Editor's Talk Session

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【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:
大型イベント『アニサマ』が
直面したコロナ禍での葛藤

“配信ライヴで儲かった”
という人は本当に少ないと思う

岩田
『アニサマ』に関しては、昨年8月に新たな企画として配信で『アニサマナイト』を実施し、今年3月にもその第二弾が開催されましたが、この企画が生まれた経緯を教えてください。
齋藤
私はアニサマを離れていた時期、『ニコニコ大会議』のプロデューサーとして地方や海外も含めて配信ライヴをいろいろとやっていたので、ノウハウも含めて経験値はあったんです。“ライヴを無観客でやってください”と簡単に言う人もいますが、いわゆる本来のお客さんの前で演るライヴとはまったくの別モノなんですよ。ステージの見せ方も違うし、画面越しに観る人の感覚も違う。そこは自分もよく分かっていましたが、『アニサマ』は大型フェスだから小回りが効かないんです。普段は会場もでかいし、予算も億単位だし、スタッフや出演者の人数は何百人といる。だから、急にオンラインに切り替えることはできない。そもそも生配信NGのアーティストも混ざっているし、ステージのバックで流れるアニメ映像が配信に乗せられないなどの制約が多すぎて、出演契約を巻きなおしたとしても、セットリストや出演者が歯抜けになってしまう。それは『アニサマ』のONENESSに反するんです。でも、『アニサマ』の3日間がなくなってしまうことに対して喪失感を覚えていたし、三上さんもそうですが、『アニサマ』に関わってくれているプロフェッショナルたちは必ずしも大きな会社に属していて守られている人ばかりじゃなく、ひと夏押さえていただいていたスケジュールが飛んで仕事が消えるわけです。それだけでなく、オーイシマサヨシさんが作ってくれた最高のテーマソングを披露する場所がないのも苦しかったから、よりいっそう『アニサマ』のスピリットを持った何かを夏に届けたいと思ったことが『アニサマナイト』を企画した理由ですね。
岩田
配信に関して知識と経験が豊富な齋藤さんだからこそ、『アニサマナイト』はまた違った良さがありました。
齋藤
『ニコニコ生放送』を使うことでコメントを流して疑似的に拍手(8888)を起こしたり、歓声を可視化できるから、配信ならではのライヴをしようと思いました。第一回目の『アニサマナイト』では鈴木雅之さんも素晴らしい大人なステージを披露してくださいましたし、トリを務めたTRUEさんはさいたまスーパーアリーナの景色が目に浮かぶくらいの圧巻のパフォーマンスでした。配信ライヴの新しい可能性は感じられましたね。
三上
僕は『アニサマナイト』を開催する話を聞いた時、8月に『アニサマ』メンバーで音が出せることが嬉しかったです。『アニサマ』はノンストップで演奏を続けるということを15年間やってきたから、それを途切れさせちゃダメでしょうと思っていた中で実施されて、規模は関係なくあの配信ライヴは『アニサマ』だと思いました。
齋藤
あれはお客さんを入れても絶対に恥ずかしくない音楽クオリティーだったし、進行もノンストップでまさに『アニサマ』でしたね。
三上
会場のレギュレーションでステージに6人以上は立たせないでくれと言われたんですけど、アニサマバンドだけで6人以上いるのでアーティストは客席側で歌ってもらったりとか、特殊な状況ではありましたけど、それも配信ならではの楽しさかなと。会場のBillboard Live YOKOHAMAにはシャンデリアがあるから、その下でアーティストに歌ってもらったりといろいろ試しました。マイナスにとらえてしまうと沈んでくるから何でもトライしようと。
齋藤
僕もその箱を活かしたものを作りたいと思ってました。さいたまスーパーアリーナだと何万人もの人を楽しませる演出を考えるけど、Billboard Liveは箱の雰囲気だけでも演出になるんですよ。演奏する楽曲についても『アニサマ』は極力原曲に近い再現でお客さんを楽しませるんだけど、Billboard Liveだと雰囲気にあったジャズテイストのアレンジで曲を届けたりもできたんです。敢えて鍵盤はグランドピアノだけとか、音楽的な高みを追究しながら挑戦できた気はします。
石田
さいたまスーパーアリーナという多目的で使用される会場ではなく、ライヴを観せるための会場で演奏するということでも、そういう楽しさが出たのかもしれないですね。
齋藤
そうだと思います。箱が持っている特殊な力が『アニサマ』と共鳴するところがあったんですよね。いろんな会場をリサーチしましたけど、我々のクオリティーを下げずに開催できる箱がBillboard Liveだと思いました。
岩田
『アニサマ』クオリティーが保たれていないと、イベントのブランド価値が下がってしまいますからね。
齋藤
あと、特に言及したいのが、オンラインチケットの限界についてです。『アニサマナイトI』はトントンの収支でしたが、第二回目は大幅に赤字となりました。オーイシさんが1,000円で配信ライヴをされていましたが、それはファンに音楽を届けたい一心で“何かをしなくちゃ”の1,000円だったと思うんで。でも、あれを続けていくのは現実的には大変だと思います。オーイシさんはフルバンドでしっかりリハーサルもされていただろうし、まずミュージシャンのギャラ、スタジオや機材費などフルフルにコストがかかります。例えば、会議室などでカラオケでの歌唱ライヴを投げ銭システムを入れて配信すればある程度の収支は見込めるかもしれませんし、VTuberさんみたいにネットをホームにして活動されている方なら条件は違うかもしれません。でも、アーティストの素晴らしい歌と演奏とステージを高いクオリティーで届けるってことを考えると、どうしても多額の費用がかかるんです。“配信ライヴで儲かった”というケースは本当に少ないと思います。
三上
ジャニーズとサザンオールスターズくらいじゃないですか。
石田
あと、K-POP勢でしょうね。配信ライヴは映像的に映える演出を考えるとお金がかかってしまうし、そのわりにチケット代が抑えられているからキツいっていう話をよく聞きます。しかも、“配信ライヴ=無料”という考えのリスナーも少なくないし。
齋藤
そうですよね。収録したものを“オンラインライヴ”として配信しているものもありますが、もうそれは“LIVE”ではないと思うんですよ。配信ライヴは生と編集映像の中間的な位置にあって、どれだけ生の感動をリアルに伝えられるかが大事だと思っているので。視聴者コメントをステージの後ろに表示してリアルな時間軸を分かりやすく表現するライヴもありましたが、収録した映像をネット配信するだけのライヴも観ました。お客さんが、ネットでパッケージを再生するような視聴体験を普通のライヴだと思ってしまうんじゃないかという怖さもありましたが、コロナ禍以前のリアルライヴが復帰したら、その魅力を再確認してくれるんじゃないかと信じています。
三上
今まさにその状態になっていると思いますよ。

OKMusic編集部

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