ゼリ→、衝撃のデビュー作
『RODEO★GANG』に
音楽的センスの萌芽と
揺るぎないスタンスを窺う

単調に聴かせないポップさのギミック

まず、M1「RODEO RADIO」。イントロでの小気味のいいドラミングと、かき鳴らされるギターの音が如何にもパンクで、自然と気分もアガる。オープニングナンバーとして相応しい楽曲ではあろう。歌メロはロンドンやニューヨーク、LAのそれではなく、日本らしい印象だ。BOØWY由来というと語弊があるかもしれないが、ポップかつキャッチーである。それでいて、サビのメインヴォーカルに重なる《Rodeo Radio》のコーラス(ていうかシャウト)がヤンチャな感じでとてもいい。若さと勢いがここに凝縮されているかのようである。ちなみにこうしたシャウトはM1以降も随所で聴くことができるので、ライヴバンドでもあった初期ゼリ→のこだわりだったのかもしれない。

M1で“おっ!?”と思ったのはユータロー(Ba)のベースラインである。8ビートは8ビートなのだが、ところどころでランニングフレーズとでも言うべき、ベースプレイが差し込まれる。ギターが掻き鳴らし傾向なので、ダウンピッキングのみなら単調になってしまうところを、そうさせていない。回避している。独特の高揚感を生んでいるのはベースによるところは間違いない。ユータローはのちにLAID BACK OCEANを経てSADSの再結成に参加したり、清春のソロでもベースを弾くことになったり、プレイヤーとしての実力を認められていったが、その片鱗をここに見て取れる。そのベースラインはM2「NO THANKS BLUE GHOST」、M3「光を放つように」以降も登場し、楽曲全体に特有のうねりを生んでいることを確認できる。

M2、M3で気づいたのは転調などの展開の工夫である。M2 はBメロに移るところ、M3は後半のリフレインにそれがあるが、これもいい。勢いを持続させていっているようでもあるし、単調に聴かせないギミックでもあるように思われるが、いずれにしても、この頃のゼリ→が単にヤンチャなパンクバンドではないことを示しているようにも思う。サウンドは密集感があって、この辺は若干聴き手を選ぶところがあった気がするものの、歌はポップであり、M3にはそれに重ねてメロウな部分もあって、大衆に訴え得るメロディーセンスを持っていたことも分かるし、それを伝えるにはこうした要素も必要というスタッフを含めた判断があったのかもしれない。

シンコペーションでグイグイと楽曲をドライヴさせていく、オイパンク風のM4「HOWLING SUNDAY」でも、間奏で転調させてロックンロールの基本とでも言うべきギターソロを聴かせている。ロックンロールと言えば、M5「MY WAY」はイントロから聴こえてくるウォーキングベースからして、ベーシックなロックンロールに分類されていいナンバー。サウンドアプローチそのものはオーソドックスなものと言っていいのだが、実は今回『RODEO★GANG』を聴き直して最も面白く聴いたのがこのM5である。そうは言っても、この楽曲自体はギミックもフェイクもない、揺るぎのないロックンロールではあるのだが、何と言うか、ここからいろんなリズムに派生していきそうな箇所がいくつかある気がするのだ。うまく説明できる自信がないけれど──例えば、“このあとはセカンドラインが聴こえてきても不思議じゃないな”とか、“モータウン風もありかもしれない”とか、変な言い方だけど、まだまだいくらでもアレンジが効きそうな印象を受けたのだ。ここに収録されたものが不完全だというようなことを言いたいのではない。決してパンク、8ビートにとらわれない、汎用性の高いロックバンドの雛型のように思える…と言ったらいいだろうか。この辺りも、のちのバンドの進化、深化の萌芽と言えるのではないだろうか。

M6「ROCKER」はBPMの速さと《Romanticist》という歌詞から、ザ・スターリンを感じるのは筆者だけかもしれないが、アルバムの中ではアングラっぽい印象のある楽曲ではあって、ポップさとは異なる彼らの音楽的背景を垣間見えるところではないか。そんな想像もできる。その一方、続くM7「イナズマ」と、デビューシングル曲でもあるM8「おもちゃのピストル」は、この時期のゼリ→の王道とも言えるポップパンクチューン。ともにJ-ROCK、J-POP的な展開でありながら、M8ではCメロが用意されている上、後半のサビのリフレインではギターレスの箇所もあり、サウンドに変化を付けることで、抑揚を強調していることが確認できる。

M9「I'm standing」はThe Clashっぽい印象で、これもまたバンドのルーツをうかがわせるところではあるが、それを挟んだM10「FATMAN'S SLOWLY WALKIN' IN THE MORNING」、M11「NITRO GANG」もまた面白く聴いた。ともにパンクと言えばパンクで、歌メロや展開もここまで説明してきたゼリ→らしさは感じられるものの、リズム隊の印象はやはりベーシックなロックンロール。特にM11はドラミングがブラストビート寄りなだけに、ガレージロックのテイストが強く、ルーツミュージックにも近い感覚がある。このことから彼らは単にパンクをトレースするだけでなく、そのパンクがどこから派生したのかをちゃんと把握していたのではないかと想像した。そうしたスタンスがその後のバンドの進化、深化につながったと決めつけるのは短絡的だろうけれども、音楽的探究心が旺盛なバンドであったことは伺えるとは思う。

OKMusic編集部

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