますし、韻を踏んでいるのがラップというわけでもない。一番大事なのは心で、相手に伝わればいいんだということを先輩から教わりました。
リズムに乗せて言葉遊びをしながらコミュニケーションも取れて、すごく便利なものなんです。ラップのイメージを塗り替えられたらいいなと思っていますね。
ラップ風の発声練習を再現する林
――東さんはこれまであまり経験のない黒人役です。どんな風に役作りをしましたか?
東:あまり考えていなくて、シンプルに音楽を楽しむことや、台本に書かれていることを素直に表現することが大事だと思っています。ラップの表現は、海外のアーティストを見たり、本編の音楽をたくさん聴いたりしながら自分なりに解釈しました。
――鎌倉や大阪、名古屋と回ってきて、お客さんの反応はいかがでしたか?
平間:最高でした!
Micro:歓声をあげられない分、皆さんの拍手の量がものすごくて。トリプルカーテンコールなどでは、スタンディングオベーションで静かながらも鳴り止まない拍手を体験したので、それが答えだと感じています。
――石田さんはミュージカル、どうですか?
石田:私にとって4回目の舞台になるんですが、このヴァネッサという役はすごくプレッシャーでした。ウスナビはWキャストなので学ぶことも多く、初挑戦のことだらけです。でも、毎回新鮮な感覚で『イン・ザ・ハイツ』の世界で生きられるのが嬉しいです。ミュージカルの楽しさも改めて感じられましたね。
――作中で宝くじが登場しますが、もし作中と同じく1000万円くらいの宝くじが当たったら何に使いますか?
Micro:次のビジネスに投資します!(ニーナの父)ケヴィンの「私の頭の中には常に投資という考えがある」っていう台詞がすごく響くんです。お金は自分のためじゃなく、社会貢献などに使いたいです。
平間:人のために何かをするのが一番嬉しいことだと思います。自分一人で高いものを買っても喜びを分け与えられるわけではないですし。今なら、だだっ広い部屋を借りて、密にならない打ち上げができたらいいですね。
林:僕は両親と弟に全部あげます。自分より家族が幸せになってくれたらいいかなって。
――素晴らしい答えが続きますが東さんは。
東:じゃあ全部自分に使います(笑)。えーと……良いところに住むとか。でも本当に当たったら、貯金するかもしれないですね。使えないかも。
田村:ずっと欲しいものがあって……。乾燥機付きの洗濯機なんですけど。忙しいと家で洗濯機を回すのが億劫になってしまうし、梅雨に入ると外に干すのも大変なので……。
東:だいぶ余るよ(笑)?
田村:余ったら貯金するけど、まずは乾燥機付きの洗濯機!2年くらいずっと欲しいんです。コインランドリーも近くにないので。
Micro:大千秋楽がちゃんと終わったらMicroおじさんが買ってあげるよ!(笑)
石田:半分貯金して半分で旅行に行きます。いろんな国に行っていろんなものを見てみたいです!
阪本:全部言われちゃったんですけど、めちゃくちゃ高価な楽器を買いたいなと思いました。高いギターとか家にあったらモチベーションも駆り立てられるかなって。
――田村さんは立て続けにミュージカルへの出演が決まっていますが、ミュージカルに出たいという長年の夢が叶いつつある今の気持ちはいかがですか?
