畑 亜貴、サブスク解禁&新曲リリー
ス記念ロングインタビュー「蜿蜒 on
and on and」と「砂海パラソル」で
こだわった“純度の高さ”とは

「涼宮ハルヒ」シリーズや『らき☆すた』、『探偵オペラ ミルキィホームズ』や『ラブライブ!』『ミュークルドリーミー』など数多くの楽曲に関わる作詞家、畑 亜貴。作詞作曲し自ら歌った「千本千女の刃毬唄」「図書館ロケット」「毀レ世カイ終ワレ」などの楽曲がサブスクリプション配信解禁! さらに2曲の新曲を発表した彼女のシンガー・ソングライターとしての活動に焦点をあてたロングインタビューを実施。「人生のテーマ」にもなったという新曲のテーマなど、赤裸々に語っていただいた。
世界の終わりと死」という、人生をともにしてきたテーマが旅立ってしまった
――作詞家としての印象に強すぎてアニメファンでも畑さんの名前を見てシンガー・ソングライターの活動が最初に思い浮かぶ人はそこまで多くないように思います。ご自身の感覚としてはいかがでしょうか。
そうですね、たぶん皆さんご存じないと思うので、こんな記事を見かけてビックリしている感じだと思います(笑)。
――今回は、そんな畑さんのシンガー・ソングライターとしての一面をお聞きしていこうと思います。作詞家として歌詞を提供されている明るくポップな楽曲や、インパクトのあるフレーズが印象的ですが、畑さんご自身の楽曲の世界観はダークで重いものの割合が非常に高くなっています。そういう楽曲を多く作るようになった出発点は、どういったところにあるのでしょうか。
基本はやっぱり人生に絶望しているからですかね。「人間であることの意味とは……?」と子供のころからずっと考えているんですけど、ぜんぜん答えがわからなくて。もしかしたら意味を見つけられるかもしれないという希望を持ちつつ、意味はなくて生まれて灰になっていくだけなんじゃないかと思っている。そんな心のなかのもやもやがこういう曲になるんだと思います。
――畑さんが担当したアニメ『ビッグオーダー』EDテーマ「毀(こわ)レ世カイ終ワレ」について、ブログでそれまで向き合っていた「世界の終焉というテーマを表現した最終形」と書かれていました。それから新しく作りたいテーマがなかなか見つからなかったそうですね。
ずっと書き続けてきた「世界の終わりと死」という自分の音楽性が、『ビッグオーダー』という作品と噛み合ったときに、ここでやりきれるかもしれないと思って書いた曲が「毀レ世カイ終ワレ」でした。当時の自分に表現できることが全部入った気がしたんですね。それで、次の曲を書こうとしたときに「あれ?」って。同じテーマで作ったら結局自己模倣でしかなくなってしまうし、それは創造性とは言えない。新しくテーマを見出さなくてはいけないなと。
「理想に向かって手を伸ばし続ける」というテーマなら、曲を作り続けることができる
――そうやって新しいテーマを立てた新曲「蜿蜒 on and on and」は、テーマを探し続ける、追い求めることそのものがテーマになっている曲だと思いました。終わりを願う気持ちを曲にするのも苦しさがあると思いますが、こっちもまた別の大変さと向き合われているなと……(笑)。
あはは(笑)、そうなんですよ。人生をともにしてきたテーマが旅立ってしまってから「私にはなにもないな、無だな」という感覚があって。答えは自分のなかに絶対あるんだけども、心が頑なになっていて見えなくなっているんだと気付いたときに、静かな心で自分のなかに何があるのかを考えました。そうやって見つかったのが、理想に向かって手を伸ばし続けること……音楽というより人生のテーマですね。それについてだったら私は曲を作ることができる、作り続けることができるなと。
