中河内雅貴・田上真里奈・大平峻也・
加古臨王(演出)「舞台を囲むような
席で、お客さんも出演者として応援を
」~舞台『終末のワルキューレ』イン
タビュー

累計発行部数が900万部を突破し、2021年6月にアニメ化も果たした漫画『終末のワルキューレ』(作画:アジチカ 原作:梅村真也 構成:フクイタクミ)の舞台が2021年11月27日(土)に開幕する。
全世界の神代表vs人類代表による、人類存亡をかけた一対一<タイマン>13番勝負。熱い展開に目が離せない本ストーリーだが、それを舞台化となると「どうやってやるの?」という疑問が尽きない。
今回は稽古中の佐々木小次郎役:中河内雅貴、ゲル役:田上真里奈、アダム役:大平峻也、演出:加古臨王の4名にインタビュー。すでに以前より何度も共演の経験があるとのこともあり、互いの人となりを熟知しているかの様子。それぞれが舞台や役作りにこだわりと信念があるメンバーでもある。何時間も彼らのこだわりを聞いていたくなるような、非常に濃いインタビューとなった。
◆キャスティングが冴えわたる現場、生身の役者が演じる意味
――役や公演が決定した時の感想や周囲の反響などを教えてください。
大平:僕は臨王さんから直接「この役なんだけどいける? 脱げる?」ってお話をいただきました。肌の露出が激しいので事務所的にはOKなのか……すごく悩みましたが僕もそろそろ出来る役の幅も広げたいっていうこともあり、ぜひやりたいと思っていました。マネージャーもすごく前向きでいてくれて。それとすごく信頼している臨王さんにこうして直接声をかけていただいたことはすごく光栄でした。僕が20歳くらいの頃からお世話になっている方ですので。
加古:峻也のバースデーイベントでは何年も連続で僕がMCやっていたりとか付き合いは長い。でも今までは共演が多かったから、演出家と役者としては初めてだよね。
加古臨王
大平:ファンの方のみならず、俳優仲間からも「アダムどうするの?」って話をされました。舞台化が発表されたときはビジュアル撮影前だったので、僕もどういう衣装でやるのかはわからない。本当に葉っぱ一枚でやるのかもしれないと思い、とりあえず初めて髪の毛以外の毛を除毛クリームで脱毛しました! 実際は肌と同じ色のパンツを着用していたので、少し安心しましたね。
一同:(笑)
中河内:その覚悟を聞けてよかった!
大平:ファンの方もたくさん話題にしてくれましたし、僕自身もこれを舞台にするってどうやるんだろう? って強く思っていました。アダムは本当にカッコイイし、この驚きを舞台上で感じてもらえると思うのですごく楽しみです。
中河内:俺は原作もその人気も以前から知っていました。まさかこれを舞台化するなんて! でももし自分がやるとするとしら、なんとなく人間側かなって思ったんです。そしたらお声がけいただいたのが佐々木小次郎。でもちょっと俺は若すぎない? 小次郎のあの深みっていろんな人との出会いや悲しみや苦しみ、それを楽しさに変える精神力の強さがあるからなんですよね。肉体だけじゃなくて中身もすごく鍛え上げられている人物だから、俺はそこまで達してるのかなって。
加古:だからこそ中河内くんにお願いしたんだ。肉体的にも精神的にも両方がないと小次郎はダメだなって。
中河内:それを稽古場に入って臨王さんが言ってくださって、すごく嬉しかったです。そんな期待を越えていかなきゃいけない。「マサさん小次郎やるんですか!? 本当にピッタリですよ!」と周りも言ってくれています。でも自分ではまだそういう感覚はないのでたくさんもがいて高みを目指して、しっかり役作りをやっていきたいと思います。カンパニーは去年の舞台『幽遊白書』でお世話になった方たちばかりなので、それも精神的な支えになっています。初めてご一緒する人が多いと作品の作り方、進め方がわからないので結構不安だし、無自覚でも精神的な負担にもなっていると思います。それがまずないので、ありがたい。そしてそこに僕を選んでくれるなんて!
