累計発行部数2,500万部突破『東京卍
リベンジャーズ』が猛スピードで人々
を魅了するカギを探る

歌舞伎町の裏社会を描いた『新宿スワン』の作者、和久井健が2017年より連載している漫画『東京卍リベンジャーズ』。アウトローを得意とする和久井の最新作は「ヤンキー」✕「タイムリープ」をキーワードとしている。その斬新な組み合わせが話題を呼び、4月からアニメが地上波で放送を開始され、7月9日(金)より北村匠海や吉沢亮らによる映画版が公開。8月6日(金)からは木津つばさ、松田凌らによる舞台が上演されるなど、各コンテンツで立て続けに展開される。つまり8月は漫画、アニメ、映画、舞台のすべてが味わえるというわけだ。まさに『東京リベンジャーズ』月間である。

それに呼応するように発売中のコミックスも人気を獲得し、漫画の累計部数が2,500万部突破、アニメは定額制動画配信サービスの視聴ランキングも1位を記録した。映画も公開から3日間で観客動員数50万人超&興行収入約7億円を記録。これは2021年の日本公開作のなかで、土日2日間のオープニングの観客動員数、興行収入、ともに第1 位のヒットである。この物語の何が人々を魅了しているのか、そもそも『東京(卍)リベンジャーズ』とはどんな作品なのか考察していく。
TVアニメ『東京リベンジャーズ』特報PV
●『クローズ』などドラマ的にもおもしろいヤンキーコンテンツが人気
主人公の花垣武道(タケミチ)は、何をやってもうまくいかないフリーター。そんな彼がある日、元恋人・橘日向(ヒナタ)が殺されたことを知る。事件を知った翌日、彼は駅のホームから転落し、目が覚めると12年前の中学時代(映画の設定は10年前の高校時代)に時間が巻き戻っていた。それから何度もタイムリープを繰り返すことになるタケミチは、ヒナタの死を回避するため、事件に関わったとされる半グレ集団「東京卍會(とうきょうまんじかい)」の真実を追求。組織の総長・佐野万次郎(マイキー)、副総長・龍宮寺堅(ドラケン)らの意外な一面を知っていく。
和久井健による原作漫画は、週刊少年マガジン(講談社)にて2017年13号から連載スタート。2020年には第44回講談社漫画賞少年部門を受賞し、2021年2月10日(水)の時点で漫画『東京卍リベンジャーズ』のTwitterアカウント(@toman_official)は「累計800万部突破」と報告。3月31日(水)の時点で「祝!!累計 1,000万部突破!!」とツイートしている。その後も短期間で飛躍的に売り上げを伸ばし、現在のコミックの累計発行部数は2,500万部超となっている。
『東京卍リベンジャーズ』 (c)和久井健/講談社
売り上げが急激に伸びた理由は、4月からMBS・テレビ東京ほかにてアニメの放映がスタートしたことにあるだろう。タケミチ役をつとめた声優は、新祐樹。『ハイキュー!!TOP THE TOP』(2020年)などに出演する彼は、今回がテレビアニメ初主演。第1話の収録時点でタケミチと同じ26歳だったとあって、強い思い入れをもって役に挑んだことがうかがえる熱演をみせた。マイキー役には『ハイキュー!!』シリーズで田中龍之介役を務めた林勇が出演。そのほか『七つの大罪』シリーズの鈴木達央、『ソードアート・オンライン』シリーズの松岡禎丞、『ドラえもん』の木村昴、『ダイヤのA』シリーズの逢坂良太など人気声優陣が名を連ねる。
TVアニメ『東京リベンジャーズ』アニメ第1弾PV
7月第1週の2021年夏アニメ録画ランキングで週間1位、各種配信サービスでも視聴数ランキングで上位にランクインし続けている。そういったテレビアニメ効果もあってか、北村匠海、吉沢亮、山田裕貴という若手人気俳優で映画化されることも浸透していった。
映画『東京リベンジャーズ』の監督を務めたのは、英勉(はなぶさ つとむ)。乃木坂46の齋藤飛鳥を主演にむかえた『映像研には手を出すな!』(2020年)の見事な実写ドラマ・映画化が記憶にあたらしい。そして出演者には、タケミチ役に『アンダードッグ』(2020年)の北村匠海、マイキー役にNHK大河ドラマ『青天を衝け』(2021年)の吉沢亮をはじめ、山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜らが顔を揃えている。