――「毀レ世カイ終ワレ」以降に、サンキュータツオさんとやられているラジオ『弱り目に祟られろ!レディオ』のテーマソングや『懐古庭園』シリーズ(90~00年代に畑 亜貴が歌ったゲーム主題歌をリアレンジ&再レコーディングした楽曲や新曲を収録。2021年6月にVol.5をリリース)に収録されている新曲などを作られていますよね。それらの曲は、そのテーマとはあまり関係がなかったのでしょうか。
そうですね。自分のなかで生まれてくるものなんですけど、私のなかではわりと経路が別というか。どちらかというと聴く人へのプレゼント的な感じでですね。ラジオのテーマだったらラジオを聴いてくれている人たちに楽しんでもらいたい。『懐古庭園』シリーズだったら、昔のゲームの曲を聴いていた人たちに近い雰囲気の曲を届けたいなと。「蜿蜒 on and on and」は本当に素の自分というか裸の自分というか……だから苦しかったですね。
――『ビッグオーダー』が2016年ですから、じっくり自分と向き合われたということですね。
作リはじめてからも、新しいテーマだから頭の中がひっちゃかめっちゃかになって、書きはじめてからも時間がかかりました。形にしてみても、こんなのダメだと何回もなってしまって、比喩じゃなくて涙目になって作りました(笑)。
――畑さんがそこまでおっしゃるということは、相当の難産だったんですね。
たぶん、自分で自分の目を塞いでいたんですね。「自分にも作風が……」と、それまで自分が作ってきたものにこだわりすぎていて。「バカ、そんなこと考えてちゃ駄目だ。自分の作風とか考えている時点でお前は終わりだ!」と、素直にゼロから新しいテーマに向かい合って完成した作品でした。
――「蜿蜒 on and on and」というタイトルですが、「on and on=延々」で意味としても音の響きも重ねているのが面白いですよね。
タイトルで遊びたかったんです。漢字と英語を並べて、音もなんだか似てるけど面白いよねっていう感じに。(歌詞提供だと)お仕事として求められているものがあるなかで遊ぶという感じになるので。
――以前はタイトルも歌詞も日本語で作ることを強く意識されていましたよね?
はい。そこはけっこうこだわってきたんですけれども、今は“ネオ畑 亜貴”なので、いろいろ変えていこうかなって(笑)。
“楽しい”という極端な感情を掻き立てるために必要なエネルギーは……
――なるほど。編曲は2010年のアニメ『刀語』第3話EDテーマ「千本千女の刃毬唄」から畑さんの楽曲のアレンジを担当されている加藤達也さんです。
今回も絶対にお願いしたいなと思っていました。私の頭のなかに流れているこういう世界観を作りたいという映像を説明したときに、拙い言葉でもすごく汲み取って膨らませてくれる方なんです。今回も異国感や壮大な雰囲気、でもどこかむちゃくちゃな感じをアレンジでものすごく表現してくれて、さすがカトタツ先生! と思いました。
――期待以上のものに仕上がったと。
はい。加藤さんもいろいろなお仕事をたくさんなさって、日々成長されているんだなと思いました。お仕事をお願いするときに恥ずかしくないよう、私もがんばっていかなきゃと気持ちが引き締まります。
――もう大御所と言っても差し支えないような畑さんから、そういう言葉が出てくるのがすごいですよね。
いやいやいや。表現は日々切磋琢磨というか……そのときに作ったものは、作った瞬間に過去になるじゃないですか? “楽しい”という極端な感情を掻き立てるために必要なエネルギーは、やっぱり過去ではなくてこれから生まれるものに向かい合わないとでてこない。新しい自分で作っていかないと、良いものはできないんじゃないかと思っているんですね。
――なるほど。加藤さんとのやりとりのなかで、以前の畑さんと“ネオ畑 亜貴”の違いについて話題になったりはしましたか?