中河内雅貴
加古:キャスティングするときに、そういうカンパニーにしたいって言っていたんです。全員が知り合いである必要はないけど、みんながいろんな役をやって遊ぼうぜみたいな空気感がほしい、やっぱり中河内くんがいたらそんな雰囲気を作ってくれるよねって。そういうバランスも考えてた。こちらこそありがたい!!
田上:わたしはお声がけいただくまで原作は未読でしたが、面白いよって話はたくさん聞いていました。アニメ版でゲル役の声を務めるのは以前に共演経験のある黒沢ともよさん。彼女も人体の構造から声の出し方を研究するタイプの舞台出身の方で、声のお仕事でも演劇の考え方に近い感覚の子です。黒沢さんがやっているなら私もこの役頑張れるかもって、そういう面もこの役をお受けするひとつのきっかけでした。あとはもう信頼するメンバーがずらっとスタッフ一覧に並んでいたという安心感があったのも大きいですね。
加古:田上さん決定の時には、息子と公園で遊んでて僕は木に登ってたの。良い返事が来てすぐさま返信したよね。「コメディエンヌ田上真理奈必要です!」って。木の上だったからすごく記憶にあるんだ(笑)。
一同:木の上!(笑)
加古:ゲルって戦ったりはしないけど、コメディ要素をもっているキャラクターだから、狂言回しのポジションとして、田上さんみたいな方がいると助かるよねって。
田上:嬉しい~! 黒沢さんは「ゲルやるんだね、絶対見に行くよ!」って言ってくれました。あと喉に気をつけろってアドバイスもいただきました。
田上真里奈
加古:神様と人間の対立構図ってすごくアツくてかっこいい。もともと原作を読んでいたこともあり、僕がこのお話を頂いたときは即やりますと返事をしました。周りから「どう舞台化するの?」と聞かれたりしましたが、僕も返事してから、「さて、どうやろう」って悩み始めて(苦笑)。
でもキャストを見てもらえればわかると思います。舞台化するということは、原作の魅了的なキャラクターたちを生身の人間がどう表現するか。僕が信頼を寄せる俳優陣や他ジャンルのスペシャリストなど、素晴らしい人たちに集まってもらっています。
中河内:先日の稽古場で、作り手側の人たちがいろいろセッションしながら話していたのを見ました。この難題の舞台をすごい空間に作り上げようとしているなというのが、まだ少ない稽古時間の中でも絵になって浮かぶ感じがして。3次元の肉体を持つ人間がやる意味がちゃんとこの舞台に詰まっているな、だからしっかりと役者も本番に向けて役を作りこんでいこう、って再確認しましたね。舞台って創作するアーティストたちの集まりだから、作り手側で話し合っているのを見てすごく素敵だなって思いました。俺もそっち行きたい。でも俺は出る側だ!
加古:いや、こっち側だよ。コンセプトは「一緒になって、みんなで作る」だから。
中河内:殺陣の稽古でも、こことここがリンクするとこうやってかっこよくなるんだ、という新しい発見があって感動しました。もちろん稽古は大変ですが、作っている現段階はとっても楽しいです!
加古:「みんなで作る、みんなで試してみる」っていうのが自然にできてるから本当にありがたいです。ここから全員が集合しての稽古になったらもっといい空気になるんじゃないかな。
田上:稽古場からみんながわくわくして作っていける人たちだなって思っていたし、稽古に入る前からすでにそういう空気感がありました。早く稽古に入りたいって気持ちが強かったです。
大平:そういえば稽古場ですごく面白かった出来事が。アンサンブルメンバーの配役を決めるという大事な時間、途中で臨王さんの電話が鳴ったんです。最初は固い口調でお話していたのに、途中から「うん、ご、ごめんね。うん、うん」って口調が変わっていって。でも電話が切れた瞬間に「それで、配役ですが」とすっと戻ってきて(笑)。息子さんと話してたでしょ!