田村:恥ずかしながら、みんなで作品を作るということが最近分かってきました。自分一人で頑張ってもダメだし、皆さんから舞台上で多くのものをもらって、それにお芝居や歌でお返しすると、さらに何倍にもなって返ってくるということを肌で感じることができています。毎回楽しくて幸せで、喜びを噛み締めています。
――最後に一言ずつ挨拶をお願いします。
Micro:この作品は、群像劇で庶民のミュージカルです。移民や人種差別の問題など、コロナ禍でも出てきた人と人との分断、差異が描かれています。なぜ人は戦争や紛争を起こして夫婦喧嘩するのかと言ったら、相手と自分の違い。差別や区別が生まれる理由を如実に描いています。
7年前の初演よりも今の方が日本国内にラップが馴染んでいますし、今にマストなミュージカルだと思いますね。一度と言わず二度、三度と足を運んでいただきたいです。
平間:今の自分たちがこの作品に出会って、この年代のみんなでやれることに大きな意味があると思っています。東京にきて、もう終わっちゃうんだなと言う寂しさや楽しみも色々ありました。終わってほしくはないですが、もし再演があって同じメンバーで再開しても同じパワーは出せないと思う。この時代にやれていることに感謝したいです。
それと、自分の中で「自分が主演になれたら、みんなにとって居心地の良いカンパニーを作りたい」と言う夢があったので、このメンバーに出会えたことに感謝しながら東京公演を乗り切りたいし、その様子を皆さんに見ていただきたいと思っています。
林:今この時代だからこそやる意味があり、伝わるものがたくさんある作品だと思っています。作中でも、ホームを探している若者たちを見ることで考えさせられるし、感じるものがあると思います。このカンパニーは本当に仲が良くて、その雰囲気も表れていると思うし、ステージ上でも楽しく演じているので、そんな僕らを見て元気をもらっていただけたら。
東:『イン・ザ・ハイツ』という作品は音楽の力が絶大で、一曲一曲本当に素晴らしいです。今はインターネット社会、さらにコロナ禍で距離を取らなければいけない中、この作品では心の距離の近さを感じられると思います。最後まで見逃さず、一人ひとりの物語を見ていただけたら、ハッピーな気持ちが伝染するんじゃないかと思うので、ぜひ劇場に足を運んで楽しんでください。
田村:私自身の話になるんですが、この状況下で去年の3月くらいからミュージカルのお仕事が全く無くなってしまって、一日一日を生きるのが大変な状況でした。お客様が客席に座ってくださっている状態で上演するのは一年以上ぶりくらいになるので、この作品は私にとってすごく思い入れのある作品です。
舞台上で皆さんとお芝居をしていて、「劇場が私のホームだ」と思いましたし、おばあちゃんになるまでずっと劇場に立っていたいと思わせてくれた作品なので、大変な状況でも劇場に足を運んでくださるお客様に100%の力で、命を捧げて作品を届けられたらと思います。劇場でお待ちしています!
石田:この状況下で、世の中があまりハッピーでないですよね。私は『イン・ザ・ハイツ』という作品、ヴァネッサという役をやっているうちに、今まで自分が抱えていたモヤモヤの中にちょっとだけキラキラしたものが出てきたんです。それで、この作品はみんなをハッピーにする力があるんだなと実感しました。
今ちょっと疲れていたり、モヤモヤしているお客様の心にも、キラキラしたものをお届けできたらと思っているので、ぜひ足を運んでいただきたいです。
阪本:僕は毎公演、全楽曲を楽しみにしています。今回は生のバンド演奏も入り、全曲が互いに良いバランスで絶妙に引き立てあっています。『イン・ザ・ハイツ』のカラーみたいなものが濃く出ているので、それを楽しみにしてほしいです。
皆さんのいう通り、人と人との距離がなかなか近くに行けなくて寂しさやもどかしさもあると思うので、劇場で見ていただいた方には、人と人の繋がりやあたたかさを感じてもらえたら。メッセージを持って帰っていただける作品だと思うので、僕も全身全霊で、パワフルにお届けします!
