TAKU INOUEが目指すセンチメンタル・
ミュージック デビュー曲で紡いだ「
クラブ讃歌」

コンポーザー・DJとして活躍するTAKU INOUEが7月14日に「3時12分」を引っさげてアーティストデビューする。ボーカルにVtuberの星街すいせいを迎えたこの一曲は、アーバンな夜の雰囲気にエモーショナルなメロディとボーカルが重なる珠玉の一曲となっている。『アイドルマスター』シリーズなどのゲーム楽曲に加え、DAOKO沼倉愛美などにも楽曲を提供する彼が今回アーティストデビューした理由とは?これまでの音楽経歴を紐解きながら、TAKU INOUEの目指すサウンドについて語ってもらった。
――改めてトイズファクトリー内レーベルVIAよりメジャーデビューおめでとうございます。
ありがとうございます。
――ずっと楽曲制作者として活動されていたのに、なぜ今アーティストデビューという形になったかをまずお聞きしたいのですが。
トイズ(トイズファクトリー)と2018年に契約して、3年ぐらい作家としてやってたんですけど、ちょうど今年の春先ぐらいに一瞬仕事の谷間があって、久々だなあと思いながら、ふと我に返ると、不安になってくるんですよ。
――不安ですか。
この谷間がだんたん大きくなって、俺、仕事無くなるんだな、と思うと……(笑)。 その流れで「そういえば、トイズ入って一曲も自分の曲出してないな」とかいろいろ考えてしまって。それで打ち合わせしているときに、ふと、そろそろ自分の曲出してもいいかもね、みたいにポロッと言ったら、物凄いガッツリセッティングしていただいて(笑)。あれよあれよという間に……いや、ほんと、何気ない一言が発端でした(笑)。
――ずっと作家として滅茶苦茶お忙しかった仕事の谷間からの今回の流れなんですね(笑)。改めて、今回TAKUさんが音楽にどうやって触れてきたか、という歴史もお伺いしたいなと思ってます。音楽に触れた一番最初のきっかけはどのようなものなのでしょうか?
■音楽を制作する環境には恵まれていた。
お袋が中学校の音楽の先生をやっていて、今は実家でピアノの先生をやってるんですけど、そういう環境なので小さい頃からピアノを習っていたんです。でもピアノはすぐ飽きて、小学校4年生ぐらいでぜんぜん弾かなくなって。でも音楽の知識はあって、楽譜も読めて、聴くのも好きで、ラジオとかでJ-POPを聴いてる小学生だったんです。でも小学校6年生のときに「ポップジャム」に出てたX-JAPANを見て、「ヤベエな」と思って。こんなにかっこいい曲が世の中にあるんだ、と。それが目覚めだった覚えがありますね。
――始まりはX-JAPANなんですね。
番組で「DAHLIA」を演奏してて。それが物凄くかっこよく見えたんですよね。父親も趣味でギターをやるんですけれども、家にあったギターを次の日に取り出して、ちょっと弾いてみたりとかして。
――ピアノから始め、X-JAPANでギターに行くと。
ピアノはぜんぜん上手じゃないんですけど。一応作曲に使うぐらいは弾けて。一番マトモに弾けるのはギターですね。それで中学生になって、X-JAPANにハマり、そのあとLUNA SEAにいくんですよ。
――世代的にそうなるのは分かります(笑)。
LUNA SEAのバンドスコアとかを買ってギター練習してたんですけど。LUNA SEAのギターのSUGIZOさんが、すごいクラブミュージックが好きで。当時雑誌とかを買い漁っていたんですけど。その中にSUGIZOさんのおススメのCD50枚みたいなのが載ってる雑誌があって。そこでチョイスされていたのが当時出たてのドラムンベースだったり、ヒップホップのCDとか、その辺のものが多かったんですよ。それからだんだんクラブミュージックにハマってって。中学生の後半は結構、クラブミュージックを聴いてましたね。
――世代的にはBeastie Boysとかですかね。
Beastie Boysも滅茶苦茶好きで。The Chemical Brothersとか。あと、ドラムンベースも当時元気があった時代で、いろんなレーベルがイギリスでできてて。ぜんぜんお金も無かったし、インターネットも当時無かったので、札幌にあったヴァージンレコードに入り浸って、試聴機でずっと視聴していました。