映画『東京リベンジャーズ』 (c)和久井健/講談社(c)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会
もともと日本ではヤンキー系コンテンツが人気で、近年でも『HiGH&LOW』シリーズが大ヒットを記録。今回の実写映画化が話題になることも頷ける。ただ、単に「不良たちの立ち振る舞いが格好良い」「アクションシーンが派手」というものではダメ。『HiGH&LOW』や『クローズZERO』などは人物描写がとても良く、人間ドラマとしても魅力的。だから人気がある。
強者には強者の、弱者には弱者の生き様があることをどんなふうに見せるのか。ヤンキーとして生きる上での葛藤はなんなのか。強い者がいかなる屈辱を浴びるのか。弱者がどんなカタルシスを得るのか。そして、みんななぜ闘っているのか。映画『東京リベンジャーズ』はそういった問いかけ方が抜群にうまい。これは原作の良さはもとより、『ソラニン』(2010年)といった青春映画や、『凶悪』(2013年)などバイオレンスでありながら、そこにいかなる心情が潜んでいるかを描くことに長けた脚本家・高橋泉の効果が大きい。
●過去のタイムリープ作品とは大きな違いがある!
映画『東京リベンジャーズ』予告編
『東京リベンジャーズ』の大きな見どころは、「タイムリープものなのに、何でもアリではない部分」である。そもそもタイムリープとは何なのか。Wikipediaでは「時間跳躍」と説明されている。古くからよく知られている「タイムトラベル」「タイムスリップ」と何が違うのかというと、「タイムトラベル」「タイムスリップ」は現在の自分が過去や未来の世界へ行くもの。つまり「過去・未来の自分」と、「タイムトラベルした自分」の「ふたりの自分」が共存する世界もできるということだ。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズがよく知られ、「運命が変わってしまうから、過去・未来の自分や家族とは会ってはならない」とされている。
一方の「タイムリープ」は過去の自分に戻るものである。高畑京一郎の小説『タイム・リープ あしたはきのう』(1995年)や、細田守監督のアニメーション映画『時をかける少女』(2006年)などで知られるようになった言葉である。
映画『東京リベンジャーズ』 (C)和久井健/講談社 (C)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会
Netflixのオリジナル映画として配信中のアカデミー賞短編実写映画賞受賞『隔たる世界の2人』も、警察官に殺される結末を迎える青年が、タイムリープを繰り返し、運命を変えるために別の行動をとっていく物語だ。そのほか『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)、『ハッピー・デス・デイ』(2017年)なども同じく、タイムリープに巻き込まれた人物が、死のエンディングを避けるために、何度も同じ時間をたどっていく。
ただ『東京リベンジャーズ』が特殊なのは、12年(もしくは10年)前の同日にしか戻れない点である。映画に倣うと2021年1月1日にタイムリープを実行すれば、2011年1月1日にたどり着く。2021年1月2日であれば、10年前の1月2日というワケだ。つまり、運命を変えるチャンスは一度きり。その日の出来事にアレンジを加えることができなければ、その後に辿る運命は同じ。「タイムリープものなのに、何でもアリではない」のだ。
映画『東京リベンジャーズ』 (C)和久井健/講談社 (C)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会
もう一点、重要なのは「主人公(タケミチ)は死なない」ということ。これまでのタイムリープ作品の多くは、主人公が自分の死の運命を避けるために、時間の巻き戻しを繰り返す。ただ『東京リベンジャーズ』は、タケミチが、仲間たちの死の運命を変えるために動いていく。そこまでの危険をおかす必要がないのに……だ。つまりタケミチにとっては「仲間の死の運命を変える=自分自身の生き方を変える」ということになる。何をやってもダメ……という人生は、周りのせいではなく「自分が悪い」と気づいているのだ。仲間たちを救うことで、逃げてばかりだった自分を成長させようとする。その内容もまた異色と言えるだろう。
