SUPER BEAVER『都会のラクダSP 〜愛
の大砲、二夜連続〜』ツアーファイナ
ルで強く肯定した「いまを楽しむこと

SUPER BEAVER 都会のラクダSP 〜愛の大砲、二夜連続〜』2021.11.7(SUN)さいたまスーパーアリーナ
SUPER BEAVER
SUPER BEAVERが10月9日(土)から、17年目にして、東名阪アリーナ会場を2Daysずつでまわるというバンド史上最大規模のアリーナツアー『SUPER BEAVER 都会のラクダSP ~愛の大砲、二夜連続~』を開催。そのファイナルとなったさいたまスーパーアリーナのステージで、渋谷龍太(Vo)は「150人のライブハウスを十何年も埋められなかったバンドが、愚直にもずっと同じメンバーで続けて、あなたと一緒にこの景色を見られるのはすごく尊い時間だと思います」と感慨を口にした。
セットリストは、最新アルバム『アイラヴユー』の楽曲や新曲を要所に置きながら、これまで数々のライブやフェスで歌い続けてきたナンバーが散りばめられた、いまのバンドの集大成のような全17曲だった。昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くのライブが中止になり、無観客や配信ライブで試行錯誤を重ねてきたビーバー。そんな2020年を経て、1万人が埋め尽くすアリーナ会場に立った彼らが見せたのは、4人がそれぞれの持ち場で全力のパフォーマンスを発揮することで最高点を掴みとるという、ロックバンドのシンプルな戦い方が貫かれたライブだった。
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藤原”33才”広明(Dr)が叩く重たいドラムに柳沢亮太(Gt)と上杉研太(Ba)の演奏が重なったオープニングにのせて、最後に渋谷がゆっくりとステージに登場した。ライブの幕開けは「ハイライト」だ。「レペゼン・ジャパニーズ・ポップ・ミュージック、フロム・トーキョー・ジャパン。お待たせしました、SUPER BEAVER! よろしくお願いします!」。お決まりの口上を合図に、ステージ背面に設置された巨大なLEDスクリーンに4人の姿が映し出された。開始早々、文字通り<ハイライト>を描くような高揚感に満ちたバンドサウンドに合わせて爆発音が炸裂。「あなたと一対一の対峙をしにやってきました」と投げかけ、オレンジの照明を浴び圧巻の推進力で駆け抜けた「突破口」から、挫折を経験して大人になっていく27歳当時の心境を綴った「27」へ。その終わりに、渋谷が「めちゃくちゃ会いたかったです!」と言うと、会場はとても長く大きな拍手で包まれた。
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「愛すべきあなたのお手を拝借」と、観客の手拍子で歌い出した「美しい日」では、途中からバンドの演奏が加わった。渋谷がステージ横に伸びた花道の先まで歩み出ていくと、その隙に柳沢と上杉は互いに向かい合って演奏をする。続く「証明」では、ひとは<一人>で生きるが、決して<独り>ではないというメッセージを、渋谷が大勢の観客が囲む正面の花道に立って届ける姿がとても象徴的だった。このタームは、どんなときも目の前にいる観客を「あなたたち」ではなく、「あなた」と呼び続けてきたビーバーのスタンスが色濃く出る楽曲が続いた。全員の合唱をパンキッシュに聴かせた「青い春」では、<あなたが生きる意味だ>というフレーズのあと、「あなたしかいないっすよ」と、さりげなく加えた渋谷の一言に胸が熱くなる。
「昔はいちばん簡単だった「楽しい」という感情がいちばん難しい感情に変わってきて、悪いことのように感じてしまう風潮があると思う」と伝え、「この場所くらいはあなたの「楽しい」をしっかりと守りたい」と言葉を重ねたあと、中盤はアリーナならではのダイナミックな演出が目を引いた。炎が吹き上げ、サイケデリックな照明がステージを彩った「mob」では、強靭な横揺れのグルーヴで妖しげな空間を作り上げ、上杉の歪んだベースが口火を切った攻撃的なナンバー「正攻法」では、スモークが立ち込めるなか、柳沢が「過去最高を見せてくれ!」と不敵に叫んだ。藤原を中心に、柳沢と上杉が左右に広がり、渋谷が花道の先端に座り込んで歌った。そんなふうに、たまアリの広いステージを最大限に生かした「らしさ」から、唯一スクリーンに歌詞を映したバラード曲「愛しい人」へ。愛の向かう矛先を「自分」から「あなた」にシフトしていくこの2曲の流れはあまりにも美しかった。
