川﨑皇輝(少年忍者/ジャニーズJr.
)初主演舞台『ロミオとロザライン』
の“きゅんきゅんした稽古場”を、作
・演出の鴻上尚史が語る

シェイクスピアの恋愛悲劇『ロミオとジュリエット』で、ロミオがジュリエットに出会う前に片思いしていた女性ロザライン。原作では名前しか出てこないこのジュリエットのいとこが、もしもロミオとジュリエットの前に現れたら……という着想から生まれた新作舞台『ロミオとロザライン』が、2021年7月9日(金)に初日を迎える。作・演出は、エッセイなどの著書も多い劇作家・演出家の鴻上尚史。本作品で舞台初主演を果たす川﨑皇輝(少年忍者/ジャニーズJr.)、モデル・俳優の吉倉あおい、元「モーニング娘。」メンバーの飯窪春菜、鴻上の盟友・大高洋夫らが出演する。稽古の様子や見どころを、鴻上に聞いた。
ーー舞台『ロミオとロザライン』は書き下ろし作品とのこと。前に同名の小説(集英社刊「ジュリエットのいない夜」に収録)も上梓されていますが、違った内容なのですか?
まったく別物です。小説は中年の男の演出家を主人公にした劇団の話なんですが、この舞台の主人公は北山という若い俳優で、演出家は20代の女性なんです。彼らは『ロミオとジュリエット』の稽古をしているんですけど、本番5日前になって、ロミオ役の北山が突然「ロザラインもジュリエットと同じキャピュレット家の人間なのに、なんでロミオはロザラインを好きになることを問題にしないの?」と根本的な疑問を持つ。その問いに答えられずに持ち帰った演出家は、自分がロザラインになった夢を見て……という設定の話です。
鴻上尚史
ーー構想は以前からあったのですか?
前からロザラインのことがずっと気になっていて、いつか舞台版をやらなきゃとは思っていました。ロミオがどれだけロザラインに夢中かということが最初に語られるのに、ロミオがジュリエットと恋に落ちて以降、まったく話に出てこないなんて、あまりにも可哀そうじゃないですか。しかもロザラインにしてみれば、自分のことが大好きだと言っていた男が5日後にほかの女性と心中しているという、すごい状況なわけです。
ーーロザライン的には、まったく腑に落ちない気がします。
そもそもシェイクスピアは、なんでこんなふうにしたのかが気になります。流行りの製作委員会方式で作品づくりをしようものなら、「ヒーローが好きな女に会いたくてパーティーに忍び込んだら、そこでヒロインに出会った」なんてエピソードは、間違いなくカットされるでしょうから。委員会のエラいおじさんたちに「何バカなことを言っているんだ。ヒーローが好きになる女の子は昔から一人じゃないか」ってなことを言われて(笑)。
ーー確かにそうですね。でもバレエ作品には、結構しっかりロザラインが登場している印象があります。
バレエはセリフがないから、セリフがないロザラインを出しやすいんじゃないかな。普通の芝居で出そうとすると、ロザラインに何かしゃべらせるために、シェイクスピアの戯曲にセリフを書き足すことになってしまうんです。この『ロミオとロザライン』では、ロザラインがロミオやジュリエットにたくさん話しかけるんですけど、それは演出家が見ている夢という設定だから。夢の中だったら、シェイクスピアも許してくれるんじゃないかなと思って(笑)。
ーーなるほど。役柄としては、川﨑さんはロミオ役の俳優・北山と夢の中のロミオ、吉倉さんは演出家と夢の中のロザライン、飯窪さんはジュリエット役の俳優と夢の中のジュリエットを演じることになるわけですね。稽古の手応えはいかがですか?
3人とも毎日必死になってやってくれています。それぞれワークショップに出てもらったうえで稽古に臨んでもらったんですが、非常に熱量を感じます。最年少の皇輝がまた素直ないい青年で、何を言い出すかと思ったら、「鴻上さん、僕は小学校から高校までずっと男子校だったんです。稽古以前に、隣を見て女子がいるというこの空間が、僕にとってはもうドキドキです」なんて言うもんだから、「それは、ロミオをやる俳優としてどうなんだ?」と(笑)。
鴻上尚史
ーーなんて可愛らしい! そういえば、所属事務所のタレントさんも男性ばかりですよね。
そうなんです。ジュリエットがロミオに熱い視線を投げかけるような場面になると、傍目にもはっきりと皇輝がドキマギするから(笑)、稽古場は日々、きゅんきゅんしてます。まあ、後半になったら「ドギマギしている場合じゃないぞ」というふうになっていくとは思いますが。本人には、若いからこそできるロミオというものがあるだろうから、それを必死になって誠実にやればいいと思うよ、という話をしています。原作ではジュリエットは14歳になる直前、ロミオは16歳くらいで、年齢的には皇輝と近いですから。
ーー映画『ジュリエット・ゲーム』で監督デビューしている鴻上さん。『ロミオとジュリエット』の物語に惹かれる理由は何ですか?
