紀平凱成インタビュー デビューフル
アルバム『FLYING』に広がるイマジネ
ーション&音楽の世界

幼少期より発達障害による感覚過敏と向き合いながら、風の音や鳥の声など、森羅万象を音で表現し続けてきたピアニストの紀平凱成(きひら・かいる)。2021年8月25日(水)に待望のフルアルバムをリリースする。10月から来年2月にかけては、東京・長野・神奈川・大阪の4都市を巡る『紀平凱成コンサートツアー2021-2022』も開催する。アルバムリリースを直前にして、紀平本人にアルバム収録作品について、そして秋からのツアーにかける意気込みを聞いた。インタビューには幼少期から二人三脚で紀平を支えてきたお母様の由起子さんも同席し、興味深いエピソードも聞かせてくれた。
■アルバムタイトル&表題曲「FLYING」のイメージは?

レコーディングの様子

――8月25日に新しいアルバム『FLYING』がリリースされます。『Miracle』(2019年10月23日リリース)に続く二枚目のアルバム、そして初のフルアルバムとなります。今の心境を聞かせてください。
凱成:嬉しくてワクワクしています。でも、さらに三枚目のアルバムも目指して新しい曲もどんどん作り続けています。あ、三枚目のアルバムのことは内緒だよ(笑)。
――『FLYING』のレコーディングはどうでしたか?
凱成:とっても楽しかったです。スタッフの皆さんに囲まれて嬉しかったよ。ありがとう!
――10月からは新アルバムとともに4都市を巡るツアーが実現します。ツアーにかける意気込みも聞かせてください。
凱成:いろいろな場所で多くの人に僕の曲を聴いてもらいたいです。そして、僕のピアノを聴いて、みんなに元気になって欲しいです。たくさんの人に会えるのが本当に楽しみです。
――『FLYING』 は「飛翔」と訳されると思うのですが、カイル君自身、flyingという言葉にどのようなイメージを持っていますか?
凱成:森の中で、森の精や妖精たち、動物たちが自由に楽しく飛び回っているイメージです。そして、僕自身もそんな楽しい輪の中にいて、「これから僕も、音楽の世界に羽ばたいていくよ!」と優しく語りかけているイメージです。
紀平凱成
――今まで自分自身で作曲した中で、どの曲が一番お気に入りですか?
凱成:全部好きですが、今は「FLYING~序章~」かな。今回のアルバムの最後に“エピローグ”として収録しました。実は、この曲はオーケストラ曲として作ったもので、CDでは短いピアノソロバージョンで序章部分だけを聴いてもらいたいと思っています。まだまだ先があって、と~っても長い曲になりそうです。
――オーケストラ曲ということは、バイオリンとかチェロとか、ピアノ以外のいろいろな楽器の音もイメージして作ったんですね。
凱成:森の中で妖精たちや動物たちが踊ったり歌ったり、鈴や鐘などの楽器を鳴らしたりしています。サーカスもいて、みんなでお祭りを楽しんでいるイメージです。ちょっと“動物の謝肉祭”みたいな感じかな。
――カイル君、動物は好きですか?
凱成:動物大好きです。オーケストラバージョンには虎とかライオンも出てくるかも。
■自作曲を含む全15曲の収録曲 込めたメッセージは「希望~Hope~」
紀平凱成
――他のアルバム収録曲に関しても伺います。コンサートでも人気の作品「Winds Send Love」には、様々な情景の中の風の音が描かれているように感じられます。例えば、どのような光景を思い浮かべたのですか?
凱成:風が森の中を吹き抜けていくイメージです。途中、海に出て激しい風になったりもします。風にはいろいろな音や香りがあります。風を感じると優しい気持ちになったり、嬉しくなったりして、とても気持ちいいです。そして、そのイメージは、アルバムの一番目に収録されている新曲「Fields」にもつながっています。
――「No Tears Forever」はコロナ禍に入ってすぐに作った作品と聞きました。
凱成:2020年はコロナ禍ですべてのコンサートが中止や延期になり、人と会えなくて、とても悲しくなったり、ちょっとイライラしたりしていました。でも、そのうち「元気になろう!」という気持ちも出てきて、その時の、そのままの思いを音楽にしました。今回のアルバム『FLYING』には全体的に ‟希望~Hope~” というメッセージを込めています。希望を持っていれば、どんなにつらいことも乗り越えられるからです。
――「8つの演奏会用エチュード」Op.40から第5曲 ‟冗談”や「24の前奏曲」Op.53から9・11・24番の三曲、「夜明け」Op.26、「サウンズ・オブ・ビッグバンド」Op.46と、数多くの作品から、これらのピースを選んだ理由は?
凱成:カプースチンの作品は全部好きなので、本当は全部録音したいくらいですが、例えば24の前奏曲 第9番は、昨年カプースチンが亡くなった時によく聴いていました。優しくて、美しいバラードです。いつも、カプースチンに届いて欲しいと思って、心を込めて弾いています。第24番は音も多く、リズムも複雑でとても難しい曲です。でも、弾いていてワクワクするし、カッコよくて、スリルもあって大好きです。「夜明け」は、「もうすぐ、そこに明るい未来が待っている」という希望を込めて選びました。
レコーディングの様子
――他の3曲(冗談、Op.53-11、サウンズ・オブ・ビッグ・バンド)は?
凱成:この3曲は僕が18歳のときに弾いた1枚目のアルバム『Miracle』からの選曲です。小学4年生の時のピアノ発表会に初めてカプースチンの「変奏曲」を聴いて大好きになりました。すぐに「8つの演奏会用エチュード」や、「サウンズ・オブ・ビッグ・バンド」も大好きになり、演奏したくなりました。最初はカプースチン本人やアムランの演奏を耳コピしていましたが、高学年の時に楽譜を買ってもらって、カプースチンの曲の面白さがもっとわかるようになりました。たくさんの音符が綺麗に並んでいて、ピアノの曲なのに、色々な楽器の音が聴こえてきます。
紀平由起子:余談ですが、カイルは「イイな」と感じると、どんなに難曲でも弾きたくなってしまうみたいなんです。難曲やレアな曲も躊躇なく選曲して、嬉しそうに、ものすごく笑顔で練習しています。カイルが師事しているピアニストで、カプースチン研究の世界的権威でもある川上昌裕先生に、カイルが「この曲を弾きたい」とお伝えするといつも驚かれます。そして嬉しそうです。「この作品をあえて選ぶのは、僕とカイル君とカプースチン本人くらいだね」と笑っておっしゃることもあります。「こういう作品に自然に惹かれるなんて、まるでカプースチンと通じ合っているみたいだね」と。高い次元の音楽センスを持った人たちにしか分かり合えない何かがあるのでしょうか、通じ合っている3人が羨ましくもあり、おこがましくも、カイルがその中に入れて頂いているのが、とても嬉しいです。
――もう一曲、昨年の自粛期間中に書かれた「Songs Over Words」は、‟言葉を超えた歌”ということですが、どのような思いが込められているのですか?
凱成:僕の中にある「音楽が好き!」という気持ちをまっすぐに表現しました。いつもそうですが、曲を書いていると同時にタイトルも自然に思い浮かんできました。言葉で伝えられない気持ちも、音楽なら表現できます。そんな気持ちを曲にしたかったです。
レコーディングの様子
――そして、名曲「Imagine」もカイル風にアレンジされていますね。
凱成:「Imagine」は優しい曲で、ジャズっぽい感じが好きです。小さい時によく弾いていたのですが、今年4月の僕の二十歳(はたち)のバースデー・コンサートで、久しぶりに演奏しました。コンサートのために、20歳の今の僕が感じるままアレンジしてみました。
紀平由起子:幼稚園の年長の時に、カイルが初めて人前で弾き語りをしたのが、まさに「Imagine」でした。カイルにとって、子供の頃から自然に自分自身の中で「Imagine」が流れていたようです。本人も、二十歳の記念に新たなかたちで演奏できたのはとても嬉しかったようです。今の時代だからこそ、この曲をCDに入れて何かをメッセージをしたいという感覚があったのではと感じでいます。カイルは多くを語りませんが、テレビやインターネットからの情報、そして親がしゃべっていることを敏感に受け止め、多くのことを感じ、思いを音楽で表現しています。前段にもあった「Songs over Words」のような”タイトル”もそうなのですが、新曲ができたときに楽譜に書かれているタイトルを見て、ドキっとすることがあります。「音楽で思いを伝えていくんだ」という独特の感覚、まっすぐな意志を持っているように思います。そんなカイルを感じとっていただけると幸いです。
■「音楽でみんなを笑顔に」――紀平凱成がうみだす世界