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「音楽をやれなかったことじゃなくて、あなたに会えなかったことがつらかった」と2020年を振り返った後半のMCでは、渋谷は、だからこそ「大事なものに気づけた」と丁寧な言葉で観客に語りかけた。そして「俺たちが、どんなバンドかを次の曲で伝えられたらと思います。あなたが大事な人のことを思い直すきっかけになったら」と、「人として」へつなぐ。<かっこよく生きていたいじゃないか>と紡ぐ、これまでビーバーが大事な場所で歌い続けてきた普遍的な名バラードは、あえて演出を削ぎ落し、身ひとつで訴えかける、まるでライブハウスのような聴かせ方が印象的だった。最新シングル「名前を呼ぶよ」を挟み、「東京流星群」では巨大なミラーボールが放つ光の粒がステージを覆い尽した。ドラムスティックを力強く突き上げる藤原。声を出せない観客の代わりとでも言うように、メンバーはコール&レスポンスのパートを全力で歌っていた。
最後のMCでは、メンバーが一人ひとり思いを伝えた。「こんな状況だけど、いまバンドが最高に楽しくて、生きるうえでの最前線でここに立てていると思います」と熱く語った上杉。「はい、ドラムの人」(渋谷)、「おい、雑だなっ!」(藤原)というお馴染みの掛け合いのあと、「楽しいよね? またやるよ! またずっとがんばってライブをやってるから、いつでも遊びに来てな」とハイテンションに伝えた藤原。「こういう状況になってから、この会場に1万人以上入れるのは初らしい。あえて言いますけど、私たちはそれを誇らしく思っています」と、スタッフにも感謝を伝えた柳沢。その一言一言に「いいこと言うなぁ」「そのとおり」と相槌を打ちながら聞いていた渋谷は、「これからも一緒に音楽をできるように地に足を着けて精進していきます。これからもお世話になります。そして、これからもばっちりお世話しますので、よろしくお願いします!」と、らしい言葉で今後への思いを伝えた。
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残り3曲。これまでも1曲1曲を歌うごとに、その歌に込める思いを執拗なほど言葉にしてきた渋谷の口調がひときわ熱を帯びていった。躍動感あふれるイントロがはずみ、「あなたが身を委ねて自分の人生を俺たちに託すのではなく、会いたいあなた自身に会いに行けるような、現実逃避じゃない音楽を」という紹介で突入した「予感」から、「当たり前のことを、青臭いなと言われることを、愛してるということを、お前に歌わないで何がバンドなんだ!」と、珍しく「あなた」を「お前」に変えて荒々しく呼びかけた「アイラヴユー」へ。フィナーレに向かって、バンドがひとつの塊になるような高いエネルギーで突き進んでいった。ラストは、最新アルバム『アイラヴユー』の最後に収録されている弾丸のようなパンクナンバー「さよなら絶望」だった。激しく明滅する照明と、藤原が叩き出す前のめりなビート。「こぶしをあげてくれ!」と叫ぶ柳沢に、寝っ転がりながらベースを弾く上杉。その真ん中で渋谷が<絶望>に中指を突き立てた。守りたいものがあるから、彼らは戦うのだ。そんなSUPER BEAVERの底知れない優しさと、その奥にある鋭さに触れるフィナーレだった。
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アンコールでは、「俺たちの「生きててよかった」に、あなたがなってくれましたので、俺たちは、あなたの「生きててよかった」になりたいです」と、渋谷がマイクを通さず、生声で語りかけたあと、「時代」を届けた。アカペラで歌い出し、次第にバンドサウンドが加わると、最後は4つの歌声が重なり合いながら高みへと上り詰めていく。<歯車であり 歯車じゃない 誇ってよあなたを>。そんなふうに紡がれるフレーズは、この会場を出たあと、再びそれぞれの生活へと帰ってゆく一人ひとりに捧げる、しばしの別れの歌のように聴こえた。
自分らしくあること、誰かを愛すること、大切な価値観を守ること。SUPER BEAVERが伝えることは一貫してブないが、この日は、これまで以上に「いまを楽しむこと」を強く肯定しようとしているように思えた。アンコールで渋谷は「これからも自分が楽しいと思うこと、何よりもあなたに楽しいと思ってもらえることをどんどんやっていきたい」と言っていた。楽しみは生きる原動力になる。同じ時代を生きるロックバンドとして、それがいまもっとも彼らが伝えたいメッセージだったのではないだろうか。
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取材・文=秦理絵 撮影=青木カズロー

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