田村から伝授された一発芸を披露するMicro[Def Tech]

■観劇レポート
<この先ネタバレ及び舞台写真あり>

<あらすじ>
物語の舞台はマンハッタン北西部、移民が多く住む町ワシントンハイツ。
ドミニカ系移民のウスナビ(Micro[Def Tech]/平間壮一)は、両親の遺した商品雑貨店を守りながら、ドミニカで暮らすことを夢見ている。タクシー会社で働くベニー(林翔太/東啓介)は、経営者夫妻の娘ニーナ(田村芽実)に想いを寄せている。
ハイツの希望の星として名門大学に進学したニーナは、ある秘密を抱えて帰ってきた。ウスナビが恋心を寄せるヴァネッサ(石田ニコル)はダニエラ(エリアンナ)の経営するヘアサロンで働きながらハイツの外の世界に憧れている。
そんな中、皆から慕われているアブエラ(田中利花)に奇跡が起きる!狂喜乱舞する住人たち。しかし予想もしなかった混乱と不安が突然ハイツを襲う。
ウスナビとヴァネッサ、ベニーとニーナの恋の行方は?ハイツの未来は?大切にしたい自分の居場所はどこにあるのか――。

メディアに公開されたゲネプロでは、平間がウスナビ、林がベニーを演じた。
冒頭から、ウスナビによる住人紹介のラップでスタート。ポップでクールなサウンドに乗って踊る住人たちの姿に、一気に会場のボルテージが上がる。また、配車に奮闘するベニーのソロもラップがメインとなっている。
平間・林ともに、リズムやメロディに乗るだけではなく、台詞としてしっかり届くようなラップを披露している。曲として魅力的なだけではなく、キャラクターの気持ちやシーンごとの空気が伝わる歌唱に、会見で出た「ラップは幅広い年代に伝わるコミュニケーションの手段」という言葉を思い出した。
また、ラテンの楽しく情熱的な楽曲の中で、しっとりと聴かせる楽曲が効果的に差し込まれる。どの曲もキャッチーで飽きさせない構成になっているため、物語と曲、ダンスを楽しんでいるうちにあっという間にワシントンハイツのドラマが終わっていた、という印象を受けた。
人が良く少し奥手なウスナビと、男たちからの熱視線を受ける人気者のヴァネッサ。ハイツ唯一の黒人であるベニーと町中の期待を背負う優等生・ニーナ。
それぞれに壁や困難のある二人の恋の行方も大きな見どころの一つだが、それだけではなく、家族愛や友情、“ホーム”への愛など、様々な愛情が描かれる。
例えば、幼い頃からウスナビを本当の家族のように育て、ニーナを見守り、町中の人々に愛情深く接してきたアブエラ。優しくてあたたかく、ちょっぴりお節介な姿に、自らの母や祖母を重ね、故郷や家族を恋しく思う方も多いのではないだろうか。
ニーナの両親も、アブエラとは違う方向性の“親の愛”を見せてくれる。分のために両親や家族同然の従業員たちを犠牲にしたくないニーナに対し、自らが感じてきた不自由さを娘に味わわせたくないと奮闘する父・ケヴィン(戸井勝海)。どちらの思いも理解できるからこそ、二人に寄り添い、時に叱り飛ばしながら家族を繋いでくれる母・カミラ(未来優希)の優しさと愛情にホッとし、改めて心を通わせる家族の絆に胸を打たれた。
また、家庭に問題を抱えるヴァネッサを見守り、甘やかすわけではないが手を貸してくれるダニエラとカーラ(青野紗穂)や、ウスナビの助手として店を支え、恋も手助けする従兄弟・ソニー(阪本奨悟)の友情にも胸が熱くなる。
作中で描かれるのは、人種差別や貧しさ、大切な人とのすれ違いなど、普遍的なテーマ。ワシントンハイツの人々は決して裕福ではないし、それぞれが悩みや問題を抱えている。この先もたくさんの困難にぶつかるだろうと予想できる。だが、挫けずに前を向いて進んでいく明るさと力強さに圧倒される。
たくさんのキャラクターが登場するが、ソロやデュエットでそれぞれの人となり、行動の裏にある考えや価値観がしっかりと描かれるため、それぞれの住人に愛情を抱くことができるのも魅力と言えるだろう。
エネルギッシュな音楽とダンス。そして活力に満ちた住人たちの姿から、たくさんの勇気と元気をもらえるはずだ。
『イン・ザ・ハイツ』東京公演は4月17日(土)~28日(水)まで、赤坂ACTシアターにて上演中。
キャスト陣が言うように、今だからこそすとんと胸に落ち、多くを感じられる本作を、ぜひ劇場で見届けてほしい。
取材・文・撮影:吉田沙奈

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