――いわゆるギターキッズだった井上少年が、曲を作ろうと思ったのはどういう流れになるんでしょうか。
中学校のときにギターをやってたので、自然と友達とバンドやろうぜ! みたいな流れになるんですよ。そこでなんとなく曲を書き始めたのが最初でした。それで中3のときに友達とデモテープ作って。友達に渡したりとかしてたんですけど(笑)。なので「頑張ろう!」っていうより、自然に作曲を始めた感じですかね。
――趣味の流れのから、みたいな感じですね。
そうですね。父親のパソコンの中に、初歩的な打ち込みのソフトが入ってたりしたんです。それでバンドスコアとか打ち込んで遊んだりとかしてたり。簡単な曲を自分で作ってみたりとか。
――お母さまが音楽の先生だったりとか、環境は揃っていたと。
身近なところに音楽があったので、そこは今考えるとありがたかったなと思いますね。
撮影:加藤成美
――そして今度は音楽で生きていこう、となっていくと思うんですが。
割と高校もそこそこ進学校に行って、大学も東京の国立大学に入って、みたいな。そこで3年生のとき、就活するか、しないかを考えたときに、当時バンドもやってたんですけど、まだちょっと就活したくねえな、みたいな。
――あははははは(笑)。
ほんとに、そのぐらいのノリで。で、大学院に行こうと思って。ぜんぜん違う大学の大学院に入って、そこで一瞬、バンドでSONYさんからCD出させてもらったり。わりとそこから音楽の仕事はぼちぼち始めて、みたいな感じでしたね。で、そのCDをダシにして……。
――ダシにして(笑)。
ナムコ(バンダイナムコスタジオ)にデモテープを送って、みたいな流れでした。
――じゃあ、カッチリ「よし、音楽で食っていくために就職だ!」って言うよりは、やりたいことを流れでやってきた結果だと?
もちろん気持ちの中では、「音楽で食えたらいいな」と思ってた部分はもちろんありました。でも大学院まで行かせてもらって「じゃあバンドやっていきます」って言うのも、なんかな……っていうのがあって。
――なるほど。分かります。
それで普通の企業も就活で受けてたりしたんですよ。楽器メーカーの営業とか内定もらったりしてたんですけど。でも何か、ふと考えてみたときに、ゲームのサウンドクリエイターってめっちゃいいじゃんと思って。大手だったら、親も喜ぶだろうと(笑)。
――大手!(笑)
そういうちょっと打算的な考えもありましたけど、やっぱゲームもずっとすごい好きだったんですよ。当時、『塊魂』ってゲームがものすごい好きだったので。ナムコだけは記念受験してみようかなみたいな感じでデモテープを送ってみたら、あれよあれよという間に内定をいただいて。だったらここしかねえだろう、と思って改めてバンダイナムコスタジオに入った感じですね。
――『塊魂』がきっかけだったんですね。
そう、あれは衝撃でしたね。
■日々楽しく刺激的だったバンダイナムコサウンド時代
――そしてバンダイナムコスタジオに実際入ってみて、環境はどうでした?
めちゃくちゃ楽しかったですね。そもそも、毎日音楽作ってたらお金もらえるんだ、みたいな喜びから始まって、もう一生ここでいいじゃん、みたいな感じでしたね(笑)。効果音作るのも好きだったし。曲もけっこう早い段階からいろいろ作らせてもらったりして。好きだった『塊魂』のサウンドディレクターとかもやらせてもらったり。わりとやりたいことを積極的にやらせてもらえる会社だったこともあって。かなり楽しくやってましたね。
――ナムコってちょっとサウンドも含めてかっこいい印象ありますよね。
わかる! ちょっとオシャレな感じもありつつ、遊び心もあるし。
――90年代の早い段階から『リッジレーサー』や『鉄拳』っていうビックタイトルに、テクノミュージックやトランスを当ててきたり、先進的な印象ありましたよね。
そうですね、クラブミュージックをだいぶフィーチャーしてましたね。
――あれは、そういう風潮だったんですか?