加古臨王、田上真里奈、大平峻也、中河内雅貴

加古:どうしても出ないといけない電話だったの……。
大平:アンサンブルの方たちからすると、役をもらう瞬間ですごく緊張しながら真剣に聞いてたのに。急にパパ出てきちゃった! ってみんなですごく笑いました。
中河内:この空気っていいよね。家庭を持っている方に優しい現場だととても助かります。こういうのって子供ができるまで知りませんでした。子供のことと仕事の両立ってすごく難しい。家庭のことをないがしろにしても仕事をしなければいけない頃もありましたが、時代は変わってきてすごく思いやりのある優しい感じの現場になってきているのはすごくありがたいなと思います。演出家自らが子供の電話に稽古中に出るなんて出来事も、俺は全然アリだなって。
大平:この稽古場のムードメーカーは臨王さんの息子さんですね!
一同:(笑)
加古:こういう社会情勢じゃなければ稽古場にも連れてきたいんだけどね。
中河内:稽古場の一角が託児所みたいになるとかね。ガヤ入れてほしいなぁ(笑)。
――そのほかの出演者についてお聞きします。特にゼウス様が3人(加藤啓、関本大介(大日本プロレス)、鯨井謙太郒)居ることが気になっていますが……。
加古:キャスティングを見てくださればきっと想像はできると思います。あとは劇場で見てください、かな。
大平:これはもう面白すぎて、ネタバレになっちゃいそう!
大平峻也
加古:変化するゼウス様の見た目をどう表現しようかというところから始まりました。演劇以外の世界からでもなにかやってくれる人が入ったら良いかなと。第二形態は当初からのプロデューサーのイメージもありますがすごい肉体を持つ格闘家に入ってもらい、第三形態はコンテンポラリーダンスなどの表現に強い人に切り替わっていくと、色が変わって面白いんだろうなというところで3人に集まってもらいました。
中河内:3人出すのに、原作者の方からもOKもらえたという点も強いですよね。
加古:原作の方々が舞台に対してすごく寄り添ってくれています。
中河内:俺的にはポセイドンの鳴き声がたまらないです! これを見たらこういうのをやりたかったんだというのがお客様もわかると思います。ポセイドン役の相馬圭祐には頑張ってもらおう。最初にあれを聞いたときは笑ってしまったけど、本気で芝居をやったらマジでぞぞぞーっと鳥肌が立つだろうっていうのは視えました。本番の見どころのひとつにもなるんだと思います。ポセイドンというキャラクターの説得力がすごく大きい。台本を読んだ時とはまたちょっと印象が違っていてびっくりしました。
加古:一回戦、二回戦、三回戦、それぞれの戦いで色があるように作りたいなと思っています。どこも見どころにしたいし、実際にそうなりそうです。
2.5次元舞台は感想や批判が見えやすいが、作り甲斐がある
――2.5次元舞台という演劇のジャンルで、キャラクターを演じることの難しさや楽しさとはどういうものと考えていますか。
大平:お客さんのイメージの中にそれぞれ違ったそのキャラクターへの思いや形があります。それを探せる範囲で拾っていって、自分がフラットな状態で考えるものとファンの人たちが捉えているキャラクター像を照らし合わせながら作っていくことが多いです。外側だけ似ていればいいかというわけではなく、人間味とかも必要で、そういう面ではストレートな舞台とも同じだなと思います。キャラクターと似ていないと言われることもあり、ネガティブな状態でそれを見てしまうとひどく突き刺さりますが、それは逆にこの人は自分の作ってきたキャラクターとは異なった見方をしているんだなってできるだけポジティブに思うようにしています。お客さんのそういう意見を聞くことができるのも2.5次元舞台が楽しいなって思うところのひとつですね。

