この漫画を読んでください『明日、私は誰かのカノジョ』イメソン5曲

この漫画を読んでください『明日、私は誰かのカノジョ』イメソン5曲

この漫画を読んでください
『明日、私は誰かのカノジョ』
イメソン5曲

今回は私が勝手に考えた『明日、私は誰かのカノジョ』のイメージソングを紹介するためだけの内容となっております。をのひなお先生がコミックアプリ『サイコミ』で連載中の同作は、彼女代行サービスで“都合のいい女”を演じ続ける雪、劣等感に苛まれながらもパパ活がやめられないリナ、自身を嘘でコーティングする整形依存症のあやな、ホストの甘い言葉と幻想の目眩しに堕ちていく萌、閉塞感に沈殿する地方から歌舞伎町へ辿り着く優愛が章ごとにそれぞれ主人公となり、周辺人物たちと共に織り成す悲喜交々の物語が綴られる漫画です。徹底した取材に裏打ちされた多層的なキャラクター像と構成、読者の想像力を喚起し、普遍的な痛みを浮き彫りにする描写力の凄まじさに毎回ひれ伏してばかりです。みなさん、ぜひ読んでください! 私の文章はどうでもいいから『明日カノ』を! このコラムはここでおしまいだ! バーン!
配信楽曲「Rude」/大森靖子
「パンク蛹化の女」収録アルバム『東京の野蛮』/戸川純
「ナイトクルージング」収録アルバム『空中キャンプ』/Fishmans
「さらばシベリア鉄道」収録アルバム『A LONG VACATION』/大滝詠一
「AGE OF ZOC」収録アルバム『PvP』/ZOC

「Rude」(’21)/大森靖子

配信楽曲「Rude」/大森靖子

配信楽曲「Rude」/大森靖子

無名の一般人から全国区の著名人まで、あらゆる人々の生き様を映し出すYouTubeチャンネル『街録ch-あなたの人生、教えてください-』の主題歌。高円寺の小さなライヴハウスであろうが、大規模なフェスであろうが、何年経っても変わることなく、鮮烈に燃え続ける泣き笑いと憤りと悲哀を携え、ひとりひとりを真正面から見据えて、祈りを捧げるように、慟哭のように、命を剥き出しにしたまま歌い続ける大森靖子による人間賛歌です。肌が破けて心がビリビリに裂けそうな気迫と共振の優しさがあふれる声とアコースティックギターの響きと鳴りは、社会の闇とカテゴライズされ、分断される弱者たちに光を差し込み、諦観と泥流が横たわる目の中に輪郭を与える強さが漲っています。

【無修正】大森靖子 -
Rude【一発本番】FIRST TAKE ver.

「パンク蛹化の女」(’87)/戸川 純

「パンク蛹化の女」収録アルバム『東京の野蛮』/戸川純

「パンク蛹化の女」収録アルバム『東京の野蛮』/戸川純

『明日カノ』の注目度が跳ね上がるきっかけとなったのが、第4章の萌編こと「Knockin’on Heaven’s Door」。公務員を目指して堅実で慎ましい生活を送っていた大学生の萌が、ホストの楓に恋をしたことで別人のように変貌していく過程の凄まじさは大反響を呼び、毎週コメント欄で論争が巻き起こりました。パッヘルベルの「カノン」に乗せて恋愛感情の悲壮なまでの美しさとグロテスクさを歌う「蛹化の女」の歌詞が紛れもなく萌の心情とシンクロしているために選んだわけですが、この章の多幸感とカタルシスが弾け飛ぶクライマックスを思うとパンクバージョンが最適でした。我鳴るように声を荒げ、涙をこぼしながら蛹から蝶になった彼女の夜明けの歌です。

「ナイトクルージング」(’96)
/Fishmans

「ナイトクルージング」収録アルバム『空中キャンプ』/Fishmans

「ナイトクルージング」収録アルバム『空中キャンプ』/Fishmans

ドキュメンタリー『映画:フィッシュマンズ』の公開を控えるFishmans。欠落感や空虚さを抱えながら彷徨うキャラクターたちの生き様も『明日カノ』の魅力のひとつですが、彼らの代表曲「ナイトクルージング」は新宿2丁目や歌舞伎町、ムラ社会特有の湿り気で充満した田舎の夜を漂流する彼ら彼女らの背景に流したくなる一曲です。佐藤伸治の甘やかで爽やかな歌声とレゲエを基調とした粘り気のあるリズムが、現実の喧騒も虚飾も、電気の消えた生温い夜にマスクで隠したまま飲み干すしかない居た堪れなさも全て無重力の浮遊感で包み込む大らかでドリーミーなダブポップです。

『映画:フィッシュマンズ』予告第一弾

「さらばシベリア鉄道」(’81)
/大滝詠一

「さらばシベリア鉄道」収録アルバム『A LONG VACATION』/大滝詠一

「さらばシベリア鉄道」収録アルバム『A LONG VACATION』/大滝詠一

主人公たちがさまざまなかたちの出会いや別れ、すれ違いの痛苦を経て変化していく過程が描かれる『明日カノ』。必ずしも爽快な場面とは限らず、歯痒さを覚えるシーンにスマホを強く握り締めることもしばしばで、3月にサブスクが解禁されたばかりの大滝詠一の名曲がふと頭をよぎります。心理的な隔たりは国境よりも遠く、愛しいと思えた相手であればこそ胸の内は吹雪で凍りつくもので、互いの未練を紡ぐ鼻にかかった歌声、張り詰めたリズムの上でドラマチックに疾駆するベースラインが灰色の情景を染め上げ、間奏で暴れ馬の蹄のように燃え盛るドラムの打音とギターの音色が猛る情念を表現します。

「AGE OF ZOC」(’21)/ZOC

「AGE OF ZOC」収録アルバム『PvP』/ZOC

「AGE OF ZOC」収録アルバム『PvP』/ZOC

ラストは大森靖子が共犯者として参加するZOCのメジャーデビューを飾ったアッパーチューンを。波乱万丈の茨道をがむしゃらに突き進む彼女たちの“分かり合えなさ”すら抱きしめてしまう無限のパワーとハピネスがあちらこちらで渦を巻き起こしては爆発しまくる、小宇宙の詰め合わせのような虹色のミクスチャーロックです。不遇な人生を歩む人々にも、まだ自分自身に出会えていないセクシャルマイノリティーにも、明け方の街で膝を抱える孤独の影にも、畳み掛けるかの如きラップで《映えてるばっかじゃはじまんねーのさ/一億二千万の多様性が美しいだろ》という全肯定を連射するパンチラインが届きますように。

「AGE OF ZOC」MV

TEXT:町田ノイズ

町田ノイズ プロフィール:VV magazine、ねとらぼ、M-ON!MUSIC、T-SITE等に寄稿し、東高円寺U.F.O.CLUB、新宿LOFT、下北沢THREE等に通い、末廣亭の桟敷席でおにぎりを頬張り、ホラー漫画と「パタリロ!」を読む。サイケデリックロック、ノーウェーブが好き。

OKMusic編集部

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