風潮でしたね。先輩に細江慎治さんがいるんですけど、『リッジレーサー』でロッテルダムテクノをやって、社長がテストプレイするときにたまたまランダムで選択されて流れてしまったという……。
――はははははは(笑)。
クラブミュージック好きが、何故かナムコには脈々と居るんですよ。
――大久保博さんもそうですよね。
そうですね、その前の佐野電磁さんも。当時、ちょっと流行ってたProdigyのビッグ・ビートとかを『鉄拳』に入れて、今はまた再評価されてきていますね。そういう、クラブミュージックでけっこうチャレンジする風土が割とあって。最近ではAJURIKA(遠山明孝)さんとかもそうですし。自分にとって良い環境でしたね。
――ご自身のクラブミュージックに対する憧憬とマッチする部分は大きかった感じなんですね。
完全にマッチしてました。本当に妥協してないというか、本当に最先端のことをする会社だと思ってたので。会社員ではあるんですけど、イチ表現者としての自分と、会社員としての自分を、ここなら両立できるんじゃないかみたいな気持ちがあったし、実際そうだったと思いますね。
――一連の『THE IDOLM@STER』楽曲も切り口としては相当多面的だと思いますしね。
そうですね。僕が最初に『アイマス』の仕事やらせてもらったときは、すでに結構トガったことをやり始めていたというか。AJURIKAさんも「Next Life」でトランスをやったり。なので、わりと僕がジョインしたときには風土は出来上がってましたね。
撮影:加藤成美
――そしてその、素晴らしい環境から巣立とうという意識が出てきたと。
うん、常にそうなんですけど、先々のことを考えるのが結構苦手なんです。目先のやりたい方にずっと行ってたタイプの人間なので(笑)。目先のことを滅茶苦茶頑張ると、なんか絶対その先があるというのが自分の人生の経験としてあったので、常にそういう感じでやってきたんです。
――なるほど。
それで、ご縁があってトイズさんと、会社員のときから仕事をさせてもらうときがあったんですけど、声をかけてもらって。「いいじゃん」と思ったんですよね(笑)。 なかなかこんなこと無いよなって。この先こんな話もあるか分からないし。まあやってみるか、と思って。結構本当に、あんまり深いこと考えてなかったですね。勢いでした(笑)。
――当時退職するときって社内で波紋みたいなものって、なかったんですか?
社内は、みんな歓迎してくれてましたね。「困るけど、まあしょうがねえ」って(笑)。
――ははは(笑)。
「やるならやってこいや!」みたいな感じで送り出してくれて。まあ、元々長くとどまる人もわりと少なかったっていうのもあるし。「井上はいつか辞めると思ってたわ」って応援して送り出してくれましたね。まあファンの人も、Twitterで呟いたときは、結構ビックリはされたような気はしますけど、割とポジティブな反応が多かったなと、自分では思ってます。
――そういう意味では、本当にいい環境ですね。
そうなんですよね。なんか別にしがらみもなく。今も付き合いもあるし、仕事もさせてもらったりしているので。本当に、いい会社だったなと(笑)。
■センチメンタルを感じる「泣けるような節回し」の曲が好き
――そして、改めてデビューされて。大活躍。
いやー! おかげさまで仕事はたくさんさせていただいて、ありがたいですよね。
――ご自身の中で、この曲がエポックメ-キングだったな、というのはいくつかあったりするんでしょうか?
節目になった曲はたくさんあるなと思いますけど。会社時代も含めると、やっぱり「Hotel Moonside」は、やっぱりみんな自分の名前を知ってくれたきっかけになった人が多いのかな、っていう気はしてますね。これ常にそうなんですけど、来た仕事と、そのときの自分のやりたいことを、どうにかしてガッと合致させる方法を考えるのが、わりと自分はうまいのかもしれないって最近思うんです。
――依頼とやりたいことを合わせる、ですか。
そうです、だからわりと普段の仕事で表現したいことは出来てるんですよね。そういう意味では結構、どの曲もその時の自分を表現できているなあとは思います。
――その時の自分の感情がノッてる状態で作っているってことですかね。
ノッてますね。それを何かうまいこと先方のリクエストだったりとかコンテンツに齟齬の無いようにするというか(笑)。 自分だけのものにはならないように、っていうのは常に思っています。それは自分の特性と言うか、上手にできることなのかなあとは思ったりしますね。
――代表曲でいうと「Hotel Moonside」と「Pon De Beach」って結構真逆と言うか、夜のしっとりとしてアーバンの楽曲と、日光の下で大騒ぎっていう。あの振り幅の良さって、TAKUさんの面白さだなと思うんです。あと「さよならアンドロメダ」とか、『鉄拳7』の「The Long Goodbye」とかもそうなんですけど、TAKUさんの書くメロディってどこかセンチメンタルなものを内包していると思うんです。あれはこう、にじみ出てくるものなんでしょうか?
