笑いあり涙あり、時代劇を愛する人々
の努力と夢の物語 劇団SET『太秦ラ
プソディ〜看板女優と七人の名無し〜
』稽古場レポート

「ミュージカル・アクション・コメディー」をモットーに、多彩な作品を上演する劇団スーパー・エキセントリック・シアター。三宅裕司が旗揚げをして以来、40年以上にわたって多くの人を楽しませてきた。2021年10月22日(金)より、劇団SETの第59回本公演『太秦ラプソディ〜看板女優と七人の名無し〜』がスタートする。初日に向けて行われた通し稽古の様子をお伝えしよう。
【あらすじ】
時代劇において、斬られ役や町人といった端役を演じる無名俳優たち。
「大部屋俳優」と呼ばれる彼らは、ベテランの内川伊太衛門(小倉久寛)や斬られ役専門の伊勢本福三をはじめ、それぞれプライドを持って自らの役に向き合っている。しかし、昨今では時代劇は衰退し、彼らの仕事も減りつつある。
そんな中、起死回生の一手として、アイドル出身の主演女優の時代劇ドラマの制作が決定した。俳優たち、監督の黒鰆呆(三宅裕司)らスタッフは、彼女のわがままや無茶振りにも必死に応えるが、トラブルに見舞われ、制作が暗礁に乗り上げてしまう。
時代劇の制作を諦めきれない彼らは、太秦の看板女優・長吉友理沙の発案により、太秦のメンバーで時代劇を作ることになる。やがて、資金は集まり、新しい企画が動き出そうとする。 そんな矢先、福三や友理沙の前に、ある人物が現れた。
彼の登場で事態は予想もしない方向へと舵を切る。 振り回される太秦の面々、抗う者、従う者、静かに太秦を去る者……。
混沌とした日々の中、不器用なまでにチャンバラと向き合う大部屋俳優たちの情熱が奇跡を起こし、福三はスターへの切符を掴みかけるが、そんな彼の元へ飛び込んできたのは、友理沙が引退するという知らせだったー。
今回は、時代劇のメッカ・太秦を舞台に、斬られ役や町娘といったたくさんの人物を演じる大部屋俳優たちにスポットを当てた物語だ。時代劇の衰退やアイドル女優の起用、配信番組の台頭といった、現代のエンタメを取り巻く“あるある”や時事ネタをふんだんに盛り込み、ブラックユーモアを混じえて軽妙に仕上げている。
登場人物には、三宅演じる映画監督の黒鰆呆(くろさわらあき)をはじめ、大御所や旬の俳優を彷彿とさせるユーモアたっぷりな役名がついており、元ネタを推測しながら見るのも楽しい。
通し稽古ということもあり、衣装やセット、音楽は完全についておらず、キャスト陣はマスク姿。しかし、本番さながらの迫力ある殺陣や芝居に、開始早々グッと引き込まれた。
また、登場人物だけでなく、作中で企画される時代劇ドラマも馴染み深い作品のパロディ。思わず笑ってしまうコミカルな味付けと本格的な殺陣やアクションのギャップが楽しい。
歴史あるジャンルの衰退や売れない俳優たちの苦労と苦悩など、ともすれば重苦しくなってしまうテーマだが、緩急のついた脚本と演出、芝居によって笑いに溢れた作品に仕上がっており、心地良く見ることができた。
三宅・小倉によるアドリブを含めたコメディシーンのキレも抜群。二人の掛け合いに袖や客席にいるキャスト・スタッフから大きな笑い声が上がり、和気あいあいとした空気の中で稽古が進んでいく。
時折誰かが入りや台詞をとちったり、小物を落としたりといったミスにあちこちからツッコミが入り、あたりが笑いに包まれるなど、稽古ならではの場面も。
劇団メンバーたち自身がこの作品を心から楽しんでいる姿が、時代劇を守るために奮闘する大部屋俳優たちという作中の設定と重なり胸が熱くなる。本番では劇団メンバーの素の表情が垣間見えることはあまりないだろうが、全力で作品に向き合い楽しむ様子から、演劇の面白さやパワーを改めて感じられるのではないだろうか。
初日まで約1週間という緊張感の中ではあるが、焦りや不安は見えず、笑い声の絶えない明るい雰囲気が印象的だった。
時代劇に真剣に向き合う大部屋俳優たちをはじめ、裏方スタッフ、売れっ子若手女優や新進気鋭の経営者、ハリウッドの監督など、たくさんの登場人物がおり、一人ひとりのキャラが立っているのも魅力だ。
ちょっとした会話のテンポの良さや息の合った動きが「長年共に作品を作ってきた仲間」という関係性に説得力を与えている。若手からベテランまで、年齢も個性も豊かなメンバーが揃う劇団SETならではの安定感といえるだろう。
それぞれ個性や特徴が誇張されたキャラクターでありながら、ワンシーンしか登場しない端役たちまでが実際にいそうなリアルさと愛嬌を持っている。メインで描かれる大部屋俳優・福三や太秦の看板若手女優・友理沙はもちろん、出番の少ないキャラクターにも愛着が湧き、応援したくなった。彼ら、彼女らの人生や、描かれていない心情への想像を膨らませ、物語により深くのめり込むような楽しみ方もできる。
また、ラストではお馴染みのミュージカルパートも。和洋折衷・豪華絢爛な楽しいナンバーになっている。
茶目っ気たっぷりなコメディをベースにしつつ、時代劇らしい華やかでキレのある殺陣、人情話など、様々な要素がたっぷり詰まった劇団SETの最新作。衣裳やセットが加わったら、さらにあたたかくきらびやかな太秦の世界が現れるだろうという期待が募った。トラブルや不測の自体にめげず、自分たちの道を信じて進む大部屋俳優たちの夢の行方を、ぜひ劇場で見届けてほしい。
本作は10月22日(金)よりサンシャイン劇場、11月12日(金)より穂の国とよはし芸術劇場PLATにて上演される。
取材・文・撮影=吉田沙奈

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