カシオペア、
ライヴ録音に思えない
超絶演奏が満載『Mint Jams』は
文化遺産に推したほどの大々傑作

『Mint Jams』('82)/カシオペア

『Mint Jams』('82)/カシオペア

7月21日、カシオペアの1stアルバム『CASIOPEA』と1982年のライヴ作品『Mint Jams』とが、アナログ盤で復刻リリースされた。単なる再販ではなく、多くの世界的ミュージシャンのマスタリングを行ない、数々のグラミー賞作品を世に送り出し、日本では松任谷由実のアルバムを手掛けたことでも知られるBernie Grundmanをマスタリングエンジニアに迎えて、両盤とも新たにカッティング。ファン垂涎の作品に仕上がっている模様だ。今週はそんなカシオペアから名盤をピックアップしてみた。

ポップなインストバンドの草分け

…というわけで、この機会に『CASIOPEA』と『Mint Jams』を聴いた。いずれも素晴らしいアルバムであって、カシオペアの突出した才能が詰め込まれた作品であることを改めて、瞬時に理解できた。まず初めに極めて基本的なことを指摘させてもらいたい。歌がないのにポップ=親しみやすい──これがカシオペアというバンドの特徴のひとつであり、彼らがあまたあるインストルメンタルバンドに抜きん出たところであると思う。“何を今さら当たり前のことを…”と訝しがる方が多数いらっしゃると思うが、歌がないにもかかわらず、聴いた人が楽器の奏でるメロディーをスキャットで口ずさめてしまえる楽曲を多数有しているということは、案外見すごされてしまいそうな気もするので、あえて強調しておきたいのである。

さらに言えば、今となっては、T-SQUAREであったり、東京スカパラダイスオーケストラであったり、大衆性を備えたインストバンドも珍しくないけれども、カシオペアはその草分け的存在であったことも加えて強調しておかなければならないだろう。デビュー作『CASIOPEA』のリリースが1979年5月。イエロー・マジック・オーケストラ(以下YMO)のデビュー盤はそれよりも半年ほど前の1978年11月の発売なので、YMOのほうがカシオペアより世に出たのは若干早いが、YMOのヒットナンバーである「テクノポリス」「ライディーン」などが収録されたイエロー・マジック・オーケストラのアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』が発売されたのは1979年9月。よって、日本においてポップなインストバンドの先駆はカシオペアと言っても大きく間違ってはなかろう(初期YMOにもボコーダーを使用した歌もあったので厳密にはインストバンドではないのだけど、メインのメロディーが歌ではないということで、大掴みでインストとさせてもらった。何卒ご理解を)。

別にインストバンドがポップじゃなきゃいけない…などという道理はない。ジャズバンドが披露するような複雑なコード進行やインプロビゼーションが悪いわけでないし、それも音楽の醍醐味として確実に存在する。ただ、それらはやるにしても聴くにしても上級者向けであることは否めない。ハードルの高さは否定できないはずだ。しかし、カシオペアの音楽がそうではないことは、この2枚のアルバムでもはっきりと確認できる。いい意味で間口が広いのである。今、その辺にいる人に『CASIOPEA』でも『Mint Jams』でも聴かせたとして、収録曲を難解だと感じる人はいないだろう。この2作の中には、映画のテーマソングになったり、CM曲として起用されたり…という、いわゆるタイアップはないものの、収録曲のいくつかはテレビやラジオで使用されていると思う。はっきりどれがどこで…とは言えないけれど、バラエティー番組のワンコーナーのBGMとか、今もさりげなく聴こえてきても不思議ではない(個人的には、かつて天気予報のバックとかで流れていたような記憶があるが…)。その辺にいる人が“どこかで聴いたことがあるかも…”と小首をかしげる可能性は十分にある。いろいろ書き連ねてしまったが、とにかく、カシオペア楽曲の中心にあるメインのメロディーがとても大衆的だという点を、それを知らない人には知ってほしいところである。

OKMusic編集部

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