単純にああいうのが好きなんです。子供の頃、夜中寝る前に電気を真っ暗にしてちょっとセンチメンタルな曲を聴くと、中二心が刺激されると言うか。「俺、かっこいい」みたいな雰囲気になるというか(笑)。
――ははははは(笑)。
なんかそういう瞬間がわりと好きで。そういう風に感じられる曲を書きたいなって常に思ってますね。なんだろう……「浸れる」っていうのとは、ちょっと違いますけど。曲を聴いてセンチメンタルな気持ちになってしまう、っていうのがすごい好きっていうのはありますね。
撮影:加藤成美
――確かにX-JAPANの「DAHLIA」もちょっと切ないメロディですね。
そうなんですよ。やっぱり、切なげなものが昔から好きだったのかなぁ。アニメソングとかもそうですね。すごい好きだったのは、『覇王大系リューナイト』のOVA(覇王大系リューナイト アデュー・レジェンド)の主題歌で、三重野瞳さんの「風の翼」って曲が滅茶苦茶好きで。レンタルCDを借りて、テープに録音して擦り切れるほど聴いてましたね。
――『リューナイト』だったら高橋由美子さんの「Good-bye Tears」かと思いましたがまさかのOVA。
勿論「Good-bye Tears」も好きですよ!『リューナイト』の曲って全部良かったんですよね。「RUN~今日が変わるMAGIC~」も凄い良い。元気だけど、なんか泣けるような節回しもある。そういうのが好きなんですよ。
――そして、やっとアーティストデビューまで来ました(笑)。 今回の楽曲「3時12分」ですが、今のお話、全部つながってる感じがします。今回ボーカリストとしてはVtuberの星街すいせいさんとのコラボですが、こう来るんだ! という驚きがありました。
■星街すいせいの声を聴いて生まれた「ミドルテンポ欲を満たすクラブ讃歌」
確かにこの二人の組み合わせで、この曲調でくるとは思わないだろうなとは思いますね(笑)。
――今回のコンセプトってどういうものなのでしょうか。
今回すいせいさんに歌ってもらうっていうのが決まってから、曲を書いたんです。元々こんな大々的にメジャーデビューする予定ではなかったですけど(笑)。 でも自分の名義での最初の曲だし、ちょっと派手で明るいというか、勢いのあるものの方がいいのかな、っていう意識は正直あったんです。
――確かにそうですね、一発目ですもんね。
でもすいせいさんの声を歌枠配信とかで拝見させてもらって、彼女のオリジナル曲も聴いて、声質を考えたときに、どうしてもこっち側にいってしまったんですよね(笑)。こういう曲をすいせいさんに歌ってもらったら絶対いい!と心の奥底で思っていたのと、あと単純に、遅い曲を自分がすごい書きたいタイミングだったっていうのもあって。
――こういうテンポ感の曲をやりたいなと思ってたタイミングだった。
でしたね。クライアントのある案件だと、自分の場合、これぐらいのテンポ感の曲を求められることって少なくて。割と派手な、勢いのあるものが多いんです。ちょうど「ミドルテンポの曲を書きてえ!」っていう欲求がものすごい溜まっていたのもあり(笑)。加えてこのすいせいさんの声は絶対に素晴らしいことになるっていう確信があって。でもスタッフに聴かせるときは、「これ、ちょっと最初のデビュー曲っぽくないって思われるよなぁ……」と思いながら、伏し目がちにメール送りましたけど(笑)。
――反応はどうでした?
