FEATURE|idom ソリッドなダンス・ナ
ンバー「Freedom」、荘厳な世界観を
展開する「Moment」――数奇な運命を
辿る新鋭音楽家の現在地

「自分自身を否定せずに生きていくこと」

兵庫県神戸市生まれ、岡山県在住、現在23歳の新鋭アーティスト・idom。2020年春、海外での就職を予定したがコロナ禍でその機会を失ってしまい、その後のステイホーム中に音楽制作を開始。それからわずか1年半、彼の進化はとどまるところを知らない。

9月にリリースしたシングル「Freedom」はTikTokのCMタイアップ・ソングに抜擢。同曲はマシーナリーなビートにディスコ・パンクを彷彿とさせる攻撃的なシンセ・リフが先導するダンサブルな1曲。トラックメイクにはidomの重要作のひとつ「Awake」でも抜群の相性の良さをみせつけたTomoko Idaが参加。「当初ブレイクビーツを軸に考えていました。Beastie BoysやUgly Ducklingの“Sprint!”などのリズム感を参考にポップさやディスコ感を加えていくことでこのような形に仕上げてもらいました」と本人は語っているが、完成形はリファレンスからは大きく離れ、結果としてジャンルを越境する強烈なオリジナリティを放っている。
今作ではidomのラップ・スキルの進化にも着目したい。まるで別人かと思うほどに多様なフロウを獲得しているほか、2ndヴァースでは《はたから見た俺ら馬鹿でええやん/好きなこと好きなだけやるエイリアン/正直そこまでしてない計算》と自然な関西弁も用いてライミング。軽快かつソリッドに、ユーモアも盛り込みつつポジティブなメッセージを届けてくれる。フックでは疾走感溢れるサウンドに乗せて、《さぁいっそFreedom/解き放って解き放って》と繰り返し歌い上げる。コロナ禍で誰もが窮屈感、閉鎖感を感じているであろう昨今の空気感をリアルに含みながらも、それを開放せんという前向きな内容になっているが、idomはコロナ禍以前より世の中に対して感じていた違和感についてこう語る。

「(コロナ禍)以前から自分自身の育ってきた環境などに窮屈さを感じることはありました。あまり裕福な家庭ではなかったので、思春期は周りと自分を比較して悩んだりすることもありました。幼少期から周りの同世代の子たちと音楽などの趣味が合わず、協調性を求められる場面が苦手で(idom)」。これは筆者の推測だが、イタリアでの就職を決めたのも、もしかしたら協調性を重んじる日本社会に対するネガティブな思いがあったからなのではないだろうか。

しかし、自身の成長に伴いそういった感情も払拭。彼のリリックにはどうやらその体験で得たものが深く根ざしているようだ。「成長していくなかで、自分と似た感性を持つ人ともたくさん出会うことができたし、自分とは違う感性を持つ人のおもしろい部分を見れるようになったことで、モノの見方が変わったのかなと思います。それらを通して、自分自身を否定せずに生きていくことを大切にしたいと思えるようになりました。今の僕のリリックにはそういった部分が大きく影響していると思います」。

また、「Freedom」のコンセプトについてはこうも説明してくれた。「人それぞれ何かしら悩みを抱えていたり、コンプレックスがあったりすると思うのですが、僕自身、様々な困難と直面する中で、それらを乗り越える際に最も効果的だったのが、積極的に物事を楽しむということでした。僕にとってはそれが音楽を始めることへと繋がりました」。

自身と音楽との“出逢い”

一転、11月19日(金)にリリースされた最新シングル「Moment」では、サウンド感も含め先述の「Awake」との地続き感を感じさせる。「“Awake”では使命への“目覚め”をテーマにしていたのですが、“Moment”では僕と音楽との“出逢い”がテーマになっています。音楽を始めてから、これまでには考えられなかったような人生を歩み出したことが、この曲を作るきっかけになりました。自分自身や取り巻く状況の変化が、より“今”という時間を貴重なものだと気づかせてくれた実感があり、その想いを歌詞に込めました」。

一貫して自身の不思議な人生、導きに紐づき創作活動を行っているidom。「Moment」の核は《Treasure this moment》(この瞬間を大切にして)というリリックにある。ありふれたメッセージではあるが、音楽と出会い、使命に覚醒した彼の言葉には強い説得力と共に、神の啓示のような不思議な力(言霊のような)が宿っているように思えてならない。もちろん、壮大な世界観を描き出す同曲のサウンドがそれを増強していることは言わずもがなだ。

グローバルなポップ・ミュージックと真っ向勝負するかのような、正攻法の展開が印象的なトラックは「Freedom」同様にTomoko Idaによるもの。彼女との共同制作については次のように語っている。「民族音楽やゴスペルなどを要素として組み込み、神聖さを強調するトラックにしたいと考えていました。いつも僕が表現したいことを想像以上のものに引き上げてくれるので、自分のトップラインの幅がより広がるのを感じています。本当に素晴らしい人です」。

また、同曲は2度目となるソニーXperia 5III CMタイアップ・ソングへと起用されている。自身と、それを取り巻く環境も劇的に変化し続けるidomのこの先にはどのような運命が待っているのだろうか。まだまだ油断はならないが、少しずつ日常を取り戻しつつある昨今、楽曲発表やオンラインでの発信から今後はよりフィジカルな場での活躍にも期待したい。新たな才能の開花、それも国内だけでなく世界へ羽ばたいてくれるようなポテンシャルを秘めた存在。その足取りをこれからも追いかけたいと思う。

Text by Takazumi Hosaka


【リリース情報】

idom 『Freedom』

Release Date:2021.10.29 (Fri.)
Label:idom
Tracklist:
1. Freedom

■ 配信リンク(https://idom.lnk.to/Freedom )
==

idom 『Moment』

Release Date:2021.11.19 (Fri.)
Label:idom
Tracklist:
1. Moment

■ 配信リンク(https://idom.lnk.to/Moment)

■idom: Twitter(https://twitter.com/baedongk) / Instagram(https://www.instagram.com/idom._/) / SoundCloud(https://soundcloud.com/tao-h-989255797)

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