これぞロマンティック・コメディの傑
作! ミュージカル『マイ・フェア・
レディ』ゲネプロレポート(神田沙也
加&寺脇康文&前山剛久ver.)

ミュージカル『マイ・フェア・レディ』が、2021年11月14日(日)東京・帝国劇場で華々しく初日を迎えた。
ジョージ・バーナード・ショーの戯曲『ピグマリオン』を原作とし、オードリー・ヘップバーン主演の同名ミュージカル映画(1964年公開)でも親しまれる本作。1963年に日本で初めて上演されたブロードウェイ・ミュージカルとしても知られている。日本では3年ぶりの上演となる今回の2021年公演では、翻訳/訳詞/演出をG2が務め、朝夏まなと&別所哲也&寺西拓人と、神田沙也加&寺脇康文&前山剛久という2組のキャストの組み合わせで上演される。
以下で、11月14日(日)に行われた神田沙也加&寺脇康文&前山剛久出演回のゲネプロの模様をレポートする。

上演時間は1幕1時間35分、休憩25分、2幕1時間15分の計3時間15分。物語は、一人の花売り娘と言語学者が出会うところから始まる。
ロンドンのコヴェント・ガーデンに位置するロイヤル・オペラ・ハウス前で、スミレの花を売り歩く若い娘がいた。労働者階級のイライザ・ドゥーリトル(神田沙也加)だ。彼女はぶつかった客に対してひどい訛りの言葉(ロンドンの下町言葉・コックニー訛り)で怒鳴り散らしている。その姿を興味深く観察しているのが、言語学者のヘンリー・ヒギンズ教授(寺脇康文)だ。彼はイライザを見て「自分なら6か月以内に宮殿の舞踏会で踊る貴婦人に仕立てさせてみせる」と豪語して去っていく。仕事仲間たちと「あたたかい部屋でチョコレートを食べる そんな暮らしがしたい」と夢見るイライザだったが、それはすぐに現実のものとなる。
なんとその翌日、ヒギンズの自宅にイライザが突如姿を現したのだ。彼女は「ちゃんとした花屋の店員になるために話し方を教えてほしい」と言う。その日を境に、下町娘を立派な貴婦人に仕立て上げるべく猛特訓の日々が始まった。
イライザ役を務めた神田は、実に見事なコメディエンヌぶりを披露していた。ヒギンズ邸に住み込みでの猛特訓が始まると、花売り娘の小汚い衣服は捨てられ、白いブラウスに鮮やかな緑のワンピース姿でまるでフランス人形のよう。唇を尖らせ眉間にシワを寄せてヒギンズに悪態をつく姿すら、愛らしく魅力的だ。発音の練習ではまるでヒギンズと言葉遊びのコントをしているかのようで、客席からは絶えず笑いが漏れ聞こえていた。本作の帝国劇場での上演を心待ちにしていたと会見で熱く語っていた神田は、帝国劇場の板の上で非常に活き活きとした芝居を見せてくれた。
写真提供/東宝演劇部
写真提供/東宝演劇部
そんな神田のイライザと息ピッタリの掛け合いを繰り広げたのが、本公演で四度目のヒギンズ教授役となる寺脇だ。ヒギンズという男は高慢でプライドが高いだけでなく、集中できるからと部屋の明かりを消しておぞましい発声音を聴き続けるような変わり者でもある。全てにおいてスマートで落ち着いた立ち居振る舞い故に、発言の皮肉っぽさも増して感じられた。独身を貫く彼が「女と暮らせば台無しだ」と嘆き歌うシーンでは、舞台上をあちこち駆け回っているかと思うとあっと驚かせてくれるパフォーマンスも。台本にないようなイライザとのやり取りが何度も飛び出し、時にはアクシデントすら笑いに変えてしまうのは、ベテランの経験が為せる技に違いない。
写真提供/東宝演劇部
写真提供/東宝演劇部
本公演で初出演となるフレディ役の前山は、イライザに首ったけで従順な青年を好演。ステッキを手に高笑いする姿が印象的だ。前山自身がボイストレーニングを始めた際に練習していたというソロナンバー「君が住む街」では、イライザに恋する喜びを全身全霊で歌声に乗せ、劇場中に響かせていた。
写真提供/東宝演劇部
写真提供/東宝演劇部
ここで、イライザたちを取り囲む芸達者なベテラン役者陣にも注目したい。
相島一之演じるピッカリング大佐は、少々マイペースなところが憎めないジェントルマン。イライザとヒギンズが出会ったときからずっと温かく見守り続けている。イライザのことを最初から一人のレディとして扱い、時にサポートしてくれる存在だ。同じくイライザとヒギンズを屋敷で見守っているのは、春風ひとみ演じるピアス夫人だ。ヒギンズの無茶苦茶なやり方に対し、正論ではっきりと意見する姿はとても頼もしい。
写真提供/東宝演劇部
ヒギンズの母をユーモアたっぷりに演じるのは前田美波里。最初こそ花売り娘イライザの存在に驚くが、自立心のあるイライザを次第に応援してくれる人物でもある。イライザが自分の元を去ってしまい途方に暮れる息子に対し、手厳しく意見する様は痛快だ。
写真提供/東宝演劇部
今井清隆が演じるイライザの父アルフレッド・ドゥーリトルも、味わい深い芝居で物語に厚みを持たせていた。毎度居酒屋から追い出されて娘に金をたかるような彼が、同じく労働者階級の人々と「ほんの少し運が良けりゃ」と歌い踊るシーンや、再婚直前にわずかな独身の残り時間を楽しみどんちゃん騒ぎをするシーンは、下町の人々の生きる活力が溢れ、人間の持つ強さと愚かさが同時に感じられた。
写真提供/東宝演劇部
東京公演は帝国劇場にて11月28日(日)まで上演予定。その後は埼玉、岩手、北海道、山形、静岡、愛知、大阪、福岡と全国を巡る。1幕ではイライザが貴婦人になるべく猛特訓するドタバタな日々を、2幕はイライザとヒギンズの大人の恋の行方を、珠玉の音楽と共に心ゆくまで楽しんでほしい。

取材・文=松村 蘭(らんねえ)  写真提供/東宝演劇部

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • SUPER★DRAGON / 「楽楽★PAINT」
  • OLDCODEX / 「WHY I PAINT ~なぜボクがえをかくのか~」
  • みねこ美根 / 「映画の指輪のつくり方」
  • POP TUNE GirlS / 『佐々木小雪のイラスト花図鑑』
  • POP TUNE GirlS / 『涼水ノアの、ノアのはこぶ絵』
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』

新着