BRAHMAN・TOSHI-LOWが語るバンド論「
ロックバンドで死ぬわけないと書くヤ
ツがいるけど、俺たちはその覚悟があ
る」

来年1月13日(木)まで全国8か所を回る、初のホールツアー『Tour -slow DANCE HALL-』を開催中のBRAHMAN。6月から8月にかけて、モッシュ、ダイブ、発声などができない環境のなか、「静」をテーマにスローな楽曲で構成する『Tour 2021 -Slow Dance-』をおこなったが、その続編となる今回のツアーではホール会場の利点を生かし、演出と表現にさらなる磨きをかけてステージを作り出していく。これまでさまざまな状況や場所で自分たちのライブを魅せてきたBRAHMANは、半年以上にわたる『ツアー』をどのようにとらえているのか。TOSHI-LOW(Vo)に話を訊いた。
――まず9月22日(水)にリリースされた楽曲「Slow Dance」のミュージックビデオについて話を伺いたいのですが、ホラーコメディ調の内容で、誰も考えていなかったアプローチでした。
原案は全然違って、大人数が出演する内容だったの。でも撮影時期、新型コロナの感染拡大が夏のピークを迎えていて、大人数を集めることが無理になっちゃって。そこでバンドメンバーを中心にミニマムで出来るおもしろいことをやってみようと。制作陣から「RONZI(Dr)さんを使って良いですか」と話があったから、「どうぞどうぞご自由に。何にでもしてください」と。で、可哀そうにひとりだけ撮影の拘束時間もものすごく長くて。
――ハハハ(笑)。ちなみにRONZIさんを追い詰めるゾンビらしき生物があらわすものは、いったい何なんでしょうね。
生きているからこそ襲ってくる不安みたいなもの……という、もっともらしいことを言っておけば良いかな(笑)。いや、すごく気に入っているミュージックビデオなんだけど、内容について真面目に答えるのも何だかバカらしいからさ!
――劇中はRONZIさんのラーメン好きなところも生かされていますね。
RONZIはラーメンの知識も愛情もものすごいからね。ラーメン好きで、中には威張っている人もいると聞くし、ラーメン自体に評価を付けるような上から目線な人も多いよね。でもRONZIは単純にラーメンを愛している。だってさ、どんなにまずいラーメンを食べても文句を言わないんだよ。一緒に食べていて、俺が「これ、おいしくないよね?」と言っても、「ちょっと味が薄いだけだから」とフォローをいれる。やっぱり、もはや人類ではなく麺類だなと。
BRAHMAN
――ミュージックビデオのコメント欄には「これをどんな感情で観れば良いんだ」などと書かれていたりして、みなさん良い意味での驚きがあったみたいですね。
楽曲的には6月から8月にやったツアー『Tour 2021 -Slow Dance-』で、ライブを通して完成形を作り上げることができた。あのライブで披露した以上のものはない。だったらミュージックビデオでは、自分たちがあまりやってこなかったアプローチで、演じても良いから単純におもしろくして。そういうことを真剣に取り組もうという話になったの。ツアーの世界観をそのまま表現する必要なんてないからさ。
――その『Tour 2021 -Slow Dance-』なんですが、「静」にフューチャーしたライブと言われています。だけど実際に観てみると十分猛々しかったです。
静かだと言われているバラートっぽい曲でも、熱量があれば、激しいタイプの曲と本質的な変わりはないんだよね。あと、実際にそういう曲をやってみて、それらの曲の深さにメンバー全員が気づくことができた。自分たちも無意識に、「この曲が静かだ」と収めていた部分があったのかもしれない。だから『Tour 2021 -Slow Dance-』では、自分たちの曲をしっかり理解できたんだよね。20年以上前に作った曲を再認識できるのは、本当に幸せなこと。
――お話を訊いていると、BRAHMANはバンドとしてマンネリに陥ったことはなさそうに感じます。
ほぼほぼ、ない。特に曲に対する理解度はずっと上がっている。空間認識、音階認識も細かくつかめるようになってきた。色彩に例えると、昔は単純に白に見えていたものが、今は「これはグレートに近いホワイトだな」とか。そういう作業を永遠的にやれているかな。
――なるほど。
俺自身はOAUOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)の活動もあるから、音楽に対する理解度がガラッと変えられてるだよね。昔は白に塗った曲が、「実はこういう白だったんだ」といまさらだけど理解ができたり。しかも歳を食った分、塗り直す技術も向上している。だからマンネリ化はほとんどなくて、「やっとちゃんと色を塗れるようになったね」という感じ。前回の『Tour 2021 -Slow Dance-』のリハーサルでも、今やっている『Tour -slow DANCE HALL-』のリハーサルでも、「やっとちゃんとできるようになった」という実感がある。あらためて曲はライブで完成するものなんだなと。
BRAHMAN
――ライブでやることで楽曲の強度が上がっていくわけですね。
曲はライブのなかで変化を遂げていく。そういう変化に直面しても壊れない、耐性のある強いものを作ってきた。20年以上経っても曲の骨組みが壊れないから、現在まで残ってくれている。ブラフマンは曲を作るのが速くないし、一般的に知られている曲も少ない。でもこうやってずっと長く遊べる曲が作れていることは本当に良かったなと。
――あらためて尋ねたいのですが、前回の『Tour 2021 -Slow Dance-』で「静」をテーマにしたのはなぜですか。いつものように「動」のライブはやらなかった理由とは?