あははは(笑)。以前はコーラスを自分で重ねていたんですけど、今回はコーラスの方にお願いしました。それによって、もっと力強さや広がる世界観を出そうというところがネオ畑 亜貴でしたね。自分の声を重ねる面白さもあるのですが、それこだわらない自由さみたいなものが生まれたら良いなと思って。結果すごく自分的には良かったなと満足しています。
――「蜿蜒 on and on and」は以前の楽曲と比べて怒りの要素が少ないなと感じました。
怒りのエネルギーにも限りがあるし、怒りの曲はいくつも作ったから違う作り方をしようと頑張ってみました。環境に優しくないといけないな! って(笑)。
――そのなかで「消費だけの世界は虚だ(きょ)! 虚だ!! 虚だ!!!」から始まる一節は以前の畑さんの楽曲、「拝金聖者我が街を進まん」や「オマエのココロは貧乏」のような怒りの要素が垣間見えたように感じました。歌詞提供をするときでも2番のAメロなどには自分の考えていることを忍ばせやすいとおっしゃっていたことがあったので、それがこの部分なのかなと。
まさにその場所ですね(笑)。やっぱり虚しいでしょう、ものを買ってるだけじゃ。大事なのは時間とエネルギーだと思います。
――コロナ禍で人と会うことも遠くに出かけることも気軽にできないような状況になると、お金だけあっても仕方ないという言葉にも以前とは違ったニュアンスが含まれる気がします。
たしかにそうですね。一生懸命に時間を犠牲にして(お金を)稼いでも、それが使えないと、好きなことに時間を使えない人生って何? となりますよね。
畑 亜貴
「心の痛み」という新しいテーマを書いた「砂海パラソル」
――もう1つの新曲、「砂海パラソル」について。こちらは砂漠のイメージを踏まえつつ、「蜿蜒 on and on and」と表と裏の関係、対になる曲ですよね。
昼と夜みたいな感じですね。昼は「よし行くぞ」となって、夜は「何で生きてるんだろう」みたいな(笑)。まさに本心でもあるんですけど。
――思ったより寒いぞとか。
自分のなかでは、「心の痛み」という新しいテーマを書いた曲でもあります。生きているから心が痛むという当たり前のことに気付いて。痛み続けるしかない、痛みをずっと抱えて人はどこに行くんだろう、という疑問を追求したいと思っているのかなと。
――痛みは癒やすもの、あるいは乗り越えるものとして扱われがちですが、この曲ではそういう扱われ方をしていないように感じました。
結果的に癒やされればいいなとは思いますけど、癒す必要はないし、私自身が癒やしたいとも癒やされたいとも思っていないなと。癒やすっていうのは、ある意味でごまかすという意味でもあるじゃないですか。痛みは人生のパートナーのようなものだと思うので、もっと正面から向き合ったほうが人生を味わえるんじゃないかなと。
――「蜿蜒 on and on and」はとくに作り手や表現者の方に響くように感じたのですが、「砂海パラソル」で歌われている「痛み」は、何かを作る側の人だけでなく受け取る側の立場でも実感できるような気がします。僕の話で恐縮ですが、長いことアイドルファンと呼ばれる生活をしているんですが、メンバーが突然の引退やグループを卒業したり、グループ自体の活動がなくなったりするのを見てきて。なんどもショックを受けるうちに、深く落ち込めるほどなにかにハマれることは大切なことだなと思うようになって。まあ、落ち込んでいるときはそこまで俯瞰して考える余裕もなくなるんですけど(笑)。
私もアイドルの輝きが好きなんですけど、アイドルが引退するというのは、永遠を残してくれてるということなんですよ。その存在が遠ざかってしまうのでその時は悲しいですけど、アイドルが輝いていた永遠だけが残るんですよ。それを素晴らしいことだと私は思っているので。だから、ちゃんと引退してくれるのは、私はありがたいなと思っていたりしますね。
――ちゃんとやりきった上でのことであればそう思えるんですけど、コロナ禍で体調を崩して志半ばで……という場合もあったりしますし。
ああ、そうですねえ……。それはそれでとても悲しいことなんですけど、永遠を一瞬感じさせてくれるところがあれば。今ちょっと心が『ラブライブ!』に引っ張られましたけど。
――活動やライブを見るだけでなく、人生も見ているような感覚ですよね。
引退していくのも辞めていくのも、ずっとやり続けてくれるのもそれはそれでアリですよね。KISSのように、最後の公演に来てくれるのもありがたいなって(2019年に“最後の来日ツアー”を行ったとき、ボーカルのジーン・シモンズは70歳)。ちょっと涙が出そうなんですけど。「あのお年で血を吐いてくれるの!?」「ありがとう、飛んでくれて!」って(笑)。
畑 亜貴「蜿蜒 on and on and 」MV
地球は狭い……人類、もっと飛び出していっていいんじゃないかな
――ジャケットやアーティスト写真の、放浪する旅人のようなイメージはどのようにできあがったのでしょうか。
これは最初からありました。砂漠や荒れ地に佇んでいて、そこからどこかに旅立っていく。そして何も持っていない自分。そういうものを表現してみたいなと思って。
――鳥取で撮影されたそうですが、印象に残っていることはありますか?