「ちょっと地味……いや、最初っぽくないですかねぇ……」みたいな感じでディレクターに送ったんですけど……。
――本当に恐る恐るじゃないですか(笑)。
「いやいやいや! ミドルテンポですけど、派手さはあるし、良い曲だから良いじゃないですか。これでいきましょう!」って言ってくれて。ありがたかったですね。
――単曲だったり、ゲームの曲だったりって、確かに派手さと言うか、キャッチーさは求められそうですよね。
求められることがやっぱり多いですね。なのでけっこう、“ミドルテンポ欲”がたまりがちなんですよ。
――「ミドルテンポ欲」って言葉、いいですね(笑)。
なんか、職業作家あるあるな気がするんだよなあ、これ(笑)。
――やりたいことやれる場所ができたっていうのは大きいですね。
もちろん、自分の名義だし、それはやっぱり自分のやりたいこともしっかり入れていかないとなって気持ちはあったので。遠慮なくそこはやらせてもらいました。
――歌詞も、ちょっとエモめといいますか。
この歌詞は、「クラブ行きて~!」みたいな気持ちを表現しましたね(笑)。
――あ、そうなんですね。変な話、聴いた時tofubeatsさんの曲を思い出したんですよ。
分かります。クラブ賛歌って言うか「クラブ良いよね」っていう気持ちを表現したいのは本当に最初からあって。そういうところはtofubeatsさんの曲と通じるものがあるかもしれない。
――tofubeatsさん、「朝が来るまで終わる事のないダンスを」も「Don't Stop The Music」も「水星」もそうですけど、ちょっとクラブ賛歌と言うか、ナイトカルチャーに対する憧憬みたいなものってあるじゃないですか。やっぱり同じようなものをちょっと感じたんですよね。ワンワード目から「はしゃいだな」から始まるのもそういう感じというか。
そうなんですよ。クラブ遊びに行って、疲れた……って思うタイミングと言うか。クラブの深夜3時ってピークタイム終わってそういう空気感じゃないですか。やっぱりコロナ禍っていうのもあって、今出演もガッツリなくなったし、そもそも遊びに行けてないし、歌詞はすっとこれが出てきましたね。
――でも人気作家のアーティストデビュー1曲目がクラブ賛歌って、本当に自分の好きなもの詰め込んでる感じがしますね。
そうかも、とは言えいろんな人に感情移入はしてほしかったので、わりと抽象度は高めにしたと言うか。クラブの中の話ですけど、どうとでも取れるようなワードづかいにはしようって気持ちで書きましたね。
――捉え方によっては、男女の恋愛にも見れる。
うん、そういう目線にも、もちろん見てもらえたらいいなとも思ったし。
――すいせいさんとの製作段階の中でエピソードとかいかがでしたか?
すいせいさん、デモを送ったら、次の日ぐらいに仮歌を入れて返してくれたんですけど。
――早いですね!
まぁ、仕上がってて。「最高じゃん……これでいいじゃん」みたいな(笑)。そんなの感じのものを送ってきてくれたんですよね。だからぜんぜん心配なく、その後本番のレコーディングをしました。レコーディングも、ぜんぜん言うことなくて。歌録りって、結構時間かかっちゃうときはかかっちゃうんですけど、今回は一瞬で終わりましたね。もっと聴いていたいな、ぐらいの感じの。素晴らしかったですね……。すいせいさんも、前からすごい自分の曲好きでいてくれたみたいで。すごい嬉しかったですね。
――この曲凄いなって思ったのは、もうちょっと聴いてたい! ってところで終わるんですよね。
そうそう。ちょうどこれ3分12秒にしてあるんです。実は尺を2パターンで迷ってて、これよりちょっと長いバージョンもあるんですよ。歌も長いバージョンも録っていて。
――長いバージョンもレコーディングもされていると。
ええ、どっちにしようか、って結構ギリギリまで悩んで、ディレクターと相談してたんです。でも結論として繰り返し聞きたくなるのって、絶対こっちだな、って。3分12秒になってるのも何か面白いし、なのでこれ、実はショートバージョンなんですよ。
――もう一回大サビきてもいい、ってところで終わるじゃないですか。それが何か、オシャレというか。
繰り返し聴いてもらえたら嬉しいなっていう思いはありますね。そこはすごい大事にしました。
――歌が「はしゃいだな」っていう言葉から始まって、最後に「ワンツーで世界を変えに行こう、ワンツーで世界を変えに行こうぜ」って、2回繰り返す。これってもしかしたらコロナの影響下っていう世界の状況も意識してるのかなって思ったんですけど。
コロナ禍というのは、この歌詞に関してはありましたね。
――遊びに行けないと言うか、ライフスタイルのいくつかが、だいぶ狭められた世界観というか。そういうのを感じたんですよね。
そうなんですよね。clubasiaとか、mograの感じを想像しながら書きました。コロナ前はあれだけ出演もたくさんさせてもらっていたし。まずクラブっていうものが好きなので。そこに対するものに自然になったというか。
――これはあくまで僕の印象ですけれども、TAKUさんの楽曲って、いわゆるアニメ・ゲームファンという元々クラブ文化とは対極にいる人たちにクラブミュージックの面白さ、かっこよさを伝える一因を担っていると思うんです。そこの懸け橋というとちょっとあれですけど、自身の曲がそういうものになっているって思ったりすることあるんでしょうか?