まあ、フェアじゃない感じがしたんだよね。コロナ禍のライブはお客さんにマスクをしてもらって、声を出さず、動きまわるのもダメ。そういう状況なのに「俺たちはいつも通りのライブをやるから、心の中でノッてください」とか言うバンドを見ると、「いやいやいや」と。いつも通りのノラセ方をせず、同じような条件で闘えば良いじゃんと思っちゃうんだよね。つまりフロアに制限があるなら、ステージ上にも制限を課す。そうすることで表現の不自由について考えることができるし、その上で表現の幅が広がる。それにこちらも制限があるわけだから、お客さんに対して「いろいろ制限があってすみません」なんて感じないし、「俺たちもこういう状態だし、条件は同じだから一緒に楽しもうよ」と言える。それにさ、心まで制限されるわけじゃないから。
――そういうふうに考えてライブができるアーティストは少ないですよね。
コロナ前は、俺たちのライブはダイブやモッシュが当たり前だったけど、でもそれが自然的に生まれるとは考えていない。あれをしなきゃいけない瞬間やキッカケが必ずある。「この曲のとき、お客さんの心身がグワッと上がって、跳ねあげられ、飛んでしまう」とか。こちらもある程度、その部分に自覚的なところがあるし、だから暴れるお客さんを容認している。今の状況でもその曲を演奏したら、制限をかけられようがホールでのライブだろうが、きっとそうなっちゃう。だったらそういう楽曲で煽らなきゃ良いだけ。やっちいけないことがあるから、リミットをかけています。
BRAHMAN
――それでもBRAHMANらしさがまったく損なわれていないところがさすがです。
俺たちはバンドとしてのタフさはもちろんあるよ。ライブをやるとなれば、どうにかしてでもやってみせる。「コロナでイベントが中止」というならもちろん出来ないけど、そんな状況下であっても、やれる可能性を1パーセントでも探しながら先に進むのがバンド。止めるべきときは止めて良い。進むために止まるのは良い。でも、叩かれるのが怖くてただ単に「ライブイベントを中止にしました」みたいなのは、俺たちの感覚ではありえない。どんな状況であれ、ライブを続けることを最大限に考えている。
――例えば2003年の中国でのイベントでは、日中関係の影響もあってBRAHMANのライブ中、物がステージに投げ込まれるなど大荒れだったと言われていますよね。ただ、みなさんはそれでも演奏を止めることはなかった。
なかなか日本では起き得ないことだったし、確かに普通だったら中止になる状況だった。だって投石とかあったから、「下手すれば」という話。投げる石がなくなったら、植木とかまで飛んできたからね。だけどあのときの中国のライブでも、もし演奏中に石が当たって死んだら「それはそれでロックだね」という気持ち(笑)。
――いやいや、サラッとすごいことをおっしゃいましたね。
俺たちはそれくらいでもライブを続ける覚悟がある。メンバーは誰もそれを嫌だなんて言わない。そういう気持ちが観客に伝わったから、最初は投石とかあったけど、最後は違う結末に変化したんじゃないかな。もしあの状況を受け止めずに避けてやり過ごしていたら、俺たち自身も受け入れられない結末を迎えていたはず。つまり、それだけステージの上での覚悟があるの。だから何だってできる。よくさ、「TOSHI-LOWはすぐに命の話をするけど、ロックバンドで死ぬわけないじゃん」とか言うヤツがいるんだよね。「いやいや、死ぬときは死ぬよ」って!
――いや、本当にそうですよ。
それが嫌じゃないという話なんだよね、それが俺たちのバンド論。バンドで死ぬなら本望なの。ミュージシャンとしての評価はどうでもいいし、勝手に決めたら良い。ただ俺自身は誰かと比べるわけじゃないけど、バンド人生の充実感は高い。
BRAHMAN
――現在開催中の『Tour -slow DANCE HALL-』もコロナ禍だからこそのホールツアーですが、ポジティブな印象があります。
演劇なんかを観に行くと「こういうことをライブでやってみたい」と学べることが多々ある。だけどブラフマンはライブハウスで生まれたバンドだし、そもそもホールツアーなんて考えたこともなかったから、そういう演劇的な演出はやらなかったんだよ。でもコロナ禍で『Tour 2021 -Slow Dance-』をやってみて、ステージの作り方や発想がどんどん湧いてきた。だったらさらに観やすいホールという場所でそれを実現させてみようと。俺たちはいずれライブハウスに帰っていくから、今回のホールツアーを「見逃した」「観たかった」と言われても、今後やるかどうかは分からない。
――演劇からアイデアを取り込んだところがあるんですね。
2018年の武道館公演で、中央に光が落ちて真っ暗になる演出をやったんだけど、あれは演劇の暗転からアイデアが浮かんだの。今でもそういう発想は頭の中にいっぱいある。たまたま今回、コロナ渦でのライブでそれができる機会をもらった。自分のなかに常にアイデアがあって良かったなと。
――ホールツアーを経験したあと、バンドはどういうふうに歩んでいきますか。
今の世の中もそうだけど、起きることに無駄はないと思ってる。例え失敗しても、「やらなきゃ良かったね」とはならない。ブラフも、20年前は鳴らせなかった音が今は鳴らせたりする。そして不完全だったものが成功に近づいていく。今回のホールツアーが「バンドにとって意味があった」と言えるのはちょっと先の話にはなるけど、でもバンドはずっと続いていくから。あとからでもホールツアーは必ず「意味があった」という結果になることになるんじゃないかな。
取材・文=田辺ユウキ

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