『みねこ美根の“映画の指輪のつくり方”』

『みねこ美根の“映画の指輪のつくり方”』

『みねこ美根の
“映画の指輪のつくり方”』
- 第五十五回 -
「ジョジョ・ラビット」の指輪

2017年から本格的に活動を開始したシンガーソングライター〈みねこ美根〉が大好きな映画の世界から作り出す紙粘土細工と指輪の制作過程をお見せします。ミニチュア好きな方、アクセサリーづくりに興味のある方は是非見ていってください。指輪はライブ会場にて展示しております。

動画監督・撮影・編集・演奏・文:みねこ美根
「自分で気づく正しさ」(2019年『ジョジョ・ラビット(Jojo Rabbit)』)

ハロウィンが終わったらクリスマスなんだよ!あっという間だよ。すぐに年末だ、わかったか、年の瀬が来るんだ、そしたら正月だ。あっという間に2022年だ。いいか、来年は寅年だ。間違えるなよ!…お腹すいた。シュトーレン食べたいね。シュトーレンはドイツのお菓子だよ。
今回は、ドイツが舞台の映画、「ジョジョ・ラビット」を紹介する。

第二次世界大戦、ドイツの子どもたち

ジョジョは、第二次世界大戦中のドイツに暮らす10歳の少年。ナチス政権のもと教育を受けているジョジョのイマジナリーフレンドはアドルフ・ヒトラーだった。10歳から18歳の青少年の参加が義務付けられていた「ヒトラーユーゲント」という青少年団の訓練に意気揚々と出かけたジョジョであったが、ウサギを殺すことを命じられ、拒んだことをからかわれ「ジョジョ・ラビット」とあだ名をつけられてしまう。さらに怪我を負ったことで除隊することになり、落ち込むジョジョ。そんなある日、自分の知らぬ間に、自宅に匿われていたユダヤ人エルサを見つけてしまう…。と言う話。

その場所にいたら
洗脳だなんて気が付かない

まず驚いたのが、「ハイル、ヒトラー!」と楽しそうに叫ぶジョジョと、当時のナチズムやヒトラーに熱狂する人々の映像に合わせてビートルズが流れるオープニング。そうか、当時のドイツ人の人々にとってヒトラーやナチスに対する思いは、ビートルズに熱狂するような気持ちだったのか、アイドル的な存在だったのかなと思わせるような演出。ちなみに最後はデヴィッド・ボウイの「Heroes」のドイツ語版が流れる。「ウォールフラワー」でも重要なシーンで流れるこの曲にまた胸を締め付けられるとは!

この作品は非常にテンポが良く、ジョジョのチャーミングさ、ジョジョの母のユーモアにあふれた人柄、サクサク進む演出に笑いもこみ上げるし、観ていて楽しいし、コメディ映画のように思える。空想の友達ヒトラーさえもコメディ要員だ(ちなみにヒトラーは監督自身が演じている)。画面の色合いも鮮やかで、衣服や街並みもお洒落で可愛い。でも、突然、前述のウサギを殺せと言われるシーンや、反ナチスの人々が広場で絞首刑にされ見せしめに吊るされている光景が映される。身構える時間もなくびっくりするし、ギャップを感じるが、これが戦時下の‟普通の光景”だったのかなと思わせられた。境目がない。残酷で目を覆いたくなるような景色が暮らしの中にあったことが、この演出でよく分かる。

この映画の興味深いところは、最初から戦争を否定しないところだ。主人公のジョジョは心の優しい少年ではあるけれど、ナチスに心酔する少年だ。でも戦時下の人々の暮らしを丁寧に描くことで、やはり戦争による異常な光景が浮かび上がる。その違和感が、倫理に反したものであると気が付く。その気づきが改めて私たちに戦争や差別のある思想(本作ではナチズム)の恐ろしさを教えてくれていると感じた。

人を愛する気持ちが正義になる

この映画では様々な愛が描かれる。

まず、ジョジョの生来の優しさは、彼の母親ロージーの深い愛があったからだと感じさせてくれる温かいシーンの数々。スカーレット・ヨハンソンが演じるロージーは面白くて明るく優しい。ナチスの教育を受ける息子を否定せず、でも「あなたが生きていてくれさえすればよい」「こんな愚かな戦争は早く終わるべきだ」とも伝える。ユダヤ人のエルサを呼び寄せ、家に匿ったのもロージーだ。ナチスの政策に反対し、差別や偏見のない人物であることが分かる。ジョジョとロージーが部屋でダンスしてるシーン、大好きだな。ジョジョはそんな母親の愛を目一杯受けた優しい少年であり、ユダヤ人に関するナチスの教えが間違っていることをエルサとの交流を通して知っていく。

