舞台シリーズならではの面白さ――い
ろんな役者によってキャラクターが育
っていった/TRUMP解体新書 Vol.6【
キャラクター編】

2021年6月からスタートした<TRUMPシリーズ>Blu-ray Revival発売記念連載『TRUMP解体新書』。この連載では、毎月1タイトル、8か月連続リリースする舞台<TRUMPシリーズ>について、毎月、全8回、脚本・演出の末満健一さんのインタビューと共にたっぷり、じっくり振り返っていきます。
この連載も今回を含め残り3回。前回・前々回は、TRUMPの世界を立ち上げるクリエイティブについて紹介しましたが、もうひとつ、舞台を語るに欠かせないのは、キャラクターとそれを演じる役者たち。<TRUMPシリーズ>では、各作品のつながりが垣間見える、共通したキャラクターが登場することがあり、それをさまざまな役者が演じています。今回、末満さんにお話しいただいたのはその【キャラクター】にまつわるお話です。
<TRUMPシリーズ>に登場する、さまざまな魅力を持つキャラクターたち。その中でも初演『TRUMP』から登場する、人間とヴァンプの混血(ダンピール)という忌むべき存在として扱われるソフィ、階級社会であるヴァンプ界で指折りの名家で育ちながらもソフィに惹かれるウル、クランのティーチャーで、ある秘密を抱えたクラウスは、シリーズを通してさまざまな表情や姿が描かれてきました。果たしてどのようなところから生まれ、シリーズを重ねる中でどのような存在になっていったのでしょうか。
初演ビジュアル/ピースピットVOL.9『TRUMP』(2009.11.18-11.22)
――今回は<TRUMPシリーズ>の代表的なキャラクターであるソフィ、ウル、クラウスについてお話をうかがいたいと思っています。まずソフィはどんな人物ですか?
最初に何を思って書いたかは10年以上前のことなのであまり覚えていないですが、ソフィは自分にないものを投影した「孤高の存在」として描いていたように思います。その孤高の存在に対して、孤高になりきれないクラウスがいて、孤高を照らし出す存在としてウルがいて、という感じです。
――孤高の存在。
はい。ただ最初の『TRUMP』を書いた時はそうだったんですけど、シリーズを重ねていく中で、孤高として描いたはずのソフィも孤独に飲み込まれていきました。だから最初に思い描いていたソフィからはかなり変化しています。キャラクターというのは記号的ではなく多面的であるべきだと考えているので、ソフィの一貫性のなさはある種理想的です。よく「キャラクターが勝手に動き出す」と言いますが、作者のコントロールの外側にはみ出していったということに関しては、ソフィが一番面白いです。
『TRUMP』REVERSEより ソフィ・アンダーソン/三津谷亮(撮影:渡辺マコト)

ミュージカル「マリーゴールド」に登場するソフィ(左/三津谷亮) ソフィ・クラウスはシリーズを通して至る所に登場する

逆に全然ブレていないのはクラウスです。自分に一番近いので、すごくわかるというか、理解できてしまうキャラクターでもあります。僕は無神論者ですが、「神様」が実在するならばどんなものなんだろうって想像したときに、そもそも人のカタチをしているかもわからないですが、僕が思う神様像ってクラウスなんですよね。
――神様なんですか。私、許してないですよ、クラウスがソフィにしたこと。
ははは! まあ、クラウスは利己的であるし無責任ですよね。「神性」というものをどう解釈するのかは人それぞれで、何かが起きた時、神様がいるんだったら「もうちょっと救われていたんじゃないか」と言う人もいれば、「これは神様が与え給うた試練だ」って捉える人もいる。そういうところで、僕が思う神様はこれですっていうところですね。
『TRUMP』TRUTHより ティーチャークラウス/TRUTHでは陳内将、REVERSEでは山田裕貴が演じた(撮影:渡辺マコト)
――ではウルはどんな人物ですか?
ソフィと表裏一体の存在です。最初はソフィが陰でウルが陽だったけれども、途中で実はウルが陰でソフィが陽なんだってところもあって。そういうどちらともとれる表裏一体の存在。演じる役者によってキャラクターが全く異なるのもウルの面白いところです。
――ソフィは変わらないですか?
多少は変わりますが、ある程度の範疇からは出ないですね。ただ、誰がソフィを演じるかによってウルのふり幅が広がります。物語の縦軸としてあまりブレることのできないソフィとは違い、ウルは一番捉えどころがないし、役者に寄せてきたキャラクターです。育ちのいいお坊ちゃんみたいなウルもいれば、親に反発してやさぐれているウルもいれば、おバカっぽいウルもいる、みたいな。

