鈴木拡樹×三浦宏規 “Wヒロキ”が『
リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』
の魅力を語り尽くす

ポップで刺激的な異色ミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』が、この夏、東京・シアタークリエで再び上演される。
2020年3月、コロナ禍の影響を受け東京公演の最中に公演中止となった本作。主演の鈴木拡樹・三浦宏規(Wキャスト)やヒロインの妃海風・井上小百合(Wキャスト)をはじめ、昨年とほぼ同じキャストが集った念願の再演だ。
本公演の稽古が始まって間もない2021年7月末、主演のシーモア役の鈴木と三浦を囲んで取材会が行われた。時折顔を見合わせ微笑む二人に、前回公演時のエピソードや再演に向けての意気込みを聞いた。
【あらすじ】
さびれた街の小さな花屋で働く冴えない青年シーモア(鈴木拡樹/三浦宏規)は、店主のムシュニク(阿部裕)に怒られてばかり。シーモアは同僚のオードリー(妃海風/井上小百合)に恋をしているが、彼女にはオリン(石井一孝)という歯科医のボーイフレンドがいる。ある日、シーモアは町で奇妙な植物を手に入れる。意中のオードリーにちなんで“オードリーII”(声・デーモン閣下)と名付けたその植物を店に置くと、客の来なかった店がなんと突然、大繁盛!しかし、“オードリーII”には、人びとを魅了する不思議な力がある一方で、あるとんでもない秘密が隠されていた。“オードリーII”によってシーモアの人生は一変し、一躍有名人となるのだが——。
「前回公演を超えるくらい明るい稽古場になっていました(笑)」(三浦)
――2020年3月に公演中止となった本作ですが、今回の再演が決まったときのお気持ちを聞かせてください。
鈴木:2020年は一度は幕を開けることができたので、そういう意味ではホッとしました。でもやはり、本当は東京公演の続きやその後の地方公演があり、まだ届けるべきお客様がたくさんいらっしゃった。なので、みんな完全に納得しきれているのかというと、そうではない状態で終わってしまったというのが前回公演でした。こうして1年という短いスパンの中でまた上演できる機会を作っていただけたので、「あの日の続きからスタートしよう」というのが第一の気持ち。みんなその気持ちで集まってきたので、実現できたことが本当に嬉しいですし「やっとあのときの時間が動き出す!」という感じです。
三浦:前回は周りに1公演も上演できないカンパニーがたくさんあった中、僕たちは複数回上演することができたので、そこは本当に良かったなと思うんです。東京公演のあとに地方公演も残していたので、自分としては望みを残していた部分がありました。けれどやっぱり途中で終わってしまったときは、残念というか悔しいというか、もっとやりたかったなという気持ちが非常に強くて。自粛期間の直前までやっていた作品なので、思い出すのは『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』のことが多かったです。そういった意味では、熱が冷めやらぬうちにこうして再演できるということを、非常に嬉しく思っています。
――本公演からの新キャストとして、ムシュニク役に阿部裕さんが加わりました。まだお稽古は始まったばかりということですが、前回と今回のカンパニーの雰囲気に違いはありますか?
