[Alexandros]川上洋平、『ゲット・ア
ウト』と『アス』のプロデューサーが
手掛けたパラドックス・スリラー『ア
ンテベラム』について語る【映画連載
:ポップコーン、バター多めで PAR
T2】

大の映画好きとして知られる[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平の映画連載「ポップコーン、バター多めで PART2」。今回は、ジョーダン・ピール監督の『ゲット・アウト』と『アス』のプロデューサーが手掛けたジャネール・モネイ主演のパラドックス・スリラー『アンテベラム』について語ります。
『アンテベラム』
ジョーダン・ピールの『アス』と『ゲット・アウト』のプロデューサーが製作を手掛けているっていうところに惹かれて、「これは観なきゃ」って思って観たんですけど、正直想像してたのとはちょっと違いましたね。ワンショットのすごく綺麗な光景を映した映像から始まるので、素敵な映画が始まるのかなっていう感じなんですけど、そこから南北戦争時代のプランテーションにおける奴隷に対する暴行が映されていって、この映画の一番のテーマである人種差別問題がフォーカスされていく。そこから話が進んでいく中で、めちゃくちゃドキドキしたし、ワクワクしたところもあったし、印象的なシーンもいろいろあったんですけど、個人的には惜しいなって思いました。一番は結末がちょっと弱かったかなと。あの結末はシャマランの失敗作を見ている感じもあって、「え、そういう終わり方なんだ」って。ちょっと『ヴィレッジ』を彷彿とさせるような(笑)。アメリカの映画評論サイトのロッテン・トマトでの評価も結末への不満がすごく多くて、全体の点数がすごく低かったのもよくわかりました。ただ、『アス』とか『ゲット・アウト』的な独特の雰囲気は確かにあったし、差別問題をエンタメのホラーとしてうまく昇華するのはなかなかできないと思うし、映画を通して歴史や文化を学ぶ作品としては適していると思います。
『アンテベラム』より
■得体の知れない問題の大きさというものを突き付けられる怖さがある
アメリカのホラー映画って宗教が絡むことが多いんですよね。神様が悪魔として登場する。僕もそうですが、日本人は無宗教の人が多い。神様はまだ馴染みがあるけど、悪魔は馴染みが薄いんですよね。だからこそ一歩間違えると笑っちゃうようなキャラクターにもなったりするんだけど、すごく真面目に描かれるとものすごく怖かったりして。ホラー映画ではないんだけど、キアヌ・リーブスとアル・パチーノの『ディアボロス/悪魔の扉』とか、デンゼル・ワシントンの『悪魔を憐れむ歌』にも悪魔が出てくる。 僕にとっては馴染みがなさすぎて得体の知れない不気味さが加わってさらに怖いというか。『ヘレディタリー』とかも気味悪いですよね。
『アンテベラム』のホラーの要素は人種差別から来てるわけですけど、日本人からしてみるとアメリカよりは身近な問題ではないと思うんです。だから得体の知れない問題の大きさというものを突き付けられる怖さがあるんですが、完全に自分に置き換えることはできないんですよね。例えば学生がどこかの湖に彼女と遊びに行ってイチャイチャしてる時に襲われるみたいなアメリカのホラー映画だと、日本人にもその状況がはっきり想像できたりすると思うんですが、『アンテベラム』とか『ヘレディタリー』は宗教や移民問題の部分が強い。だから完全に自分がその状況を理解することはなかなか難しいので、勉強になる部分が多いなと思いました。
『アンテベラム』より
■ふたつの世界が同時進行で進んでいく
ベストセラー作家として幸せに家族と暮らすヴェロニカと、奴隷制度が横行するプランテーションで強制労働を課せられているエデンっていうふたりの黒人女性をジャネール・モネイがひとり二役で演じていて。そのふたつの世界が同時進行で進んでいくわけですよね。過去と現在っていうパラレルワールドに見えて、今も昔も変わってないんですよっていうことを言いたいっていうか。
そのひとつの世界で起こってる繋がってる出来事なんだって見せる構成はうまいなって思いました。『TENET』とかとはまた別の時間軸のトリックがあって結構好きでしたね。それがわかるまでは、「え、これ夢の話なのかな?」とか「パラレルワールドの話なのかな?」とか色々考えるんですけど、途中で「あ、なるほどね」ってなるのはおもしろかったです。
『アンテベラム』より
■いろんなことを想像できる映画でもある
いろんなメタファーがちりばめられてるんですが、ちょっと謎だったのが、ヴェロニカの友達がふたりいて、白人の方の友達の顔が差別主義者の白人女性に顔が似てて、一瞬「え?」って思ったんです。だから裏切ったりするのかなとか色々考えちゃいましたね。白人の中でも差別意識がない人もいれば、差別によって黒人を攻撃する人もいるっていうことを表してるのかもしれない。そういう風にいろんなことを想像できる映画でもあります。
あと、最後の方で人種差別主義者の白人女性が女性差別を糾弾するようなセリフがあって、「あ、ここでそれ言うんだ」って思いました(笑)。軸になってる人種差別に加えて女性差別の要素も入ってるのも、ちょっとメッセージをちりばめ過ぎだなとは思いました。ロッテン・トマト以外にもいくつか海外のレビューを読んだんですが、大体俺が引っかかってるところにみんな引っ掛かってましたね(笑)。個人的にはメッセージ性がちょっと大々的過ぎるかなと思ったのと、紐解きが緩くてすぐほどけちゃったみたいな感じがしました。「楽しめました」っていう言い方をして良い題材の映画でもないと思うんですが、ただ最後まではハラハラはしましたし、緊張感もありました。だから決してつまらないわけじゃないです。

取材・文=小松香里

※本連載や取り上げている作品についての感想等を是非spice_info@eplus.co.jp へお送りください。川上洋平さん共々お待ちしています!

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