世界でいちばん有名な恋愛物語だという点は、ひとつありますね。あとは何だろう……やっぱり、恋に落ちた2人が突っ走っていく感じが、自分にはないものだからかな。この物語が長く支持されているのは、愛だけでこれだけ突っ走って死んでいく若者には、自分はとてもなれないという憧れがみんなにあるからじゃないかなあという気がします。
ーー確かに、若さゆえの純粋さといった、分別臭い大人が失ってしまったものが詰まった物語ですよね。そこにロザラインが加わったらどうなるのか、とても楽しみです。コロナ禍の中での舞台作りは大変だと思いますが、どんなことをお感じですか?
これはもう、あっちこっちで言っていることなんですが、八百屋さんが野菜を、パン屋さんがパンを売るように、演劇人は演劇を作ってみんなに観てもらうしかないんです。去年、「休業要請と自粛要請はセットだ」とみんなが言った時に、演劇界はかなりバッシングを受けたわけですが、それはたぶん、公演中止や無観客配信を余儀なくされたことに対する世の中の理解の総量というのかな、「大変だね」「可哀そうに」と思われる総量が、たとえば、プロスポーツの試合に対するものに比べて、すごく小さかったからだと思うんです。それを増やしていくには、結局、面白い作品を作って、演劇は不要不急のものかもしれないけれど、それぞれにみんな掛け替えのないものとしてあるんだよということを、わかってもらうしかないんだなと改めて思いました。
鴻上尚史
ーー社会における認知度の違いなんでしょうね。でも演劇というものは、実は人間の生き方や日々の生活に深く関わっているものだと個人的には思っています。
そうなんです。それで書いたのが、つい先日出たばかりの「演劇入門 生きることは演じること」(集英社新書)という本。演劇的な知恵を生活に取り入れたら、こんなに役に立つよ、日本はせっかく能とか狂言とか歌舞伎の伝統がある国なんだから、生活の中にちゃんと演劇的な手法を取り入れませんか、という内容です。このデジタルの時代に演劇が滅んでいない理由は、みんな演じているからだと思うんです。たとえば、会社ではビジネスパーソンだけれども、隣近所の人の前ではご近所さんとして振る舞うし、夫の前では妻、子供の前では母……というように。どうせ演じるなら、その手がかりを知ってもらったほうが、みんな楽になるんじゃないかと。
ーー学校教育にも、演劇のワークショップでやっているようなことを取り入れたらいいのにと思います。想像力を豊かに育めるんじゃないかと。
いいですね、それ。以前、コラムニストのブレディみかこさんと対談したときに、シンパシー(sympathy)とエンパシー(empathy)の違いの話になったんです。シンパシーは同情心、エンパシーは共感する力で、日本人はずっとシンパシーをベースに人付き合いをしてきたけど、これから大事なのは自分とは違う立場に立って物事を考えられるエンパシーだと。それを養うのにいちばんいいのは、自分以外の役をやることなんです。たとえば1人が歴史上の人物になって、みんなでその人にインタビューするだけでもいいと思う。「なぜ戦を起こしたんですか」「勝てると思いましたか」とかね。
ーーそういった中で、演劇を観ることがもっと“普通のこと”になっていったらいいですよね。今はまだ気軽には足を運べない状況ではありますが、閉塞感がある今だからこそ、お芝居で救われる人もいるように思います。
そうですね。僕はいつも、劇場に来た時よりも元気になって帰ってほしいと思いながら、芝居を作っているんです。今回の『ロミオとロザライン』も、こんな時期ですが、いや、こんな時期だからこそ、来てくれたら元気になれると思います。ファンはヤキモキしていると思いますが、小学校からずっと男子校で育ってきた川崎皇輝くんが、お姉さま2人に挟まれて、三角関係のロミオをどう演じるか? というところを、ぜひ観てもらいたいです。
鴻上尚史
取材・文=岡﨑 香   撮影=鈴木久美子

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