今回はきれいなドレスとかではなくマントだなと服装を決めたのですが、実際に着てみると非常に優秀なんですよ。当たり前ですけど、砂丘には日差しや風を遮るものが何もないじゃないですか。暑いときはめちゃくちゃ暑いんですけど、フードを深くかぶると陰ができてけっこう涼しい。風が吹いて寒くなったら、前をギュッと締めればいい。なるほど、旅人とマント……宇宙海賊も着るわけだ! と思うくらいに便利でした(笑)。宇宙の旅に行く機会があれば持っていきたいです。
――砂漠から宇宙にまで飛躍しますか。
ジャケットに何気なく宇宙船を飛ばしてみたりとかもしているんです。地球は狭い……人類、もっと飛び出していっていいんじゃないかなって(笑)。
――地球でも狭く感じているんですね。
地球全体で同じ悩みを抱えていると狭く感じますね。
――通して聴いてみると、奥行きがあって壮大で広がりがある曲のなかで、その果てしなさが重くのしかかってくるような感覚もあります。
延々と続くこの世界で手を伸ばしても、掴みきれないものってやっぱりたくさんあるじゃないですか。それに気がついてしまっても、それでも手をのばすことを辞めない。その勇気が自分のなかにもあるといいなと、手を伸ばし続けたいなと思います。
――畑さんがその勇気を持っていなかったら誰が持っているのかという気がします……。
いやいやいや(笑)、心が折れそうになるときもありますよ。「でも、でも……!」「いや、ダメだ。折れちゃダメだ」と自分に言い聞かせています。ただ、欲張りにあれもこれもと手を伸ばすというよりは、自分が作りたいと思ったものに関しての追求を緩めたくないという。何なんでしょうね、この衝動はいったい。
――インプットしたものやアイデアを早く形にしたい、アウトプットしないとつらいような感覚なのでしょうか?
そういうことはないですね。今回はわりと早く鳥取と楽曲が結びついたんですけど、たぶん私はインプットしたものを貯蔵する派というか。たとえば、本を読んですごいなと思ったら、それを樽のなかに入れて、重しをのっけて漬物状態で保存できるんです。一度そうやって冷暗所に置いておいて、そろそろアレいいんじゃないの? みたいな。「あのとき掻き立てられたあの感情……よしよし発酵してる」って(笑)。
――なるほど、鳥取は2018年にロケハンをしに訪れたそうですが、3年で「わりと早く結びついた」んですね。
はい。そのときに、なにかロンリーな曲のときにでも撮ってみたいなと温めていました。今回の撮影で行ったときも、相変わらず『名探偵コナン』推しの空港で楽しかったです(笑)。そうそう、今マンガの一気読みにけっこうハマっているんですよ。鳥取に行ったのをきっかけに『コナン』を電子書籍で99巻まで買って読んだらすごい楽しくて(笑)。その後、勢いが付いちゃって『金田一少年の事件簿』、その次は『はじめの一歩』と……。
――それがいま冷暗所で漬けこまれているんですね。
いつか歌詞のなかに“デンプシーロール”とかが出てくるかもしれません(笑)。

畑 亜貴

サブスクなどの形で過去の楽曲を出していくことは皆さんへのお返し
――畑さんは、ランティスからリリースしている楽曲とは別に、個人でも活動されています。とくにこの2~3年は『懐古庭園』シリーズや、ボーカルを務めるプログレッシブ・バンド月比古死蝋月比古の楽曲をセルフカバーした『ツキオク』を発表されました。
過去作をセルフカバーするようになったのは、「昔この曲が好きだったけど今は聴けないよね」となるのは悲しいなと思ったのが理由なんです。
――どれも各種サブスクリプションサービスで配信されています。
今はCDプレーヤーを持っている方もとてもめずらしいと思うので、時代に合った形で聴いてもらいたいなと。こうやって聴きやすい形で過去の楽曲を出していくことが、私から聴いてくださっていた皆さんへのお返しみたいな感じです。そろそろ私の残り時間も少なくなってきたので(笑)。
――そんなことはないですよ!
だって、健康寿命ってあるじゃないですか?