鈴木:今は歌稽古が始まっていて、その中でのシーン稽古をやっているところ。なので、これから変化を楽しめるのかなという感じです。お芝居も含めたシーン稽古をしていくことで、阿部さんの参加も含めて変化が生まれてくると思うので、楽しんでいきたいなと思っています。そういえば前回、結構早い段階で通し稽古をやっていたんですよ。
三浦:そうでしたねえ。
鈴木:なので今回も早いんじゃないかなって、すごい構えているんです(笑)。この現場はですね、稽古が始まる前に演出家の(上田)一豪さんが率先して「ウェーイ!」という感じでみんなのテンションを上げるんです(笑)。そのテンションの中で入っていけるから「楽しいことをしている」ということが、自分としてもすごくわかりやすい。「このテンションに巻き込むくらいのものをお客様に届けるんだ!」という想いです。稽古場からテンションをいかに上げていけるか、ということを大事にしていますね。
三浦:前回公演のとき、すっごく楽しい思い出しかなくて。もちろん公演中止で悔しい思いもしましたけど、ふと思い出されるのは楽しかった思い出や、みんなで笑い合っていたこと。「すごく楽しいカンパニーだったな」と記憶している中、今回再演が決まって改めて稽古場に行ったら、それを超えてくるくらい明るい稽古場になっていました(笑)。阿部さんも今回初めてカンパニーに入られたんですけど、すごく優しい方で普通に馴染んでいらっしゃって、和気あいあいとしています。これからお芝居を作っていく中でその空気感というのは、また新たに良いものが作りやすくなるんじゃないかなと思っています。
「僕も悪魔に囁かれたらコロッといっちゃうのかなって」(鈴木)
――“Wヒロキ”主演ということですが、同じ名前のお二人は互いにどう呼び合っているのでしょうか?
鈴木:この現場の前に、僕がMCを務める番組に出演してもらったことがあったんです。そこでは”宏規くん”って言うのはちょっと恥ずかしくて、“三浦くん”と呼んでいました(笑)。『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』からは、前回出演していた岸(祐二)さんがつけてくれたあだ名で呼んでいます。二人ともシーモアの役をやっているので、三浦の“み”と鈴木の“す”を取って、“ミーモア”と“スーモア”って。
三浦:周りは大体、スーモア・ミーモアですね。僕は“拡樹さん”と呼んでいます。なぜか例外でかずさん(石井一孝)だけが、“拡樹”と“宏ちゃん”って呼んでいらっしゃるんですけど(笑)。
鈴木:わかりやすいあだ名をつけてくださった岸さんに感謝ですね!
――スーモアとミーモア、お互いから見てどんなところに魅力を感じますか?
鈴木:ミーモアは、全体的なシーモアの柔らかさというものがすごく出ているなあって。本人が持っている柔らかさ。それが人を惹きつける部分でもあるんだろうな。なので、お客様がとても愛しやすいシーモアなのかなって思いますね。だからこそ応援できるというか。そういう性質を持っているんじゃないかなって分析しています。
三浦:ありがとうございます! 僕は拡樹さんのシーモアにすごく知的な部分を感じるんですよ。シーモアって、キャラクター設定としてはかしこくはないんですけれど、植物に対する知識が人一倍強い人間なんです。拡樹さんを見ていると、その部分が尋常じゃないなって(笑)。
鈴木:前のめりだからね(笑)。
三浦:本当に植物のことだけは詳しいんだなというのが見て取れる。それでいて、植物以外のことに対する挙動があまりにも不思議で不格好なんですね(笑)。そんなシーモアを観るのが稽古場から本当に楽しくて。「この子はどうなってしまうんだろう?」と、大先輩なんですけど(笑)、すごく勉強させてもらいながら拝見していました。
――シーモアというキャラクターについて、共感するところはありますか?
鈴木:僕もシーモアと同様に、後押しがあった方が行動しやすいタイプ。そういう意味では、僕も悪魔に囁かれたらコロッといっちゃうのかなって。
三浦:ちょっと(笑)。
鈴木:あの悪魔の囁きはやばいですね。
三浦:そうですね(笑)。オードリーIIはシーモアが手塩にかけて育てた可愛い子でもあります。愛着を持っているものにはやっぱり……ね。例えば、自分は飼っていないですけど、飼い猫が急に喋りだしたら言うこと聞いちゃいそうですよね。シーモアは普通の人が猫を好きという感覚と同じくらいに、植物しか好きじゃないんです。そういった意味で、気持ちはわかるなとは思います。人は殺さないですけどね(笑)。
――シーモアを演じる中で、ヒロインのオードリーに対して「(オリンから)助けたい」「自分のものにしたい」という想いのせめぎ合いみたいなものはありましたか?