大平峻也

田上:原作があると、お客さんがたくさん正解を持っているところから始まるから、他の舞台よりも感想や批判が見えやすい状態にあるよね。漫画やアニメの演出などで、身体や声で隅々までこだわって作っていくと必ずそのポイントに気付いてくれる人がいて。それが良いとか、新しい発見だとか言ってもらえるので、そういう意味では役者のこだわりに注目してもらいやすく、つくり甲斐があるなって思います。
そしてアニメの声の印象に似せたい思いはあります。でも稽古していく中で、自分の台詞の言い方とアニメでの言い方が大きく違うこともあって。アニメの方でその口調になった理由を考えた時にそのキャラの性格を発見できたことがありました。それからさらにそのキャラらしい役作りができるようになったので、最近はそういう作り方をしていますね。
加古:へぇ! 役作りの仕方はみんないろいろあるね。
中河内:俺は逆だな~。アニメは声優チームが作り上げたもの。舞台は肉体を使っているというところに重きを置いています。声優さんと自分のキャラクターの捉え方って違っていて当然ですが、やっていくと同じようなところにたどり着くことが多いです。入り口が違うというのが少し面白いですね。真里奈ちゃんとは逆で、アニメをあまり見ないようにしています。この役はこの声だとか先入観が生まれてしまう。だって舞台での声は俺の楽器から生まれるものだから。
加古:今の太字でお願いします(笑)。
中河内:そう、俺の肉体で声を表現しないといけないから、人の真似をするというのは俺の中では少し屈辱的。でも演じてみると結果アニメと非常に似ているって言われることがあるんです。似ているってことは声優さんたちと自分の考えた表現の着地点が同じだということかなと。以前の舞台でもとにかく原作者さんの描いた漫画だけを参考に役作りをしていったら、原作者さんから「アニメ見てた? 本当に声がそっくりだ」って言われたんです。
中河内雅貴
加古:えーすごく面白い!
中河内:以前は声を似せることだけに懸命になりがちだったけど、今の若い子たちは中身もしっかり作りこむようになってきている。俺らの昔の時代とはちょっと変わってきているのかも。2.5次元と呼ばれるジャンルが世界的にもすごくたくさん出てくる時代ですので、これからもっともっと進化した役者たちが出てくるんだろうなって思います。
田上:私もモノマネになってしまうのは好きじゃない。舞台役者の強みとして、絶対に生の現場でしか出せない音や声を出そうと思っています。あとはアニメを見ているとき、なぜこの言い方なんだろうとか小さな違和感でも大切に覚えておいて役作りに生かしています。でも聞いた音って脳に染み付いちゃうものなんです。自分が考える声色とは違うのに、気を抜くとその音に頼って芝居をしてしまう危険がある。だから現場で自分だけの音を探したいと思います。
加古:2.5次元の舞台の作り方で、僕は僕の中での正解を持っています。外側だけのもの、中身が伴っていない、アニメのモノマネでしかないんだなっていうような不正解も世の中にはもちろんあふれている。そうじゃないものを僕自身が役者でやっていたときも作ってきたし、演出側でやるときも役者にはそっちを求める。もちろん原作やアニメに似ていることが前提ですが、人物としてその場に生きているかどうかの方が重要で、そういう意識でいる俳優さんと一緒に舞台を作っていきたいなっていう思いがあります。だから今こうやって各々の話を聞けて安心しました。間違ってなかった。役作りの違いも聞けて面白かったし、本当に良いキャストに集まってもらえたなっていう思いです!
加古臨王
――最後に、ファンのみなさまへメッセージをお願いします。
中河内:漫画やアニメで見ていたものを肉眼で見てもらう、描かれていない描写のところで登場人物たちはどんな気持ちでどんな呼吸をしていて、どういう空気を纏っていたのかは舞台でしか味わえないものだと思っています。そこを役者たちはしっかりと埋めてやっていきます。ぜひ劇場ならではの『終末のワルキューレ』を楽しんで、一日の中の数時間をこの舞台でお客様に有意義に使っていただきたいなと思います。
大平:この作品は神側も人間側もどちらも応援したくなるんですよね。作者さんがどちらも肯定したうえでキャラクターを作っているんだと思っています。だから自分の役であるアダムを応援しながら読んでいるんですが、だんだんゼウスやほかのキャラクターのかっこよさも見えてきて、より神話や歴史にも興味を持つようになりました。
もしかしたらこの舞台で歴史の教科書を見ているような気持ちになってくれるのかもしれません。人類の今後のためにどう思ってこれからを生きていくか。ぜひ足を運んでいただいて、たくさんのものを持って帰ってくれればと思います。
田上: 本当に舞台化が難しい作品だと思いますが、バトルものってそれぞれの呼吸や空気をより鮮明に感じられて、生身で演じることにすごくやりがいを感じています。本気で戦うからこそ生まれる友情や、友情があるから戦うとかそういう関係性ってすごく憧れます。今回わたしは一番近くでそれを見れるのでとても楽しみにしています。お客さんも舞台を囲むような、バトルの観客のような感じで見ることができるので、私とともに熱い戦いを見届けていただければと思います。お待ちしています!!
田上真里奈
加古:やりたいことの一番初めに思いついたのが、臨場感を大事にしたいなということでした。今回は舞台を囲むような観客席になっています。そのためには劇場をヴァルハラ闘技場にしなければいけないんです。それを完成させるための大事な要素が、満員の観戦者たちです。ということはお客様が満杯に入ってくれないとこの作品は完成しないんです。本当にそういう想定で作っています! この作品を完成させるためにも劇場に足を運んでいただけると嬉しいです! それはもう、ぜひ!
中河内:劇場に足を運んでくださったお客様には臨王さんから、ひとりひとり役名を与えられます!
加古:なんだよそれ!(笑) 面白い! でもコンセプトではお客様も出演者のひとりなんです。参加しに来るような感覚でいてくれたら嬉しいな。
中河内:「きみもカンパニーの一員にならないか?」ってね!
加古:お待ちしております!

『「終末のワルキューレ」~The STAGE of Ragnarok~』は11月27日(土)より、こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロにて公演予定。
加古臨王、田上真里奈、大平峻也、中河内雅貴
取材・文=松本裕美 撮影=中田智章

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