――そうおっしゃいますけど、10年~15年くらい前によく取材させていただいていた頃よりも今のほうがエネルギーがあるように見えます。
最後の(エネルギーの)在庫をかき集めてこう……(笑)。
――いやいや、当時って本当に身を削るような生活をしながらお仕事をされていたじゃないですか。
そうですね、スタジオと飲み屋の往復で終わっていました。ひたすら作詞をして、ほかにもう何もする時間も気力も体力も何もなくなるくらい。でも、そのときは求められるものもあったし、自分が追求していきたいものもあったので、やれるところまでギリギリまで走ってみようと思っていたんですね。
――新曲のテーマもそうですし、まだまだ音楽を作り続けていくんだろうなと思います。
いや、もうそろそろ休ませてください。若者に任せます、「あとは頼んだ!」みたいな感じで(笑)。
――では、これから音楽を作っていこうとしている若者にアドバイスをするとしたらどんなことでしょうか。
いちばん楽な方法でやってくださいということですかね。自分がやりやすい作り方でやるのが良いと思います。
――ちなみに、畑さんはどのように曲を作られているのでしょうか。
自分の曲を作るときの場合だと、私はいにしえのシンガー・ソングライターなのでまず頭の中から始まります。頭の中で曲をほぼ仕上げてから、ピアノに向かって一度譜面にするんですよ。譜面を見ながらああだこうだと直しつつ、「よし、ピンときた!」となって初めて打ち込みに入るので、その前段階でいろいろな曲がボツになっていくという……。
――納得したものだけが音源に残っていくということですね。
いにしえなので、ややこしいことになってしまっているんですよね(笑)。もし私が新たに音楽を始めるとなったらもっと楽にやるとでしょうね。鼻歌がそのまま曲になるような方法なら、達成感があって面白いんじゃないかなと。
――まずは作ってみることが大事と。
そうですね、それがずっと続くかは別の問題なんですけど。初期衝動があれば、あとはいちばん楽な方法で。自分のできることでやってみたらいいと思います。
全曲動画「蜿蜒 on and on and / 砂海パラソル」(short size with making video)
何かひとつ名乗るとしたら、作詞家ではなくシンガー・ソングライター
――去年の年末に、ゲスト出演された『ANISON INSTITUTE 神ラボ!』で、コロナ禍を受けて「心に寄り添うものを」という歌詞の発注が増えたこと、畑さんご自身にもそういうものを書きたいという気持ちがあるとおっしゃっていました。今回の2曲を作るときに、そういったことを意識されましたか?
解釈は好きなようにしてほしいですけど、私としては意識していません。そのラジオでも少し話したことなんですけど、今回は“純度の高さ”にこだわりました。自分が思っていることをそのままさらけだす、その純度。もちろん、歌詞や曲のテクニック・技巧はあるんですけど、思っていることを包み隠さない、飾らない、大きく見せようとしないというところをすごく大事にしました。“寄り添う”というのは、本当の自分を見つめる、自分の魂を恥じないということかなと思います。
――作り手に限らず大切なことですね。コロナ禍での生活で、なにか変化などはありましたか?
普段の生活でいうと、作ってスタジオに行って旅行して……というローテーションが変わってしまったくらいですね。ただ、仕事的には閉塞感がすごく増しました。ライブができない、ライブに行けない。アーティストの方がファンの方にパフォーマンスをお見せできなくて悩んでいる。そういう状況で、作る楽曲は「みんなを励ましたい」とか「みんなと繋がりたい」という方向になっているので、「気楽に遊ぼうよ!」みたいな曲がなかなか作りにくくなっていたりしますね。
――いろいろな制限もあって、なかなか気楽に遊べないですからね……。
何曲かあるうちの1曲だけ「この曲はちょっと遊ぼうか」ということはできるんだけれども、100%能天気に曲を作れなくて。そういう自由を阻まれているような感じで、アーティストの方がかわいそうだなとは思っています。でも、そのぶん力をためて、状況が変わったら放出できるようなクリエイトができたらなと思っています。
――ちなみに、畑さんご自身では作詞家や音楽家よりもシンガー・ソングライターという意識が強くあるのでしょうか。
そうですね……何かひとつ名乗るとしたらそうなるのかなと。私がいちばん好きなことって、歌うことというよりも作ることなんです。作ることと歌うことがたまたま合体しちゃっているだけで、自分が表現したいことしか歌いたくはない。誰かが作った曲を歌ってくださいと言われても「それはあなたが歌ってください」と思ってしまうので、純粋に言うとシンガーではないんでしょうけど。たまたま自分にこの楽器(喉のあたりに手を当てながら)があったから……という感じですね。
――ランティス10周年のタイミングで作られたムック本『ランティス・クロニクル』のインタビューでは、アレサ・フランクリンやチャカ・カーンのような歌声が好きだとおっしゃっていました。
今でも、急にチャカ・カーンの声が出ないかなと思っています(笑)。突然変異が起こらないかなって。
――そうしたらシンガーとしての活動が増えるかもしれない。
人生変わるかもしれないですよ。ブルーノートとか出ちゃうかもしれない(笑)。
取材・文:藤村秀二

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