鈴木:オードリーを助けたい気持ちは強いです。けれど同時に「自分なんかが」と思いつつ、「あわよくばオードリーと……」という淡い希望も抱いていて。「まずは一緒にデパートに行きたいな」とか、そういうレベル(笑)。オリンというのは、シーモアにとってはコンプレックスを抱いてしまうような人間。別に憧れているわけじゃないけれど、ああいうタイプがオードリーは好きなんだと思うと、すごくコンプレックスになってしまう。「じゃあ俺もオリンみたいになったらいけるのかな」と勘違いして革ジャンを着ちゃうような、シーモアのそういうところもかわいいですよね。でも、オードリーIIによるきっかけがないと、結局シーモアは内に秘めた欲望を出すこともできなかった人間なのかなあと思います。
三浦:皮肉にも、シーモアはオードリーIIに助けられた部分が結構あります。物語を通して成長していくんですよね。服装を見てもらってもわかると思うんですけど、2幕になると急にスーツとか着てますから(笑)。そういったところでも、シーモアは自我が芽生えてきて、だからこそオードリーもシーモアに対して惹かれていたものが実になっていく。シーモアがずっと最初の頃のままだったら、そんな悩みは出てこなかったはずなんです。シーモアがオードリーIIに囁かれてそれに乗っかってしまったが故に成長していく。これが果たしてどうなっていくのかというところが、この作品の見どころでもあると思います。
拡樹さんがおっしゃったように、オリンへの憧れの気持ちはあったのかなって。シーモアという人間は、児童養護施設育ちで周りはスキッド・ロウ。視野がとても狭くて、知っている人間の数も本当に少ないんですよ。それもあって「オリンみたいな人がかっこいいんだ」と思い込んでしまう。だから、オリンに対して嫌いという感情と同時に憧れる部分もあったのかなって。それも含めて、シーモアの成長として応援していきたいなと思っています。
動と静! 妃海風と井上小百合が演じる真逆のオードリー
――本作はヒロインのオードリーもWキャストです。実際に演じてみて、妃海さんと井上さんのオードリーはそれぞれどのように感じますか?
鈴木:正しい例えなのかはわからないんですけど、(妃海)風さんの方が「動」のアタック、(井上)小百合ちゃんの方が「静」のアタックを感じるんですよ。動と静なので本当に真逆。同じことをしているはずなんですけど、そういう受け取り方ができるのは面白いなと思いますね。普段の人柄的にもそうなのかもしれないです。風さんがお姉さん肌で、上手いバランスで稽古場にいるんです。Wキャストなので二人が同じ板の上に立つことはないんですけど、両方を見たお客様は、今僕が言ったことが伝わるような気もしているんです。それくらい大きく違いますね。
三浦:そうですねえ。観ていただくのが一番わかりやすいと思うんですけど(笑)。シーモアはオードリーに対して憧れと好きという感情があって、高嶺の花でもあるんです。妃海さんは、自分とは程遠い太陽のような輝きを持っている部分に憧れる感じがすごくあります。井上さんは静かなんですけど、何ていうのかな……この辺(横顔から肩辺りにかけてを手で表現する三浦さん)が魅力です。
鈴木:図で表した方がいいね(笑)。
三浦:わかります?(笑) 静かな方って色気があったりするじゃないですか。そういう魅力があるんです。でも、お二方共本当にオードリーそのもの。同じオードリーでも人が違えば全然違うんだなって思いますし、同じように拡樹さんと僕のシーモアもそれくらいの違いがあるのかなあって。
――オードリーにちなんで、シーモアが“オードリーII”と名付けた植物の声をデーモン閣下が担当します。初めてその迫力の声と共に演じたときはいかがでしたか?
