オルタナティヴや
ブリットポップの時代に、
アメリカ南部に答えを求めた
プライマル・スクリームの
『ギブ・アウト・バット
・ドント・ギブ・アップ』

本作『ギブ・アウト・バット
・ドント・ギブ・アップ』について

収録曲は全部で12曲(このセッション最高の名曲「エブリバディ・ニーズ・サムバディ」は最後の隠しトラックとして収録)。70s前後のストーンズや、デビッド・フッドとロジャー・ホーキンスをメンバーに迎えた後期トラフィックがブリティッシュ・ミーツ・スワンプというサウンドであったのに比べて、本作はより本物志向の強い音作りとなっており、数曲以外はもろにアメリカン・ルーツロックである。その数曲というのがドラクリアスとクリントンにリミックスを任せたナンバーで、「ジェイルバード」「ロックス」(映画『宇宙兄弟』でも使われた)「ファンキー・ジャム」とタイトルトラックの「ギブ・アウト・バット・ドント・ギブ・アップ」である。これらの曲をオリジナル版のトム・ダウドのミックスと比べてみると、泥臭い音をカットしてビートを強調しているのが分かる。年代によって受け取り方は変わるだろうが、実は曲の本質的なアレンジはそんなに変わっていないところにドラクリアスのルーツロック(もしくはトム・ダウド)に対する愛着が見え隠れする。

そして、何より特筆すべきは、本作が普遍的な名曲揃いであることだ。70sのクラプトンやストーンズと同じように、彼らもスワンプロックやサザンロックをリスペクトしながら優れたオリジナル曲を生み出しているのだが、本作でのギレスピー/イネス/ヤングのソングライティングは冴え渡っている。「クライ・マイセルフ・ブラインド」「ビッグ・ジェット・プレーン」「サッド・アンド・ブルー」「アイル・ビー・ゼア・フォー・ユー」などは甲乙付け難い名曲である。

ギレスピーが影響を受けたアーティストの曲を彼自身がコンパイルした2015年の『ボビー・ギレスピーが好きな曲を選んだら、うつろな日曜の朝みたいになっちまった…(原題:Bobby Gillespie Presents Sunday Mornin’ Comin’ Down)』には、ジーン・クラーク、グラム・パーソンズ、ウィリー・ネルソン、クリス・クリストファーソンといったオルタナ世代とは思えないマニアックなセレクトをしていて、アメリカン・ルーツが大好きであることがよく分かった。

おそらく彼はデラニー&ボニーのスタックスからのデビューアルバム『ホーム』あたりをイメージして本作を作ったのだと思う。デラボニにしても、スタックスで録音する初の白人グループであり、スタックス側からすると当時は彼らがオルタナティヴな存在(今でこそクラシックロックの大御所)であったことを考えると、本作と『ホーム』には似た部分が少なくない。

『スクリーマデリカ』的なサウンドを求めている若いリスナーにとって、本作は物足りないかもしれない。しかし、サザンロックやスワンプロックが好きな中年以上のリスナーにとっては、本作は長い間付き合っていけるルーツロックの名盤だと思う。

TEXT:河崎直人

アルバム『Give Out But Don’t Give Up』1994年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. ジェイルバード/Jailbird
    • 2. ロックス/Rocks
    • 3. クライ・マイセルフ・ブラインド/Cry Myself Blind
    • 4. ファンキー・ジャム/Funky Jam
    • 5. ビッグ・ジェット・プレーン/Big Jet Plane
    • 6. フリー/Free
    • 7. コール・オン・ミー/Call on me
    • 8. ストラッティン/Struttin'
    • 9. サッド・アンド・ブルー/Sad and Blue
    • 10. ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ/Give Out but Don't Give Up
    • 11. アイル・ビー・ゼア・フォー・ユー/I'll Be There for You
    • 〜隠しトラック〜
    • エヴリバディ・ニーズ・サムバデ/Everybody Needs Somebody
『Give Out But Don’t Give Up』(’94)/Primal Scream

OKMusic編集部

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