私が好きなキャラクターの一人、キャプテンKも、時代に翻弄された愛を貫く人だ。青年団の指導者として登場するが、序盤から「もはやドイツは防戦一方で敗色は濃厚だが、表向きには順調だ」とぶっちゃけたり、後半、めっちゃピンチのシーン(心臓止まった)で駆けつけたみたいに現れたりと、軍人でありながら、助けてくれてる?みたいなシーンがある。多くは語らない映画なので詳しい説明はないが、中盤、部下に対して建前では厳しく、二人になった時に「悪かった、きつく言い過ぎた」と親密そうに謝るシーンがある。他のシーンからも、たぶん彼は部下と愛し合っていたのではないかと考えられる。ひとつ、映画を観る前に入れておいて欲しい情報は、ナチスは同性愛者も迫害していたということ。そのことからするとキャプテンKもまた密かに反ナチスだったのではないかなと思われる。ジョジョやロージーのことを気にかける姿から、彼もまた愛に溢れた人であり、違和感に気が付いていくジョジョの背中を押す人物だと感じた。

そしてジョジョもまた、愛を受ける身から、愛を知り、心の変化と成長を見せていく。靴紐。これがキーアイテム。今回の指輪もジョジョの靴を一番大きく作った。

差別や偏見に飲み込まれないように

「ジョジョ・ラビット」はガンガン進むので、あっけなく思う人もいるかもしれないが、説明が少なく、観客に委ねている分、見落としがないように没入させてくれる。

ジョジョの親友ヨーキーが「ユダヤ人に実際に会ったけど、怖くないんだ。僕らと同じ。」と話すシーンがある。実際に会って、自分たちと何も違わないことに気が付いたのだ。私も自分の目で確かめていくことの重要さを忘れずに、差別や偏見に飲み込まれないような愛を持って生きていきたい。

ジョジョが自分の正義を見つけていく姿をぜひ見守って欲しい。可能なら、「帰ってきたヒトラー」という映画も見てみると良いと思う。この映画もすごい。初めて感じる恐ろしさだった。

生と死、というと漠然としているが、暮らしと死というと想像がしやすい。まさに、暮らしているすぐそばで、爆弾が落とされ発砲の音がする。さっきまで微笑んでいた人が次の瞬間死んでいる。いつ、命が奪われ、暮らしが”ぶつり”と終わるか分からない中で、生きる。ドラマチックではなく、戦争によるその突然の”ぶつり”が、本当に突然描かれる「ジョジョ・ラビット」。この歳最後に、素晴らしい映画に心をえぐっていただきました。

沢山の愛を伝えて、「ありがとう」って愛を受け止めて、自分の正しさをみんなでそれぞれ見つけていこう。
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モチーフ:ジョジョの靴ひもがほどけた靴、青い蝶々、ウサギ、ケースに入った煙草、鉄回収のロボット、キャプテンKのアルコールボトル、色鉛筆、エルサのペンダント、ロージーの帽子、ジョジョのナイフ、手榴弾
音楽:「Heroes」David Bowie
   「I Want To Your Hand」Beatles
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◆みねこ美根 オフィシャルHP
https://powerpop.co.jp/minekomine

◆みねこ美根 配信リンク
https://lit.link/minekomine

◆みねこ美根 オフィシャルTwitter
https://twitter.com/me_chat_3ne

◆連載『みねこ美根の“映画の指輪のつくり方”』一覧ページ
http://bit.ly/2VrGl0a
みねこ美根 プロフィール

ミネコミネ:6歳の時にピアノで初めて作曲、11歳からはギターでの作曲も開始し、現在はピアノとギターを用いてライヴ活動中。2019年1月リリースの配信EP『心火を従えて愈々』で楽曲のクオリティの高さ、世界観が注目を集め始める。サウンドプロデュースを手がける誠屋の小名川高弘氏とともに日々楽曲を制作しており、21年3月に自主制作アルバム『avant-titleⅡ』を発売。4月には「さよなら起承転結」、6月には「我にかえれ」を配信シングルとしてリリースした。みねこ美根 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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