紀平凱成

――今回のアルバムを“色”で例えるとしたら、何色を思い浮かべますか?
凱成:羽ばたくイメージは黄色と緑だと思う。空を自由に飛ぶピーターパンみたいな色かな。
――自分自身の気持ちを音楽で表現するときに、どんなことを一番大切にしていますか?
凱成:これまでは、自分自身が感じたことや湧き出てくるものを自由に音楽にしていました。頭で考えて譜面にしたり、ピアノを弾いて曲を作ったりということはあまりしませんでした。でも今は、曲を仕上げていく時に、聴いている人がどんな風に感じるかということを、とても考えるようになりました。
――日常生活の中で最も好きな音、興味のある音は?
凱成:優しい人の声が好きです。あと、イ長調の音が好きです。でも、好きな音はいつも変わっていくよ。
――どんな場所にいるのが好き?
凱成:森の中や海、川、キレイな音や心地よい風を感じるところ。僕がいつも練習している音楽室やたくさんの人が聴いてくれるステージの上、おばあちゃんが住んでる田舎の景色、家族と一緒に居られる場所も大好きです。
――今後、作曲や演奏にあたって、どんなことに挑戦したいですか?
凱成:世界に羽ばたいていきたいです。実際に旅しながら、僕自身も世界の音を感じてみたいですし、世界中の人々に僕の音を同じ場所や空間で一緒に聴いて欲しいです。そして、もう一つ。僕の曲をたくさんオーケストラにアレンジして、オーケストラと一緒に演奏してもらえたらいいな。それをより多くの人に聴いてもらって、みんなに笑顔になって欲しいです。
――そういえば、先日「24時間テレビ44」にも出演しましたね。
凱成:MISIAさん、さだまさしさんと一緒に24時間テレビのチャリティーソングを作るプロジェクトに参加できたことや、素晴らしいミュージシャンの皆さんと一緒に演奏が出来て、とてもワクワクしました。さだまさしさんの作詞作曲、渡辺俊幸さん編曲のチャリティーソング「歌を歌おう」はとても素敵な曲です。またMISIAさんと一緒に演奏が出来たら嬉しいです。そして僕も涙を卒業するためにピアノで歌いたいと思っています。
――最後にコンサートツアーを楽しみにしている読者にメッセージを。
凱成:久しぶりに、客席の皆さんを感じながら演奏できるのはとても嬉しいです。僕の音楽でみんなを笑顔にできたらいいな。
取材・文=朝岡久美子

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