●それぞれの主題歌が持つメッセージ性と『東京リベンジャーズ』の世界観
Official髭男dism - Cry Baby[Official Video]
アニメ『東京リベンジャーズ』の主題歌「Cry Baby」を担当したのは、Official髭男dism。同作の公式サイト上でヒゲダン・藤原聡と対談した原作者・和久井健は「歌詞も作品の内容に寄せてくれていて嬉しかった」と喜びを口にしている。
藤原も、曲のなかで何度も繰り返される転調をタイムリープに見立てているといい、また<この腐りきったバッドエンドに抗う>などの歌詞もタケミチの姿に重ねていると語っている。
ちなみに同対談では藤原が「キャラの誕生日ってどうやって決めているんですか? 僕はマイキーと誕生日が1日違いの8月19日なんです」と、登場人物のバースデーもちゃんと調べているほどの大ファンであることも明かしている。
SUPER BEAVER 「名前を呼ぶよ」MV
映画版の主題歌「名前を呼ぶよ」を手がけたのはSUPER BEAVERだ。声を上げることが抑圧された世界に生きる若者たちが、自分にとって大切な人やもの(=名前)を叫ぼうとする楽曲である。これは映画『東京リベンジャーズ』のタケミチの心境にも重なる。
タケミチにとって大切な存在、それは高校時代の恋人・ヒナタである。ただ、高校卒業後はなにをやってもうまくいかず、挫折した人生を送っていくうちに、タケミチのなかから彼女の存在がいつの間にか消えていった。ヒナタの訃報を目にしても彼女の顔すら思い出せないという。それだけタケミチはこの社会では声があげられない、忘れ去られたような存在となってしまったのだ。
そんな彼が、学生時代にタイムリープをしてやったこと。それはヒナタに会いにいくことだ。その後もタケミチは、失われたヒナタとの時間を取り戻すように彼女の姿を追いかけていく。
冒頭はまさに「名前を呼ぶよ」をなぞるような描写がなされている。そして映画鑑賞後、SUPER BEAVERのこの主題歌をあらためて聴いてみてほしい。物語の記憶が呼び起こされるはずだ。
●舞台版で注目はアクションシーン
舞台『東京リベンジャーズ』 (c)和久井健・講談社/舞台「東京リベンジャーズ」製作委員会
『東京リベンジャーズ』の勢いは漫画、アニメ、映画だけに留まらない。8月6日(金)から舞台公演もおこなわれる。主演はミュージカル『アルスラーン戦記』(2019年)、舞台『刀剣乱舞』シリーズなどで知られる木津つばさ。マイキー役は、ミュージカル『薄桜鬼』シリーズや舞台『東京喰種~或いは、超越的美食学をめぐる瞑想録~』など主演作が数多い松田凌。そのほか野口準、陳内将らが出演。
脚本、演出を手掛けるのは、ミュージカル『アルスラーン戦記』(2019年)、『おそ松さん on STAGE~SIX MEN’ S SHOW TIME~』(2019年)などの伊勢直弘。主題歌は、声優の梅原裕一郎中島ヨシキによるバンド、Sir Vanityが担当する。
舞台版で注目したいのはアクションシーンだ。漫画、アニメ、映画では「編集」を効かせることができる。あの熱量あふれる乱闘シーンを、生身の舞台としてどのように表現できるのか。大きなポイントとなるだろう。演出・脚本の伊勢は「カッコいいだけじゃなく、何度読んでも発見がある、たくさんの魅力が詰まった名作を、アニメ化・実写映画化に続き、舞台でも挑戦できることになりました。大きなプレッシャーを感じつつ、タケミチの生き様にならって絶対に諦めず上演のゴールまで全員で全力疾走していこうと思います」とコメントしている。
上演まで1ヶ月となった7月4日(日)からは、舞台稽古もスタート。公式Twitterでは稽古の過程やキャストによる原作イラスト再現写真など、現地の盛り上がりを伝えている。主演の木津はSPICEの取材で、「伝えたいことは舞台上で届けます! なので、ぜひ観に来てください。やり切ります!」とメッセージを残している。
8月に向けて盛り上がりを加速させている『東京リベンジャーズ』。作品のなかに登場するヤンキーたちのアツい夏を体感してもらいたい。
文=田辺ユウキ

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