そうですね、イベントとか出演とかしてても、お客さんが声かけてくれて、「今日初めてクラブ来ました」みたいな人も結構いたりするんですよ。本当にありがたいですよね。初めてクラブ行くって、滅茶苦茶怖いと思うんですよ。でもその思いを超えてわざわざ聴きにきてくれたんだな、っていうのはありますね。
――TAKUさんみたいな人が、だいぶクラブ文化に寄った楽曲をアーティストデビュー一発目で持ってくるっていうのは、何か文化に対するリスペクトを感じたんですよね。
そこはあります。今後本当に立て直してほしいという気持ちも込めてますね。
――特に今回で言うと、すいせいさんのボーカルは凄かったですね。こんなにぴったりハマるのも珍しいと思うくらいマッチングしてました。
すごくないですかあれ? 正直僕びっくりしましたからね。
――でもVtuberさんを起用するところで新しい切り口と言うか、またこれまでと違う入口も開いていると思ったんです。そういう扉の開け方、TAKU INOUEは本当にうまいなと。
そう言ってもらえるとありがたいですね。今回リリースしましょうってなったときに、何人かやってみたいと思っているボーカリストさんをリストアップしたんですけど、その時から星街すいせいさんに声かけたい! ってずっと言ってて。今回、実現してよかったですね。
撮影:加藤成美
――じゃあ、今後もいろいろ組んでみたいアーティストがいる。
次はぜんぜん決まってないんですけどね(笑)。でも声かけてみたいアーティストは、本当にいるので、アタックしつつ。男性ラッパーとかと曲作ってみたい! とか。
――それは面白いですね!
新しいこともどんどんやっていきたいですね。
――アーティストTAKU INOUEですから、そこはどんどんやっていただいて(笑)。
いやー怖いですよね、これで「TAKUさん、作家辞めたのかなあ」とかなって、仕事もらえなくなったらちょっと寂しいですけど。ちゃんと二つの柱でやっていきたいですね。
――自分の中で切り分けは出来そうですか?
できると思います! 今回やってみてわかったんですけど、両方あるとすごい、精神衛生的に良いんですよ。どっちにもいい影響があるというか。いま「ミドルテンポ欲」はだいぶ満たされたんで(笑)。 遠慮なく勢いのある曲を人様に提供できるし。またなにか変なことやりたくなったら、またこっちでやればいいし、っていうのが(笑)。
――良い意味でワーカホリック気味ですよね。精神的に安定させるために、別の仕事するっていう(笑)。
恐ろしいですよね。アーティストデビューを思い立ったのが、ちょっと休めるタイミングだったわけで。なんで休めるタイミングに、そんな先のことを考えてドキドキしなけりゃいけないんだろうと思うんですけど(笑)。
――それは、生き方と言うか、性格と言うか。
だから良いか悪いかわかんないんですけど、会社入ったときから、音楽を作るのを仕事って思えない部分があるんですよ。こんなに楽しいことしてお金もらっていいんだ、っていまだに思うし。ナムコに居たときも、普通の会社勤め的なストレスってぜんぜん無かったし。
――でも、根っこは生粋の作家気質なんだなと思いました。
今回はすいせいさんありきと言うか。彼女の声を引き立てたいというのは最初にあって。そういうところは自分も、作家気質だなと思っちゃいましたね。
――良いボーカリストとか表現を見ると、曲を当てたい、みたいな。
こうやったらすごい良いんじゃないかな、とかやっぱり考えちゃうんですよ。
――では、最後に改めてトイズファクトリー内レーベルVIAよりメジャーデビューするアーティスト、TAKU INOUEとしての意気込みをお願いできれば。
静かにスッとリリースできたらいいかなと思っていたら、こんな大ごとになってしまって、けっこうドキドキしています(笑)。こうなったからには、ちょっと定期的にやっていきたいなという気持ちもあるし。だから何か、面白いことをしていきたいですね。作家仕事ではなかなかできないような内容を主に、こっちはやっていきたいです。勿論リリースするからには売っていかないとならないんですけど、そこは会社に頑張ってもらって! という感じで!
インタビュー・文=加東岳史 撮影=加藤成美

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