COCOON「星ひとつ」に登場するウル(中央/宮崎秋人)
『TRUMP』TRUTHより ソフィ・アンダーソン/西井幸人(奥)、ウル・デリコ/三津谷亮(手前)(撮影:渡辺マコト)

――たしかにそうですね。
キャラクターが固定しないことは<TRUMPシリーズ>の面白いところだとも思います。原作があるとどうしても「このキャラクターはこう」というのがあるけど、このシリーズでは作品によっていろんなウルが生まれたのが面白かったです。そういうものの平均値というか、いいとこどりをしようとしているのがコミック版です。今までいろんな人に演じてもらった中での「ソフィとウルはこういうものだ」の、ある種の決定版ができたなと思います。ソフィとウルの関係性において、焦点が明瞭ですから。
――決定版ができた後もまた新しいソフィとウルが生まれるのでしょうか?
でも『TRUMP』については、オール女性キャストで上演した『TRUMP -female ver.-』や『COCOON 星ひとつ』(註:この作品では『TRUMP』のストーリーを別の角度から描いた)を含めると6回位やってるので、もうそろそろ僕の演出では打ち止めかなと思っています。
だからぜひともコミック版をアニメ化して、アニメから2.5次元舞台になって、さらに海外でドラマにしていただきたい……という野望はありますけど(笑)。アニメ化したものを他の演出家さんが演出してくれるのは、原作者として観に行きたいです。ただ、その演出家さんは嫌でしょうね(笑)。原作者が同業者って。2.5次元にはあまりないパターンでしょうから。

「TRUMP(1)」原作:末満健一、漫画:はまぐり(角川コミックス・エース/KADOKAWA刊)
「TRUMP」原作:末満健一、漫画:はまぐり/ヤングエースにて連載中
「TRUMP」原作:末満健一、漫画:はまぐり/ヤングエースにて連載中
コミック版のソフィ(左)、ウル(右):「TRUMP」原作:末満健一、漫画:はまぐり/ヤングエースにて連載中

――たしかに(笑)。話を戻すと、キャストに寄せていたのはウルだけですか?
いえ、それぞれのキャラクターがそうです。キャストの個性であったり、演技の傾向であったり、あとはどう解釈するのかっていうところですべてのキャラクターが上演する度に変わっています。なので、あまり「こうだ」というのは決めずにやってきたところがあります。最初に書いた時の動機には、さっき話したような「孤高」であったり、「表裏一体の存在」であったり、「僕個人を投影したキャラクター」というのがありますが、そこからいろんな役者によって育てられ、ブレて、「こうだ」と言い切れないようなキャラクターになっていきました。そこが役者に合わせてキャラクターをつくり続けてきたこのシリーズならではの面白さだなと思います。
――ちなみにソフィだったら三津谷亮さんとか、クラウスだったら陳内将さんとか、何度も同じ方が演じられているキャラクターもいるのは何か理由があるのですか?
そこは期せずしてそうなったところはあります。ふたりは何度も同じキャラクターを演じてくれたので、ありがたかったですね。そういう意味では『COCOON』で、三津谷くんのソフィも、陳内くんのクラウスも、すごくいい感じで完成したんじゃないかと思っていますし、別の方に演じていただく機会があればそれも楽しみです。とはいえソフィとクラウスが今後いつ出てくるかはわからないですけど。
――おお、そんな感じなんですか?
当分出ないですね。まあでも、三津谷くんがクラウスを演じるとかは面白いかもしれません。

次回は、今回BDになった作品を一気に振り返っていただきます。

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