かぐや姫、その真の姿を
『かぐや姫LIVE』で確信

それまでのイメージを覆された歌詞

M8「妹」からはLP盤でのB面。A面の収録曲はバンドサウンドものだったが、B面は3人のアンサンブルで構成された楽曲を収録している。ただ、だからと言って、音像が地味かというと、まったくそうではないことがM8からいきなり分かる。聴きどころは、3番の後半──《明朝お前が》以下で、それまでアルペジオだったギターがストロークに変わるところだ。明らかに演奏がエモーショナルで、熱が入っていくことが感じられる素晴らしいテイクである。間奏の物悲しくもポップな旋律も、M8「妹」の物語を象徴しているようでもあり、派手さがないことは楽曲にとってマイナスにならない──それどころか、奥行きを増すことを証明しているようでもある。話は前後するが、イントロがなく、歌から入ることで、観客が“待ってました!”とばかりに拍手を贈るところも、ライヴならではの光景であって、とてもいい。

チューニング音とMC(このMCはこうせつ氏?)、そしてMCの中で「海」なるナンバーが披露されたあと(この「海」は収録曲としてカウントされていないようだ)、M9「星降る夜」、M10「置手紙」、M11「眼をとじて」、M12「あの人の手紙」と続く。この流れからも、ほぼ3人だけのアンサンブルといっても、単調にはならないことがよく分かる。ザっといくと、M9はカントリーブルース寄り、M10「置手紙」はマイナー調、M11「眼をとじて」はポップなアメリカフォーク、M12はウエスタン(スパニッシュと言ってもいいかも)と、全体的には米国音楽からの影響が色濃いものの、曲毎にしっかりと個性があって、アルバムに収めた際も起伏が生まれている。グループの特徴が分かるとともに、ここでもまたその懐の深さ、ポテンシャルの確かさがうかがえるところだ。ラストはM13「神田川」。アンコールを求める拍手からMCを挟んで披露される。か細いギターの音が重なり合うアンサンブルが歌詞の世界観にジャストフィットしていることを感じて、日本のフォークソングや昭和という時代を象徴するナンバーであることを改めて強く思う。邦楽シーンの名曲であることは疑うまでもない。

…と、ザっと解説してみても、それまでぼんやりと思っていた、かぐや姫のイメージが、いい意味で覆されたのだが、最も衝撃的だったのは以下の歌詞だ。それまで抱いてきた、かぐや姫の印象は、これで完全に変わった。

《その男は恋人と別れた/さよならの口づけをして/髪の毛をやさしくなぜていた》《その時男は心のどこかで/赤い舌を出して笑った》《そうさ男は自由を とりもどしたのさ/そうさ男は人生の ペテン師だから/このいつわりも いつの日にか/ありふれた想い出に すりかえるのさ》(M3「ペテン師」)。

《ぼくのほんのひとことが まだ二十前の君を/こんなに苦しめるなんて/だから行く先は ぼくの友達に聞いてくれ/君に会わないで行くから/今頃は ぼくも また昔のように/どこかの町のカフェテラスで/ビールでも飲んでいるだろう/君が帰る頃は 夕暮れ時/部屋の明かりは つけたままで》(M10「置手紙」)。

《あなたのやさしいこの手は/とてもつめたく感じたけど/あなたは無理してほほえんで 私を抱いてくれた/でもすぐに時は流れて あの人は別れを告げる/いいのよ やさしいあなた 私にはもうわかっているの/ありがとう私のあの人/本当はもう死んでいるのでしょう/昨日 手紙がついたのあなたの 死を告げた手紙が》(M12「あの人の手紙」)。

M7「22才の別れ」でもその雰囲気が感じられ、深読みすればM13「神田川」もそこにカテゴライズされるかもしれないが、いくつかの歌詞で見られるのは理不尽にも思える別れだ。いや、“理不尽にも思える”ではなく、ある方向からは完全に理不尽としか思えない別れが描かれている。この辺は、フレンドリーでもないし、まったく柔和な感じはない。特にM3、M10は今となってはコンプライアンス的に“?”な感じがしなくもないし、見方によっては空恐ろしくもある。これらがどういう背景から導き出されたのか。今回、『かぐや姫LIVE』でほとんど初めてかぐや姫を聴いた者には、それを推測することすらできないけれど、冒頭で“かぐや姫が硬派なグループであることを知った”と言ったが、かぐや姫は硬派ところではない。無頼派と言ってもいいアーティストだったのではないかと想像した。いつか、メンバー3人のソロワークも取り上げてみたい。考察はまだまだ続く。

TEXT:帆苅智之

アルバム『かぐや姫LIVE』1974年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.うちのお父さん
    • 2.僕の胸でおやすみ
    • 3.ペテン師
    • 4.加茂の流れに
    • 5.君がよければ
    • 6.カリブの花
    • 7.22才の別れ
    • 8.妹
    • 9.星降る夜
    • 10.置手紙
    • 11.眼をとじて
    • 12.あの人の手紙
    • 13.神田川
『かぐや姫LIVE』('74)/かぐや姫

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • SUPER★DRAGON / 「楽楽★PAINT」
  • OLDCODEX / 「WHY I PAINT ~なぜボクがえをかくのか~」
  • みねこ美根 / 「映画の指輪のつくり方」
  • POP TUNE GirlS / 『佐々木小雪のイラスト花図鑑』
  • POP TUNE GirlS / 『涼水ノアの、ノアのはこぶ絵』

新着