鈴木:一緒にやれたのは嬉しかったですね。実際に収録していただいた音源が現場に届いたときに改めてリアルさが増すというか、感動ですよね! オードリーIIにすごく合っていらっしゃって、元々やっていそうな雰囲気もあって(笑)。
三浦:オリジナルの雰囲気ですよね(笑)。
鈴木:当て書きしたんじゃないかって思うくらい魅力的でした。
三浦:やっぱりすごいですよね。録音なんですけど、実際に一緒に歌っているとブワッと鳥肌が立つくらい素晴らしい歌声。シーモアの欲望が掻き立てられていく場面があるのですが、そこでは本当に閣下の声にまんまと乗せられていくんです。オードリーIIと張り合っていくうちにシーモアは欲望に負けていくんですけど、その流れがすごく繋がりやすくて。実際に閣下の声と合わせたときに、すごく興奮したのを覚えています。叶うことなら生で一緒に歌いたいなあっていうのはありますね。
――作品を通して、特に好きなナンバーや好きなシーンを教えてください。
鈴木:基本、全部好きですね(笑)。その中でも一番テンションが上がるのは、1幕最初の「Skid Row」かもしれないです。物語の一番最初で、ギアを上げていかなきゃっていう感じがあります。
三浦:1つを選ぶのはめちゃくちゃ難しい! うーん、2幕冒頭の電話のシーンかなあ。とにかく動きが細かくて本当に稽古が大変で(笑)。動きに追われていた期間が長かったので、本番に入って手順を考えずにできるようになってからはすごく楽しくなってきました。1幕後半にワーっと盛り上がってから最後に静まって、幕間を挟んでからの2幕なので、改めてテンションを上げていこうと楽しくやっています。
シアタークリエの真ん中に立つということ
――2020年の公演に引き続き、お二人は主演としてシアタークリエの真ん中に立つことになります。
鈴木:ミュージカル作品にちゃんと出演するのは初めてのことだったので、僕にとっては想像もしていなかったお話でした。シアタークリエとご縁があったということがまず嬉しいですし、挑戦したいと思うきっかけにもなりました。「自分がシアタークリエの真ん中に立つ」と考えたときに畏怖を感じて笑えちゃったんですけど、これって実現できたらすごいなと思ったんです。どうせなら、挑戦することによって僕と同じ感覚で笑っている人たちに観てもらって「あ、すごい」と思ってもらえたらやりがいがすごく感じられるだろうなって。シアタークリエさんに主演という形で出演させていただくというのは、本当に大変なことだと思います。機会をいただけたことにすごく感謝していますし、これを活かせるような成長をしていかなきゃなと感じています。
三浦:シアタークリエは何度も観劇に来ていた劇場です。初めてが主演という形で真ん中に立たせてもらって、もちろん嬉しいんですけど、最初は足がすくんじゃうような「信じられない!」という想いの方が強かったかもしれません。お話をいただいてから稽古をしている間は作品を作ることに必死だったので、あまり実感が湧いていなかったんです。けれど、初日が開いてカーテンコールで自分が真ん中にいると実感して、とても不思議な感覚でした。同時に嬉しさと、これからもっと頑張っていかなきゃなというより強い決意に変わりましたね。すごくありがたいなと思いながらやらせていただいています。
――最後に、お客様へのメッセージを一言ずつお願いします。
鈴木:前回観ていただいた方には「また観ることができます」と報告したいです。再演も観ていただける機会があったら、この1年の変化を感じていただけるのかなと思います。前回観ることが叶わなかった方、そして地方で待っていてくださっていた方々には「もう一度観ていただける機会を僕たちは手に入れました」と。もし願いが通じて、そのとき観ることができなかったお客様が来てくださったらすごく嬉しいなと思います。またみんなで楽しいものを一致団結して作りますので、我々はそこに向けて頑張ります。
三浦:こうして再演が早い段階で決まったというのは、お客様が応援してくれて、「また観たい」と思ってくださった方がいてくれたからこそだと思っています。とにかく自分としては本当に楽しみにしていた作品。1年という短いスパンで再びできるということに、非常にワクワクしています。しっかり稽古もあるので、またより良いものを作って『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』という素晴らしい作品をお届けするのを、僕自身楽しみにしています。みなさんも楽しみに待っていてください。
取材・文=松村蘭(らんねえ)

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